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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 獣の王様-10

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匿名ユーザー

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“獣の王様 第十話「貴方と共に」”

「こっちだ!こっちの階段を上ればすぐだぜ!
 それにしてもこのガキ重いな……。」
「あ、ちょっと貸して。」

 上田が出した光の巨人が凱空を今まさに倒そうとしていたその頃、
 ドアーチュと華恋は気絶している上田の肉体を引きずって崩れゆく水族館から脱出しようとしていた。

「確か服のこの辺りに……。」

 華恋が上田の服をまさぐる。
 するとその中から大量の爆弾や刃物、それに改造したエアガンがポロポロと落ちてきた。

「なにこのガキ、怖い。」
「うーん、まだ服の中に沢山仕込んでるみたいだけど、これで軽くなった筈だよ。」

 今落とした刃物は一本でも中学生の平均的なお小遣い一年分に相当する高額な物なのだが、
 当然ドアーチュも華恋もそんなこと知らない。
 彼等は上田の大事なお宝をそこら辺にポイ捨てして再び走り出した。

「うわー軽い、超軽い。」
「どう考えても持ちすぎだよね。」

 階段を駆け上がる。
 駆け上がった側からどんどん階段が崩れ落ちていく。




「うぅ……、んあ?」
「やっと起きたか。」
「エリ、ちゃんと自分で走りなさい!かなりやばいわよ!」

 上田明也がドアーチュの背中で眼を覚ます。

「……ごめん、つかれた。」

 上田明也は完全に体力の限界を迎えていた。
 第一に光の巨人の召喚。
 第二に華恋に破壊された四肢の再生。
 さらに言えば彼の戦闘スタイルは誰かに習った物ではなく、
 完全に本能と直感に任せた物で連戦や継戦をまったく想定していない。
 これだけの悪条件が揃えば流石の彼も戦えなくなると言う物だ。

「……あーもう!」
「怒るなよオネーチャン、それより出口が見えてきたぜ。」

 工事が途中だったために外部に繋がっている水槽。
 そこに飛び込めば川へと逃げることができる。
 だがこの時彼等は忘れていた。




「――――不味い、この道通っちゃ駄目だよ。」

 真っ先に気付いたのはこの中で随一の危機察知能力を持つ上田明也だった。

「しまっ!?」

 ドアーチュが気付いた時には遅かった。

「えっ……?」

 華恋の目の前で突如としてドアーチュと上田が消えた。
 床が崩れたのだ。
 そもそもこの水族館は工事の途中で放棄されている。
 建物としてはとてつもなく脆いと言うことを彼等は忘れていたのだ。
 さらにそもそも何故工事が途中で終わっていたのかも考えるべきだ。
 経済的な問題?
 確かにそれもあった。
 だがもう一つ、致命的な問題が実は有ったのだ。

「な、なんだありゃあ!?」
「ドアーチュ?そこにいるの?」
「おう!俺は大丈夫だがこのガキがもう俺にしがみついてられねえ!
 それよりも一階にでけえ穴が空いてやがる!」

 ここが廃水族館として解体もせずに放置されていた理由。
 それはそこに巨大な地下空洞があったからだったのだ。
 しかし一見、その中には水が溜まっており、落ちても害が無いように見える。





「空洞、水、……まさか?」

 床の崩落した穴の淵にドアーチュが掴まっているのを確認してから華恋が火を空洞に向けて撃ち込む。
 火は空洞の中に入った瞬間掻き消えた。

「そこ、凄い量のガスが溜まってるみたい。」
「くそ……!とりあえずこのガキだけでもひっぱりあげろ!
 そしたら俺も自力で上れる!」
「了解!」

 華恋は上田の手を取って引っ張り……上げられない。

「力無いなおい!」
「あんたねえ……、私は肉体派じゃないんだってば!」
「困ったな……、ってうぉ!?」

 地下空洞から突然、長い長い首が伸びる。
 それはドアーチュの脚にかじりついて彼を空洞に引きずり込んだ。

「ネッシー……?」
「ああー、地下にある湖とかに住んでいるって言うからね。」
「余裕綽々で解説してる場合じゃないわ!」
「うん、そうなんだけどさ……。」
「翼?あれならもう出せないわよ、私だって限界だし。」
「うん、それだなんだけどね。」

 上田はため息を吐いてから彼女に言った。




「俺に構わず先に逃げていて欲しいんだよ。」
「――――――ちょ、な、何言ってるの!?」
「大丈夫大丈夫、俺なら何とかなるから。」
「何とかなるわけ無いでしょ!」

「そうだよ、その通り。」

 突然、聞き覚えのある声が響く。
 華恋はその方向へ振り返った。

「あんたは……!」

 モンゴリアンデスワームの契約者、只野凱空がそこには居た。

「君が……彼を捨てて逃げるなら私は誓って君たちに何もしない。
 だが、それでも彼を助けようというならば……すこしだけ邪魔してやる。」
「俺があのでかいのを倒したことで飲まれた状態から回復したのか?」
「ああ、おかげで都市伝説は失ったがね。」

