【上田明也の探偵倶楽部45~血を湛え、涙を湛え、愛を湛え~】
「……こりゃあ、なんだ。」
「世界や、ウチは詳しいこと知らんし頭も悪いからよー解らんけどな。」
「世界?」
「世界ってなんだよ、お前は神様か何かか?」
「世界や、ウチは詳しいこと知らんし頭も悪いからよー解らんけどな。」
「世界?」
「世界ってなんだよ、お前は神様か何かか?」
ユティに案内されて入った部屋。
そこには大量のモニターが設置されていてCOAのありとあらゆる場所が映し出されている。
そこには大量のモニターが設置されていてCOAのありとあらゆる場所が映し出されている。
「神様、まあ外れではないなぁ。ウチがこのCOA世界を支えている訳やし。」
「じゃあ現実世界で起き続けている失踪事件はあんたが?」
「いいや、違うわ。それについてはウチも気にはなってるんやけどね。」
「この世界の管理者なんだ、知らないってのは無いだろう?」
「ふふ……、まあええわ。私の知ってることは次にここに来た時おしえたる。
そう、そうやねえ。人より真相にたどり着くのが早すぎるんが良くないんよ。
だから強制的に排除される。」
「次に?そして排除ってどういう……。」
「次にはそのままの意味、そして排除については蜜柑ちゃんだかレモンちゃんだかに聞くとええわ。
それよりもこれ、あんたの欲しい物や。」
「じゃあ現実世界で起き続けている失踪事件はあんたが?」
「いいや、違うわ。それについてはウチも気にはなってるんやけどね。」
「この世界の管理者なんだ、知らないってのは無いだろう?」
「ふふ……、まあええわ。私の知ってることは次にここに来た時おしえたる。
そう、そうやねえ。人より真相にたどり着くのが早すぎるんが良くないんよ。
だから強制的に排除される。」
「次に?そして排除ってどういう……。」
「次にはそのままの意味、そして排除については蜜柑ちゃんだかレモンちゃんだかに聞くとええわ。
それよりもこれ、あんたの欲しい物や。」
ユティが厳かにその杯をおれに手渡す。
茜さんはそれを固唾をのんで見守っている。
二人はどうにも真面目な顔をしているが俺には何が起きているのか全く解らなかった。
それは木で出来た取っ手の二つある小さな小汚い杯だった。
茜さんはそれを固唾をのんで見守っている。
二人はどうにも真面目な顔をしているが俺には何が起きているのか全く解らなかった。
それは木で出来た取っ手の二つある小さな小汚い杯だった。
「おいおい、こんな物が聖杯だって言うのか?」
俺は指にひっかけてそれをクルクルと回しながらユティに訪ねる。
茜さんが俺の方を驚いたような顔で見ている。
ユティはニヤニヤしている。
一体何だというのだ。
茜さんが俺の方を驚いたような顔で見ている。
ユティはニヤニヤしている。
一体何だというのだ。
「明也さん!それ絶対落としちゃ駄目ですよ!」
「にゃっはっはっは!こいつぁ面白い!」
「なんなんだよお前ら!だってこれどう見たって聖杯じゃねえじゃん!」
「明也さん、それどう見ても聖杯じゃないですか!」
「こんなしょぼい器のどこが聖杯だよ!詐欺だ!
聖杯とは貴方の心にあるのですって感じの詐欺だ!」
「いや、それがアンタの中の聖杯のイメージだにゃ。
アンタが聖杯の事なんてへでもないと思っている証だにゃ。」
「なんじゃそりゃ!俺聞いてないぞ!こんなんじゃ奇跡の一つもッ!?」
「にゃっはっはっは!こいつぁ面白い!」
「なんなんだよお前ら!だってこれどう見たって聖杯じゃねえじゃん!」
「明也さん、それどう見ても聖杯じゃないですか!」
「こんなしょぼい器のどこが聖杯だよ!詐欺だ!
聖杯とは貴方の心にあるのですって感じの詐欺だ!」
「いや、それがアンタの中の聖杯のイメージだにゃ。
アンタが聖杯の事なんてへでもないと思っている証だにゃ。」
「なんじゃそりゃ!俺聞いてないぞ!こんなんじゃ奇跡の一つもッ!?」
俺がそう言った瞬間、目の前の風景が突然歪み始めた。
「真に聖杯を手に入れる物は、最も愚かなものである。
サンジェルマンの狙いはそういうことかい、食えない爺さんとは思ってたけどニャー……。
奪うでもなく何するでもなく自分の息のかかった“本当に選ばれる人間”を送ってくるとは……。」
サンジェルマンの狙いはそういうことかい、食えない爺さんとは思ってたけどニャー……。
奪うでもなく何するでもなく自分の息のかかった“本当に選ばれる人間”を送ってくるとは……。」
ユティの呟く声。
茜さんの驚く顔。
古い城の黴の香り。
茜さんの驚く顔。
古い城の黴の香り。
「……ここは?」
辺りを見回す。
正面には大きな和風建築。
俺の家だ。
これが俺の願い?
自分の家、帰るべき家を願っていた?
正面には大きな和風建築。
俺の家だ。
これが俺の願い?
自分の家、帰るべき家を願っていた?
「それはさぁ、それは……あまりにも出来すぎてるじゃないか。」
これが
私利私欲で人を殺して回り
私利私欲で人を助けて回り
心の向くままに酒を飲み、戦に興じ、女を抱き、
自分の気分で分も道理もわきまえぬ男が望んだ物なのならば、
それはあつらえられたような願いの結果だ。
でも俺は違う。
そんなんじゃない、そうだったら俺はもっと幸せになれた。
私利私欲で人を殺して回り
私利私欲で人を助けて回り
心の向くままに酒を飲み、戦に興じ、女を抱き、
自分の気分で分も道理もわきまえぬ男が望んだ物なのならば、
それはあつらえられたような願いの結果だ。
でも俺は違う。
そんなんじゃない、そうだったら俺はもっと幸せになれた。
何より、家にはあいつがいる。
「おう、馬鹿な方の息子じゃねえか。」
和風建築の門が開く、その奥からその巨大な門より巨大な男が現れた。
上田明久、俺の父だ。
幼い頃は憧れていた。
長じてからは嫌悪した。
だが大学に入る頃には結局尊敬するようになっていた。
誰よりも強く誰よりも優しく俺を見守ってくれた男だ。
俺をよく殴ってくれた。
俺を良く叱ってくれた。
でも俺は何一つ反省せず何一つ後悔せず気ままに自由に生きている。
父はそんな俺を馬鹿よばわりするだけだ。
長じてからは嫌悪した。
だが大学に入る頃には結局尊敬するようになっていた。
誰よりも強く誰よりも優しく俺を見守ってくれた男だ。
俺をよく殴ってくれた。
俺を良く叱ってくれた。
でも俺は何一つ反省せず何一つ後悔せず気ままに自由に生きている。
父はそんな俺を馬鹿よばわりするだけだ。
―――――もしもの時の為に、これを持って行ってください
サンジェルマンの言葉が突然蘇る。
そうだ、俺には村正がまだ有る。
お気に入りの赤いコートの中に仕込んだ武器の中にその息づかいを感じて安心する。
サンジェルマンの言葉が突然蘇る。
そうだ、俺には村正がまだ有る。
お気に入りの赤いコートの中に仕込んだ武器の中にその息づかいを感じて安心する。
「入れよ馬鹿息子、どうせ俺以外家にはいない。」
「……そうさせてもらうよ。」
「……そうさせてもらうよ。」
精一杯冷静を装いながら彼の後に続いて門を潜る。
昔世同じように父は頭を門にぶつけていた。
昔世同じように父は頭を門にぶつけていた。
「いつも通り庭先で素振りしてたら何時の間にか誰も居なくなっていてよ。」
「ふーん。」
「こりゃあ新手の契約者かな?って思ってた所にお前だよ。」
「ていうか父さんが契約者なの、サンジェルマンから聞くまで全く知らなかったんだけど。」
