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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 獣の王様-09

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匿名ユーザー

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“獣の王様 第九話「戦うことは罪だから」”

「あ、眼を覚ましたんだね。」
「――――え!?」

 彼が気絶から眼を覚ますと、彼の上には冬木華恋が馬乗りになっていた。
 彼女は上田の手をしっかりと握っている。

「ちょっとタイミング悪かったかなあ。」
「さっきの俺のつけた傷は……?」
「あんなものすぐに治ったよ。でも女の子の顔を傷つけるなんて駄目なことなんだからね?
 そこも含めて私がしっかり教えて上げないと……。」

 華恋は上田に覆い被さるようにして彼の動きを止めると、今度こそ彼の腕を奪おうと火を放った。
 痛みを感じる間もなく、彼の腕が灰になる。

「…………うそ、だろ?」
「ホントだよ、痛くなかった?」

 彼の脚が消え去る。

「逃げちゃうような悪い子にはお仕置き。」

 華恋がにこにこと笑う。

「さ、それじゃあ一旦家に戻りましょう。」

 そう言って華恋が上田の頭をそっと撫でた。
 その時突然、彼女の背中に手が触れる。




「え?」
「……うわ、治ってる。」

 華恋の背に触れたのは先ほど無くなったはずの上田の腕だった。
 冬木華恋も上田明也も何が起きたか理解出来なかった。
 完全に無くなったと思った腕が光に包まれると同時に再生したのだ。
 どうやら自分は先ほど会った女性に何かされたらしい。
 上田明也はそう結論した。
 じゃあ、逃げるか?
 今なら逃げられる。
 今度こそ完全に。
 何故か幾ら炎をくらっても大丈夫ならば。
 逃げ切るくらいは出来るはず。

「……?」

 固い物が上田のポケットの中から彼の服に触れる。
 スプーンだ。

『ちゃんと目を見て、きちんと話す、自分の気持ちを伝えなきゃ、正直にね。』

 頭の内側から声が響いてくる。
 そうだ、逃げちゃ駄目だ。
 自分は自分のために狂ってしまったこの少女と向き合わねばならない。
 それは男としてやらなければならないことだ。
 記憶がこみあげてくる。

「―――――思い出した。」

 上田明也は、気絶したと思っていた間に有ったことを少しだけ思いだした。





「レン。」
「なに?今度は逃げないの?」
「そうじゃなくて……流石に腕燃やすのはやめてくれないかな。」
「でも…………、エリがこのままだと、さ。」
「解った、俺ちゃんと変わるよ。人以上に苦しんで、人並みに生きてみる。
 それにほら、俺の腕がなくなっちゃうとさ。」
「なくなっちゃうと?」
「レンが炒飯食べられなくなっちゃうじゃない。」

 彼は懐からスプーンを取り出してみせる。
 上田が炒飯を掬って、彼女の口の中に放り投げたスプーン。

「俺、炒飯以外にも沢山料理を作れるんだぜ。」
「……そうなの?」
「なんなら毎日喰ってくれよ。拾ってくれたお礼にはなるだろう。」
「…………嬉しいこといってくれるね。おつりがくるよ。
 私なんかで良ければ毎日食べて上げる。」

 レンの瞳の中に有った狂気が薄れていく。
 今の彼女の表情はまともといって概ね差し支えない物だった。
 上田も普段の彼が見せる何も考えていないような顔ではなく、
 心から嬉しいと思った時の笑顔を見せていた。






「おいおい君たち、そうはいかないよ。
 それだけは、そんな幸せな結末だけは許さない。」

 どこからとも無く声が響く。
 突如、水族館の壁を破壊して巨大な虫が現れた。

「お前は!?」
「済まないね、若い二人がにゃんにゃんごろごろしているところを邪魔してしまうとは。」
「おやおや凱空さん、地獄から蘇ったんですか?」

 その虫に男の顔が張り付いている。
 先ほど上田が殺したはずの只野凱空の顔だ。

「やはり察しが良いね少年。その通り、君たちを不幸にするためだけに地獄から舞い戻ったよ。」
「だろうと思いました。」
「最初は適当に死んだふりして終わらせようかと思ってたのにさあ。
 まさかこんなことになるなんてね。
 雨降って地固まると言うがなにがどうしてこうなったのか解らないや。
 ああそうそう、君が撒いた煙幕のお陰で逃げるのは簡単だったよ!」
「ああー、あれに乗じて逃げていたのね。」