 凱空もすでに先ほどの戦いで満身創痍である。

「しかしまあ、この状態でも悲劇を一つ作る程度なら支障なく行えるよ。
 君が少年を見捨てれば良し、見捨てないで殺してやっても良し。
 どのみち不幸な人間が一人増える。」

 ゆっくりと凱空が近づいてくる。





「く……!」
「丁度良いじゃないか華恋、一旦ここは引いてくれ。
 俺はこの程度では死なないわけだし。」
「……あああああああああああああああああああもう!」

 華恋が叫び出す。

「だから嘘を吐くならもっと上手に吐きなさいってば!
 あんた震えているじゃないのさ!」
「う……。」
「なんだ少年、見損なったぞ、死ぬのが怖いのか。」
「そりゃあ怖いさ。怖いけど、死ぬより怖いことだって有る。」
「すっかり普通の人間みたいな事言うようになったな。
 ……格好つけろよ。」

 凱空は心底呆れたように呟く。

「俺はもう格好付けないって決めたんだ。」

 上田は誇らしげに言い放つ。




「ま、どのみち君はここでお終いだけどね。」

 そう言って凱空が近くにおいていた鉄パイプを拾い上げて華恋に殴りかかる。

「――――違うな。」

 風を裂いて一筋の弾丸が宙を飛ぶ。
 それは誤ることなく凱空の腕を撃ち抜き、勢いのままに吹き飛ばす。

「こいつが終わるんじゃない。」

 銃口から細くたなびく白い煙。
 銃把を握る巨大な手。
 風になびくサムライポニーテール。

「こいつの家出が終わるんだ。」

 ふぅ、と男はコルトグリズリーの銃口の煙を吹いてみせる。
 西部のカウボーイのつもりらしい。

「貴方は……?」
「そこの放蕩息子の父親だよ、可愛らしいお姉さん。」

 男の名前は上田明久。
 上田明也の父親である。
 彼は虫の息の凱空の頭を撃ち抜き、トドメを刺すと片手でひょいっと上田を引きずり上げた。






「ま、また捕まった……。」
「今回は悪くなかったな、まさか同じ町に留まってるとは思わなかったぜ。
 三原ちゃんの報告がなければ見逃してた。」
「あいつ騙したな……!」
「いや、常識的に考えて報告されるだろ。」
「あ、そうだ!明也君のお父さん!」
「明久でいいぜ、お嬢さん。内の息子が迷惑かけたみたいだしその内お茶でもどうだ?」
「それよりなんかネッシーみたいなのが……!」
「あー、それなら大丈夫だよ。」

 先ほどの穴からドアーチュを襲った首長竜が顔を出す。
 何やら様子が違う。
 彼は口にドアーチュを咥えて、頭にF-No.333を乗せていた。

「あいつが丁度魔物使いだから。」
「お仕事終了でーす。」
「馬鹿、お前らの仕事はこの後だろうが。
 隠蔽作業とか……。」
「そこらへんは駿河後輩に丸投げしてきました。
 まあ、その手の作業に向いている子なんで適材適所ってことで。」
「あっそ。」
「師匠、この子に乗っていきますか?」
「良いよ。」

 明久は気絶した上田と弱っている華恋を抱え上げるとそのまま悠々と天井にも空いていた穴からジャンプして水族館の外に出た。 






「さてと、じゃあ帰る?」
「え?」
「……とりあえず降ろキュン!」
「あ゛ー、なんか生意気な口聞いてたような気がしたけど気のせいだよな。」

 明久は弱っていた上田を当て身で完全に気絶させる。
 そして華恋と静かになった上田を安全なところまで運んだ。

「つー訳でそろそろ行くわ。」
「あの……連れて帰らないんですか?」
「いや、そのつもりだったけどさ、俺より頼りになる保護者が居るしね。」
「えっ……」
「しばらく会わない間に良い眼をするようになったわ。
 あいつって実は良い奴だったのかもな。
 それに気づけなかった俺は親失格。
 多分あんたのおかげだろ?」
「あーうー……。」
「あとはまああれだ。若い二人の邪魔をする前にじじいは去るべきだしな。
 ほんじゃあまた、さよなら。」

 明久はコルトグリズリーをクルクル回して腰のホルスターにしまい、
 建物屋根伝いにぴょんぴょん飛びながらあっという間にどこかに行ってしまった。

「釈迦も孔子も女にゃ敵わん、人ってのは解らないものだぜ。
 ……なあ、姉さん。」

 明久は誰に言うでもなく呟いていた。




「行っちゃったよ……。」

 華恋は明久を見送った後に視線を足下で気絶している上田に落とす。
 そのあどけない寝顔を見て、彼女は少しだけ微笑んだ。

「私も家族が恋しくなっちゃったな。」

 華恋は上田の頬に手を伸ばし、彼を優しく撫でさする。

「今日は本当によく頑張ってくれたね。
 だから……ご褒美。」

 彼女は上田の唇にそっとふれた。

「さーって、ちょっとだけ親に会ってくるかな!」

 彼女は上田を揺さぶって起こす。

「うー?」
「ついてきなさいよ!」
「え?良くわかんないけど解った。」

 上田は訳が解らないままに、歩き始めた華恋に着いていくことにした。 

“獣の王様 第十話「貴方と共に」 続”

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