「…さて」
少女、雨村 在処は、今、脱衣所の前にいた
ここは、獄門寺家
今現在、この家の長男であり後継ぎ筆頭である獄門寺 龍一が入浴中である
ここは、獄門寺家
今現在、この家の長男であり後継ぎ筆頭である獄門寺 龍一が入浴中である
「………」
脱衣所を前に、立ち止まる在処
…やがて、意を決したように、脱衣所の扉に向かって手を伸ばし
…やがて、意を決したように、脱衣所の扉に向かって手を伸ばし
どすどすどすどすどすっ!!!
…その足元に、大量の十字型の手裏剣が、突き刺さった
角度的に、恐らくは天井から射出されたもの
角度的に、恐らくは天井から射出されたもの
「………」
恐る恐る、天井を見上げると
天井板がちょっぴり外れていて、そこから、漆黒の髪をして、白い蛇を体に巻きつけた美女の姿が見えて
ホラー一歩手前の状況に、思考が停止しかける
天井板がちょっぴり外れていて、そこから、漆黒の髪をして、白い蛇を体に巻きつけた美女の姿が見えて
ホラー一歩手前の状況に、思考が停止しかける
がらり、と
そうしているうちに、脱衣所の扉が開いて
そうしているうちに、脱衣所の扉が開いて
「…?雨村、何をしているんだ?」
「蛇城おねーさんも、何してんの?」
「蛇城おねーさんも、何してんの?」
と
風呂上りの龍一と海造に、そう問い掛けられてしまったのだった
風呂上りの龍一と海造に、そう問い掛けられてしまったのだった
「…先輩の入浴中に浴室に突入大作戦が失敗に終わって残念です」
「妙な作戦を立てるな」
「妙な作戦を立てるな」
海造の髪をタオルで拭いてやりつつ、雨村に突っ込みを入れておく
妙な計画を立てるな、妙な計画を
妙な計画を立てるな、妙な計画を
「いえ、ここで既成事実をですね」
「けーやくしゃ、きせーじじつってなーに??」
「…花子さんは、まだ知らなくていい」
「けーやくしゃ、きせーじじつってなーに??」
「…花子さんは、まだ知らなくていい」
雨村の発言をスルーしつつ、花子さんにはそう言っておく
…まったく、こいつは
年頃の女子が、そう言う事を言うもんじゃないだろう
真樹が読んでる本とか見ているアニメじゃないのだから
…まったく、こいつは
年頃の女子が、そう言う事を言うもんじゃないだろう
真樹が読んでる本とか見ているアニメじゃないのだから
「何、雨村ねーちゃん、若の事好きなの?」
「……海造」
「まぁ、ぶっちゃけて言えば好きです」
「そうか」
「……海造」
「まぁ、ぶっちゃけて言えば好きです」
「そうか」
海造をたしなめつつ、雨村の発言はスルーしておく
不満そうな表情を浮かべた雨村に、一応、続けてやる
不満そうな表情を浮かべた雨村に、一応、続けてやる
「…そう言う冗談はやめておけ。本気にする奴もいるだろうから」
「冗談じゃないんですけど」
「そう言う言葉をかける相手は、本当に心から愛した相手だけにするべきだ」
「冗談じゃないんですけど」
「そう言う言葉をかける相手は、本当に心から愛した相手だけにするべきだ」
俺の言葉に、みー?と花子さんが首を傾げてきた
難しそうな顔をしている
難しそうな顔をしている
「私、けーやくしゃの事好きだよ?」
「それは、恋愛対象としてではないだろう」
「うん」
「それは、恋愛対象としてではないだろう」
「うん」
あっさりと、頷いてきた花子さん
そう、花子さんの言うような好き、はいいのだ
だが、雨村の言う好きは、色恋沙汰での事だ
ならば、軽々しく「好き」などというべきではないのだ
そう、花子さんの言うような好き、はいいのだ
だが、雨村の言う好きは、色恋沙汰での事だ
ならば、軽々しく「好き」などというべきではないのだ
「……私は、先輩の傍にいたいです」
「学校で傍にいるだろう」
「学校で傍にいるだろう」
授業以外の時だが
「そう言う意味ではなくて…」
「じゃあ、盃交わせば?」
「じゃあ、盃交わせば?」
あっさりと、そう発言した海造
…ちょっと待て
…ちょっと待て
「……海造。雨村はカタギの人間だぞ」
「都市伝説契約者だったり、迷惑顧みず常識ガン無視して爆破しまくる時点で、微妙にカタギじゃないじゃん」
「先輩、この子、年上に対する礼儀がなってないと思います」
「それは常々俺もそう思うから注意するが、今回の海造の発言に関しては、若干フォローしきれない部分もある」
「そんなっ!?」
「都市伝説契約者だったり、迷惑顧みず常識ガン無視して爆破しまくる時点で、微妙にカタギじゃないじゃん」
「先輩、この子、年上に対する礼儀がなってないと思います」
「それは常々俺もそう思うから注意するが、今回の海造の発言に関しては、若干フォローしきれない部分もある」
「そんなっ!?」
落ち込む雨村を、花子さんがみーみーと頭を撫でて慰めている
相変わらずいい子だ
そして、今回の海造の発言に関しては、フォローが難しいから困る
相変わらずいい子だ
そして、今回の海造の発言に関しては、フォローが難しいから困る
