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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - CoA編 ~その名は~-06

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CoA編 ~その名は~


その名は



騎士は『君の盾となろう』と誓った。

それは、男が女を口説く為の言葉でも、甘いささやきでもない。
それは、誓約だった。
それは、騎士としての誓約だった。

JiLLは、雷撃から騎士を守ってくれた。
ならば、彼も身を挺して守る。
そして、彼は必ず誓約を果たす。
たとえ、己の命を懸けようともだ。

彼はそういう人物であったから───

 



「身を挺して庇うか! ガハハハハ! "芳情の騎士"とは、よくいったものだ!」

豪快に声をあげて笑う神。
それは圧倒的な優位や驕りから出る笑いではない。

「芳しき情け! すなわち、他者を思い遣る心! これこそまさに芳情! まさに騎士!」

雷の司は
左腕を無残にも肉塊へと変えて尚、声ひとつあげず
冷静にいる騎士を褒め称える。

「騎士とは名ばかりの、二つ名ばかりが大層な子供らにも見せてやりたいものよ!」

この騎士は、今までに出逢い、屠ってきた高Lv.プレイヤー達とは違う。
真に心強き者との出逢いに、打ち震え、笑う。
その笑いは、この上ない喜びから出たものであった。

ウムボロドムは、ふと真顔に戻り、そして言う。

「情けを請うならば、この場は許そう。そして、二度とワシの邪魔をするな。」

神は、情けを請うものを執拗に追い立てることはない。
少なくとも、このウムボロドムはそうであった。

「俺は貴方を止めると言った。それが力ずくであろうともな。」

騎士は退かない。
これは騎士にとって、決して退くことの出来ぬ戦い。

「退かぬと言うか……よかろう! その片腕でワシを止めてみせよ!」

呆然としていたJiLLが
ふっさんの声が聞こえた為か、よろめきながらも立ち上がる。

「ふっさん……腕が……どうして……」

途切れ途切れに、ようやくといった態で声をかける。

「問題ないさ……君は、俺がどういう都市伝説か知っているだろう?」
「……ふっさん……そんな……貴方は……いえ、そう……」
「かえって動き易くなったくらいだよ。」

ふっさんは言いながら、無用になった双剣用の鞘を片腕のみで器用に外し、投げ棄てる。

「ええ、そう……貴方なら……貴方ならば問題ない……そうよ! 問題なんてあるはずもない!」

女の声に、瞳に、希望の光が灯る。

JiLLと話す、その間も騎士はウムボロドムを見据えていた。

「準備は良いな?」

ウムボロドムの問いに、騎士は無言で頷き返し
そして、語りかける。

「ウムボロドムよ……俺の名を知っているか?」
「何を言う……このワシを愚弄するつもりか!」

CoA世界
つまり、ゲーム内では、コンフィグを変えない限り、通常は名前が表示されている。
それは誰でも見ることの出来る名前と言えた。

「答えてみろ! 貴方は俺の名を知っているはずだ!!」

己が真の騎士と認めた男からの下らぬ問答に、神は苛立つ。

「ヌシの名は、"経津主"! 刀剣の神の名であろう!!」


その名は───

  ───経津主


フツヌシ──金髪の騎士が、"ふっさん"と呼ばれる所以だ。

神名の「フツ」は刀剣で、物がプッツリと断ち切られる様を表すもの……
刀剣の威力を神格化した神である。


「愚か者めが! 神の名を付けたくらいで、神になったつもりか!」

ふっさんは応えない。
ただ、無言で、腰に佩いた刀に、手をかけようと、動く。

"三振り目の剣"。
それは、"経津主"が自らこの世界へと持ち込んだ、数少ないモノのうちのひとつ。
それは、西洋風の姿をした騎士にはやや不釣合いな、西洋風というよりは和風拵えに近い刀であった。

