…そこは、静寂に包まれた空間だった
厳粛な雰囲気が、その場を支配する
厳粛な雰囲気が、その場を支配する
武者姿の男が、そこで杯を手に、酒を口にしていた
隣に、優美な着物を纏った美女でもいればまるで絵巻物の世界、と言ったところだが…
その武者の隣に居るのは、スーツを身に纏い、眼鏡をかけた女性である
女性の傍らには、長い髪を揺らす生首の少女が浮かんでいる
隣に、優美な着物を纏った美女でもいればまるで絵巻物の世界、と言ったところだが…
その武者の隣に居るのは、スーツを身に纏い、眼鏡をかけた女性である
女性の傍らには、長い髪を揺らす生首の少女が浮かんでいる
「…くくっ、良い月夜だな」
「えぇ、そうですね」
「えぇ、そうですね」
主の言葉に、女性は微笑む
本当に、綺麗な月だ
武者の杯に注がれた酒に、その月が映り…何とも風流である
本当に、綺麗な月だ
武者の杯に注がれた酒に、その月が映り…何とも風流である
「これで、配下が揃っておれば、なお良いのだがな…」
「焦ってはいけませんよ。質の悪い配下ばかり集まっても嫌でございましょう?」
「…それもそうだな」
「焦ってはいけませんよ。質の悪い配下ばかり集まっても嫌でございましょう?」
「…それもそうだな」
自分は、部下の裏切りが原因で、かつて敗れた
同じ負け戦をするつもりはない
だからこそ、今回は入念に準備を進めている
時間は、いくらかかってもいい
質の良い、決して自分を裏切らぬ部下を集めるのだ
…隣にいるこの女は、その一人
女を戦わせるなど、本当ならば、己の信念に反する事ではあるが
しかし、この女は勇敢にも、自分と並んで戦うというのだ
その思いを踏みにじるつもりはない
同じ負け戦をするつもりはない
だからこそ、今回は入念に準備を進めている
時間は、いくらかかってもいい
質の良い、決して自分を裏切らぬ部下を集めるのだ
…隣にいるこの女は、その一人
女を戦わせるなど、本当ならば、己の信念に反する事ではあるが
しかし、この女は勇敢にも、自分と並んで戦うというのだ
その思いを踏みにじるつもりはない
ぐい、と杯の中の酒を飲み干す
女は微笑み、すぐに杯に酒を注いできた
己に忠実な、決して、自分を裏切ってこない部下
…ならば、自分も、それを裏切るような行動は取るまい
武者は、そう考えていた
女は微笑み、すぐに杯に酒を注いできた
己に忠実な、決して、自分を裏切ってこない部下
…ならば、自分も、それを裏切るような行動は取るまい
武者は、そう考えていた
「……っと。将門様、お目覚めになってたんすか…」
「……くくくくっ、どうした?起きていては悪いか?」
「いえ、そうじゃないっすけど…珍しいっすね」
「……くくくくっ、どうした?起きていては悪いか?」
「いえ、そうじゃないっすけど…珍しいっすね」
と、この空間に、若い男が一人、入り込んできた
武者の目には、まるで異国人のように映る姿だが、自分と同じ、この国の生まれである若者
武者の下に集ってきた人材の一人だ
…武者の敵である「組織」の中に、どうしてもこちらに引き込みたい者がいると言い、常に引き込む機会を狙っているようだが…
武者の目には、まるで異国人のように映る姿だが、自分と同じ、この国の生まれである若者
武者の下に集ってきた人材の一人だ
…武者の敵である「組織」の中に、どうしてもこちらに引き込みたい者がいると言い、常に引き込む機会を狙っているようだが…
「また、失敗したか」
「はい…その、すんません」
「くくくく…!気にするでない。まだまだ、時間はたっぷりとあるのだ」
「はい…その、すんません」
「くくくく…!気にするでない。まだまだ、時間はたっぷりとあるのだ」
珍しく元気のない青年に、武者は笑いかけた
今のところ、集まった部下の中で、もっとも忠実な若者
その苦労を労うのも、主たる自分の役目だ
今のところ、集まった部下の中で、もっとも忠実な若者
その苦労を労うのも、主たる自分の役目だ
「さぁ、お前もこっちに来て飲むといい。今宵は良い月が出ておるでな」
「はぁ……んじゃあ、お言葉に甘えて」
「はぁ……んじゃあ、お言葉に甘えて」
じゃらじゃらと、身につけている装飾品を鳴らしながら、若者は近づいてきた
己の隣に、座らせてやって、女に酌をするよう言う
女は微笑み、新たな杯を若者に持たせると、すぐに酒をそそいだ
ぐい、と若者はそれを煽る
己の隣に、座らせてやって、女に酌をするよう言う
女は微笑み、新たな杯を若者に持たせると、すぐに酒をそそいだ
ぐい、と若者はそれを煽る
「…将門様」
「うん?」
「また、マッドガッサーとか言う奴が、町に入り込んだんすけど…どーします?」
「遭遇し次第消せ。弱き者を踏みにじる存在など、不愉快だ」
「……りょーっかいっす」
「うん?」
「また、マッドガッサーとか言う奴が、町に入り込んだんすけど…どーします?」
「遭遇し次第消せ。弱き者を踏みにじる存在など、不愉快だ」
「……りょーっかいっす」
新たに注がれる酒を見つめながら、青年は頷いた
ゆらり、酒に月が映る
ゆらり、酒に月が映る
若者と女が、頷いてきた
そうだ、それでいい
全ては、来るべき戦いの日に備えよ
そうだ、それでいい
全ては、来るべき戦いの日に備えよ
----首塚ヲ汚ス者ニ、災イアレ
首塚に祭られる平将門は、二人の部下を前に、しばし、月見酒を楽しんだのだった