CoA編 ~その名は~
激闘、雷の司
ついに対峙した、神と騎士たち。
だが、交渉は決裂し
それぞれの目的の為、それぞれの想いの為
彼らは戦うことを決意する。
だが、交渉は決裂し
それぞれの目的の為、それぞれの想いの為
彼らは戦うことを決意する。
「ウムボロドム……その行い、私情により止めさせてもらう!」
騎士が言葉を投げつけると、巨大な座からのそりと立ち上がり
巨大な戦鎚を両手持ちに構える神。
その威圧感は、大気を震わせるかの様だった。
巨大な戦鎚を両手持ちに構える神。
その威圧感は、大気を震わせるかの様だった。
騎士は双剣を抜き放ち、構え
JiLLは後方へと退きとクナイを握る。
JiLLは後方へと退きとクナイを握る。
最初に動いたのは騎士だった。
神との間合いを一気に縮め、長剣を素早く突き出す。
難なく、鎚の部分で受ける神。
神との間合いを一気に縮め、長剣を素早く突き出す。
難なく、鎚の部分で受ける神。
歩を退き、間を取る騎士へと、喰らいつく様に突進し巨大なハンマーを振るう。
斜めに振るわれた戦鎚が、大気に豪とした悲鳴を上げさせ
騎士へと迫るが、捉えられず、砕かれたのは石畳のみ。
斜めに振るわれた戦鎚が、大気に豪とした悲鳴を上げさせ
騎士へと迫るが、捉えられず、砕かれたのは石畳のみ。
その戦鎚の威力たるや、一撃を受ければ死に至るであろう事は明白であった。
だが、巨大が故に、脅威ではあるものの
同時に、その重みから隙が多くなるのもまた事実である。
隙あらばと狙っていた黒衣の女は、機を逃さずその手の刃を投げ放つ。
だが、巨大が故に、脅威ではあるものの
同時に、その重みから隙が多くなるのもまた事実である。
隙あらばと狙っていた黒衣の女は、機を逃さずその手の刃を投げ放つ。
「小賢しいわ!」
巨神は、その巨大な戦鎚を軽々と顔前へと引き戻す。
戦鎚に阻まれ、クナイは弾かれていた。
戦鎚に阻まれ、クナイは弾かれていた。
「何ですって!?」
驚きに声を上げるJiLL。
それもそのはずであった。
巨漢の神は、その鍛え上げられた筋力をもって戦鎚を引き戻したわけではなかったからだ。
巨大であったはずの戦鎚は
大きさを変え、その姿を小さくし、構え直された後、再び巨大な姿へと戻ったのである。
それもそのはずであった。
巨漢の神は、その鍛え上げられた筋力をもって戦鎚を引き戻したわけではなかったからだ。
巨大であったはずの戦鎚は
大きさを変え、その姿を小さくし、構え直された後、再び巨大な姿へと戻ったのである。
「はッ!!」
鋭い気迫と共に、戦鎚の下を、神の死角を突く様に、騎士の一撃が襲う。
だが、先ほどと同じく戦鎚を小さくし片腕で持ち、軽々と払いのける。
だが、先ほどと同じく戦鎚を小さくし片腕で持ち、軽々と払いのける。
「よい気迫だ、騎士よ! だが甘いわ!」
体躯が巨大故に、戦鎚が巨大故に、鈍重と思われたウムボロドム。
だが、自在に大きさを変える戦鎚……この存在が
既存概念をいとも容易く打ち砕いてしまったのである。
だが、自在に大きさを変える戦鎚……この存在が
既存概念をいとも容易く打ち砕いてしまったのである。
この神に隙は──ない。
「これが……この世界の……神か。」
騎士の口から、知らず言葉が漏れる。
分かっていたはずだった。
ここまでの道程で学習していたはずだった。
『現実世界とは考え方を変えねば対処しきれない』と。
だがそれは、言うほど簡単なことではない。
ここまでの道程で学習していたはずだった。
『現実世界とは考え方を変えねば対処しきれない』と。
だがそれは、言うほど簡単なことではない。
都市伝説の力とは、伝説の力とは、神の力とは……
鍛え、磨かれ、研ぎ澄まされた技をも超えたところにあるものだ。