「え?お前が昔の騒動で村正を持ち出した時から気付いていたとばっかり……。」
「いや、そんなの知らずに使ってたもん。」
「そっか……。まあそこに座りなさい。」
「ふーん。」
「こりゃあ新手の契約者かな?って思ってた所にお前だよ。」
「ていうか父さんが契約者なの、サンジェルマンから聞くまで全く知らなかったんだけど。」
「え?お前が昔の騒動で村正を持ち出した時から気付いていたとばっかり……。」
「いや、そんなの知らずに使ってたもん。」
「そっか……。まあそこに座りなさい。」
家の中は昔と変わっていなかった。
今で俺が怒られる時に座らされていたいつもの座布団までそのままだ。
俺は半ば諦め気味にそこに座った。
今で俺が怒られる時に座らされていたいつもの座布団までそのままだ。
俺は半ば諦め気味にそこに座った。
「お前、昔のハーメルンの笛吹きの契約者が庭師のじいさんの子供を誘拐しようとした事件有ったの知ってたか?」
「いや知らなかった。爺本人に聞いて始めて知ったよ。」
「そうか、それならまあそれについては不問としよう。
次の質問、人殺しの味はどうだった?」
「…………あー、最悪。」
「そうか、まあそれはお前の罪だ。
お前だって子供じゃないんだからそれについて何か言う気はない。
勝手に反省するなり開き直るなりしてろ。
サンジェルマンから聞いていると思うが俺だって戦争に行っていたし偉そうなことは言えない。
どんな相手であろうと殺人は殺人、大義名分つけていい気になってるような奴らの方が俺は腹立つ。
居たんだよ、俺のダチに。
医者だったんだがそれ以外は気の良い奴だったよ。」
「いや知らなかった。爺本人に聞いて始めて知ったよ。」
「そうか、それならまあそれについては不問としよう。
次の質問、人殺しの味はどうだった?」
「…………あー、最悪。」
「そうか、まあそれはお前の罪だ。
お前だって子供じゃないんだからそれについて何か言う気はない。
勝手に反省するなり開き直るなりしてろ。
サンジェルマンから聞いていると思うが俺だって戦争に行っていたし偉そうなことは言えない。
どんな相手であろうと殺人は殺人、大義名分つけていい気になってるような奴らの方が俺は腹立つ。
居たんだよ、俺のダチに。
医者だったんだがそれ以外は気の良い奴だったよ。」
「え、戦争ってなに?」
「あれ?」
「いや、聞いてない。」
「…………。」
「………………。」
「はぁ……。」
「――――この話を詳しく聞きたかったら俺を倒すんだな!」
「いや、何言っているのさ。」
「あーそういえばそれでもお前に我慢ならないことが有ってなあ。」
「あれ?」
「いや、聞いてない。」
「…………。」
「………………。」
「はぁ……。」
「――――この話を詳しく聞きたかったら俺を倒すんだな!」
「いや、何言っているのさ。」
「あーそういえばそれでもお前に我慢ならないことが有ってなあ。」
都合悪くなったら話変えやがった!
なんて父親だ!
俺の自分勝手な部分は絶対彼に似たに違いない。
なんて父親だ!
俺の自分勝手な部分は絶対彼に似たに違いない。
「なんだよ。」
「殺りすぎ、お前どう考えても必要以上に殺しただろ?」
「……そこだけは深く反省してる。そのことで殴られても仕方ないと思ってたぜ。」
「心の中でもう殴った。
反省してるね、解ってると思うがだからといって世間から離れちゃ駄目だぞ?
お前は人間たちの中で生き続けろ、そして反省し続けろ。
俺のお薦めは自分では戦えない人々の分まで戦うことの罪を背負って生き続けるだな。
本来、戦うことは古代において選民の義務であり権利だったわけだから。
戦うこと、それが才能有る人間としてのオマエのノブレスオブリュージュ。」
「殺りすぎ、お前どう考えても必要以上に殺しただろ?」
「……そこだけは深く反省してる。そのことで殴られても仕方ないと思ってたぜ。」
「心の中でもう殴った。
反省してるね、解ってると思うがだからといって世間から離れちゃ駄目だぞ?
お前は人間たちの中で生き続けろ、そして反省し続けろ。
俺のお薦めは自分では戦えない人々の分まで戦うことの罪を背負って生き続けるだな。
本来、戦うことは古代において選民の義務であり権利だったわけだから。
戦うこと、それが才能有る人間としてのオマエのノブレスオブリュージュ。」
……しかもシリアスだよ。
下手に突っ込めないじゃねえか。
口調がおどけている分またなんか色々言いづらいじゃねえか。
下手に突っ込めないじゃねえか。
口調がおどけている分またなんか色々言いづらいじゃねえか。
「まあそれもお前の問題だよ。
そう考えているならば俺から言えることはないね。
ただ意地張って『はん、死んだ奴の事なんて一々覚えてないね。』とか
調子に乗って言わないように。」
「うぅ……。」
「これでもお前の父親だ。お前の考えてることくらいは解るさ。」
「解ったよ、そうする。」
「ところでさ、俺カレーに火かけっぱなしなんだけど。」
「えっ、急いで帰らなきゃ駄目じゃん。」
「おう、でもこの妙な異世界からの出方が解らない。
俺の持ってる刀もこの家には置いてないしよう。
どうやら都市伝説を排除する空間らしいな。
俺の刀が有ったら次元でも何でも裂いて帰れるんだが……。」
「…………止めて父さんそれって巻き込まれて俺が死ぬ気がする。」
「あれ?馬鹿息子、それなんだよ。俺に貸せよ」
「あ、ちょっと待て!それ俺の刀!」
「ウヒョー、村正じゃねえか!なんでお前持ってるんだよ!
ていうか元々俺の物だしー。」
「いや、サンジェルマンに持っておけって言われて……。
一度は手放せって言われたのに変だよな?」
「ああそれね、俺があいつにアドバイスしてやったんだ。
お前操作系だったんだってな?
それなら尚のことお前はそれを持っておくべきだ。
それは操作系と本物の“剣士”にしか使いこなせないすげえ技があるんだよ。」
そう考えているならば俺から言えることはないね。
ただ意地張って『はん、死んだ奴の事なんて一々覚えてないね。』とか
調子に乗って言わないように。」
「うぅ……。」
「これでもお前の父親だ。お前の考えてることくらいは解るさ。」
「解ったよ、そうする。」
「ところでさ、俺カレーに火かけっぱなしなんだけど。」
「えっ、急いで帰らなきゃ駄目じゃん。」
「おう、でもこの妙な異世界からの出方が解らない。
俺の持ってる刀もこの家には置いてないしよう。
どうやら都市伝説を排除する空間らしいな。
俺の刀が有ったら次元でも何でも裂いて帰れるんだが……。」
「…………止めて父さんそれって巻き込まれて俺が死ぬ気がする。」
「あれ?馬鹿息子、それなんだよ。俺に貸せよ」
「あ、ちょっと待て!それ俺の刀!」
「ウヒョー、村正じゃねえか!なんでお前持ってるんだよ!
ていうか元々俺の物だしー。」
「いや、サンジェルマンに持っておけって言われて……。
一度は手放せって言われたのに変だよな?」
「ああそれね、俺があいつにアドバイスしてやったんだ。
お前操作系だったんだってな?
それなら尚のことお前はそれを持っておくべきだ。
それは操作系と本物の“剣士”にしか使いこなせないすげえ技があるんだよ。」
村正がすげえ技?
あれは持たせた人間を狂わせて操ることと自らの身体を操る以外にやれることがあるのか?
あれは持たせた人間を狂わせて操ることと自らの身体を操る以外にやれることがあるのか?
