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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - プレダトリー・カウアード-19

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uranaishi

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プレダトリー・カウアード 日常編 19


 コツコツと、無人の工場に足音が響く。
 この場にいるのは、人外が三体。
 人面犬、対抗都市伝説、そして――――吸血鬼。
 あの時の吸血鬼ではない。あいつは僕が殺し、そして息絶えるのをこの目で見た。
 何より、相手から流れ出る「マナ」の感じが違う。
 では、この吸血鬼は…………?

「なあ、少年」

 吸血鬼がその口を開く。
 歩みは依然として止まる気配を見せない。
 のろく、されど着実に僕へと近づくソレ。
 それでも僕は、その場から一歩たりとも動けなかった。
 動作はこの場を壊してしまう。吸血鬼が現れる事で奇妙な膠着へと陥った、場を。
 ただそれも、あくまで少しの「先延ばし」にしかならないだろう。
 吸血鬼は既にその弁を振るい始めた。
 後はただ――――――「戦」ののろしが上がるのを、待つばかり。

 ――――そして

「お前は、復讐が愚だと、そう思うか?」

 声と同時、吸血鬼がその歩みを疾駆へと変える。

 ――――「開戦」だ。

 吸血鬼からマナが迸る。火の粉が炎へと転化する。
 青のオーラ。その発現が意味するのは「本気」。
 「接続」した目が、マナの流れを捉える。
 力の道は一直線。対象は――――僕。

(「復讐」って…………?)

 心の中で猜疑を漏らし、流れから身を外すべく行動を始める。
 マナの流れは動線を表す。
 本人の意図するしないに関わらず、吸血鬼が進む、あるいは攻撃する方向に先んじる形で、マナは放出される。
 つまり僕の目に映るマナの奔流は、そのままイコールで吸血鬼の進路を示しているのだ。
 だから、その流れの範囲外にさえ出れば、吸血鬼の拳が僕を打ち抜くことは無い。
 ――――ただし、あくまで「逃れられれば」。

 ゴッ! というにぶい打撃音と共に、僕の身体を衝撃が襲う。
 殴られた箇所は肩の付け根。幸い以前のように無様に吹き飛ぶ事はなかったけれど、それでも痛みで脳が意識を手放しかける。
 ……速い。「あいつ」より、ずっと。
 たたらを踏むついでに、吸血鬼との距離を稼ぐ。
 拳のめり込んでいた肩を念のために確認すると、既に青いマナがその傷の修復を始めていた。
 少しだけ安心する。どうやら復元能力は今日も好調らしい。
 …………でも。

(対抗都市伝説、「復元」するのにも、マナは使うんだよね?)

 再び現出するマナの道。それを今度は身体を投げ出すように右へと転がる事で逃れながら、対抗都市伝説へと疑問をぶつける。

≪そうだ。主が彼奴と接触する瞬間、主は彼奴から微量のマナを奪い、それを基に身体を再構成している≫
(さっきの肩の再生にかかったマナと、僕が吸収したマナの差は?)
≪無。それは等値であり――――残念ではあるが、種の『限界』も、そこにある≫
(そっか。了解)

 短い対話を追え、僕は体勢を立て直す。
 逃げに徹したお陰で、受けた掌打は先程の一撃のみ。
 さらに僕と吸血鬼の間には、心もとないながらも若干の距離が生まれていた。

 今の内に、対抗都市伝説との会話を整理する。
 念頭に置くべきなのは、僕の取り込めるマナの総量に限界があるという事。
 それを越えてのマナの摂取は、僕の身体を逆に蝕み、あの時同様の意識喪失、最悪の場合は死をもたらす。
 あくまで堅実にいくのであれば、その限界を無視することは許されない。
 そして次に考えるべきは、先程再生した肩レベルの傷が、僕にとっての「限り」であるということだ。
 今言ったように、僕の吸収できるマナには限界がある。
 その限界ギリギリまでマナを喰らい、それら全てを再生に当てた時の限度が――――先の肩。
 つまり、僕が何のリスクも負わずに治療できるのは、打撲か、軽度の骨折まで。
 それ以上はそれ相応のリスクを背負う事になる。

 …………最悪だ。
 「あいつ」と戦った時のような無茶はもう出来ない。
 尚且つきついのは、たとえ再生の問題を乗り越えた所で、目の前の吸血鬼を倒すのが至難の業だという事だ。
 僕には限界がある。
 そして「あいつ」を倒したとき、僕は限界を超え、結果入院する事態となった。
 対峙した感じ、この吸血鬼は「あいつ」と同じ、あるいはそれ以上のマナを保有している。
 もしこの吸血鬼を殺したいのなら、ちまちまと相手のマナを喰らっては消化し、喰らっては消化しを繰り返さなければならない。
 あの時のように、一度に大量のマナを喰らう事は、不可能。

 ――――逃亡こそが至上。
 以前、対抗都市伝説の発した言葉を思い出す。
 今は、まさにそうすべき「時」だ。
 己よりも強大な敵。戦うなど以ての外の相手である。
 ……ただ、その「逃亡」もまた、難しいのだけれど。

 ――――さて、どうする?

 ここまでの推考にかかった所要時間は数秒。
 場には再び、二者間の膠着が始まっていた。
 僕は、状況把握のために。
 相手も恐らく、似たようなものだろう。
 幾度の打ち損じ。それは決して、見逃していい事実ではないのだから。
 沈黙が降りる。
 後幾ばくもないそれを前に、両者は今一度、己の目的を再確認する。
 僕は、逃亡。
 そして相手は――――「復讐」と呼んだ殺戮の、再開。

【Continued...】




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