「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - ハーメルンの笛吹き-118

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匿名ユーザー

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【上田明也の探偵倶楽部after.act23~怪我人~】
――――――コロセ

「…………って、夢か。」

何時も通りの天井で目が覚める。

「…………トオモッタケドユメジャナーイ」

何時もと違う全身の痛みに眼が冴える。
そうだ、俺はついさっきまでトラックに撥ねられていたのだ。
車を使って都市伝説を轢いたことはあったがここまで痛いとは思わなかった。
正直、反省している。
時計を眺めると午前二時。

「目が覚めましたか?」

聞き慣れない声。
振り返ってその姿を確認する、茜さん……じゃない。

「大変でしたよ、記憶操作だの証拠隠滅だの、お医者様が徹夜三日目トゥルル~♪とか歌ってました。
 あの人もそうとうストレスや過労が来てますね、主に頭に。」

誰だこいつは、口ぶりからはどう見ても茜さんだし……。




――――オカセ

「俺の身体の状況はどうなっているんだ?」
「少し頭を打っているから安静にした方が良いそうです。
 ただ普段の戦闘よりは損傷が少ないし、治療は楽だったとか。」
「あのトラック結構大きかった気がするんだけどな。それでも傷は浅いのか。」

成る程、頭を打ったせいで俺の脳に異常が出ているらしい。

「なあ、茜さん。」
「はい?」

うん、やはり目の前の女性は茜さんらしい。
姿も声も普段の彼女とはまったく違う。
でも問題はそれだけじゃない。。

「……本当に済まなかった。」
「良いんですよ、貴方が無事でいてくれればそれだけで。」

無事じゃないんだよ。

「こんな時間まで起きていたのか?」
「眼を覚ますまでは心配でしたから。別にパソコン弄ってましたし。」
「……無理してくれるなよ。」

そんなに優しくされるのは慣れていないのだ。
胸が痛むからやめて欲しい。




――――――コワセ

「茜さん。」
「なんですか?」
「茜さんって可愛いよね」
「なに言っているんですか?」

全ての認識が狂い始めている、何でも良いから喋っていないと怖い。
だから何気なく言ってみた一言。
そう、それなのだ。問題はそれだ。
困ったことに普通認識が破壊されて脳機能がアレなことになると世界がグロテスクに見えるのがこの手の物語の王道だ。

「そんなこと言って機嫌をとってみても駄目ですよ?」
「ははは……、なんか一人で寝るの寂しいから一緒に寝てよ。」

だというのに俺の眼には茜さんが普段以上に可愛らしく写っている。
俺の好みにぴったりの姿だ。

「……おにーちゃん目が覚めたの?」
「あら吉静ちゃん、こんな時間に起きてきたら駄目ですよ?」
「だって声が聞こえたんだもん。」

吉静……?
ドアを開けて出てきたこの女の子は吉静なのだそうだ。
……おかしい、上手く顔を認識できない。
靄がかかっているように顔が見えない。
小さい身体、肩の辺りで揃えた髪、服の色、言語の上では彼女を彼女だと認識できる。
だが見てそれだけで吉静を吉静と認識できない。



――――――マズハソコノショウジョカラダ

「吉静ちゃん……お兄ちゃんまだちょっと体中痛いからお兄ちゃんのところに戻っててくれるかい?」
「うーん……解ったよ!」
「……珍しい。」

茜さんが俺の行動のおかしさに気づいたようだ。
確かに今の俺の行動は、普段から何が有っても吉静を優先する俺の普段の行動とは確かに噛み合わない。
だが今の俺はおかしくなっているのだ。
それがむしろ当たり前だ。
吉静は自分の部屋に戻っていった。

「明也さん、何かおかしいですよ?
 頭でも打ちましたか?
 ……って、少し打ってましたね。」

――――――モットオマエノヨクボウヲカイホウシロ

しかも当たり所が悪かったようだ。

「茜さん頼む、一緒に眠ってくれ。」

訳のわからない不安が胸の奥から湧いてくる。
まるで子供がデパート等で親からはぐれてしまった時のような言いしれぬ孤独感。
俺は今何処に居て何をしているのか曖昧になる。
誰かの手を握ってないとすぐに何かを見失う。



――――――オレヲカイホウシロ

「もう……、態度ばっかり大きくて、実際の所あまえんぼうなんだから。」
「うん。」

茜さんがベッドの中に入ってくる。
これで一安心だ。
シャンプーの良い香りがしてきた。
彼女も自分で身体を洗えるようになったのかと思うと少し感動する。

――――――アノジジイニシハイサレルノハモウマッピラダ

「暖かい……。」
「私人間じゃないんだけどなー」
「生きている物には心がある、心は自然とぬくもりを生む。」
「明也さんの手は冷たいですよね。」
「心が無いから。」
「心が無い訳じゃないでしょう。貴方は感情豊かじゃないですか。」

――――――ココロトカンジョウハチガウンダロウ?

「うるさい……。」
「どうしたんですか急に?」
「いや、何でもない。なんか声が……。」
「声?」

何かがおかしい。




――――――コレハオマエノホンシン

「本当に何でもないんだ。ただ……怖い夢を見て。」
「貴方に怖いなんてあるんですか?」
「怖いものは俺にだってあるさ……。」
「……じゃあ、私が守って上げますよ。」
「ありがとう。」

――――――オマエハジユウナンダ

俺は茜さんの胸に顔を埋める。
彼女の心臓の音が聞こえてきて、恐怖が少しずつ消えていく。

――――――ヒトモテンカモコトワリモジカンモクウカンモ

「怖くない、怖くない、明也さんは一生懸命な良い子です。
 自分勝手だけれどもそれはとにかく何でもしようとするのが裏目に出てるだけ。
 私は知ってますよ。だからそんなに震えない。」

――――――オマエハシハイデキル

声が聞こえてくる。
先ほどからずっと。
でもまだ大丈夫、まだ俺は大丈夫。
俺には俺を愛してくれる人が居る。

――――――オレノチカラヲツカエ
【上田明也の探偵倶楽部after.act23~怪我人~fin】

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