……さて
無事、樹と誠の師弟喧嘩は、終了した
街の損壊具合的にさっぱり無事じゃないし、強制終了させられたのだ、と言う事実はさておき
無事、樹と誠の師弟喧嘩は、終了した
街の損壊具合的にさっぱり無事じゃないし、強制終了させられたのだ、と言う事実はさておき
「ま、とりあえず。うっかり街を壊したのはさておき」
「さておいていい問題じゃない」
「さておいていい問題じゃない」
うん、さておき、だ
弟子の突込みを、樹は華麗にスルーする
弟子の突込みを、樹は華麗にスルーする
「大きくなったな、カイン」
わしゃわしゃと、やや乱暴に、その一番弟子…カインの頭をなでる
18年ぶりの再会
しかし、それでもはっきりとカインだとわかるほどに、面影がはっきりとしていた
18年ぶりの再会
しかし、それでもはっきりとカインだとわかるほどに、面影がはっきりとしていた
「イツキ、俺はもう、今年で22歳だぞ」
子供のような扱いに、カインはやや、ふてくされたような表情を浮かべる
こんな様子も、昔と変わらない
あの頃のまま、純粋なままに育ったのだろう
それを、樹ははっきりと感じ取った
こんな様子も、昔と変わらない
あの頃のまま、純粋なままに育ったのだろう
それを、樹ははっきりと感じ取った
「まぁ、気にするなっての。俺から見りゃあ、お前くらいの歳なんて、まだまだお子様よ」
「……俺と、同じくらいの外見の癖に……と、言うか、どうして樹は18年前から、外見がまったく変わっていないんだ」
「ほら、お前ら西洋人から見て、日本人って若く見えるんだろ?そのせいだよ」
「…いや、多分、そう言う問題じゃないと思うんだが…」
「……俺と、同じくらいの外見の癖に……と、言うか、どうして樹は18年前から、外見がまったく変わっていないんだ」
「ほら、お前ら西洋人から見て、日本人って若く見えるんだろ?そのせいだよ」
「…いや、多分、そう言う問題じゃないと思うんだが…」
納得いっていない様子のカインに、樹はくっくと笑ってみせる
…あぁ、どこまでも、昔と変わらない
あの子供の頃のまま、ただ大きくなったようにも見える
…あぁ、どこまでも、昔と変わらない
あの子供の頃のまま、ただ大きくなったようにも見える
「しっかし、お前、まさか日本に来てたとはな」
「あぁ、少し、仕事で」
「……仕事、ねぇ」
「あぁ、少し、仕事で」
「……仕事、ねぇ」
ちらり、カインの胸元に視線をやる樹
…カインの胸元では、銀のロザリオが揺れていた
…カインの胸元では、銀のロザリオが揺れていた
どこかで、見た事があるようなデザインのロザリオだ
……かすかに、不吉な予感を覚える
……かすかに、不吉な予感を覚える
「…なぁ、マリアちゃん、元気か?」
その
樹の、問いかけに
カインの体が………小さく、跳ねた
樹の、問いかけに
カインの体が………小さく、跳ねた
視線をそらされ、樹はいぶかしげな表情を浮かべる
…まさか
…まさか
「おい、カイン、まさかだが…」
「……姉さん、は……………死んだ。もう、この世には……いない」
「………っ」
「……姉さん、は……………死んだ。もう、この世には……いない」
「………っ」
まさか
彼女が?
彼女が?
樹の記憶の中で、いつも笑っていた、可愛らしい少女
彼女が……死んだ?
彼女が……死んだ?
「おい、どう言う事だっ!?」
「…姉さんは……10年前に、俺よりも先に孤児院を出て………何が起こったのかは、知らない。だが、俺がそれを知った時には……もう、埋葬されていた」
「…姉さんは……10年前に、俺よりも先に孤児院を出て………何が起こったのかは、知らない。だが、俺がそれを知った時には……もう、埋葬されていた」
俯くカインの表情は、声は……暗い
……当たり前だろう
マリア・ディーフェンベーカーは、カインのたった一人の家族だった
それを失って……しかし、カインはその理由すらも、知らされていないのだ
マリア・ディーフェンベーカーは、カインのたった一人の家族だった
それを失って……しかし、カインはその理由すらも、知らされていないのだ
悲しみが、カインを支配している
それを、樹ははっきりと理解した
それを、樹ははっきりと理解した
「…悪ぃ。辛い事、思い出させたな」
「……イツキが謝る必要は、ない。イツキは、姉さんの事も、心配してくれたんだろう?」
「……イツキが謝る必要は、ない。イツキは、姉さんの事も、心配してくれたんだろう?」
樹を見上げてくるカイン
…かすかに、笑顔を浮かべてくれてはいる
だが、無理をしているのが、はっきりと伝わってきてしまう
…かすかに、笑顔を浮かべてくれてはいる
だが、無理をしているのが、はっきりと伝わってきてしまう
「姉さんも、イツキの事を心配していた。どこかで行き倒れてはいないか、とか、のたれ死んではいないか、とか」
「…そうか……優しい子だったからな、マリアちゃん」
「…そうか……優しい子だったからな、マリアちゃん」
やや美化された想い出を振り返る樹
今度、ヨーロッパに行った時にでも…墓参り、させてもらおう
今度、ヨーロッパに行った時にでも…墓参り、させてもらおう
「カイン」
「…?」
「俺ぁ、しばらく、この学校町に居る。何かあったら、力になってやるから……ちゃんと、誰かに頼れよ?」
「…?」
「俺ぁ、しばらく、この学校町に居る。何かあったら、力になってやるから……ちゃんと、誰かに頼れよ?」
樹の、その言葉に
かすかに笑みを浮かべたまま、頷いたカイン
かすかに笑みを浮かべたまま、頷いたカイン
しかし、その笑顔は、やはり、無理をしているもので
……そして、ふと目を離せば、その瞬間消えてしまいそうなほどに、儚いものだった
……そして、ふと目を離せば、その瞬間消えてしまいそうなほどに、儚いものだった
帰っていくカインの、後姿を見送る
…ぱたぱたと小鳥が飛んで来て、カインの肩に止まっているのが、見えた
…ぱたぱたと小鳥が飛んで来て、カインの肩に止まっているのが、見えた
「…鳥ってのは、鳥目なんじゃなかったか?」
普通の小鳥じゃないのだろうか?
……まったく、厄介な事になっている
……まったく、厄介な事になっている
「……丁の奴に、マリアちゃんの死因を調査…………いや、そこまでやらせる訳にはいかねぇか……嫌な予感がする」
思い出せ
カインが下げていた、銀のロザリオの事を
あれは、どこかで見た事がある
そう、確か、ヨーロッパに古くからある、都市伝説組織の…
カインが下げていた、銀のロザリオの事を
あれは、どこかで見た事がある
そう、確か、ヨーロッパに古くからある、都市伝説組織の…
「………「教会」?」
己の弟子が、あそこの一員になっているのか?
推定できるその事実に……樹はただ、不吉な予感だけを覚えるのだった
推定できるその事実に……樹はただ、不吉な予感だけを覚えるのだった
to be … ?