「まあ良い貸せ、馬鹿息子。」
「そんなっ!もうこれは俺のもんだし!」
「ちっ……つまらねえ。それじゃあ奇跡起こすしかないじゃねえか。
……そういえばお前、俺の契約者としてのタイプ知ってるか?」
「え、放出よりの強化型ってサンジェルマンが言ってたぞ。」
「ありゃあな、俺のついた嘘だ。サンジェルマンにすら教えてない俺の秘密なんだが……」
「え?」
「嘘吐きはお前だけじゃねえよ。」
「そんなっ!もうこれは俺のもんだし!」
「ちっ……つまらねえ。それじゃあ奇跡起こすしかないじゃねえか。
……そういえばお前、俺の契約者としてのタイプ知ってるか?」
「え、放出よりの強化型ってサンジェルマンが言ってたぞ。」
「ありゃあな、俺のついた嘘だ。サンジェルマンにすら教えてない俺の秘密なんだが……」
「え?」
「嘘吐きはお前だけじゃねえよ。」
明久はシニカルに笑う。
「くっくっく、切り札は何時だって俺の手の中にやってくるんだ。
どうせこれから散々見るんだし、お前には俺の本当の力を見せてやる。
どうせこれから散々見るんだし、お前には俺の本当の力を見せてやる。
系統は特質(スペシャル)!属性は剣(ブレード)!発現は奇跡(ミラクル)!
俺の剣は俺そのもの。俺が居る限り、剣は在る。」
その時不思議なことが起こった、窓を割って三本の日本刀が飛んできたのだ。
しかもそのいずれもが都市伝説。
よくわからない理屈で俺の父親は自分の刀を呼び出したらしい。
……奇跡だ。
しかもそのいずれもが都市伝説。
よくわからない理屈で俺の父親は自分の刀を呼び出したらしい。
……奇跡だ。
「っとまあこれで帰る目処はついたと。」
「嘘……だろ?」
「現実だ、受け入れろ。」
「解った。」
「嘘……だろ?」
「現実だ、受け入れろ。」
「解った。」
自慢じゃないが俺は物わかりの良い子供だ。
「よし、良い子だ。
良い子のお前に村正の使い方を教えてやろうじゃないか。」
「ただし実戦で、と次に言う。」
「ただし実戦で……何故解った!」
良い子のお前に村正の使い方を教えてやろうじゃないか。」
「ただし実戦で、と次に言う。」
「ただし実戦で……何故解った!」
いや、親子だし。
「解ってるなら表出ろ。」
「俺剣道とかやったことないぞ?」
「村正なら自動操縦でなんとかなるだろ、そういえばお前剣士相手にボコボコにされたんだって?
俺にボコボコにされたこと思い出して村正使うの止めたんじゃねえの?
俺に剣は向いてないとかいってー。
弱い都市伝説を強化して戦う俺カックイーとか思ったんだろ?」
「うるせー。」
「だから何度も教えてるだろ?雑魚は雑魚、一生変わらん。」
「俺剣道とかやったことないぞ?」
「村正なら自動操縦でなんとかなるだろ、そういえばお前剣士相手にボコボコにされたんだって?
俺にボコボコにされたこと思い出して村正使うの止めたんじゃねえの?
俺に剣は向いてないとかいってー。
弱い都市伝説を強化して戦う俺カックイーとか思ったんだろ?」
「うるせー。」
「だから何度も教えてるだろ?雑魚は雑魚、一生変わらん。」
「……ならなんで明日弟に戦いを教えたんだ?」
「ダチに頼まれた。じゃなきゃやってねえよ。」
「そっか。」
「それは良いけど村正との再契約済ませておけよ?」
「ダチに頼まれた。じゃなきゃやってねえよ。」
「そっか。」
「それは良いけど村正との再契約済ませておけよ?」
うっかり忘れていた。
恐らくこの聖杯の空間の干渉から逃れる為にサンジェルマンは契約させなかったのだろうが、
今となってしまえばもう契約をしない意味は無い
村正との契約を手早く済ます。
最初に契約した時とは違って身体にすんなりと馴染んでいく。
恐らくこの聖杯の空間の干渉から逃れる為にサンジェルマンは契約させなかったのだろうが、
今となってしまえばもう契約をしない意味は無い
村正との契約を手早く済ます。
最初に契約した時とは違って身体にすんなりと馴染んでいく。
「うへー、村正がそんなに馴染むのかよ。」
「最初は激痛が走って爪の間から血とか出てたんだけどなあ?」
「いや立派立派、そこそこ楽しくなりそうだ。」
「最初は激痛が走って爪の間から血とか出てたんだけどなあ?」
「いや立派立派、そこそこ楽しくなりそうだ。」
父は立ち上がって庭に向けて歩き始めた。
俺も黙ってそれについて行く。
確かに、村正が妙に身体に馴染む。
それだけ自分も強くなったと言うことだろうか。
俺も黙ってそれについて行く。
確かに、村正が妙に身体に馴染む。
それだけ自分も強くなったと言うことだろうか。
小指を軽く切ってみる。血が止まらない。
メルとの契約による再生能力が失われていた。
昔潰されかけた右目の視力も少し落ちているようだ。
村正の能力だけで戦わなくてはならないらしい。
最後の望みをかけて懐に仕込んでいたノートパソコンを起動。
メルとの契約による再生能力が失われていた。
昔潰されかけた右目の視力も少し落ちているようだ。
村正の能力だけで戦わなくてはならないらしい。
最後の望みをかけて懐に仕込んでいたノートパソコンを起動。
「明也さん!大丈夫ですか!?あの後赤い部屋まで飛ばされて大変だったんですよ!」
「うん?なんだなんだ?」
「やめろっ人のパソコン勝手に覗き込むな父さん!」
「父さん?明也さんお父さんといっしょにいるんですか?」
「茜さん、頼むから少し口を閉じろ!」
「なんだ馬鹿息子、貴様赤い部屋とも契約してたのか。
規格外の容量だなあ……、ずるいぜ。
おい茜さんとやら、息子が世話になってるみたいだな?
ハーメルンの笛吹きと違ってまともそうで安心したよ。」
「あ、どうもです……。」
「おい馬鹿息子、このお嬢さんもここに出してやれよ。」
「今まで出来なかったんだけどそれ。」
「はい、奇跡起こしてみましょう。」
「……茜さん、いける?」
「さあ……?」
「うん?なんだなんだ?」
「やめろっ人のパソコン勝手に覗き込むな父さん!」
「父さん?明也さんお父さんといっしょにいるんですか?」
「茜さん、頼むから少し口を閉じろ!」
「なんだ馬鹿息子、貴様赤い部屋とも契約してたのか。
規格外の容量だなあ……、ずるいぜ。
おい茜さんとやら、息子が世話になってるみたいだな?
ハーメルンの笛吹きと違ってまともそうで安心したよ。」
「あ、どうもです……。」
「おい馬鹿息子、このお嬢さんもここに出してやれよ。」
「今まで出来なかったんだけどそれ。」
「はい、奇跡起こしてみましょう。」
「……茜さん、いける?」
「さあ……?」
俺は赤い部屋に入る時の要領でノートパソコンに腕を突っ込む。
茜さんの腕を掴んで引っ張ってみる。
意外と簡単に茜さんが出てきた。
…………奇跡だ。
茜さんの腕を掴んで引っ張ってみる。
意外と簡単に茜さんが出てきた。
…………奇跡だ。
「ほら見ろ、できるんじゃねえか。」
「嘘だろ?」
「……出てこれちゃいました。」
「改めてよろしく茜さん、俺が上田明也の父だ。」
「えっと、赤い部屋の茜と申します。」
「嘘だろ?」
「……出てこれちゃいました。」
「改めてよろしく茜さん、俺が上田明也の父だ。」
「えっと、赤い部屋の茜と申します。」
二人同時に頭を下げる。
これから戦闘が起きるとは思えないムードだ。
これから戦闘が起きるとは思えないムードだ。
「こいつには弟と妹が一人ずつ居るんだけど、まあ親戚づきあいとかもよろしくな。
それと式の段取りは追って伝えるからよろしく。」
「え?」
「待て待て父さん。」
「いやだってお前この子逃したら一生まともな子に出会えねえよ。
大丈夫、俺のダチの中でも都市伝説と結婚した奴居るから、そこらへんはどうとでもしてやる。
お前だってもう子供じゃないんだし良いからさっさと奥さんもらって落ち着け、な?
こんな可愛い子に手を出さないお前じゃない、それは何も言わない。
だから責任取れ、シンプルな理屈だろうが?」
それと式の段取りは追って伝えるからよろしく。」
「え?」
「待て待て父さん。」
「いやだってお前この子逃したら一生まともな子に出会えねえよ。
大丈夫、俺のダチの中でも都市伝説と結婚した奴居るから、そこらへんはどうとでもしてやる。
お前だってもう子供じゃないんだし良いからさっさと奥さんもらって落ち着け、な?
