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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - Tさん、エピローグに至るまで-神智学協会決戦-14

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 徹心のおっちゃんについてずっと不思議に思っていた事があった。千勢姉ちゃんが言っていた、徹心のおっちゃんについてたっていう渾名、天帝の禁軍とかいう奴だ。
 徹心のおっちゃんの都市伝説は≪桃源郷≫、こっちもなんかスゴイ都市伝説だけど、これまで何日かすごしてきても軍なんて言われるような能力を持ってるようには見えなかった。それなのになんであんな渾名が付いたのか。その理由が今はっきりした。
 それと同時にあまりこういう動く死体的なのに慣れてない俺にその〝軍〟の正体を隠していたのにも気付く。
「気を使ってくれるのは嬉しいんだけどさ……でもさ徹心のおっちゃん、過保護だぜ? 多少死体が動いてても俺は大丈夫なんだからよ」
「すまない。伏見君くらいの娘さんの心情はなかなか僕のようなおじさんには分からないからね」
 徹心のおっちゃんが困った顔をする間にも呼び出された≪キョンシー≫達はオルコットの軍団に向かって既に進んでいる。手にはそれぞれ桃の木で作った剣とか棍棒を握っている。何か難しい文字が達筆に書いてある顔の札がすっげえ邪魔くさい気がするんだけど、あれは大丈夫なんだろうか?
 訊いてみると徹心のおっちゃんはそうだねえ、と苦笑して≪キョンシー≫達を示した。
「彼等はもう意思以外はほとんど死んでしまっているからね、体の機能もしかり、だから普通の視覚に頼る必要がないんだ」
「でも、あのぶきじゃ……」
 モニカが木で作られた武器を指さして不安げに言う。うん、木で出来た武器で銃とか剣とかのちょっと文明っぽさを醸し出してる武器を構える凍死兵達の相手はなかなか厳しいんじゃねえかと俺も思う。
「あの木は僕のと同じ、≪魔除けの桃≫の木で作られた武器だ。桃木の退魔の力は僕との契約によって退魔の力の対象を僕の敵意が向くモノへと拡大解釈されている。普通の鋼で作られた武器よりもよっぽど使えるよ、あれは」
 ≪キョンシー≫達が凍死兵達とぶつかった。
 ≪キョンシー≫達は凍死兵達を危なげなく倒していく。桃の結界のおかげで結界内を狙った射撃系の武器は弾が全部途中で叩き落とされて使い物にならないし、桃の結界から出て凍死兵の相手をしている≪キョンシー≫達は、銃を向けてきた凍死兵達も圧倒している。剣に対してぶつけられる木剣も押し負けてはいないみたいだ。
「あの動き……徹心さん、あなた確かさっきあの≪キョンシー≫達は元は死後も仕えると誓ってくれた人たちだって言ってたわね……もしかして」
「うん、彼等は元々≪拝上帝会≫で僕の下にいた者達だよ。あの戦火の時代を共に駆け抜けた者達だ。そこら辺の動死体とは一味違う」
 ≪キョンシー≫達は桃の結界がまだ残ってる所を移動して凍死兵達に近付いては木の武器で思いっきり兵達を叩いていた。桃の木の魔除けの能力のおかげなのか、攻撃を喰らった凍死体達はぶん殴られた部分を中心にしてバラバラに砕けていく。
 でも、
「オルコットの野郎、なんだよあの動き……」
 オルコットの動きは≪キョンシー≫達を越えて凄まじい。俺なんかじゃとても目が追い切れない激しさの動きだった。
 攻撃を仕掛けにいった≪キョンシー≫達を両断したかと思うと、次の瞬間には桃の木をまた切り裂いて道を作って、また次の瞬間には襲いかかる≪キョンシー≫達をぶった切っていく。
 凍死兵達は数を減らされてもまだまだ川の下流の方から現れてくる。このままだと押し負けるんじゃないか? そう思ったところで徹心のおっちゃんが俺達に言った。
「下がっていてくれ。このままだとここも危ないからね」
「おっちゃんはどうすんだよ?」
「僕は≪キョンシー≫の皆に指示を出さないといけないから、ここに残るよ」
「じゃあ俺も残る」
 徹心のおっちゃんは眉間を揉みほぐし始めた。
「伏見君、向こう見ずな勇気は褒められたものではないよ?」
「じゃあ徹心のおっちゃんはしっかり生き残る気、あんのかよ?」
「あるよ」
「嘘だぜ」
 俺の即断にうーん、と困ったように唸りながら徹心のおっちゃんは戦場に体は向けたまま、横目で俺を見る。
「それはどういうことだい?」
「徹心のおっちゃんはこの戦いの後に生き残る気はないってことだよ。せいぜいオルコットと同士討ちになるとかそんなとこだろ?」
「どうしてそう思うんだい?」
 言葉からはどう窘めたものかといった風情が感じられる。くそ、子供扱いしやがって。自分の事もよく把握できないくらい精神的にキテるくせに……。
「徹心のおっちゃんはオルコットと進む道を別々にしてからオルコットとずっと戦ってきたんだろ? その途中で仲間とか失くしたって言ってたし、あの≪キョンシー≫達だってそうなんだろ? そんな中で負っていく事になった心の負担は相当すごいもんだろうが。そんなのが溜まってる中でオルコットとの決着がついちまえばさ、そのまま生きる事に執着を失くして自殺しちまうんじゃないかって思ったんだ」
 徹心のおっちゃんが面くらった顔をしている。微妙に引き攣ってる所をみるにようやく自覚しやがったな。ふははざまぁ見ろ!
