“獣の王様 第四話「逃げられない人」”
「ほう、ここが数寄屋市か……。」
腰に日本刀のキーホルダーを提げた少年がバスから降りる。
只野凱空と相席し、結果としてレストランに居た人々を守ってしまった少年だ。
彼は一人旅を続けていた。
何故一人なのかというと実は半ば家出同然の夜行バスを使った旅だったりするからなのだが……
まあその辺りの事情は本編とはまったく関係ないので割愛したい。
只野凱空と相席し、結果としてレストランに居た人々を守ってしまった少年だ。
彼は一人旅を続けていた。
何故一人なのかというと実は半ば家出同然の夜行バスを使った旅だったりするからなのだが……
まあその辺りの事情は本編とはまったく関係ないので割愛したい。
「とりあえずホテルは後で適当な所探すとして……。」
彼の旅は基本宿無しである。
夜行バスなどで寝ていたからそれほど不自由ではない。
この少年、一応お坊ちゃまなのだが妙に逞しいのだ。
夜行バスなどで寝ていたからそれほど不自由ではない。
この少年、一応お坊ちゃまなのだが妙に逞しいのだ。
「まずは観光だ!」
彼はまず最初にコインロッカーに荷物を入れることを思いついた。
なんせ重いのだ。
それにあまり荷物を担いでいると人目につく。
彼は近くの駅に有ったコインロッカーを開けた。
なんせ重いのだ。
それにあまり荷物を担いでいると人目につく。
彼は近くの駅に有ったコインロッカーを開けた。
「オギャア!オギャア!」
「…………。」
「オギャア!」
「…………。」
「…………。」
「オギャア!」
「…………。」
少年は迷わずロッカーを閉じた。
彼は何度か都市伝説に襲われたことがあった。
だから彼としては都市伝説と思しきコインロッカーベイビーには関わりたくなかった。
だがその姿を見ていた少女が居た。
彼は何度か都市伝説に襲われたことがあった。
だから彼としては都市伝説と思しきコインロッカーベイビーには関わりたくなかった。
だがその姿を見ていた少女が居た。
「ちょっと貴方!」
「え?」
「なんでコインロッカーに閉じ込められてる赤ちゃんに見て見ぬふりしてるの!?」
「いや、だって……」
「ほらほら!駅員さんとか警察に連絡しないと!」
「いや、ちょ……」
「え?」
「なんでコインロッカーに閉じ込められてる赤ちゃんに見て見ぬふりしてるの!?」
「いや、だって……」
「ほらほら!駅員さんとか警察に連絡しないと!」
「いや、ちょ……」
周囲の人が彼の方をチラチラと見ている。
ロッカーの中を確認するとコインロッカーベイビーは既にいない。
ロッカーの中を確認するとコインロッカーベイビーは既にいない。
「何を言っているんですか?中には子供も誰も居ませんよ?」
少年はロッカーの中を開けて少女に見せてみる。
少女はロッカーの中を見て自分の勘違いに気付いたらしい。
少女はロッカーの中を見て自分の勘違いに気付いたらしい。
「あ、あれ……?」
「迷惑だから止めてくださいよね。」
「迷惑だから止めてくださいよね。」
少年はロッカーの中に荷物を入れることもなくその場を立ち去る。
「ま、待ってください!」
「なんですか。大声出さないでください。」
「その……ごめんなさい。」
「なんですか。大声出さないでください。」
「その……ごめんなさい。」
少年に追いついて少女は頭を下げる。
少年は面倒くさそうに歩き続ける。
少年は面倒くさそうに歩き続ける。
「いや、別に不慮の事故ですから。」
「そうはいってもですね……」
「そうはいってもですね……」
この時、ふと少年は面白いことを思いついた。
彼は基本的に限られたお金で旅行をしている。
だから食事なども基本的にギリギリまで切り詰めていかなくてはいけない。
今まで彼は適当に年上の女性をナンパしたりして食べさせて貰っていたのだが、
この町では自分よりも少し年上の高校生と思しき彼女に喰わせて貰おうと思ったのだ。
彼は基本的に限られたお金で旅行をしている。
だから食事なども基本的にギリギリまで切り詰めていかなくてはいけない。
今まで彼は適当に年上の女性をナンパしたりして食べさせて貰っていたのだが、
この町では自分よりも少し年上の高校生と思しき彼女に喰わせて貰おうと思ったのだ。
「……そうだ、貴方暇ですか?僕、この町に観光に来ているんですよ。」
「え?」
「だからオススメのお店とか無いですかね。」
「えー……っと」
「お金無いからできれば安いところが良いですけど……。」
「え?」
「だからオススメのお店とか無いですかね。」
「えー……っと」
「お金無いからできれば安いところが良いですけど……。」
困ったような顔を見せてみる。
こういう顔をしていた方が女性の庇護欲をそそるであろうと計算しているのだろう。
直接的に喰わせて欲しいと言わずにお金がないという辺りがコツである。
こういう顔をしていた方が女性の庇護欲をそそるであろうと計算しているのだろう。
直接的に喰わせて欲しいと言わずにお金がないという辺りがコツである。
「うー……解った。じゃあ私についてきてください。」
「おお、ありがとうございます!