こんな可愛い子に手を出さないお前じゃない、それは何も言わない。
だから責任取れ、シンプルな理屈だろうが?」
いや、俺は父さんの気の早さに突っ込んでるんじゃない。
そんなの昔からそうだ。
そうじゃなくて……
そんなの昔からそうだ。
そうじゃなくて……
「妹って何?」
「え、言ってなかったっけ?
唯ちゃんが養子なのは知ってるよな?」
「おう、それは知ってるしだから優しくしてきたんだが……」
「実は家から養子に出されたんだよ。」
「え、言ってなかったっけ?
唯ちゃんが養子なのは知ってるよな?」
「おう、それは知ってるしだから優しくしてきたんだが……」
「実は家から養子に出されたんだよ。」
「ええええええええええええええええええ!?
俺聞いてないぞおおおおおおおおおおおおおおお!!
血の繋がってない従妹だしむしろ将来的には俺好みに育てて……
とか思ってたのにぃいい!
おいこら馬鹿親父俺のトキメキ返せ!」
「今薄ら寒い思いしてるんだけどまさか手は出してないよな馬鹿息子!?」
俺聞いてないぞおおおおおおおおおおおおおおお!!
血の繋がってない従妹だしむしろ将来的には俺好みに育てて……
とか思ってたのにぃいい!
おいこら馬鹿親父俺のトキメキ返せ!」
「今薄ら寒い思いしてるんだけどまさか手は出してないよな馬鹿息子!?」
重苦しい沈黙。
俺は正直に話すことにした。
俺は正直に話すことにした。
「…………キスまで。」
父が深くため息を吐いてから……
「うわああああああああああああ!」
取り乱した。
正直、俺の方が取り乱したい。
正直、俺の方が取り乱したい。
「うわああああああああああああ!じゃねえから!
どうするんだよがっかりだよ!」
「ていうかお前自分を好きな女の子の前で実の妹に欲情してたとか言うなよ!
浮気疑われるじゃねえか!」
「いえ、私は最後に彼が私を側に置いてくれれば……。」
「なにその寛容さ!家のカミさんに見習わせたい!
こいつの母親そこらへんすげー厳しいの。」
「はっはー、ざまあみやがれ馬鹿親父!ってかまさかとは思うけど父さん……」
「はっはっは、今日は本気で戦ってやる!
どうせ此処は異世界なんだから家の中だろうがなんだろうが構わん!
征くぞ正宗!」
どうするんだよがっかりだよ!」
「ていうかお前自分を好きな女の子の前で実の妹に欲情してたとか言うなよ!
浮気疑われるじゃねえか!」
「いえ、私は最後に彼が私を側に置いてくれれば……。」
「なにその寛容さ!家のカミさんに見習わせたい!
こいつの母親そこらへんすげー厳しいの。」
「はっはー、ざまあみやがれ馬鹿親父!ってかまさかとは思うけど父さん……」
「はっはっは、今日は本気で戦ってやる!
どうせ此処は異世界なんだから家の中だろうがなんだろうが構わん!
征くぞ正宗!」
また誤魔化しやがった。
父は腰に差した三本の刀の内一本を抜く。
真面目な修行シーンになるかと思ったら酷い状況だ。
父は腰に差した三本の刀の内一本を抜く。
真面目な修行シーンになるかと思ったら酷い状況だ。
「…………やるか。」
俺も村正を抜く。
「ちょっと!?二人とも何やってるんですか!」
「茜さんちょっと下がってろ!」
「嬢ちゃん、先に庭に出てな!巻き込まれるぜ!」
「え、ええええ!?……解りました。私の出る幕は無しですか……。」
「茜さんちょっと下がってろ!」
「嬢ちゃん、先に庭に出てな!巻き込まれるぜ!」
「え、ええええ!?……解りました。私の出る幕は無しですか……。」
茜さんがトボトボ庭の方に行ってしまった。
少々申し訳ない気持ちである。
少々申し訳ない気持ちである。
「あとよぉ……馬鹿息子。戦闘前の名乗りちゃんとしろよ。
俺だってさっきやってたじゃん。系統だの属性だの発現だの…………。」
「え、何それ。恥ずかしいから嫌だぜ。」
「馬鹿野郎、名乗りは強者の義務だ。
やらなかったら殴るぞ、グーで殴る。」
「…………わかった。」
俺だってさっきやってたじゃん。系統だの属性だの発現だの…………。」
「え、何それ。恥ずかしいから嫌だぜ。」
「馬鹿野郎、名乗りは強者の義務だ。
やらなかったら殴るぞ、グーで殴る。」
「…………わかった。」
あまりに真剣な顔で言われたので俺は諦めることにした。
「――――系統(タイプ)は操作系(レイニング)
――――属性(エレメント)は君臨(レイニング)
――――発現(モーメント)は蹂躙(レイニング)
笛吹探偵事務所所長上田明也。これで満足か?」
笛吹探偵事務所所長上田明也。これで満足か?」
「まあ良いだろう、許す。」
上田明久は刀を真っ直ぐ俺に向ける。
俺も村正を中段で構える。
俺も村正を中段で構える。
「ただの勝負もつまらん、何かかけろよ。」
「かけるほどの物なんて……」
「いや、有るね。ハーメルンの笛吹きの首とかよぉ。」
「いきなり何言ってるんだよ。」
「おいおい、俺はお前の罪に言及する気はないと言ったが……
ハーメルンの笛吹き自体の罪については何も言ってないぜ?」
「冗談でも笑えな…………」
「――――――――冗談に見えるか?」
「鬼め。」
「鬼だよ。子供が関われば親なんて簡単に鬼になる。人の道を忘れる。
獣も人も都市伝説も親になれば皆いっしょさ。」
「かけるほどの物なんて……」
「いや、有るね。ハーメルンの笛吹きの首とかよぉ。」
「いきなり何言ってるんだよ。」
「おいおい、俺はお前の罪に言及する気はないと言ったが……
ハーメルンの笛吹き自体の罪については何も言ってないぜ?」
「冗談でも笑えな…………」
「――――――――冗談に見えるか?」
「鬼め。」
「鬼だよ。子供が関われば親なんて簡単に鬼になる。人の道を忘れる。
獣も人も都市伝説も親になれば皆いっしょさ。」
父の言葉の中に漂うおどけた雰囲気が消えた。
「一応馬鹿とはいえ息子を奪っていった都市伝説だしなあ。腹も立つさ。」
確かに、そう言われて見れば父がメルに怒るのも当たり前なのか。
爆発させないように抑えているだけで。
爆発させないように抑えているだけで。
「お前も欲しい物言ってみろよ。」
「俺は……、そうだな。あれだ。」
「うん?」
「俺が勝ったら唯に手を出すことを認めろ。」
「……うん?」
「唯を好みのタイプに育てる為に結構頑張ったんだよ、今更実の妹だからって後に引けるかと。」
「…………いや、駄目だろ。」
「なんだよ、愛することが罪なのか?」
「ったく、そうやって詩人気取ってくっちゃべってろ。」
「まあ今此処で勝てばこの先邪魔されても暴力で目的達成できるだろうけどな。」
「それには同意だ。だが……、なあ?」
「今更逃げるとは言わせないからな。」