「――と、Tさんと千勢姉ちゃんが言ってた」
「そうか……」
 小さく言った徹心のおっちゃんは深く息を吐き出した。
「そうだね、もしかしたらそうなのかもしれない。僕自身はあまり自覚はしていないけれども……ね」
「そうだろうから一人にはできるだけしないでほしいって言われてるんだ。だから見張ってるぜ? おっちゃん」
 どうしたものか、と今度は口に出して呟いて、徹心のおっちゃんはもう一度確認するように言ってくる。
「危険だよ?」
「んなこと知ってる」
 なぁ? とフィラちゃんやリカちゃん、モニカに同意を求める。皆頷いて返してくれる。だから、
「でもさ、ここから離れても徹心のおっちゃんがやられちまえば皆危険なのには変わりないんだしさ、それなら俺達を護ってくれるおっちゃんのとこに残ってた方がいいだろ? それにTさん達もすぐに助けに来てくれるだろうしな」
「そうか……参ったなぁ、若い若い」
「あ? なんだよおっちゃん?」
「いやいや、僕にはすぐに意中の人が助けに現れるなんていう希望は持てないからねぇ」
 しきりに頷いているフィラちゃんにセクハラしてやりてえがここは我慢だ。
 徹心のおっちゃんは分かった、と頷いた。
「そうだね、僕が死に急がないよう、君達が見張ってくれているというのはありがたいな。でも一応覚悟はしてくれ」
 徹心のおっちゃんはそう言って顔を顰めた。
「状況はこちらが不利だ」
 何かが爆発したような腹に来る大きな音がして、≪キョンシー≫が5人くらい一気に吹っ飛ばされた。
 更に木が何本も伐採される。結界が削られる音がして、オルコットから俺達までの直線距離が縮まった。
「捉えたぞ、徹心」
「……まだだよ、オルコット、木々の根はまだ生きているんだからね」
 徹心のおっちゃんが木剣を振った。それをスイッチにしたみたいに地面が淡い桃色の光に輝いて、桃の木の切り株が≪魔除けの桃≫としての能力を発動した。
 いままでオルコットが斬り進めてきた道全体がまた桃の結界に覆われて、切り拓いた道を進んできていた凍死兵達が結界内に一息に呑みこまれてまとめて崩壊する。
 ≪キョンシー≫達が桃の結界の再発動に合わせてオルコットや凍死兵達から一旦身を離して徹心のおっちゃんの所へと駆けよって来た。
「……伏見君達、皆気を付けて」
「え?」
「大きいのがくる……っ」
 徹心のおっちゃんが見据える先、オルコットが結界に包まれたままで地面に剣を突き刺した。
「根が結界を発動する媒体になるというのなら、それすら吹き飛ばせばいいだけの話だ……徹心ッ!」
 瞬間、色の爆発がオルコットの周囲とその背後を地面ごと吹き飛ばした。
 ≪キョンシー≫が出てきた時とは比べ物にならない土の壁が立ち上がる。
「うわああ!?」
「舞ちゃん、モニカ、ケウもこっちへ!」
 飛んできた土砂を避ける為にフィラちゃんが≪フィラデルフィア計画≫の鉄箱を喚び出してくれる。
 頭の上のリカちゃんと一緒に鉄箱の中に飛び込む。鉄の箱を土砂が打つ音が鉄箱内に反響しまくった。
 それがおさまった頃を見計らって外に出てみると、オルコットとその周り、そして背後からあふれてくる凍死兵のいる辺りの土が全部ひっくり返されていた。乱暴に耕されたようになっている地面の一番前で剣を地面に突き立てていたオルコットは刃を引き抜く。
「地盤ごと消し去れば桃園の結界も発動しまい」
 後ろから荒れた土地を問題なく歩いてくる凍死兵達を確認して、オルコットは剣に複雑な色の光をまた纏わせ振り上げた。
「木の伐採程度で止められぬなら、この土地を鋤き返すのみだ」
「やはり結界では囚えきれないか……」
 土砂を木剣で払って徹心のおっちゃんが苦しそうに答える。
 ≪キョンシー≫達を俺達の近くに配置して構えさせてはいるけど、≪キョンシー≫達じゃオルコットは止まらない。このままだとオルコットに桃の木や土地ごと俺達も耕かされちまう。
「モニカを奪う。派手に行くぞ、しっかりと護れ」
 オルコットが剣を地面に叩きつけようとする。
 さっきの一撃でオルコットの後ろにあった桃の木が全部吹っ飛んだんだ、それが全部前の方の道を破壊する為に威力を集中させれば、たぶん俺達の所まで一気に道が開いちまうんじゃないだろうか?
 徹心のおっちゃんが≪キョンシー≫に指示して俺達の前を護らせる。
「皆、≪ジュワユーズ≫の一撃が来る。耐えてくれ!」
 その言葉が終わるか終わらないかの内にオルコットが剣を叩きつけようとして、
「――ッ」
 それを後ろから襲った光の弾に邪魔された。
「これは……」
 光の弾を切り裂いて後ろを振り向いたオルコットの視線の先にはやっぱりあいつがいた。
「Tさん!」
 Tさんは凍死兵の間を縫うように走る黒い馬に乗っていた。馬の手綱を握ってるのはボロボロになった鎧を着た騎士のおっちゃんだ。上手いことモニカと話し合いをさせるように説得できたらしい。寺生まれはスゴイ……。
 Tさんは馬から飛び下りて桃の木の結界に入りこんで、オルコットを押さえに動いていた≪キョンシー≫達と状況を確認し合いながら告げる。
「オルコット、悪いがモニカには先約がある。騎士との会話が終わるまで、俺の相手でもしていてもらおう」
「Tさん……虎の子が出てきたか」
 オルコットはTさんに剣を向ける。
「どこまで保つのか、私が試してやる」
 白色の光と複雑な色合いの光が、俺達の目の前で桃色の結界を挟んで激突する。





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