「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 狂科学者と復讐者-18

最終更新:

guest01

- view
だれでも歓迎! 編集
 …ハンニバルとの戦いが終わってから、一週間後
 「組織」における事件の後始末は、急速に進んでいた
 まるで、ハンニバル達の行っていた実験の痕跡を、根元から消し去ろうとしているかのように
 そこに、「組織」が関わっていた事を、否定するかのように
 ハンニバル達が使い続けていた研究所は、カモフラージュ用の工場や廃工場毎消え去った
 更地となったそこには、新たな建物の建築予定の看板がたっており、それが「組織」が関連した建物なのか、それとも違うのか、判断はつかない

 この街の、大多数の人間が、そこに忌まわしい研究所があったと言う事実すら認識しないまま、それは消し去られる

 いつもの事だ
 世界中あちらこちらで、何度も何度も、繰り返されてきた事
 気にするような事じゃない


 自分達は
 そんな世界の裏を知っている
 わかりきっているのだから
 一々気にしていたら、キリがない



「…そうか、あの女も無事だったか」
「あぁ。今はちゃんと仕事に復帰してるさ」

 日中の公園
 はしゃぎ回っている子供達の様子を、平和そうに眺めながら話している二人
 傍目には、営業周りのサラリーマンと、講義をサボっている学生にでも見えるだろうか
 宏也と、辰也だ
 あの騒動から一週間、彼らもまた、彼らなりの日常へと戻りつつある

「巻き込んだんだ、詫びくらいしとけ」
「わかってるって……愛華は、気にしなくていい、って言ってくるんだけどな」

 苦笑する宏也
 ……まったく、彼女は相変わらずだ
 少しは、償わせて欲しいものである

「…辰也、体の調子、どうだ?」
「……問題ねぇよ。俺は。お前こそ、賢者の石がなくなったんだろ?大丈夫なのか?」
「なぁに、むしろ、異物がなくなって、調子がいいくらいさ」

 辰也の言葉に、笑って答える宏也
 …事実、このところ、宏也はずいぶんと体調がいい
 賢者の石と言う、契約してもいない都市伝説を体内に入れていた悪影響は、確かにあったのだ
 それがなくなった今、そして、都市伝説と化してしまった事を、ほんの少しは受け入れられるようになった今……宏也の状態は、だいぶ安定していた

「…まだ、人間には戻らないのか?」
「色々準備があるんだってよ。まぁ、あちらさんにもあんまし負担かけたくねぇし。お嬢さんが研究手伝う事になったし、あちらさんが準備できた、っつったら、人間に戻らせてもらうさ」
「………そうさ」

 目の前の平和そうな光景に、普通の日常への憧れを感じながら
 ……ぼそり、辰也は宏也に尋ねる

「…俺は……「広瀬 辰也」のままで、いいんだな?」

 辰也の、その、かすかに不安をにじませた言葉に
 くっくと笑い、宏也は答える

「当たり前だろ…広瀬 辰也は、お前に譲ったからな。それが、お前の名前だ……俺にゃあ、「広瀬 宏也」って名前がある。だから、問題ないさ」
「………そう、か」

 宏也の、答えに
 ほっとしたような、どこか、申し訳なさそうな…そんな表情を浮かべる辰也

 自分が
 宏也の本来の名前を、奪ってしまって
 …宏也が、人間に戻る機会を奪ってしまっているのではないか?
 ………辰也は、それが不安だったのだろう
 不安が杞憂であった事を知り、ほっとしているようだ

「……お前は、まだ、「組織」に所属し続けるんだな?」
「あぁ……HNoの研究機関は全滅したが、他にも。連中のような事をしでかしかねない奴らは残ってるからな」

 もう、二度と
 自分達と同じような犠牲者を出さないように
 …せめて、「組織」の内部から、睨みを利かせていきたい
 それに…

「………あのお人好しが、どこまで「組織」を内側から変えられるか、見ていきたいしな」
「…あぁ、あいつか。D-No.962、大門 大樹…」
「そうそう、あいつあいつ………もし、あいつが「組織」を見限るようだったら、その時は、色々考える必要があるけどな」

 あの、お人好しが、「組織」を変える事を諦めるほどに、「組織」がどうしようもなくなっていたら
 …もはや、「組織」に見込みなど、ない
 捨てさせてもらおう
 その後どうするか、は…まぁ、その時だ

「……さてっと、俺ぁそろそろ、仕事に戻るな」
「………お前が仕事?…明日は槍が降るな」
「俺だって、たまには真面目に仕事するっての…佳奈美と、ゆっくりしたいしな」

 そのための時間を確保する為にも
 いつも、他人に仕事を押し付けてばかりというのも、若干は罪悪感を覚えなくもないから
 愛する人との時間確保のためにも、たまには真面目に仕事をする
 宏也の、そんな考えに

「…はいはい。のろけんじゃねぇよ」

 やや呆れたように、そう言う辰也
 寄りかかっていた自販機から離れ、歩き出しながら…続ける

「……きちんと、責任とって幸せにしておけよ。お前の変態趣味に付き合わせる事になるんだからな」
「うわ、酷ぇな……………幸せにするに、決まってるだろ」

 くっく、と笑って、宏也もベンチから立ち上がり
 …辰也とは逆方向に歩きながら、告げる

「お前こそ、ちゃんとお姫さんを幸せにしてやれよ?……史上最強の舅に、認められるようにな」
「……わかってるよ」

 ぶっきらぼうな、照れ隠ししているような辰也の言葉に、楽しげに宏也は笑い
 …そして、二人は公園を後にした


 復讐を終えた復讐者達
 自らを捕らえる過去から解放された彼らは
 …今度は、未来に向かって歩み始める


 大切な、誰よりも愛しい大切な存在との、未来に向かって






fin




タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
記事メニュー
ウィキ募集バナー