「逃げないし、俺は逃げないし、むしろお前こそ俺をびびらせて戦うの躊躇わせようとしてるんじゃねえの?」
「いや違うから、俺はやる時やる子だから。」
「俺は……、そうだな。あれだ。」
「うん?」
「俺が勝ったら唯に手を出すことを認めろ。」
「……うん?」
「唯を好みのタイプに育てる為に結構頑張ったんだよ、今更実の妹だからって後に引けるかと。」
「…………いや、駄目だろ。」
「なんだよ、愛することが罪なのか?」
「ったく、そうやって詩人気取ってくっちゃべってろ。」
「まあ今此処で勝てばこの先邪魔されても暴力で目的達成できるだろうけどな。」
「それには同意だ。だが……、なあ?」
「今更逃げるとは言わせないからな。」
「逃げないし、俺は逃げないし、むしろお前こそ俺をびびらせて戦うの躊躇わせようとしてるんじゃねえの?」
「いや違うから、俺はやる時やる子だから。」
……図星だ。
刀を構えたままツカツカと庭まで歩く。
何とも間抜けな光景である。
お互いに放つ殺意は本物なのに、流れる空気は不思議と和やかだ。
刀を構えたままツカツカと庭まで歩く。
何とも間抜けな光景である。
お互いに放つ殺意は本物なのに、流れる空気は不思議と和やかだ。
「まあ良いや、勝負ついてから話しようぜ。我が息子よ。」
「解ったぞ父さん。」
「解ったぞ父さん。」
その声と同時に床板を踏んで俺は父に飛びかかった。
袈裟切りに第一斬、正宗で弾き飛ばされる。父はとっさに間合いをとる。
弾かれた刀を投げ飛ばして第二斬、身体をかがめて回避される。
吹き飛んでいった村正がブーメランの如く戻ってくる第三斬、わずかに父の頬を掠る。
弾かれた刀を投げ飛ばして第二斬、身体をかがめて回避される。
吹き飛んでいった村正がブーメランの如く戻ってくる第三斬、わずかに父の頬を掠る。
戻ってきた村正を左手でキャッチしてからすばやく右手でMP5を取り出す。
父に近づかれないように弾丸をばらまいた。
しかし流石にそれは通じないらしい。
父に近づかれないように弾丸をばらまいた。
しかし流石にそれは通じないらしい。
「払え正宗!」
どうやら正宗の効果らしい。
妙な力場が働いて弾丸の方から父を避けていく。
妙な力場が働いて弾丸の方から父を避けていく。
「ひゅー、思ったよりやるじゃん。」
あれだけの銃弾を処理しておいて父は汗一つかいてない。
俺は弾切れのMP5を投げ捨てて父を睨みつけた。
俺は弾切れのMP5を投げ捨てて父を睨みつけた。
「ていうかお前使えてるんじゃねえかよ村正。
なんでそれで負けてるんだよ馬鹿息子。」
「うるせー、バカバカ言うな。」
「多分アレだな、そんな物に頼っているからだな。
銃器とか爆弾とか女子供の武器だよ。」
なんでそれで負けてるんだよ馬鹿息子。」
「うるせー、バカバカ言うな。」
「多分アレだな、そんな物に頼っているからだな。
銃器とか爆弾とか女子供の武器だよ。」
そう言って父は俺の目の前まで一気に踏み込み、刀を無造作に振り回す。
刀が俺の身体を五六回通った。
刀が俺の身体を五六回通った。
「うわあああああ!」
切られた、慌てて村正でなぎ払う。
父は義経よろしくふわっと飛んで俺の剣を躱し縁側から庭に出た。
……冷静になって我が身の状態を確かめると切られたはずなのに血が出てない。
父は義経よろしくふわっと飛んで俺の剣を躱し縁側から庭に出た。
……冷静になって我が身の状態を確かめると切られたはずなのに血が出てない。
「この正宗は切らない刀だからな。
生きている物は切れないんだよ。」
「え?」
生きている物は切れないんだよ。」
「え?」
次の瞬間、俺のコートの隙間から大量の鉄くずがこぼれ落ちる。
「邪魔だから壊したぜ、それ。」
「高かったのにいいいいいいいい!」
「うるせー、こんな物に頼るから弱いんだお前は。
お前は強くなれるのにそれを拒否するから駄目なんだよ!」
「高かったのにいいいいいいいい!」
「うるせー、こんな物に頼るから弱いんだお前は。
お前は強くなれるのにそれを拒否するから駄目なんだよ!」
だが良いことを聞いた。
生きている物は切れないのだそうだ。
つまり父は俺を切れないと言うことになる。
俺は村正の自動操縦に身体を任せて父に再び襲いかかる。
あの刀が脅威じゃないなら他の刀を抜かれる前に倒すだけだ。
生きている物は切れないのだそうだ。
つまり父は俺を切れないと言うことになる。
俺は村正の自動操縦に身体を任せて父に再び襲いかかる。
あの刀が脅威じゃないなら他の刀を抜かれる前に倒すだけだ。
「あー、でも切れないからって言っても攻撃できない訳じゃないから。」
父は襲いかかった俺の呼吸を読み切って見事に俺の胴体を切った。
切った、というより吹き飛ばしたのだが。
切った、というより吹き飛ばしたのだが。
「うぉわああ!?」
家の壁を貫通して吹き飛ばされる。
当然ながら痛い。
当然ながら痛い。
「この正宗は元々村正と対になっている都市伝説だ。
村正と正宗を川に突き立てたところ、
正宗は川上から流れてきた木の葉が避けて通り、
村正は川上から流れてきた木の葉を引き寄せて切った。
故に俺の正宗は本来であれば切るはずの物を吹き飛ばすことが出来る。
斥力を操る能力って所か。
まあここまで見せれば解るだろう馬鹿息子?」
村正と正宗を川に突き立てたところ、
正宗は川上から流れてきた木の葉が避けて通り、
村正は川上から流れてきた木の葉を引き寄せて切った。
故に俺の正宗は本来であれば切るはずの物を吹き飛ばすことが出来る。
斥力を操る能力って所か。
まあここまで見せれば解るだろう馬鹿息子?」
「ふーん、なるほどね。理解したぞ天才親父。
こういうことも出来るってことか。」
こういうことも出来るってことか。」
父の手の中に有った正宗がそこから飛び出す。
それはまるで最初から其処にあったかのように俺の手元に収まった。
俺は二本の刀を構えて立ち上がる。
村正の紫と正宗の白、刀が放つ二色の輝きが混ざり合って夜に静かな花を咲かせる。
それはまるで最初から其処にあったかのように俺の手元に収まった。
俺は二本の刀を構えて立ち上がる。
村正の紫と正宗の白、刀が放つ二色の輝きが混ざり合って夜に静かな花を咲かせる。
「その通り、やっぱり解ってるんじゃねえか。」
「いやいや、今見せられなかったら解らなかったよ。
村正には引力を操る能力が有るんだろう?
今まで落としても俺の手に戻ってきたのは契約しているからだとばかり思ってた。
ありがとう父さん。」
「くくく、これでやっとまともに戦えるな。」
「いやいや、今見せられなかったら解らなかったよ。
村正には引力を操る能力が有るんだろう?
