「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 首塚-81b

最終更新:

guest01

- view
だれでも歓迎! 編集
『レイカ………レイカ』

 提案された、その名前を
 女幽霊は、噛み締めるように、口にする

『うん、レイカ!私、その名前気に入った!私は、レイカでいいんだよねっ?』

 その外見よりも、ずっと無邪気に、子供っぽく笑いながら、そう言う女幽霊
 名前をもっていなかった彼女
 「幽霊マンションの女幽霊」でしかなかった彼女が…今、初めて、名前を得たのだ

 名前には、意味がある
 名前を持つ事には意味がある

 それを、彼女は意識下では理解していないが、無意識では理解している

『ねー、チャラチャラ、私、「レイカ」でいいんだよねっ?』
「お前がそれが気に入ったなら、それでいいんじゃないか?」

 彼女の言葉に、そう答える翼
 うん、と彼女……否、レイカは、頷く

『レイカ、レイカ!うん、私は今日から、今から「レイカ」!素敵な名前をありがとー!』

 ふわふわ、ぐるぐる
 レイカは無邪気に、紗江と紗奈の周りをぐるぐる飛び回る

 …まるで、ピーターパンに出てくる、魔法の粉の力を借りて飛び回る、子供のようだ
 何となく微笑ましい気分になって、姉妹は小さく、笑みを浮かべる
 ……少し…ほんの、少しだけ、心が癒されたような錯覚を覚えた

「気に入ってもらえたなら、良かった」
『うん!私は今日から今からレイカ!あとで死人の皆にも自慢しよ!私は名前を手に入れたんだって!』

 ぐるんぐるん、飛び回り続けるレイカ
 目で追い続けていては、目を回しそうだ

 翼は一旦レイカから視線を外し、紗江と紗奈に視線を戻す

「それじゃあ、俺はこれで。何かあったら、すぐ連絡しろよ?」

 ぽん、ぽん、と
 軽く、紗江と紗奈の頭を撫でる翼
 …かつて、大樹が自分にしてくれたように、優しく、さりげなく
 自分には、大樹程の優しさはない、大樹のように、誰も彼も迎え入れ包み込めるような、底の見えない優しさあh……自分のような人間には、もてない
 だが、せめて、両親をあんな形で失い、傷ついているこの二人を、ほんの少しでも、慰めてやる事が、できれば
 ……そう、考えるのだ

「はい…ありがとうございます」
「あ、あの………それと」

 見上げてくる、二人
 …その視線に、翼はあぁ、と二人が申し出ていたそれを、思い出す

「本当に、いいのか?」
「はい」
「…私達の力で、誰かを護れるなら……少しでも、誰かの力に、なりたいんです」

 ……あれだけの、経験をしながらも
 まだ、この姉妹は、誰かの力になりたい、と、悪意ある都市伝説から、何も知らぬ人たちを護りたいと、そう願っているのだ
 通常ならば、都市伝説とも縁を切り、全てを忘れ、何もかも「なかったこと」にしたくなるだろうに
 それでも……この二人は、現実から逃げようとしていないのだ

 強いな、と
 翼は、そう感じる
 姉妹揃っているから
 そのせいもあるのだろうな、とも、感じた

 独りではない
 双子の姉妹と言う片割れが存在している
 支えてくれる存在が、支えるべき存在が居る
 だから、ここまで強くあれるのだろう

「わかった。俺達「首塚」は、お前達を歓迎する。「首塚」の信念に反しなければ、俺達は同士を決して見捨てない」
『わーい!紗江と紗奈も、「首塚」の仲間になるんだねっ!』

 ぐるぐるぐる
 紗江と紗奈が「首塚」に加わるのだと知って、レイカはますます嬉しそうに回って…
 ……ぽってん、と落ちた
 本当、なぜ、幽霊の癖に質量を感じさせるのだろうか、レイカは

「だ、大丈夫ですか?」
「どうしたんだ?」
『……目、回った』
「目が回るのかよ、幽霊の癖に」

 ぐっるんぐっるん
 目を回して墜落したレイカの様子に、翼は苦笑する

「…んじゃ、改めて。俺は鐘声のおっさんのとこ寄って行くから……本当、何かあったら、すぐ連絡しろよ?」
「はい」
「ありがとうございました」

 改めて、姉妹とレイカを残し、翼は部屋を出た
 二人が「首塚」に加わった事を、「一年生になったら」の子供にはともかく、鐘声には伝えた方がいいだろうか
 そう考えつつ、一週間分の家事をこなしてやるべく、鐘声の元へと翼は向かっていった



 それと、ほぼ同時刻に

「あの、レイカさん、「鐘声」さんって?」
『んー、「首塚」の仲間だよー。「死人部隊」って言うのと契約してて、子連れなおじさん。ちゃらちゃらは、一週間に一度、生活能力ないおっちゃんの為に、家事やってあげにいってるの。通い妻みたいって、死人達が言ってたかな~』

 と
 レイカがいらん燃料を紗奈に投下していた事実に
 翼は当然、気付くはずもなかった













終われ




タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
記事メニュー
ウィキ募集バナー