観光の楽しみですからね、美味しいご飯は。」
「おお、ありがとうございます!
観光の楽しみですからね、美味しいご飯は。」
顔に笑顔を貼り付けてみせる少年。
「そうなの?」
「旅の楽しみでしょ、人との出会い、美しい風景、素敵な食事。」
「旅が楽しいねえ……」
「あの山を越えればきっと何かがどうにかなる。
あの海の向こうにはきっと自分の求める物が有る。
そう思えますよ。」
「私は何も変わらない日常を繰り返しているのが一番幸せだと思うな。」
「そうですかね。」
「うん、ところで君名前は?」
「え、名前?」
「旅の楽しみでしょ、人との出会い、美しい風景、素敵な食事。」
「旅が楽しいねえ……」
「あの山を越えればきっと何かがどうにかなる。
あの海の向こうにはきっと自分の求める物が有る。
そう思えますよ。」
「私は何も変わらない日常を繰り返しているのが一番幸せだと思うな。」
「そうですかね。」
「うん、ところで君名前は?」
「え、名前?」
少年は一応半分家出状態である。
もしかしたらだが家族に探されていることも考えていた。
もしかしたらだが家族に探されていることも考えていた。
「えーっと、川城丁と言います。一応まだ中学三年生です。」
「ふーん、私は鵜入香織だよ。一応まだ高校二年生かな。」
「ウニュー☆カオリ?」
「ぶー」
「雲龍カオリ?」
「力士か」
「ふんにゅー?」
「違うってばさ。面倒くさい、ユカって呼びなさい。」
「ふーん、私は鵜入香織だよ。一応まだ高校二年生かな。」
「ウニュー☆カオリ?」
「ぶー」
「雲龍カオリ?」
「力士か」
「ふんにゅー?」
「違うってばさ。面倒くさい、ユカって呼びなさい。」
やれやれ、といった感じで少年はため息を吐く。
「洒落のわからない人だ。」
「良いの?年上相手にそれで良いの?」
「おねーちゃんごめんね><」
「ちょっと可愛くすれば許されると思うなよ!?」
「ところでお店マダー?」
「はいはい、もう少しで着きますよ。」
「おおー、饂飩?」
「そう、この町は饂飩が名物らしいから。」
「そうなんだー……って、らしいってなんですか?」
「私だってこの町に来たばっかり何だもん。」
「お姉さんも旅の人なの?」
「まあ、ちょっとね。」
「良いの?年上相手にそれで良いの?」
「おねーちゃんごめんね><」
「ちょっと可愛くすれば許されると思うなよ!?」
「ところでお店マダー?」
「はいはい、もう少しで着きますよ。」
「おおー、饂飩?」
「そう、この町は饂飩が名物らしいから。」
「そうなんだー……って、らしいってなんですか?」
「私だってこの町に来たばっかり何だもん。」
「お姉さんも旅の人なの?」
「まあ、ちょっとね。」
軽く漫才ノリのまま店内に入る二人。
そのままカウンターに座ると生饂飩なるものを注文する。
そのままカウンターに座ると生饂飩なるものを注文する。
「箸取って。」
「箸?」
「君の右側にあるでしょ。」
「えっと……」
「箸?」
「君の右側にあるでしょ。」
「えっと……」
少年は左右をきょろきょろ眺め回してからそれをやっと見つける。
「これですか?」
「そうそうそれそれ。」
「そうそうそれそれ。」
パキッ
良い感じの音が店内に鳴り響く。
二人は同時にちゅるちゅると饂飩を食べ始めた。
良い感じの音が店内に鳴り響く。
二人は同時にちゅるちゅると饂飩を食べ始めた。
「おお、美味い。」
「適当に入った甲斐が有ったわぁ。」