今まで落としても俺の手に戻ってきたのは契約しているからだとばかり思ってた。
ありがとう父さん。」
「くくく、これでやっとまともに戦えるな。」
シニカルに笑う父。
あの笑い方を見るとやっぱり親子なのだと実感させられる。
少し嬉しい。
あの笑い方を見るとやっぱり親子なのだと実感させられる。
少し嬉しい。
「村雨、にっかり青江、やっと出番だぜ。」
青く輝く鞘から水で濡れた刀が抜き放たれる。
玉虫色の鞘から陽炎のような刃を持った刀が抜き放たれる。
上田明久は二刀流に構えた。
玉虫色の鞘から陽炎のような刃を持った刀が抜き放たれる。
上田明久は二刀流に構えた。
「ここからは訓練無しの殺し合いだ。
死にはしない程度に殺してやる!」
死にはしない程度に殺してやる!」
ちゃんと訓練してるんじゃねえか。
と、心の中で突っ込んでいる内に上田明久の姿が消える。
一瞬の静寂
突然、上田明久は俺の目の前に現れた。
だがもう慌てる俺じゃない。振り下ろされる村雨を村正で引き寄せて受け止める。
もう一発が来る。
極限まで濃密な時間の中で、俺は父の背中に透明な刀を見つけた。
と、心の中で突っ込んでいる内に上田明久の姿が消える。
一瞬の静寂
突然、上田明久は俺の目の前に現れた。
だがもう慌てる俺じゃない。振り下ろされる村雨を村正で引き寄せて受け止める。
もう一発が来る。
極限まで濃密な時間の中で、俺は父の背中に透明な刀を見つけた。
「吹き飛べ!」
正宗が白く輝く。
水で出来ていたらしいその透明な刀は一瞬で吹き飛んだ。
水で出来ていたらしいその透明な刀は一瞬で吹き飛んだ。
「ハッ、初見で見抜いたか!」
「村雨なんて聞いたら誰だってウォーターカッター来るんじゃないかってびびるわ!」
「期待してたの間違いじゃあねえのか?」
「おれはそこまで戦闘狂じゃねえよ!」
「村雨なんて聞いたら誰だってウォーターカッター来るんじゃないかってびびるわ!」
「期待してたの間違いじゃあねえのか?」
「おれはそこまで戦闘狂じゃねえよ!」
俺の周りの引力を操作して父の動きを鈍らせる。
これに村正の自動操縦を加えてやっと五分五分の戦い。
さらにどうしても危険になったら引力操作を解除して正宗で斥力を発生させる。
精密な精密な都市伝説のコントロールの繰り返し。
集中力が何時尽きるか解りもしないギリギリの綱渡り。
これに村正の自動操縦を加えてやっと五分五分の戦い。
さらにどうしても危険になったら引力操作を解除して正宗で斥力を発生させる。
精密な精密な都市伝説のコントロールの繰り返し。
集中力が何時尽きるか解りもしないギリギリの綱渡り。
しかしそんな瞬間に父から生まれる一瞬の隙。
普通なら迷い無く打ち込む、だがそれは解りやすい罠だ。
村正はそれには反応せず、俺の腕を滅茶苦茶な方向に曲げて背面を防御する。
次の瞬間腕に走る重たい衝撃。
背後で黒い光が飛び散る。
普通なら迷い無く打ち込む、だがそれは解りやすい罠だ。
村正はそれには反応せず、俺の腕を滅茶苦茶な方向に曲げて背面を防御する。
次の瞬間腕に走る重たい衝撃。
背後で黒い光が飛び散る。
「にっかり青江の幻も通じない、と。
幻覚系の攻撃が通じないのは厄介だなあ。」
「いやいや、村正はだまされたみたいだぜ?払え正宗!」
幻覚系の攻撃が通じないのは厄介だなあ。」
「いやいや、村正はだまされたみたいだぜ?払え正宗!」
そう、上田明久本体の背面からの攻撃こそが罠なのだ。
本命は村雨によるウォーターカッターを使った前後からの同時攻撃。
村正はだませても俺はだませない。
にっかり青江の能力による父の幻の後ろで隠れていた水の刀を弾き飛ばす。
本命は村雨によるウォーターカッターを使った前後からの同時攻撃。
村正はだませても俺はだませない。
にっかり青江の能力による父の幻の後ろで隠れていた水の刀を弾き飛ばす。
「良いぞ良いぞ!
しばらく放っておいた甲斐が有ったぜ!
そこそこ戦えるようになってるんじゃねえか!」
「それより俺が勝ったらあの約束忘れるなよ!」
「……いや、それは本当にやめてくれ頼むから。」
「好きなものは仕方ないだろうがよ!
俺の異常さも含めて受け入れてくれたのはあいつだけなんだよ!」
「だってお前、実の妹だろ……。」
「んなの知らなかったわ!」
「いやそれは謝るけどさあ…………。」
しばらく放っておいた甲斐が有ったぜ!
そこそこ戦えるようになってるんじゃねえか!」
「それより俺が勝ったらあの約束忘れるなよ!」
「……いや、それは本当にやめてくれ頼むから。」
「好きなものは仕方ないだろうがよ!
俺の異常さも含めて受け入れてくれたのはあいつだけなんだよ!」
「だってお前、実の妹だろ……。」
「んなの知らなかったわ!」
「いやそれは謝るけどさあ…………。」
二本の刀を無造作……に見えて型どおりに正しく打ち込んでくる。
俺はこういう正面からの斬り合いが一番苦手なのだ。
引力を操ってさっきから父の動きを邪魔してるのにそれでやっと追いつけるスピードなのだから困る。
しかし、決着の時は意外と簡単に訪れるようだ。
俺の両手から同時に刀が吹き飛ばされる。
俺はこういう正面からの斬り合いが一番苦手なのだ。
引力を操ってさっきから父の動きを邪魔してるのにそれでやっと追いつけるスピードなのだから困る。
しかし、決着の時は意外と簡単に訪れるようだ。
俺の両手から同時に刀が吹き飛ばされる。
「流石に親として気分が良いものじゃねえからそういうの。
殺さないようにしておいてやるから……ここで負けておけ!」
殺さないようにしておいてやるから……ここで負けておけ!」
村雨が俺に向けて振り下ろされた、当然峰打ちではない。
殺す気満々である。
しかしそこで突然父の腕に茜さんがCOAで使っていた毒針が刺さる。
殺す気満々である。
しかしそこで突然父の腕に茜さんがCOAで使っていた毒針が刺さる。
「……親が子供に真剣向けてるのも中々気分悪いですよね。」
気付くと、茜さんが俺の隣に立っていた。
そうだ、そう言えば安全を考えて庭で待っているように言われてたっけか。
そうだ、そう言えば安全を考えて庭で待っているように言われてたっけか。
「……嬢ちゃん、男の戦いに水差すなよ。」
「嫌です。喧嘩でもここまでやる必要ないじゃないですか。
こんなことでしか分かり合えないなんて、悲し過ぎます。」
「こんなことでもしないとわかり合えないんだよ。
そこの馬鹿息子はお前以外の女、つか実の妹までも好きになるような馬鹿だぞ?
で、その為に父親と戦っている。そんな奴に此処まで肩入れする理由があるのか?
運命的な出会いとか、すげえ恩があるとか。」
「そんな物有りません。偶然出会って惰性で一緒に居ます。」
「そうか……。そんなのに俺たち親子の決闘は邪魔されたのか。
何処までも薄汚ねぇ。」
「嫌です。喧嘩でもここまでやる必要ないじゃないですか。
こんなことでしか分かり合えないなんて、悲し過ぎます。」
「こんなことでもしないとわかり合えないんだよ。
そこの馬鹿息子はお前以外の女、つか実の妹までも好きになるような馬鹿だぞ?
で、その為に父親と戦っている。そんな奴に此処まで肩入れする理由があるのか?
運命的な出会いとか、すげえ恩があるとか。」
「そんな物有りません。偶然出会って惰性で一緒に居ます。」
「そうか……。そんなのに俺たち親子の決闘は邪魔されたのか。
何処までも薄汚ねぇ。」
父の声が急に穏やかになる。
「薄汚い、俺の愛する人に酷いことを言うぜ。俺も言ってもらわないとな。」
軽口を叩いてみるが返事がない。
……父が怒っている、魔王第二形態くらいのレベルで怒っている。
にっかり青江を鞘に収めて本来の一刀流のスタイルに戻った。
……父が怒っている、魔王第二形態くらいのレベルで怒っている。
にっかり青江を鞘に収めて本来の一刀流のスタイルに戻った。
「それにしても珍しいタイプの毒塗ってるみたいじゃねえか。
種類は麻痺毒か……興味深いな。
でもこんな無粋な物で親子の決闘汚すなんてなあ……。」
種類は麻痺毒か……興味深いな。
でもこんな無粋な物で親子の決闘汚すなんてなあ……。」
茜さんが父の怒りに圧倒されてその場で震え始める。
まずい、この状況で身体を動かせなくなってるのはすごく良くない。
直感的に俺は茜さんを突き飛ばした。
まずい、この状況で身体を動かせなくなってるのはすごく良くない。
直感的に俺は茜さんを突き飛ばした。
「――――――――痛ッ!」
間に合ったらしい。茜さんは横に吹き飛んで尻餅をつくだけで済んだ。
そして、俺の村正を持った右手が切り落とされる。
そして、俺の村正を持った右手が切り落とされる。
「知らなかったぜ、おまえってマジでいいヤツだったんだな、馬鹿息子。
……まあそれは嬉しいけどどうでも良いや、嬢ちゃんから殺すとしよう。
嫌だったら今みたく守り抜け、馬鹿息子。ただもうちょっと彼女の身体に負担かけない方法でだな……。」
「今斬ろうとした相手の身体を慮るなんてやっぱり変だよな、父さん。
つーかさ、知らなかったのか?