受け入れ難いことであったとしても
事態を受け入れ、対処せねば、待つは死のみ。
鍛え、磨かれ、研ぎ澄まされた技をも超えたところにあるものだ。
受け入れ難いことであったとしても
事態を受け入れ、対処せねば、待つは死のみ。
「ふっさん! 弾いて!」
沈み込んでいく心を、JiLLの言葉が打ち立たせる。
投擲された幾条もの光。
投擲された幾条もの光。
『弾いて』
その言葉は、不思議と受け入れられていた。
騎士の思考回路に新たな経路が追加される。
騎士の思考回路に新たな経路が追加される。
左手に持つ、"マインゴーシュ"。
"パリーイングダガー"と呼ばれる"受け流し用の短剣"は
騎士の横を通り過ぎていくはずの光を受け流し、次々と軌道を変えていく。
"パリーイングダガー"と呼ばれる"受け流し用の短剣"は
騎士の横を通り過ぎていくはずの光を受け流し、次々と軌道を変えていく。
直前で軌道の変えられたクナイには流石に戦鎚でも対応しきれず、下がる巨漢。
大部分は戦鎚で阻まれたものの、確実にその身へと傷を負わせていた。
大部分は戦鎚で阻まれたものの、確実にその身へと傷を負わせていた。
クナイの軌道を"見切り"、更には、勢いを殺がぬ為の接点を見抜く"心眼"
そして、それを正確に、素早く行う為の"運動"
それらを実現しうる卓越した技能を、騎士は持っていた。
そして、それを正確に、素早く行う為の"運動"
それらを実現しうる卓越した技能を、騎士は持っていた。
だが、それを可能と判断した"知力"、奇異な戦術を発想し得る"感覚"
そして、騎士が順番に受け流すことが出来得る様にと行われた"投擲"
彼女の技能もまた秀でたものであったと言えよう。
そして、騎士が順番に受け流すことが出来得る様にと行われた"投擲"
彼女の技能もまた秀でたものであったと言えよう。
「やるではないか、小娘。」
ウムボロドムのその言葉は、先だって行われた会話──
『生きて帰る』と言った彼女の言葉が、虚勢からだけではないと認めたものであった。
『生きて帰る』と言った彼女の言葉が、虚勢からだけではないと認めたものであった。
少しは骨のあるプレイヤーに出逢えた喜びからか、神は試すかの様に、続けて言う。
「では、これはどうだ?」
一回り小さくなった戦鎚を頭上へと掲げる。
身構える騎士。
身構える騎士。
辺りは次第に蔭り、暗雲が立ち込めていく。
「……雲?!」
JiLLはいぶかしむ。
自分達は"自然にできる雲"よりも高い標高にまで登って来たはずであった。
眼前には、"雷の司"と呼ばれる赤髭の巨漢。
大きさを自在に変えることのできる戦鎚。
自分達は"自然にできる雲"よりも高い標高にまで登って来たはずであった。
眼前には、"雷の司"と呼ばれる赤髭の巨漢。
大きさを自在に変えることのできる戦鎚。
瞬間、理解する。
彼女にもう少し"道具"の知識、或いは"鑑定"する目があれば
戦鎚を見ただけで気付くことが出来たかもしれない。
だが、持ち得ぬことを嘆くには遅過ぎた。
戦鎚を見ただけで気付くことが出来たかもしれない。
だが、持ち得ぬことを嘆くには遅過ぎた。
それは伝説上の神器。
雷神トールの持つとされる北欧神話中最強のウォーハンマー。
雷神トールの持つとされる北欧神話中最強のウォーハンマー。
"ミョルニル"
「嘘でしょ……じゃあ、雷撃がくるっていうの!?」
だが、言ったところで、注意を向けたところで
雷撃をどう避けろと言うのか。
JiLLは絶望的な焦燥感に駆り立てられながらも動いていた。
クナイを地へと突き立て、数歩下がり、雷雲を睨む。
雷撃をどう避けろと言うのか。
JiLLは絶望的な焦燥感に駆り立てられながらも動いていた。