 このタイミングでの襲撃者。
 二人は能力を使い続けてかなり疲労していた。
 上田明也の新たな力も実は発動までに隙がかなりできる。

「その通り、見たところ二人ともお疲れのようだし……!」
「やらせねえよ。」

 黒い影が水槽を割って凱空の前に立ちふさがる。



 黒い影は巨大なカワウソだった。
 その姿に覚えのある凱空は驚いたような顔をする。

「おや、ユカイツーカイマスコット野郎じゃないか。生きてたのか?」
「ああ、契約者が生きていたからよ、あんたのお陰だぜ、オネーチャン。」
「オネーチャン……って?」

 レンが事態を飲み込めずに黒い影の正体――ドアーチュ――に問いかける。
 ドアーチュは自慢げにペラペラと喋り始めた。

「俺はあんたの妹と契約した都市伝説。
 彼女の命令であんたを探していたんだよ。」
「でもあの子は私のことを知らない筈じゃ……?」
「あんた、自分が行方不明扱いになってるのは知ってるよな?」
「ええ……。」
「その時に知ったんだよ。親から聞いたのさ。
 ちなみにその辺りのゴタゴタであんたの両親は復縁したっぽいぜ。」
「えっ……。」
「おいおい、僕を放って話を進めないでくれるかな?」

 凱空が毒液を吹きかけてくる。
 ドアーチュは近くにあった水を操ってその毒液を受け流す。




「マスコットキャラ!」
「なんだクソ坊主!俺はドアーチュ様だ!マスコット言うなマスコット!」
「じゃあアーチャー。」
「え、いきなり格好良くね?」
「だろ?」

 上田はこれでもかといわんばかりのドヤ顔である。

「それはさておき、ちょっと時間を稼いでくれ。
 俺の新しい能力ならそいつを倒せる。」
「少年、そんな事はさせないよ!」

 大量の小さな虫が上田に群がる。

「うわっ、気持ち悪ッ!」
「大丈夫、私に任せて!」

 華恋の身体から炎が舞い上がり、虫達を一瞬で焼き払う。
 上田の身体ごと焼いたかのように見えたが、上田はまったくもって無事である。

「また四肢をもってかれるかと。」
「……ごめんね、さっきのは流石にやり過ぎだったよね。」
「その話は後で」
「今はまあ……。」
「「こいつらが先だ。」」

 上田の腰に青い光が灯る。
 華恋の背後に炎で出来た赤い翼が生える。





「おい少年。」
「なんだ?」
「お前時間稼げって言ったけどよ。」
「おう。」
「倒しちまっても構わないよな?」
「無論。こいつを使ってくれ。」

 ドアーチュが上田から村正を受け取る。

「有り難いね。」

 ドアーチュが凱空と正面からぶつかり合う。
 華恋が迫ってくる虫達をこれまでにないくらいの力で焼き払う。

「誰かを守る為に闘うのがこんなに幸せなんて……ね。
 身体が軽いわ、今なら負ける気がしない。」

 華恋は呟く、だが上田の目には戦う彼女の姿がどこか切なげに苦しげに見える。

「華恋……、やっぱり貴方にこれ以上戦いを続けさせるわけにはいかない。」

 自分を守ってくれる彼女に向けて聞こえないように呟く。
 他人と争うという行為――戦いそのもの――が業が深い行いなのだ。
 上田とて知らないわけではない。
 誰かと何かを奪い合う時点で、戦うことは罪深い行為なのだと。 
 ましてや誰かの命を奪うなんて罪深い行為、冬木華恋には耐えられない筈だ。
 たとえ大事な人の仇であっても。




「戦うことは罪だから、俺が背負ってやる。
 …………そして守るんだ。
 彼女が犯した罪、彼女を責める罪、彼女が思い返す罪。
 俺はまだ良く彼女のことを解ってないかも知れないけど。
 俺の飯を美味いと言ってくれて、未来を投げ捨ててまで誰かの為に闘おうとして、
 それでも非情になりきれないで苦しんでいる少女が、
 何時の日か彼女が彼女の家族の所に戻った時に、再び強く笑う為に。」