「…ところで、先輩。盃を交わすって何ですか?」
「………お前は、知らなくてもいい。こっちの世界に足を突っ込んでくる必要はない」
「でも…それをすれば、先輩の傍にいられますか?」
「………お前は、知らなくてもいい。こっちの世界に足を突っ込んでくる必要はない」
「でも…それをすれば、先輩の傍にいられますか?」
…何故、俺などの傍にいようとするのか
理解に、苦しむ
俺にそんな価値などあるはずもないと言うのに
理解に、苦しむ
俺にそんな価値などあるはずもないと言うのに
「………だが、それは俺の部下になると言う事だ」
「…部下、ですか?」
「その命ある限り。その生涯を若にささげる。全ては若の為に……僕とか花子さんとか、蛇城のねーちゃんは、もうやったよ?」
「…部下、ですか?」
「その命ある限り。その生涯を若にささげる。全ては若の為に……僕とか花子さんとか、蛇城のねーちゃんは、もうやったよ?」
……そうなのだ
一応、断ったのだが…三人に押し切られる形で、俺は三人と盃を交わしている
翼さんと、義兄弟の盃を交わした事がバレたのが不味かったといえる
特に、まだ小学生の海造が…俺などを主として選ぶなど、まだ早いと思うのだが
だが、海造は俺を選んでしまった、その意志の強さを、俺は跳ね除けられなかった
一応、断ったのだが…三人に押し切られる形で、俺は三人と盃を交わしている
翼さんと、義兄弟の盃を交わした事がバレたのが不味かったといえる
特に、まだ小学生の海造が…俺などを主として選ぶなど、まだ早いと思うのだが
だが、海造は俺を選んでしまった、その意志の強さを、俺は跳ね除けられなかった
「……それならば」
そんな、自分の意志の弱さが
俺は、改めて嫌になる
俺は、改めて嫌になる
「なおさら、です。先輩、お願いします」
「…………」
「…………」
いつも、冗談めかしている癖に
…こう言う時だけ、真剣になるな
…こう言う時だけ、真剣になるな
「………」
「若?」
「若?」
立ち上がる
海造が、首を傾げてきた
海造が、首を傾げてきた
「……準備をしてくる。酒でやる訳にもいかないから、代わりの物を持ってくる………少し、待っていろ」
そう告げて、キッチンに向かう
家族や組員に見つからないよう、できる限り、足音は忍ばせていく
家族や組員に見つからないよう、できる限り、足音は忍ばせていく
「………若、よろしいのですか?」
天井裏から、蛇城さんが声をかけてきた
ため息をつきながら、答えてやる
ため息をつきながら、答えてやる
「…居場所がない、と思い込んでいる奴だが………あそこで見捨てたら、それを壊してしまう気がする」
「………そうですね………」
「………そうですね………」
それ以上は、蛇城さんは何も言ってこなかった
…中央高校に通うようになるまで、雨村がどんな人生を送ってきたのか、俺は知らない
ただ、翼さんが異様に雨村を嫌っている様子と、雨村がそれに関する事を一切覚えていない事実から…………ある程度の予測はつく
…中央高校に通うようになるまで、雨村がどんな人生を送ってきたのか、俺は知らない
ただ、翼さんが異様に雨村を嫌っている様子と、雨村がそれに関する事を一切覚えていない事実から…………ある程度の予測はつく
いつかは、雨村が向かい合うべき問題であり
そして、罪を犯したというのなら、それを償うべきなのだろう
そして、罪を犯したというのなら、それを償うべきなのだろう
誰かの大切な人を、勘違いから奪おうとしたのならば、それは不幸でもあるが、罪でもあり、償うべき事だと思う
せめて、謝罪だけでもするべきだと
…それが、誰かの陰謀によるものだとしても、間違いは正すべきだ
せめて、謝罪だけでもするべきだと
…それが、誰かの陰謀によるものだとしても、間違いは正すべきだ
その時
雨村が、その責任の重圧に押しつぶされそうになったならば
……その背中を支えてやるだけは、やってやりたい
雨村が、その責任の重圧に押しつぶされそうになったならば
……その背中を支えてやるだけは、やってやりたい
「………俺に、そんな資格なんて、ないのにな」
かつて、護ると言っておきながら護れなかった俺に
怖がらせないと誓いながら、怖がらせてしまった俺に
そんな資格などあるはずもない
誰かの特別になる資格など、俺は永遠に存在しない
怖がらせないと誓いながら、怖がらせてしまった俺に
そんな資格などあるはずもない
誰かの特別になる資格など、俺は永遠に存在しない
真に雨村を支えるべき存在は、恐らく俺ではないだろう
…だが、今、雨村が支えてくれる存在を欲するならば
真に彼女を支える存在が現れるまで、その代理を務める程度は、許されるだろうか?
…だが、今、雨村が支えてくれる存在を欲するならば
真に彼女を支える存在が現れるまで、その代理を務める程度は、許されるだろうか?
身勝手な考えに、俺は自嘲するしかなかったのだった
to be … ?