クナイを地へと突き立て、数歩下がり、雷雲を睨む。
暗雲はゴロゴロと不機嫌そうに鳴き始めている。
騎士の遥か頭上へとクナイを投げ
次いで二本、三本と立て続けに投げ続ける。
投擲されたそれらは、上空に破線を描きだしていた。
次いで二本、三本と立て続けに投げ続ける。
投擲されたそれらは、上空に破線を描きだしていた。
閃光、そして追従する様に轟音。
空気を割り裂いて、稲妻が走る。
直下へと落ちようとする雷撃を、クナイが強く誘い、更に次のクナイへと跳躍させていく。
そして最後には、JiLLの数歩前にある"アース"へと流れ込んでいた。
しかし、思い描いた通りの結果が現出するも
着雷の衝撃波がJiLLを撃ちのめす。
直下へと落ちようとする雷撃を、クナイが強く誘い、更に次のクナイへと跳躍させていく。
そして最後には、JiLLの数歩前にある"アース"へと流れ込んでいた。
しかし、思い描いた通りの結果が現出するも
着雷の衝撃波がJiLLを撃ちのめす。
「JiLL!!」
騎士が左後ろへと振り向くと、そこには倒れ伏した黒衣の女。
「余所見をする暇を与えてやっている事に、感謝するのだな!」
ウムボロドムは叫ぶと、招雷時よりも更に一回り小さくしたミョルニルを振りかぶる。
騎士は神へと視線を戻し、その眼を射ぬかんとするが視線はぶつからない。
神の視線は、騎士ではなく、女へと向けられていたからだ。
騎士は神へと視線を戻し、その眼を射ぬかんとするが視線はぶつからない。
神の視線は、騎士ではなく、女へと向けられていたからだ。
「何?!」
巨体がねじ上げられ、引き絞られ
極限まで縮められた筋肉と、極限まで伸ばされた筋肉が──遂にはその立場を逆転させ
投げられるミョルニル。
破壊と死をもたらす一撃が放たれていた。
極限まで縮められた筋肉と、極限まで伸ばされた筋肉が──遂にはその立場を逆転させ
投げられるミョルニル。
破壊と死をもたらす一撃が放たれていた。
交差された二振りの剣が、その進路を阻まんと飛び込む。
「ぉおぉぉぉぉぉぉ!!」
激突する戦鎚と剣。
時間が引き延ばされる様な感覚。
最初は小さなものだった。
僅かな歪みが出来ていた。
次いで広がっていく。
稲妻が空を走るが如く。
最初は小さなものだった。
僅かな歪みが出来ていた。
次いで広がっていく。
稲妻が空を走るが如く。
長剣の刀身を、亀裂が
短剣の刀身を、亀裂が
短剣の刀身を、亀裂が
そして遂には、折れ、砕けていた。
朦朧とした意識を振り払おうと、JiLLは頭を振る。
"起きろ"と頭を叩かれた気がしたからだった。
彼女の愛した騎士に、起こされている気がしたのだ。
彼女の愛した騎士に、起こされている気がしたのだ。
優しい彼にしては珍しく、強く叩いてくるものだと思いながらも、眼を開く。
そこには騎士の手があった。
それは、紛れもなく騎士の腕。
否、先ほどまでは騎士の腕だったもの。
今はただの肉塊にすぎない。
それは、紛れもなく騎士の腕。
否、先ほどまでは騎士の腕だったもの。
今はただの肉塊にすぎない。
双剣をむさぼり尽して尚、戦鎚は止まらず
騎士の左腕へも食指を伸ばしていたのであった。
無残にも喰らい尽くされた腕。
ミョルニルは、騎士の左腕を喰らい腹が満たされたのか
ようやく、その伝承通り持ち主の下へとその身を戻す。
騎士の左腕へも食指を伸ばしていたのであった。
無残にも喰らい尽くされた腕。
ミョルニルは、騎士の左腕を喰らい腹が満たされたのか
ようやく、その伝承通り持ち主の下へとその身を戻す。
そう……JiLLの頭を叩いたのは、騎士の千切れ飛んだ腕だったのである。
事態を把握した時、女は叫んでいた。
「───────ッ!!」
それは、声にならない悲痛な叫びだった。