俺ってすごい良い奴だって昔から言ってきただろうがよ。
だから駄目なんだよ、馬鹿親父。」
「あっそうかい。
しっかし駄目だな、女を切る時は流石に鈍るわ。
息子の女だし、まあわるいことじゃあねえよな。」
……まあそれは嬉しいけどどうでも良いや、嬢ちゃんから殺すとしよう。
嫌だったら今みたく守り抜け、馬鹿息子。ただもうちょっと彼女の身体に負担かけない方法でだな……。」
「今斬ろうとした相手の身体を慮るなんてやっぱり変だよな、父さん。
つーかさ、知らなかったのか?
俺ってすごい良い奴だって昔から言ってきただろうがよ。
だから駄目なんだよ、馬鹿親父。」
「あっそうかい。
しっかし駄目だな、女を切る時は流石に鈍るわ。
息子の女だし、まあわるいことじゃあねえよな。」
引力を操って村正とそれを握った右手を無理矢理断面にくっつける。
血管、神経、リンパ節、etc
全てをこれ以上ないくらい丁寧に繋げていくイメージ。
大丈夫、信じれば出来る。
この程度奇跡の内にも入らない。
ただ剣士との戦いで必要なだけのスキル。
血管、神経、リンパ節、etc
全てをこれ以上ないくらい丁寧に繋げていくイメージ。
大丈夫、信じれば出来る。
この程度奇跡の内にも入らない。
ただ剣士との戦いで必要なだけのスキル。
「来いよ、馬鹿親父。
結局お前も、……お前は戦いたいだけだろうが。」
結局お前も、……お前は戦いたいだけだろうが。」
起こすべき奇跡はこれからだ。
戦士としても契約者としても劣る俺が武器にできるのは自らの異常性のみ。
自らの異常性を使いこなしてこその戦いだ。
戦士としても契約者としても劣る俺が武器にできるのは自らの異常性のみ。
自らの異常性を使いこなしてこその戦いだ。
「応よ。」
そう呟いて父が茜さんの方を向く。
俺は頭の内に少女の姿を思い浮かべていた。
囚えて納める不思議な才能を持った少女。
彼女の人格を、異常性を、すべて思い浮かべて彼女になりきる。
異常とは性格や思考方法に由来する能力。
そして思考とは常に言語で規定される。
ならば俺の異常と謳われる言語能力で異常者の思考をトレースすることとて不可能ではない。
他人の異常をトレースすることとて不可能ではない。
そうだ、奇跡を起こせ。
俺は頭の内に少女の姿を思い浮かべていた。
囚えて納める不思議な才能を持った少女。
彼女の人格を、異常性を、すべて思い浮かべて彼女になりきる。
異常とは性格や思考方法に由来する能力。
そして思考とは常に言語で規定される。
ならば俺の異常と謳われる言語能力で異常者の思考をトレースすることとて不可能ではない。
他人の異常をトレースすることとて不可能ではない。
そうだ、奇跡を起こせ。
「―――――消えたか、気配すら感じ取れないだと?」
「第一段階終了、どうやら行けるらしいな。」
「第一段階終了、どうやら行けるらしいな。」
前に学園祭で彼女のことを思い浮かべたら似たようなことが起きた。
だが今回片付けたのは自分自身でなく茜さん。
だが今回片付けたのは自分自身でなく茜さん。
俺から姿が見える辺りまだ不完全と言った所か……。
再現は30~40%が限界らしい。
再現は30~40%が限界らしい。
「次だ。」
次にトレースするのは他ならぬ父の思考。
なりかけとは言え異常者、そして戦闘している相手なのだ。
次の思考が解るだけでも優位に立てる。
なりかけとは言え異常者、そして戦闘している相手なのだ。
次の思考が解るだけでも優位に立てる。
「「妙なことしやがったなぁ、馬鹿息子」」
「「って、今度はなんだ?俺の台詞を完全に真似してるんじゃねえか。」」
「「俺の心を読んでるってのか?」」
「「って、今度はなんだ?俺の台詞を完全に真似してるんじゃねえか。」」
「「俺の心を読んでるってのか?」」
不思議と闘争心がわき上がる。
身体もなぜだか軽く感じた。
……なんだ、俺の父親が抱えてたのはこの程度の歪みだったのか。
身体もなぜだか軽く感じた。
……なんだ、俺の父親が抱えてたのはこの程度の歪みだったのか。
「行くぞ馬鹿親父。」
「来いよ馬鹿息子。」
「来いよ馬鹿息子。」
どうやら父の身体に毒が回ってきたらしい。
刀が鈍り始めた。
逆に俺はどんどん思考が研ぎ澄まされていく。
刀が鈍り始めた。
逆に俺はどんどん思考が研ぎ澄まされていく。
「なぁ馬鹿息子、なんで唯にこだわるんだ?」
「別に唯だけじゃねえよ、茜さんにもメルにもこだわっている。」
「ああ、ハーメルンの笛吹きか。わっかんねえなあ、そのこだわりが。」
「解って貰えるなんて思ってないよ。」
「それにしても邪魔くせえなあ、この毒。
あの嬢ちゃん余計なことしていきやがって……」
「別に唯だけじゃねえよ、茜さんにもメルにもこだわっている。」
「ああ、ハーメルンの笛吹きか。わっかんねえなあ、そのこだわりが。」
「解って貰えるなんて思ってないよ。」
「それにしても邪魔くせえなあ、この毒。
あの嬢ちゃん余計なことしていきやがって……」
打ち合いは何時の間にか俺の方が優勢になっていた。
ただ村正が命じるままに身体を動かせばいいのだから楽な話だ。
そう思って油断した瞬間、腹に蹴りを食らった。
地面との間に斥力を発生させて空中で体勢を整える。
何時の間にか父は刀を収めていた。
ただ村正が命じるままに身体を動かせばいいのだから楽な話だ。
そう思って油断した瞬間、腹に蹴りを食らった。
地面との間に斥力を発生させて空中で体勢を整える。
何時の間にか父は刀を収めていた。
「降参か?」
「馬鹿野郎、逆だ。この一撃で仕留める。娘につく悪い虫を追い払えないで何が父親だよ。」
「それを言ったら俺だって惚れた女も守れないで何が男だよって話だ。」
「馬鹿野郎、逆だ。この一撃で仕留める。娘につく悪い虫を追い払えないで何が父親だよ。」
「それを言ったら俺だって惚れた女も守れないで何が男だよって話だ。」
父は腰を深く落とす。
居合いの構えだろうか?
居合いの構えだろうか?
キィ――――ン
澄んだ音色が聞こえる。
危険を感じとっさに横っ飛びに飛んだ。
だが若干遅かったらしく今度は左手を駄目にされた。
何が起きたのか全く解らなかった。
危険を感じとっさに横っ飛びに飛んだ。
だが若干遅かったらしく今度は左手を駄目にされた。
何が起きたのか全く解らなかった。
「一撃、じゃないじゃねえか。息子相手には流石の剣も鈍ってるんじゃねえの?」
俺は引き寄せた正宗と左手を接合するとその手で自らの首を刎ねるジェスチャーをする。
「うるせえ、もう視界がかすんでるんだ。」
「なんじゃそりゃあ、それじゃあもう戦うのなんて止めようぜ。面倒くせえ。」
「何言ってんだよ、決着はまだじゃねえか。」
「今日は引き分けって事にしてさあ、もう帰ろうぜ?」
「嫌だよ。せっかく戦う理由は存分に出来たんだ。今戦わなきゃきっと俺はお前を許しちまう。」
「なんじゃそりゃあ、それじゃあもう戦うのなんて止めようぜ。面倒くせえ。」
「何言ってんだよ、決着はまだじゃねえか。」
「今日は引き分けって事にしてさあ、もう帰ろうぜ?」
「嫌だよ。せっかく戦う理由は存分に出来たんだ。今戦わなきゃきっと俺はお前を許しちまう。」
そう言い出すことは知っている。
彼は俺と戦いたくて戦いたくてしょうがないのだ。
彼は俺と戦いたくて戦いたくてしょうがないのだ。
「解った、唯のことは諦めるよ。」
だから俺は嘘を吐く。
すこしでも時間を稼いで毒が全身に回るのを待つ。
すこしでも時間を稼いで毒が全身に回るのを待つ。
「だからもう止めようぜ。やっぱ親と戦うのってやる気になれん。」
「残念ながら俺にはもうあの嬢ちゃんを斬るって目的が出来た。
解るだろ?
