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連載 - 那由多斬-08

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Retsuya

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甲高い金属音が森の中に響く
互いが互いの刃を押し退け、大きく後ろへ跳んだ

「あら、子供の割にはなかなかやるじゃない」
「っちぃ、只者じゃぁないねぇ・・・エーヴィヒ、ちょっと降りてて」
「その方が良さそうだね」

ひょい、とルートの肩に乗っていた白いネコ――エーヴィヒが跳び下り、早々と草むらに隠れる
その一瞬後に、再びルートとナユタの刃がぶつかり合った
二撃、三撃、相手の命を奪うべく急所を狙うが、互いに全てを防ぎきる

「ヒャハッ・・・テメェやっぱッ、すごいじゃないのぉ! 一体何人殺してきた訳ぇ!?」
「貴方も人の事はッ、言えないわね! 私と一緒に組まない?」
「悪いけどお断りよぉ! アタシはもう、自己満足の為に人を殺すのはイヤ!!」

力を篭め、粘性を持った黒い刃で強い一太刀を決める
ぐらり、ナユタの身体がバランスを崩した

「っ、し、しまっ――――」
「ヒャハハハハハ!! 『ドリンゲント・オペラツィオン』!!」

ルートはその隙を見逃さない
右の五指、左の五指の先端から1本ずつ、計10本もの仄暗い刃を出現させ、
5つのクロスを描くように、ナユタの細い身体を斬り刻もうとした―――――

「―――――っれ?」

が、それは見事に空振ってしまった
目の前にいた女性が、完全に消えてしまっている
何処へ行ったのか―――考える前に、ルートは5本の刃を背後に向けた
がきぃんっ!とまたしても金属音が鳴り響いた

「っ、成程ね、同族は相性が悪いのかしら?」
「あんまり認めたくないけど、それが正しいようねぇ!!」

一気に畳みかけるかのように、ラッシュをかけるルート
『敵を殺すなら背後から狙う』―――手段を選ばず、早めに決着をつけたいなら誰もがとる戦法だ
ルートはこの短時間で、ナユタの性格や戦術を把握し、次の行動を予測したのだ

(確かに手強いけどぉ・・・トップの姉貴ほどじゃない!)

刃を突きたてるが、寸前で避けられ地面に刺さってしまった
代わりに隙を狙ったナユタだったが、ルートは刃を分解して彼女との距離を取る

「良い選択ね・・・でも逃げるばかりじゃいつか死んじゃうわよ?」
「何も考えないで逃げる訳ないでしょぉ?」

ヒャハハ、と嘲笑いながら、彼女は手を開いて前に差し出した

「今は敵だけど、初めて出会った同族さんに・・・アタシからのプレゼントぉ♪」

掌から、ドロドロと黒い液体が溢れ出るように出現し、
それは次第に天へ向かって伸び、ぬるりとうねる蛇が3匹形作られた

「眠りなさい、この贈り物(ギフト)で・・・よぉく眠れるこの(ギフト)でぇ・・・『ギフト・ギフト』♪」

ルートの指示と同時に、3匹の蛇が動き出す
黒い蛇達は口を開いて牙を剥き、ナユタを食らわんとして襲いかかった

「くぅ・・・っ!!」

蛇がナユタの元へ達しようとした時、
彼女の周りを、怪しい紫に燃える炎がぐるりと囲んだ
その炎に触れた蛇は、次々とその姿が崩壊していった

「えっ!? な、何よあれ・・・」
「ギッハハハ・・・ごめんなさいねぇ? こっちもまだ死ぬ訳にはいかないのよ!!」

ルートの攻撃を防ぎきったナユタは、
「ティルヴィング」を天に掲げ、重い声で唱えた

「“剣よ、一帯の木々を薙ぎ払い、光を呼びなさい”!!」

直後、どっ!!と激しい突風が森中に吹き荒れ、ルートは思わず身体を小さくするように身構えた
目を覆う腕の隙間から見た光景に、彼女は驚いた
吹き荒れる風によって、周囲の木々が次々と倒されてゆく
木陰で支配されていた地上に、陽光が差した

「ち、ちょっと、何よ今のはぁ!?」
「まずいよ、あれは「ティルヴィング」・・・所持者の願いを叶える剣だ」

ルートの隣に、豹の姿をとったエーヴィヒが駆け寄った
気づけば、風も止み、静かになっていた
その静寂も、ルートの目の前にいる人の皮を被った悪魔の所為で一瞬のものとなってしまった

「楽しかったわぁ! けどこれで終わりにしてあげる!!」

ぎらり、「ティルヴィング」の刀身が強く輝いた
それはまるで、太陽が地上に降りてきたかのような、目が眩みそうな輝き

「―――――――避けろ!」
「えっ!?」

エーヴィヒはその輝きの正体を、己の能力で読み取り、叫んだ
が、遅かった

「さぁ、照時間(ショウタイム)よ!!!」

刃から放たれる、熱を持った眩く白い光条
草を、大気を、全てを飲み込み焼き払うそれを、寸での処で跳び退いた
しかし、完全には躱し切れなかったようだ
右肩が抉れ、袖口を伝って赤い血が滴る

