「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 仄暗い魂-19

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Retsuya

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(ルート>・・・な、何ぃ? 何がどうなったっていうのよぉ?

目の前に、舞い落ちた一輪の花
目の前で、力無く倒れた1人の女性
エーヴィヒは豹の姿のまま、ぴくりとも動かない女性に近寄り、鼻先で揺する

(エーヴィヒ>・・・残念だけど、既に死んでるよ。参ったね、「ティルヴィング」の能力だ
(ルート>能力? 願いを叶えるだけじゃないのぉ?
(エーヴィヒ>うん。その願いなんだけど、それは3つしか訊いてくれなくてね
       3つの願いを叶えた直後、「ティルヴィング」は所持者の命を奪う
(ルート>ッ!? じ、じゃあ、あいつ自殺したのぉ!?
(エーヴィヒ>そこなんだよ、妙な点は・・・この女性から、都市伝説の気配がしない
       例え契約者が死んで、都市伝説の契約が切れたとしても、その痕跡は僅かに残る筈だけど、
       その痕跡すらも感じられない・・・こんなこと、初めてだよ
(ルート>え・・・それじゃぁ、さっきまで戦ってたのは一体・・・?

ルートは、落ちている花を拾い上げた
淡い紫の花弁が美しい、小さな花だった

(ルート>この花・・・えっと、『ミヤコワスレ』、だっけ?
(エーヴィヒ>『ミヤコワスレ』・・・“また会う日まで”
(ルート>・・・何それ?
(エーヴィヒ>花言葉だよ・・・恐らく、まだ生きてるね
(ルート>生きてるぅ? 何言ってんのよ、この女はもう死んでるって―――
(エーヴィヒ>それは抜け殻に過ぎなかったとしたら?
       その女性は何者かに洗脳、または寄生、憑依されて、利用されていただけかもしれない
       そしてその主は――――――




「そこにいるのは誰だ?」




突然響いた、冷たさを覚える少女の声
あまりに驚き、思わずルートとエーヴィヒは小さく跳び上がった

(ルート>っま、まだ人間が!?
(エーヴィヒ>本体かも知れない、油断するな!

咄嗟に身構え、声のする方向を見た

(少女>・・・ん? 貴様、もしかして元R-No.10か?
(ルート>なっ、テメェなんでそれを――――――――――――あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?

声が聞こえた時の数十倍驚き、腰まで抜けてしまったルート

(エーヴィヒ>・・・知り合いかい?
(ルート>う、うん、1回しか会ったことないし、話したことは一度もないんだけどぉ・・・

それでも、その少女は記憶の片隅には必ず残るであろう面影だった
肩まで伸びたシルクのように美しい白い髪
12歳程の外見に似合わぬ豊満なバスト
刺さるように冷たい視線を繰り出す灰色の瞳
何もかもが、「組織」時代に焼きついた記憶を呼び覚まし、ふと、呟いた

(ルート>ぼ・・・ボインの姉貴ぃ!!
(少女>もっとマシな呼び方はなかったのか?;

そう、彼女はR-No.4――レクイエム・リッケンバッカーだった





     †     †     †     †     †     †





(ルート>・・・すごぉい、ホントに治っちゃったぁ・・・
(レクイエム>あくまで怪我を治すだけだ、体力までは治せん。あまり無理はするなよ?
(ルート>はぁーい・・・ところで、
(レクイエム>ん?
(ルート>ボインの姉貴って・・・そんなキャラだったっけぇ?
(レクイエム>キャラ? 何がだ?
(ルート>何が、って・・・

じーっ、とルートが見つめ続けているのは、レクイエムの胸元
男なら誰しもが飛びつきたくなるだろう巨乳の谷間に、白いふさふさの毛が見えていた
何故か、エーヴィヒが谷間に入っている
それはエーヴィヒの意志ではなく、レクイエムが自分で入れたのだった

(ルート>アタシのエーヴィヒ、返してよぉ
(レクイエム>す、少しぐらい良いだろ?・・・こ、こんな魅力的な生き物を連れている貴様が悪い
(エーヴィヒ>僕としては、窮屈で堪らないんだけどね・・・

口数が少なく、他の追随を許さない、クールでナイスバディな上位ナンバー
ルートが描いていた彼女のイメージは、この数分のやり取りで一瞬にして崩れていった

(ルート>・・・
(レクイエム>・・・どうした?

上の空になっているルートに、渋々エーヴィヒを返しながら問うレクイエム
突然声をかけられたのと、もう一つ別の理由で、少し慌てふためいた後、ルートはそれに答えた

(ルート>え、あの、えぇっとぉ・・・その、は、初めて、だったからぁ・・・
     ボインの姉貴と、こうして話すのって
     だから、少しイメージと違うなぁ、って・・・
(レクイエム>なんだ、そんなことか・・・ふふ、イメージか
       似たようなことを他の連中にもよく言われる
(ルート>そ、そうなの?

エーヴィヒを受け取りながら、小さく首を傾げるルートを横目に、レクイエムは近場にあった木に背を持たれた
先のルートとナユタの戦闘の所為で、木の葉は散ってしまっていたが

(レクイエム>ローゼから、貴様の話は聞いている・・・
       「組織」を抜けた時の事も、その理由も、その後もだ
(ルート>っ・・・ね、ねぇ、ボインの姉貴は、アタシを殺しにきたの?
(レクイエム>ハァ? 冗談だろう? 私はここで都市伝説の契約者による戦闘があったと聞いて来ただけだ
       事後処理班の長として、な?
(ルート>で、でも、アタシは、仲間を殺した裏切り者だし、それに、罪もない一般人も殺した・・・
     「組織」なら、アタシを仕留めて、それじゃなくても捕まえた方が良いんじゃない?
     こんなところ、他の誰かに見られたら、ボインの姉貴まで裏切り者扱いされちゃうよぉ・・・?