 上田は腰に灯っていた光を手に掴み、胸に強く押し当てる。

『変身と言えばベルトでしょ?』

 あの女性の言葉がどこかから聞こえてくる。
 上田の記憶が次々蘇る。
 気絶していた間に女性とした話、与えられた能力の全容、そして新しい夢。
 上田は懐から華恋を正気に戻したスプーンを取り出す。

「……俺は、俺はどちらかと言えばウルトラマン派なんだよ。
 フェリシアだか誰だかしらねえけど、何度も言ったじゃねえかよ!
 ――――――――――セレナアアアアアアアアアア!」

 叫ぶのは彼が思い描く青い光の名前。
 スプーンには胸に灯ったそれと同じような青い光が宿る。
 湖面に浮かぶ月が如くその青く美しい光は彼の身体を包む。
 その時の余波で華恋と戦っていた小さな虫達が尻尾を巻いて逃げ出す。





「殺った!」
「―――――しまッ?」

 ドアーチュの手により凱空の首が落ちる。
 虫の巨体はその場で停止する。

「おいおい少年、即興で考えたにしては悪くない名前だがもう終わっ……?」

 上田に話しかけるドアーチュの背後で死体が蠢く。
 そう、只野凱空は死んだ。
 だが契約者は死の間際に身を完全に都市伝説に捧げる――飲まれる――ことで更なる力を発揮する。

「ゴガアアアアアアアアアアアアア!」

 只野凱空は死んだ。
 只の害悪は終わった。
 これから先は最悪な災厄。
 建物を破壊するほどに巨大化したモンゴリアンデスワームが暴れ始める。

「……予想はしてたけど本当にこうなるとはね、それならばそれで後は俺に任せて貰うぜ!」

 上田の身体を包んでいた青い光は彼と分離した後、その形を保ったまま巨大化する。
 それはもはや光の巨人と呼ぶに相応しい代物だった。



「ヘァッ!」

 巨人はモンゴリアンデスワームを持ち上げるとそのまま海の方へ投げ捨てる。
 その時の勢いで若干瓦礫が崩れた。
 上田明也は気付いていない。
 彼の精神はこちらのほうで働いているのだ。
 すなわち彼の身体は今、完全に無防備なのである。

「これでも喰らえ!」

 何発かの光弾を追い打ち気味にモンゴリアンデスワームにたたき込む。
 本人は気付いていないだろうが光の巨人とモンゴリアンデスワームを海の方に移動させたのは正解だった。
 彼等が登場しただけで水族館は一部が壊れ、崩壊を始めていたのだ。
 あれ以上あそこで暴れていれば全員が死んでいただろう。

「必殺……セレナシュート!」

 光の巨人が腕を十字に組む。
 そこから夥しい量の光が溢れてモンゴリアンデスワームを包み込み、跡形もなく消し去った。
 まあ当然多くの人々がこの出来事を目に焼き付けてしまい、
 黒服達が隠蔽作業で忙殺されるのだが……
 とにもかくにもこうして数寄屋町から一人の悪人が消え去ったのである。
 さて、光の巨人が現れた直後に話は戻る。
 精神が光の巨人に移っている以上、上田明也は完全に気を失っていた。





「危ない!」

 崩れ落ちる上田の身体を華恋が受け止める。
 辺りは瓦礫が次々落ちてきてかなり危険である。

「お嬢ちゃんこっちだ!急いで逃げるぞ!」
「エリが!」
「そいつは気絶しているだけだ、俺の背中に乗っけろ!」

 その時、瓦礫が落ちてきて目の前の出入り口がふさがれる。

「閉じ込められたか……?
 お嬢ちゃん、破壊できたりは……」
「私、炎を出すだけだから身体能力はあんまり……。」
「まずったぜこりゃあ……。」

 ドアーチュは苦虫をかみつぶしたかのような表情をする。

「そうだ、階段使って迂回すれば川に出られるよ!
 エリが気絶した私を背負ったままそこから出入りしてたわ!」
「ああ、俺が入ってきた場所か!そうと決まれば話は速い!」

 二人と一匹は崩れ落ちる建物の中で脱出を始めた。

“獣の王様 第九話「戦うことは罪だから」 続”

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