…ハンニバルとの戦いが終わってから、一週間後
「組織」における事件の後始末は、急速に進んでいた
まるで、ハンニバル達の行っていた実験の痕跡を、根元から消し去ろうとしているかのように
そこに、「組織」が関わっていた事を、否定するかのように
ハンニバル達が使い続けていた研究所は、カモフラージュ用の工場や廃工場毎消え去った
更地となったそこには、新たな建物の建築予定の看板がたっており、それが「組織」が関連した建物なのか、それとも違うのか、判断はつかない
「組織」における事件の後始末は、急速に進んでいた
まるで、ハンニバル達の行っていた実験の痕跡を、根元から消し去ろうとしているかのように
そこに、「組織」が関わっていた事を、否定するかのように
ハンニバル達が使い続けていた研究所は、カモフラージュ用の工場や廃工場毎消え去った
更地となったそこには、新たな建物の建築予定の看板がたっており、それが「組織」が関連した建物なのか、それとも違うのか、判断はつかない
この街の、大多数の人間が、そこに忌まわしい研究所があったと言う事実すら認識しないまま、それは消し去られる
いつもの事だ
世界中あちらこちらで、何度も何度も、繰り返されてきた事
気にするような事じゃない
世界中あちらこちらで、何度も何度も、繰り返されてきた事
気にするような事じゃない
自分達は
そんな世界の裏を知っている
わかりきっているのだから
一々気にしていたら、キリがない
そんな世界の裏を知っている
わかりきっているのだから
一々気にしていたら、キリがない
「…そうか、あの女も無事だったか」
「あぁ。今はちゃんと仕事に復帰してるさ」
「あぁ。今はちゃんと仕事に復帰してるさ」
日中の公園
はしゃぎ回っている子供達の様子を、平和そうに眺めながら話している二人
傍目には、営業周りのサラリーマンと、講義をサボっている学生にでも見えるだろうか
宏也と、辰也だ
あの騒動から一週間、彼らもまた、彼らなりの日常へと戻りつつある
はしゃぎ回っている子供達の様子を、平和そうに眺めながら話している二人
傍目には、営業周りのサラリーマンと、講義をサボっている学生にでも見えるだろうか
宏也と、辰也だ
あの騒動から一週間、彼らもまた、彼らなりの日常へと戻りつつある
「巻き込んだんだ、詫びくらいしとけ」
「わかってるって……愛華は、気にしなくていい、って言ってくるんだけどな」
「わかってるって……愛華は、気にしなくていい、って言ってくるんだけどな」
苦笑する宏也
……まったく、彼女は相変わらずだ
少しは、償わせて欲しいものである
……まったく、彼女は相変わらずだ
少しは、償わせて欲しいものである
「…辰也、体の調子、どうだ?」
「……問題ねぇよ。俺は。お前こそ、賢者の石がなくなったんだろ?大丈夫なのか?」
「なぁに、むしろ、異物がなくなって、調子がいいくらいさ」
「……問題ねぇよ。俺は。お前こそ、賢者の石がなくなったんだろ?大丈夫なのか?」
「なぁに、むしろ、異物がなくなって、調子がいいくらいさ」
辰也の言葉に、笑って答える宏也
…事実、このところ、宏也はずいぶんと体調がいい
賢者の石と言う、契約してもいない都市伝説を体内に入れていた悪影響は、確かにあったのだ
それがなくなった今、そして、都市伝説と化してしまった事を、ほんの少しは受け入れられるようになった今……宏也の状態は、だいぶ安定していた
…事実、このところ、宏也はずいぶんと体調がいい
賢者の石と言う、契約してもいない都市伝説を体内に入れていた悪影響は、確かにあったのだ
それがなくなった今、そして、都市伝説と化してしまった事を、ほんの少しは受け入れられるようになった今……宏也の状態は、だいぶ安定していた
「…まだ、人間には戻らないのか?」
「色々準備があるんだってよ。まぁ、あちらさんにもあんまし負担かけたくねぇし。お嬢さんが研究手伝う事になったし、あちらさんが準備できた、っつったら、人間に戻らせてもらうさ」
「………そうさ」
「色々準備があるんだってよ。まぁ、あちらさんにもあんまし負担かけたくねぇし。お嬢さんが研究手伝う事になったし、あちらさんが準備できた、っつったら、人間に戻らせてもらうさ」
「………そうさ」
目の前の平和そうな光景に、普通の日常への憧れを感じながら
……ぼそり、辰也は宏也に尋ねる
……ぼそり、辰也は宏也に尋ねる
「…俺は……「広瀬 辰也」のままで、いいんだな?」
辰也の、その、かすかに不安をにじませた言葉に
くっくと笑い、宏也は答える
くっくと笑い、宏也は答える
「当たり前だろ…広瀬 辰也は、お前に譲ったからな。それが、お前の名前だ……俺にゃあ、「広瀬 宏也」って名前がある。だから、問題ないさ」
「………そう、か」
「………そう、か」
宏也の、答えに
ほっとしたような、どこか、申し訳なさそうな…そんな表情を浮かべる辰也
ほっとしたような、どこか、申し訳なさそうな…そんな表情を浮かべる辰也
自分が
宏也の本来の名前を、奪ってしまって
…宏也が、人間に戻る機会を奪ってしまっているのではないか?