「――――今なんと?」
「私だって旅の身の上だって言ったでしょ?」
「…………。」
「あと、偽名ならもうちょっとマシなの考えなさいこの家出少年。」
「…………何故解ったし。」
「なーんか匂いで解った。」
「あれ、風呂はこまめに入ってたのになあ。」
「いやいや、そう言う意味じゃなくて。」
「適当に入った甲斐が有ったわぁ。」
「――――今なんと?」
「私だって旅の身の上だって言ったでしょ?」
「…………。」
「あと、偽名ならもうちょっとマシなの考えなさいこの家出少年。」
「…………何故解ったし。」
「なーんか匂いで解った。」
「あれ、風呂はこまめに入ってたのになあ。」
「いやいや、そう言う意味じゃなくて。」
饂飩にしつこいくらいワサビをたたき込む川城。
饂飩の上にゲソ天の山を創造する鵜入。
饂飩の上にゲソ天の山を創造する鵜入。
「随分変わった趣味ね。」
「視覚的に言うとユカさんの方が変です。」
「この地方では普通なのよ。」
「へー」
「嘘、これは私の故郷の味。」
「ああ、番屋町の辺りか。」
「知ってるの?」
「親戚が居るんです。」
「ほうほう。」
「視覚的に言うとユカさんの方が変です。」
「この地方では普通なのよ。」
「へー」
「嘘、これは私の故郷の味。」
「ああ、番屋町の辺りか。」
「知ってるの?」
「親戚が居るんです。」
「ほうほう。」
会話は途切れる。
お互いがお互いの饂飩に集中しているのだ。
お互いがお互いの饂飩に集中しているのだ。
「美味しかったわね。」
「はい。それじゃあお金払ってきますね。」
「良いわよ、別に。」
「いやだって女の子にお金払って貰うのもあれかなーって。
こう見えてもお小遣い沢山貰ってますから。」
「こう言う時は素直に年上におごられておくものよ。
貴方に迷惑かけちゃったし。」
「はーい。じゃあ素直にいただきまーす。」
「はい。それじゃあお金払ってきますね。」
「良いわよ、別に。」
「いやだって女の子にお金払って貰うのもあれかなーって。
こう見えてもお小遣い沢山貰ってますから。」
「こう言う時は素直に年上におごられておくものよ。
貴方に迷惑かけちゃったし。」
「はーい。じゃあ素直にいただきまーす。」
少年が「計画通り!」みたいな顔をしているのも知らずに彼女は会計を済ませる。
この少年は恐らくろくな大人にならないだろう。
ユカがレジで会計を済ませた後ろから少年は彼女にひょこひょこついていく。
この少年は恐らくろくな大人にならないだろう。
ユカがレジで会計を済ませた後ろから少年は彼女にひょこひょこついていく。
「ユカさんこの後予定あるんですか?」
「んー、人を探してたんだけどー……。」
「人探しなら手伝いましょうか?」
「良いよ、迷惑かけちゃあれだし。」
「そうですか……」
「んー、人を探してたんだけどー……。」
「人探しなら手伝いましょうか?」
「良いよ、迷惑かけちゃあれだし。」
「そうですか……」
少年は困ったような表情をする。
ついでに宿も世話してくれたりしないかな~とか甘いことを考えていたのだ。
重ねて言うがこの少年、ろくな大人にならない。
ついでに宿も世話してくれたりしないかな~とか甘いことを考えていたのだ。
重ねて言うがこの少年、ろくな大人にならない。
「じゃあまあ連絡先でも……」
少年がそう言いかけた時だった。
遠くから悲鳴が聞こえてくる。
遠くから悲鳴が聞こえてくる。
「あいつか!」
