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連載 - とある組織の構成員の憂鬱-59

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だれでも歓迎! 編集
 はらはらと、降り続ける雪
 ぱらぱらと、降り続けるコンペイトウ

 ……ロマンチック、と、一言で片付けても良いのやら



「はい……はい。わかりました。すみません、お言葉に甘えさせていただきます」

 「組織」と連絡をとっていた大樹が、通話を切った
 ふぅ、と小さくため息をついている

「大樹さん。どうなの?このコンペイトウの雨については」

 ひょこ、と
 通話を終えた大樹に、近づいてきた望
 大樹は望に優しく微笑みかけ、説明を開始する

「予知班などの解析によれば、コンペイトウは明日の日の出前には降り止んでいるそうです。降り注いだコンペイトウに関しては、範囲が広すぎて除去できないので……降ってきた理由付けをするようですね」
「理由付け?」
「はい。輸送機で運んでいたコンペイトウが、何らかの理由で輸送機から漏れ出した……そう言う事になるでしょうね」

 無理のない範囲での、理由付け
 超常現象ではなく、「現実的」な理由があった
 コンペイトウの雨が降った理由を作る
 「組織」がもっとも得意とする隠ぺい工作は、「情報操作」
 今回も、それを行う
 ……ただ、それだけの事だ

「残念だねー。空からコンペイトウとかロマンなのに」
「ちゅちゅー」
「…あんた達、いつの間にコンペイトウ確保してるの」

 ちゃっかり、窓を開けて降ってきたコンペイトウをいくつかキャッチしていたらしい
 カリコリ、堪能している詩織とノロイ
 都市伝説コンビ(片方なりかけ)はどこまでもマイペースだ

「おぉ、いい砂糖使ってるわ、これ」
「ちゅっちゅぅ」
「あー、ほら。夕食前にそう言うもの食うなっての」

 料理を盛りつけ始めた翼が、苦笑してくる
 私の分大盛りにしてねー、と、詩織がノロイを頭に載せたまま、キッチンに駆けていった

 ……っとん、と
 望が、大樹にもたれかかる

「望?」
「えーと、その……これからまた、仕事、って事、ないわよね?」

 コンペイトウシャワー事件
 その後始末で、大樹にまた仕事が入るのでは…

 望は、それを危惧した
 だが

「いえ、大丈夫です。ジェラルドさんからは、今夜はもう、ゆっくり休め、と言われましたから」

 大樹は、上司に恵まれていた
 そして、上司は、判断したのだ
 …「過労死候補生を堂々と休ませられるチャンスを不意にして溜まるか」、と
 クリスマスだから、と言う理由で、残業を許さず帰させたのだ
 周りに、無理なしわ寄せが来ないよう気を使い……と、言うか、「組織」全員が日頃仕事をサボらなければ、しわ寄せなど来るはずもないのだが…、大樹が罪悪感を感じないように休ませた
 そのチャンスを、不意にする訳には行かなかったのだ

「…じ、じゃあ、今夜は、ずっと一緒に居られるのね?」
「はい、そうですよ」

 そっと、頭を撫でられて
 望は、幸せを噛み締めて笑う

 大切な人と一緒のクリスマス
 …昨年は、「家族」として
 そして
 今年は、「恋人」として

 大切な大切な、愛しい人と一緒に居られるクリスマス
 それを、望は幸せに思う

「さぁ、翼の料理が出来たようですし、いきましょうか」
「えぇ………あ、そ、その、大樹さん」
「はい?」

 じっと、見つめられる
 サングラスを外した状態での、優しい眼差し
 翡翠色のそれに包み込まれ、望は赤くなってしまって
 やや視線をそらしつつ、答える

「そ、その……こ、今夜は、一緒に寝てもいい?……さ、寒くなりそうだし」

 言い訳も、一緒につけて
 己の願いを、口にする

「えぇ、構いませんよ」

 望の願いに、気付いているのか否か
 当たり前のように、そう答えてくれる大樹
 大樹の優しさに、包み込まれているような感覚を覚えて

 望は、心から、心から
 幸せに、笑ったのだった









fin






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