「くっ、無事かい!?」
「っ痛ぅ・・・ッヒャハ、なぁんだ、やればできるじゃないのぉ・・・」
「あら? 強がりは良くないわよ、諦めてもう死になさい?」
「そう、ねぇ・・・死んでも、いいかも知れない・・・
  どうせ、帰るところもないし、アタシなんかが生きてたら、アタシが殺した皆が許せないだろうしぃ・・・
  でも何でだろうねぇ? テメェには・・・テメェにだけは、ぜぇったい殺されたくない!!」

襤褸になった上着を破り捨て、晒しだけの幼い身体を露わにし、戦える左手を構えた

「まだやる気なのかい? これ以上の戦闘は―――」
「言ったでしょぉ!? テメェは下がってなさい!!」

怒声に、びくりと身体を飛び上がらせるエーヴィヒ
軽く舌を打つと、渋々身を下げた

「ギハハハ・・・生意気な娘ねぇ
  そんな生意気な塵芥(ゴミ)に・・・粛清の炎を、裁きの光を、断罪の剣を!!」

切っ先をルートに向け、ナユタは再び光条を放つ
光は真っ直ぐに少女へと向かい、小さな身体を容赦なく――――

「『オイタナジー』!!!」

―――容赦なく飲み込む寸前、ルートは左手を突き出し手の中の黒い塊を解放する
渦巻く闇の如き塊は爆発的な力を発揮し、一本の光条へと成長する
ナユタの白い光条に対して、常闇の黒い光条
徐々に、徐々に、黒が白を押していく

「嘘っ!? こ、こんな力がまだ・・・!?」
「テメェに一つだけ教えてあげるわぁ・・・
  女の子はねぇ、ワガママで幾らでも強くなれんのよぉ!!!」

じりじりと押し続ける黒い光条は、
やがてナユタに届く一歩手前まで白い光条を抑えた

「まずい・・・“剣よ、爆風から私を守りなさい”!」

コンマ1秒経っただろうかという所で、光は爆発した
先程のナユタの願いは成就され、その身体は無傷に終わったが、
爆風によって巻かれた煙で、ルートの姿を見失ってしまった

「ちっ、一体何処に!?」

右、左、何度も何度も辺りを見回す
一向に煙が晴れず、一歩も動けぬままだったが、

「――――――――そこね!」

ざんっ!!
金の柄の剣が、確かに何かを斬り裂いた

「え・・・ぁ・・・う、そ?」

力無き声、力無き音
少女の身体は空しくも、その場で崩れ落ちた

「ギッハハハ・・・ギハハハハハハハハ!!
  呆気なかったわねぇ、こんな終わり誰が想像したかしら?
  殺されたくなかった相手に殺される気分はどう? 同族の塵芥(ゴミ)ちゃん?」

冷たい笑みと視線を亡骸に向け、
冷ややかな態度で見下ろし、無情にも倒れた亡骸を蹂躙した

「・・・ッ!? こ、これは・・・!?」

靴を履いていても伝わる違和感
人間の、しかも子供の身体にしては、硬すぎる
そう思った瞬間に、それは亡骸ではなくなった
ナユタが薙ぎ倒した大木の内の1本だったのだ

「ど、どういうこと――――」
「ありがとぉエーヴィヒ! 『ギフト・トロプフェン』!!」

煙の向こうから声と、無数の痛撃が届いた
幾つもの、幾つもの針を撃ちだされたかのような痛みが、ナユタの背面から襲う

「っあ゙ぁ!?」

前のめりに転倒しそうになるが、必死に立ち堪える
煙が晴れると、勝ち誇った様子のルートと、その相棒が悠然と立っていた

「もぉ終わりよぉ・・・今度は、テメェが諦める番」
「は? 何を言い出すかと思えば、ちょっと気が早いんじゃないかしrっ!?」

その時だった
ナユタの身体が、ぴくりとも動かない
同時に、自身の身体のあちこちに激痛が走り、体温が上がっていることに気づいた
原因は紛れもなく、今自分の目の前で笑っている少女だ

「・・・な、にを・・・」
「ヒャハ♪ ちょぉっとテメェの身体の支配権を奪っただけぇ・・・っていうとかっこよすぎるかなぁ?
  要はテメェの脳を弄って、アタシの言うことを聞くようにしてるだけよぉ」
「なる、ほどね・・・ギハハハ、面白い、能力だわ・・・完敗よ」
「だったらぁ、大人しく―――」
「“そんな貴方に花を差し上げましょう”」

ひらり、ルートの前に紫がかった花が一輪舞い落ちる

「・・・?」

彼女がその花を拾いあげた次の瞬間、“女性”は息を引き取った

   ...続/Requiem

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