………辰也は、それが不安だったのだろう
不安が杞憂であった事を知り、ほっとしているようだ
宏也の本来の名前を、奪ってしまって
…宏也が、人間に戻る機会を奪ってしまっているのではないか?
………辰也は、それが不安だったのだろう
不安が杞憂であった事を知り、ほっとしているようだ
「……お前は、まだ、「組織」に所属し続けるんだな?」
「あぁ……HNoの研究機関は全滅したが、他にも。連中のような事をしでかしかねない奴らは残ってるからな」
「あぁ……HNoの研究機関は全滅したが、他にも。連中のような事をしでかしかねない奴らは残ってるからな」
もう、二度と
自分達と同じような犠牲者を出さないように
…せめて、「組織」の内部から、睨みを利かせていきたい
それに…
自分達と同じような犠牲者を出さないように
…せめて、「組織」の内部から、睨みを利かせていきたい
それに…
「………あのお人好しが、どこまで「組織」を内側から変えられるか、見ていきたいしな」
「…あぁ、あいつか。D-No.962、大門 大樹…」
「そうそう、あいつあいつ………もし、あいつが「組織」を見限るようだったら、その時は、色々考える必要があるけどな」
「…あぁ、あいつか。D-No.962、大門 大樹…」
「そうそう、あいつあいつ………もし、あいつが「組織」を見限るようだったら、その時は、色々考える必要があるけどな」
あの、お人好しが、「組織」を変える事を諦めるほどに、「組織」がどうしようもなくなっていたら
…もはや、「組織」に見込みなど、ない
捨てさせてもらおう
その後どうするか、は…まぁ、その時だ
…もはや、「組織」に見込みなど、ない
捨てさせてもらおう
その後どうするか、は…まぁ、その時だ
「……さてっと、俺ぁそろそろ、仕事に戻るな」
「………お前が仕事?…明日は槍が降るな」
「俺だって、たまには真面目に仕事するっての…佳奈美と、ゆっくりしたいしな」
「………お前が仕事?…明日は槍が降るな」
「俺だって、たまには真面目に仕事するっての…佳奈美と、ゆっくりしたいしな」
そのための時間を確保する為にも
いつも、他人に仕事を押し付けてばかりというのも、若干は罪悪感を覚えなくもないから
愛する人との時間確保のためにも、たまには真面目に仕事をする
宏也の、そんな考えに
いつも、他人に仕事を押し付けてばかりというのも、若干は罪悪感を覚えなくもないから
愛する人との時間確保のためにも、たまには真面目に仕事をする
宏也の、そんな考えに
「…はいはい。のろけんじゃねぇよ」
やや呆れたように、そう言う辰也
寄りかかっていた自販機から離れ、歩き出しながら…続ける
寄りかかっていた自販機から離れ、歩き出しながら…続ける
「……きちんと、責任とって幸せにしておけよ。お前の変態趣味に付き合わせる事になるんだからな」
「うわ、酷ぇな……………幸せにするに、決まってるだろ」
「うわ、酷ぇな……………幸せにするに、決まってるだろ」
くっく、と笑って、宏也もベンチから立ち上がり
…辰也とは逆方向に歩きながら、告げる
…辰也とは逆方向に歩きながら、告げる
「お前こそ、ちゃんとお姫さんを幸せにしてやれよ?……史上最強の舅に、認められるようにな」
「……わかってるよ」
「……わかってるよ」
ぶっきらぼうな、照れ隠ししているような辰也の言葉に、楽しげに宏也は笑い
…そして、二人は公園を後にした
…そして、二人は公園を後にした
復讐を終えた復讐者達
自らを捕らえる過去から解放された彼らは
…今度は、未来に向かって歩み始める
自らを捕らえる過去から解放された彼らは
…今度は、未来に向かって歩み始める
大切な、誰よりも愛しい大切な存在との、未来に向かって
fin