俺が今相当腹立ってるの。」
「そうか……。」
「そうだよ。だからちゃんと守れ。
あー、手が震えてきた。仕方ない、切り札切るか。」
「残念ながら俺にはもうあの嬢ちゃんを斬るって目的が出来た。
解るだろ?
俺が今相当腹立ってるの。」
「そうか……。」
「そうだよ。だからちゃんと守れ。
あー、手が震えてきた。仕方ない、切り札切るか。」
切り札はいつも自分自身、と父が言っていたのを思い出す。
父の左腕が輝いて中から刀のような物が出てきた。あれを使うのか?
期待してそれを待っていた俺の目の前で父の動きが突然止まる。
父の左腕が輝いて中から刀のような物が出てきた。あれを使うのか?
期待してそれを待っていた俺の目の前で父の動きが突然止まる。
「……おいおい、待てよ。これはどういうことだ?」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。
………………ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!
本当に、ごめんなさい。後でどんな罰でも受けるから!
だからこれだけは許してください!
即効性の致死毒喰らって身体がしびれるだけで済む相手なんて……明也さんが死んじゃうじゃないですか。」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。
………………ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!
本当に、ごめんなさい。後でどんな罰でも受けるから!
だからこれだけは許してください!
即効性の致死毒喰らって身体がしびれるだけで済む相手なんて……明也さんが死んじゃうじゃないですか。」
茜さんが震える手で俺の父親にナイフを突き刺していた。
全てを理解した父は叫び出した。
全てを理解した父は叫び出した。
「巫山戯るな、一度ならず二度までも水差しやがって……!
巫山戯るなよ、くそっ!
俺がどれだけこの勝負を待っていたか!
どれだけ我が子を打ち倒すことを望んだか!
どれだけ我が子に打ち倒されることを願ったか!
闘争への純粋な祈りを!願いを!希望を!
全部踏みにじりやがって!
絶対に、貴様だけは絶対に許さん!
“男の決闘”を“女”が汚すんじゃない!
巫山戯るなよ、くそっ!
俺がどれだけこの勝負を待っていたか!
どれだけ我が子を打ち倒すことを望んだか!
どれだけ我が子に打ち倒されることを願ったか!
闘争への純粋な祈りを!願いを!希望を!
全部踏みにじりやがって!
絶対に、貴様だけは絶対に許さん!
“男の決闘”を“女”が汚すんじゃない!
呪われろこの三流都市伝説がぁ!」
怒りのままに、力任せに振るわれる只の裏拳。
まずい、防御が間に合わない。茜さんも腰が抜けて動けなくなってる。
あの一撃は平素より身体を鍛え抜いた人間が後先考えずに身体のリミッターを外して打ち込む一撃だ。
当たればどんな物でも“根こそぎ”になるであろうそれはなんの奇跡か茜さんの目の前で止まった。
まずい、防御が間に合わない。茜さんも腰が抜けて動けなくなってる。
あの一撃は平素より身体を鍛え抜いた人間が後先考えずに身体のリミッターを外して打ち込む一撃だ。
当たればどんな物でも“根こそぎ”になるであろうそれはなんの奇跡か茜さんの目の前で止まった。
「あー……、毒で目が回って上手く動かない。五秒くらい振り抜くの遅れるなこれ。
この間に逃げられちゃったら大変だよなあー。」
この間に逃げられちゃったら大変だよなあー。」
見逃した?
俺の父ともあろう男が一度殺すと決めた相手を“殺し損ねる”でなく“見逃した”?
理由が気になるが気にしている暇は無い。
俺はとっさに茜さんを引力で自分の腕の中まで引っ張る。
茜さんは俺の腕の中で痛くて怖くて情け無くて悲しくて悔しくて泣いていた。
都市伝説の使いすぎで頭が割れるように痛い。右手もあと少しでとれそうだ。
でも急いで彼女を連れて逃げなくては……。
そう思った矢先、父がその場に倒れた。毒がついに全身に回ったらしい。
俺の父ともあろう男が一度殺すと決めた相手を“殺し損ねる”でなく“見逃した”?
理由が気になるが気にしている暇は無い。
俺はとっさに茜さんを引力で自分の腕の中まで引っ張る。
茜さんは俺の腕の中で痛くて怖くて情け無くて悲しくて悔しくて泣いていた。
都市伝説の使いすぎで頭が割れるように痛い。右手もあと少しでとれそうだ。
でも急いで彼女を連れて逃げなくては……。
そう思った矢先、父がその場に倒れた。毒がついに全身に回ったらしい。
「くそった……れ、もう身体が動かん。反則っぽいがお前の勝ちみたいだぜ馬鹿息子。」
「こんなの、勝ちじゃねえよ。最悪すぎるわ。」
「ごめんなさい……、死ねと言われれば死にます。何をされても文句は言えないですよね……。」
「良いから喋るな、肋骨も折れてるだろ?」
「都市伝説の身体だからこれくらいすぐに治るけど……でも。
ひっく……、ごめんなさい。私みたいな都市伝説が……。」
「謝らなくて良い、ありがとう。」
「おい馬鹿息子。そういえばお前最初『愛することが罪なのか?』って俺に聞いたな?」
「ああ、そういえばな。」
「それが愛することの罪だよ。」
「こんなの、勝ちじゃねえよ。最悪すぎるわ。」
「ごめんなさい……、死ねと言われれば死にます。何をされても文句は言えないですよね……。」
「良いから喋るな、肋骨も折れてるだろ?」
「都市伝説の身体だからこれくらいすぐに治るけど……でも。
ひっく……、ごめんなさい。私みたいな都市伝説が……。」
「謝らなくて良い、ありがとう。」
「おい馬鹿息子。そういえばお前最初『愛することが罪なのか?』って俺に聞いたな?」
「ああ、そういえばな。」
「それが愛することの罪だよ。」
俺は何も言い返せなかった。
ボロボロの身体で茜さんを担ぎ上げて歩き始める。
ボロボロの身体で茜さんを担ぎ上げて歩き始める。
「おい茜さんとやら、急に怒って済まなかったな。また遊びに来いよ。
あと……、あれだ。死ぬとか言うな、俺はあんたを理由もなく見逃した訳じゃないんだ。
毒については心配するな、俺を殺したければこの三倍はもってこいという物だ。」
あと……、あれだ。死ぬとか言うな、俺はあんたを理由もなく見逃した訳じゃないんだ。
毒については心配するな、俺を殺したければこの三倍はもってこいという物だ。」
早くも毒が抜けてきたらしい父はさっきまでの怒りを忘れたかのような穏やかな声を後ろからかけてくる。
相変わらず化け物じみていやがる。
それに返事もせずに彼女を背負って我が家の門を出ると、再び視界が歪み始めた。
どうやら俺の願いは叶えられたらしい。
なんだ、俺も親父と戦いたかっただけなのか。
そんなことにも気付かないなんて俺って馬鹿だなあ。
でもだとすると茜さんの行為は……、いや、それは追求しちゃ駄目だ。
風景が変わる、茜さんを背負ったまま俺は何時の間にか広いドームのような場所にいた。
【上田明也の探偵倶楽部45~血を湛え、涙を湛え、愛を湛え~fin】
相変わらず化け物じみていやがる。
それに返事もせずに彼女を背負って我が家の門を出ると、再び視界が歪み始めた。
どうやら俺の願いは叶えられたらしい。
なんだ、俺も親父と戦いたかっただけなのか。
そんなことにも気付かないなんて俺って馬鹿だなあ。
でもだとすると茜さんの行為は……、いや、それは追求しちゃ駄目だ。
風景が変わる、茜さんを背負ったまま俺は何時の間にか広いドームのような場所にいた。
【上田明也の探偵倶楽部45~血を湛え、涙を湛え、愛を湛え~fin】