ユカはそう言って悲鳴の方向に駆け出す。
「あんた着いてくるんじゃないよ!」
ユカは丁に厳重に言いつける。
だがそれを黙って聞いている彼ではない。
だがそれを黙って聞いている彼ではない。
「……気になる。」
川城丁はユカの後をついて行くことに決めた。
彼は走って走ってユカの後をついて行くがなかなか追いつけない。
ユカの移動速度が速すぎるのだ。
まるで人間ではないみたいだった。
ユカが曲がり角を曲がる。
そこで彼は完全にユカを見失った。
直後、近くの通りからとてつもない勢いで火柱が上がる。
丁はその方向に走る。
彼は走って走ってユカの後をついて行くがなかなか追いつけない。
ユカの移動速度が速すぎるのだ。
まるで人間ではないみたいだった。
ユカが曲がり角を曲がる。
そこで彼は完全にユカを見失った。
直後、近くの通りからとてつもない勢いで火柱が上がる。
丁はその方向に走る。
「ユカさん!」
狭い路地の奥には、両手首を切って血まみれのユカと気を失ったカップルが倒れていた。
何かがあったことはまだ子供な丁にも解る。
何かがあったことはまだ子供な丁にも解る。
「居たぞ!モンゴリアンデスワームの契約者だ!」
「――――おい君!その女は……!」
「――――おい君!その女は……!」
背後から黒服の男が現れる。どうやらユカを狙っているらしい。
諸事情の為黒服の男とも関わりがあり、なおかつ彼等が嫌いな川城丁は覚悟を決めた。
諸事情の為黒服の男とも関わりがあり、なおかつ彼等が嫌いな川城丁は覚悟を決めた。
「うわっ、なんだあれ!?」
川城丁は何も無い方向を指さす。
単なる子供だましだ。こんなものに大人がひっかかる訳もない。
だがしかし黒服達はこの少年の言葉に“何故か”動かされてしまった。
単なる子供だましだ。こんなものに大人がひっかかる訳もない。
だがしかし黒服達はこの少年の言葉に“何故か”動かされてしまった。
「え?」
「なんだなんだ!?」
「なんだなんだ!?」
川がほんのわずかに飛沫を上げる。
「あの子供達が居ないぞ!」
「それより被害者の確保を急げ!」
「それより被害者の確保を急げ!」
丁はユカを抱えたまま、まだ寒い春先の川の中に身を隠したのだ。
幸い深い川だったので見つからずにそのまま下流に流されて二人はことなきを得た。
丁は彼女を背負うと最近起きた不況で潰れて廃墟になったらしい水族館にそのまま入り込む。
重ねて言うがこの少年、妙にサバイバル能力が高いのだ。
彼は適当に薪を集めるときつく結んだビニール袋の中に入れていたライターで火を点ける。
幸い深い川だったので見つからずにそのまま下流に流されて二人はことなきを得た。
丁は彼女を背負うと最近起きた不況で潰れて廃墟になったらしい水族館にそのまま入り込む。
重ねて言うがこの少年、妙にサバイバル能力が高いのだ。
彼は適当に薪を集めるときつく結んだビニール袋の中に入れていたライターで火を点ける。
「さて、問題はここからだ。」
パチパチと目の前で音を立てるたき火と、ずぶぬれになった年頃の女性。
性欲全開にしてブレーキ全壊の男子中学生でさえも躊躇うシチュエーションである。
性欲全開にしてブレーキ全壊の男子中学生でさえも躊躇うシチュエーションである。
「脱がすしか……無いよなあ?怪我の応急処置も必要だし。」
男子中学生とは思えない躊躇いの無さで丁は結論した。
“獣の王様 第四話「逃げられない人」 続”