踏みしめられていながら重さを感じさせない両脚、沈み込んで行く上体、扇を舞わせるかの様な右手。
その動作は、緩慢にして流麗。

ようやく刀の柄を握ったかの様だったが
握ったと思われた時には、既に柄から手を離していた。

まるで、日本舞踊の様なそれが終わったとき───

───刹那、ウムボロドムの左腕が消失する。

「ん!?」

左腕に違和感を感じたのか、視線を移すウムボロドム。
突如失ってしまった左腕の重量がバランスを崩させ、上体がぐらりと傾く。

斬られたという感覚だけが残り、腕は何処にもない。
あるべきはずのそれは、地にも落ちておらず
左肩から先が何もない事だけが、唯一理解出ることであった。

「悪いな……ウムボロドムよ……その腕、確かに貰い受けた。」
「……まさか……ヌシは本当に経津主神……いや、布都御魂剣だとでもいうのか!」

一瞬にして、神をも断ち斬る、その能力。

神の力とは、伝説の力とは、都市伝説の力とは……
鍛え、磨かれ、研ぎ澄まされた技をも超えたところにあるものだ。
受け入れ難いことであったとしても
事態を受け入れ、対処せねば、待つは死のみ。

「いや……俺はそんな大層な神や神器などではない……よくある、凡庸な都市伝説だ。」
「凡庸な都市伝説だと!?……バカな!!……では、ヌシは……ヌシは誰だというのだ!!」

 



ある都市伝説がいた。

その都市伝説の話を聞いた事のある者の、部屋へと、或いは夢へと現れ
投げかけられる問いに、正しく答えられなければ、身体の一部を奪うという都市伝説。
よく耳にすることがある、凡庸な都市伝説のひとつ。
彼は、その亜種であった。

皇国騎士団・サブマスターの計略により、密やかに語られたはずの……
だが、それ故に興味をそそり、語られ、噂となっていた都市伝説。

その話は、既にCoAの全ワールドに広まっていた事だろう。
事実、ウムボロドムはその都市伝説を耳にしていた。


『この世界での不審な動きや噂は全て耳にしておるわ!』


「そうか……ヌシは……ヌシの名は……」
「俺の名は……」

 



『それにしても……貴様、大層な名を付けたものだな。』

『つまるところ、ゲーム上での見た目や性別に大した意味は無いと言えるのかもしれない。』
『名もまた然り、大した意味は持たない。』
『互いに名を知っている仲であろうとも、本名で呼び合う事はまず無い。』

『先ほどもここで話して確認したが、ふっさんの話は既にいくつかのポイントへと流してある。』
『何、心配は要らない。奥の手というやつだよ。』

『JiLLの言葉に応えるかの様に、騎士は腰に吊るした三振りの剣のうち二振りを素早く抜いた。』

『いや、右の長剣に対し、左のマインゴーシュが出遅れる。』
『仕方ないわよ。久々の二刀なのでしょう?』

『ふっさんは、自身の所属するギルド"皇国騎士団"のサブマスターであるフクちゃんから』

『そんなことないわ、貴方はいつも時間をかけて説得してきたってこと……私、知ってるもの。』

『そして、彼は必ず誓約を果たす。』
『彼はそういう人物であったから───』

『左腕を無残にも肉塊へと変えて尚、声ひとつあげず冷静にいる騎士』
『問題ないさ……君は、俺がどういう都市伝説か知っているだろう?』
『かえって動き易くなったくらいだよ。』
『ふっさんは言いながら、無用になった双剣用の鞘を片腕のみで器用に外し、投げ棄てる。』
『ええ、そう……貴方なら……貴方ならば問題ない……そうよ、問題なんてあるはずもない!』

『"三振り目の剣"。』
『それは、"経津主"が自らこの世界へと持ち込んだ、数少ないモノのうちのひとつ。』
『それは、西洋風の姿をした騎士にはやや不釣合いな、西洋風というよりは和風拵えに近い刀であった。』

 




その名は───



「……"カシマ"……同胞からは、"隻腕のカシマ"と呼ばれている。」



両雄ともに左腕なく、隻腕なり。

片や、隻腕となりて、其の自由奪われ
片や、隻腕なれど、此れ無傷なり。

力量こそ、懸隔あれど
その心穏やかなるところ、また、懸隔ありて
勝敗の行方、見定まらず。


 【第一幕 閉幕】



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