心配そうな面持ちで訴えるルート
それを聞き、レクイエムは、優しげに微笑んだ

(レクイエム>そこまで私の身を案じてくれる者を、犯罪者として捕らえられると思うか?
(ルート>で、でもぉ・・・
(レクイエム>それに、だ・・・私も、昔は貴様と同じだった
(ルート>同じ?
(レクイエム>私は、都市伝説と関わっただけの、何の罪もない人間を殺していた
(ルート>―――――――――ッ!?

思わず、目を見張った
腕の力が抜け、落ちそうになったエーヴィヒは、
すたっ、とネコ特有の身体能力で見事に着地して見せた

(レクイエム>その方が私のイメージに合うだろう?
(ルート>い、いや、そういう問題じゃなくてぇ・・・え、じ、じゃあ、今は?
     さっきも、トップの姉貴と話してたとかって・・・
(レクイエム>トップ?・・・あぁ、ローゼの事か
       以前は、私とあいつは意見が対立していた。時には拳も交えた
       分かりあえる日など、一生来ないと私も思っていたが・・・

ふと、彼女は空を見上げた
雲一つ無い、清々しいまでの青空が広がっていた

(レクイエム>・・・戦場で、私はある男と出会った
(ルート>・・・?
(レクイエム>まだ少年の、若い契約者だ
       最初は敵同士だった。それが、ローゼと似たような男でな?
       他人を守る為なら、自分の命さえも投げ捨てる、無謀すぎる男だ

話している内に、レクイエムの目が、懐かしい何かを見るような目に変わってゆく

(レクイエム>私は奴に負けた。だが、奴は私を殺さなかった
       数々の人間を殺した殺人鬼である私を、あいつは生かした
       あの時、私は人の温もりと言うものを教わった
(ルート>人の・・・温もり・・・
(レクイエム>『この世に生まれて、一生独りぼっちなんて事は絶対にない』・・・その男が私に言った言葉だ
       先程の貴様のように私の身を案じてくれる者などいないと、そう思っていた
       だが、あいつと出会って、言葉を交わして
       身体の中から、穢れが洗われているような気分だった
       あいつは、居場所がなかった私に、居場所をくれた・・・いや、気づかせてくれたんだ

ちら、とルートを見るレクイエム
ん?と思わず首を傾げた
何故か、ルートがにやにやと笑っていたのだ

(レクイエム>・・・何だ?
(ルート>ヒャハ♪ ボインの姉貴、その人の事好きなんだぁ?

ぼんっ!
とでも鳴り響くかの如き勢いで、彼女の顔は真っ赤になった

(レクイエム>ッバ、バカか貴様!? そんなわけないだろう!?
       わ、私は、あの男の事は尊敬はしているが、そんな疾しいことは断じて考えてない!!
(ルート>必死なところが怪しいなぁ、ねぇエーヴィヒ?
(エーヴィヒ>・・・恋愛は、よく分からないね
(レクイエム>っく・・・そ、それなら貴様も同じことじゃないのか!?
(ルート>へ?
(レクイエム>ふふふふふ、聞いたと言ったろう? 貴様が日天の事を―――――
(ルート>あぁぁぁぁぁストップストォップ!! それ以上言わないでぇ!!

今度は、ルートの顔が真っ赤に染まった
やれやれ、とエーヴィヒはやや呆れ気味に溜息を吐いた

(レクイエム>・・・む、まずいな、そろそろ戻らねば
(ルート>うわぁ逃げる気ぃ!? ボインの姉貴の卑怯者ぉ!!
(レクイエム>誰が卑怯者だっ!? に、逃げるつもりなど毛頭ないからな!?

本気半分、嘘半分と言った様子で、レクイエムはその場を立ち去ろうとしたが、

(レクイエム>・・・この先、「組織」に戻る気はないのか?

真剣な表情で、ルートに尋ねた
ルートも、表情を曇らせ、俯き気味になって、

(ルート>・・・うん。やっぱり、皆に会わせる顔がないってゆうかぁ・・・
     アタシは、味方殺しの罪人だから
(レクイエム>そう、か・・・なら、私は何も言わない
       ただ、日天は貴様のことを心配しているぞ?
(ルート>ッ! 日天さんが?
(レクイエム>機会があれば、声くらい聞かせてやっても良いだろうな

また、彼女は小さく笑うと、

(レクイエム>ルート、罪から逃げようとはするな
(ルート>え? それってどういう
(レクイエム>死は償いじゃない、罪から逃げようとしているだけだ
       無理に償おうなんて思わなくてもいい
       生きろ。貴様が殺した人々の分まで・・・
(ルート>・・・それも、ボインの姉貴の想い人の言葉ぁ?
(レクイエム>そういうことにしておいてくれ;

苦笑しながらも、最後は微笑んでみせて、
レクイエムはその場から忽然と消えてしまった
驚いて、ルートはきょろきょろと辺りを見回した

(ルート>き、消えちゃったぁ・・・何と契約してるのかなぁ
(エーヴィヒ>良い上司さんだったね
(ルート>あ、うん、まぁね・・・

空を仰ぐルート
流れる薄い雲を眺め、暫し思案する
そして、

(ルート>―――――よし、決めたぁ!

ぱちんっ!と両頬を叩いて、気合を入れる
何を決めたんだい?とエーヴィヒに尋ねられ、ふふんと鼻を鳴らし、
彼女は大きく伸びをした後に胸を大きく広げて、高らかに宣言した

(ルート>帰ろう、学校町へ!

  ...setzen Sie fort

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