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連載 - 我が願いに踊れ贄共・頭のあったかい子-11

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だれでも歓迎! 編集
 どれだけ、走っただろうか
 それすらもわからないまま、ニーナは走っていた
 ただ、なるべく、人のいない方向へ方向へ、と進んでいたような気がする

「嘘、嘘、嘘……あんなの、嘘………っ、そんな訳、ない……っ」

 口から漏れ出すのは、否定の声
 違う、違う、と
 蘇りかける記憶を否定する

「嘘、違う……だって、エイブラハム司祭様は……私を、保護して、くれて………っ」

 脚がもつれ、転んでしまう
 気付けば、ずいぶんと人気のない場所に来てしまっていた
 周囲に、人影はない

「う……ぁ……」

 ぼろぼろ、ぼろぼろと、涙がこぼれ落ちる
 違う
 あんな光景が、事実であるはずがない

 ならば
 この記憶は、何なのだ?

 祖父は、あの淫魔に殺されたはずなのだ

 ジャア、ナゼ、ソフハアノインマトシタシゲニシテイタ?

 突然、あの淫魔がやってきて……自分に、襲い掛かってきて
 それから、祖父が、自分を庇ってくれて……そして、殺されたのだ

 チガウ、ソフハ、アノインマトソレヨリマエカラシリアイダッタ

 目の前で、祖父を殺されて
 怯えていた時に、エイブラハム司祭達が来てくれて……

 ホントウニ?
 ソレジャア、ソフヲフミツケテイタノハダレダ?


『-----ッ踏まないで!!』


 あの、叫びを
 自分は、誰に向けたのだった?

「………ぅ」

 痛い、痛い、痛い、痛い、痛い……
 記憶が、這いずりあがってくる
 ズキズキと、なぜか、背中が痛んだ

 矛盾した、暖かな記憶
 それと一緒に、何か、別の記憶も這い上がってきて…

「………ぁ」

 涙を流し続けるニーナ
 その、目元に
 そっと……誰かの手が、当てられた



 ……追いついた!
 人の多い商店街を駆け抜けて行ったニーナ
 追いつくのに、若干、時間がかかってしまった

 星が、ニーナを見つけた時
 その、ニーナの傍に……ぶかぶかのローブを着て、長い杖を持った、長身の男の姿が、見えて

「っ!?」

 何者かは、わからない
 だが、ニーナの状況が状況だ
 星は走る速度を速める

「っ【ニーナから、離れ……】」
「忘れろ、思い出すな」

 ぼそり
 ローブを着た、その男は
 座り込んでいるニーナの傍らにしゃがみこみ…その目元を、手で覆っていた

「思い出せば、お前は壊れる。思い出すな。忘れろ。壊れたくなくば、その記憶、封じてしまえ」
「…………ぁ」

 ぷつん、と……糸の切れた、人形のように、ニーナが倒れこむ
 ローブの男は立ち上がり……駆けつけてきた星に気付いて、ニーナから距離をとる

 慌てて、星はニーナを抱き上げた
 …気を失っているようだ、外傷は、ない
 その頬は、涙でうっすら濡れていた

「…ニーナに、何をした?」
「何だよ。俺様、悪い事はしてないぞ」

 敵意をにじませる星の言葉に、ローブの男はむくれた表情をして見せた
 …何だか、ずいぶんと子供っぽい男だ

「俺様は、そいつが思い出したらヤバそうな事を、一旦忘れさせてやっただけだぞ?思い出したら、あの気に食わない野郎の思い通りになっちって…その餓鬼、壊れるぞ」

 あっさりと、残酷な事を言い放つ
 思い出せば、ニーナの心が壊れると
 まるで、確定しているかのように、男は言い切った

「そんな餓鬼、どうなろうと知ったこっちゃねーけど。そいつが壊れたらカインが悲しむから、俺様嫌だ」
「…どう言う事だ?」

 警戒はとかないまま、ニーナを抱きかかえる
 いつでも、攻撃できるように
 いつでも、ここから離脱できるように

「どういう事って、簡単だよ。そいつは、利用されてて、本当の事を思い出したら発狂する。俺様はそうなると不都合だから、そうならないようにしてやった。そいつを助けてやったんだぜ?」

 ありがたく思えよ、と
 けらけら、男は笑って
 ……直後、その姿は、漆黒の蝶の群れへと変わった
 ひらひら飛び回り、姿を消していく

「……助けた?よく言うよ」

 確かに、ニーナは助かったかもしれない
 …だが、一時的なものに過ぎない
 あの男がやった事は、ただ、その瞬間が訪れるのを遅らせただけに過ぎない
 根本的に、ニーナを救ったわけじゃ、ない

 小さく、寝息を立て始めたニーナ
 恐ろしい夢でも見ているのだろうか、小さく、震えて


 ……ぎゅう、と
 自分を抱き上げている星のスーツを、その小さな手でしっかりと握り締めたのだった






to be … ?





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