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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - がっこうのかいだん-02

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Elfriede

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がっこうのかいだん 02


 変なものが見える
 肩が重くて仕方がない
 ついでに誰とも知れない声まで聞こえてくる
 そんな状況に陥ると、大体は心の病院か怪しい霊能者のお世話にでもなっているところだろう
 だが彼の場合は別段そういう事も無く

「なあ……ついてくるのは別に良いんだけどさ」
「んー?」
「何でずっと背中にのしかかってるんだ」
「歩くのめんどい」

 ずっと背中におぶさっている少女に、少年は不満の声を漏らす
 周囲には普通にクラスメイトが居るため、声は限りなく小さくしている

「……離れて座ってろよ」
「移動する時に動くのめんどいからこのままで良いじゃない」

 少女の声は、少年の膝の上から聞こえてきている
 背中におぶさっている少女の首から上は存在せず、本来そこにあるはずの頭部が少年の膝の上に鎮座していた
『自分の生首でバスケットボールをする少女』、略して『生首バスケ』の少女である
 つい先日、放課後の学校で『てけてけ』に襲われたところを『契約』により助けられて以来、少女はこうしてずっとべったりな状態である
 ちなみに、この体勢のせいで少女は自分で自分の首を運ばないため、少年が抱えて持ち運ぶ羽目になっていた

「私、幽霊みたいなものだしそんな重くないでしょ?」
「いや、普通に小学生の女の子ぐらいの重さだと思うぞ」
「え、嘘? 契約のせいで実体っぽい状態になってるのかな?」
「まさか、皆に見えてないだろうな……」
「いやいやそれは流石に無いと思うよ? 見えてたら大騒ぎだと思うし」
「廊下で結構視線向けてくる人とか居るぞ?」
「霊感があったり、契約者だったりするとそりゃあ見えるよね」
「……自分で歩け」
「めんどいー」

 小声でぼそぼそと独り言を呟いているようにしか見えないその様は充分に怪しいのだが、その程度の怪しさはこの町では石を投げれば当たる程度に居る

「というか、平日の授業時間中とかって都市伝説とか湧くのか?」
「大体は放課後か、閉門後だねー。学校の怪談とかってそうでしょ?」

 当然の疑問と当たり前の返答に、二人の間に沈黙が訪れ
 ざわざわとした休み時間の喧騒が、何かツッコミでも受けているようで耳と心が痛くなる

「明日から授業時間中は離れて待機な」
「えー。また放課後に何かあったら困るよ? 私はやだよ、家から走ってくるとか。めんどくさいし」
「屋上でも体育館でも用具室でも保健室でもトイレでも、どこでもいいから待機。授業終わったら迎えに行くから」
「むー、背中はあったかくて気持ち良いのに」

 きゅうと力を入れてしがみつく『生首バスケ』の少女

「ずっと一人だったから、誰かと一緒にいるのがあったかくて気持ち良いんだー」

 小学生ほどの年頃の少女にほんわかした笑顔でそう言われると、流石に無碍には扱えない
 それが胴体から離れた生首なのが少々アレだが、敵意と危険性が無いと判っていればそんなものである

「どっちにしろ、頭抱えて歩くのも大変なんだからな。その辺ぐらいは少し考えてくれ」
「前向きに善処する事を検討する機会を模索する予定という事でー」
「見た目ほど小学生っぽくないよな、お前」
「死後何年みたいな設定が大体あるからね、私みたいな怪談。もしかしたらおねーさんかもよ?」
「そういう設定があるってだけで、お前という存在とは年齢的には関係ないだろ。むしろ発生したのが誕生日だとしたら生後二日ぐらいじゃないのか?」
「まーどっちでもいいじゃない。考えるのめんどくさいし」

 そんな話をしている最中

「おーい、このクラスに籠守(かごもり)って奴いるかー?」
「あ、俺」

 唐突に名前を呼ばれ、思わずひょいと手を上げて返事をする

「籠守っていうんだ、名前」
「名前ってか名字な。名前は環(たまき)」

 呼ばれた方を見てみると、他のクラスの男子生徒が教室の入り口に立っていた

「俺が籠守だけど、何?」
「うおわ!?」

 席から立ち上がって、教室の中を見回している男子生徒に歩いていく環
 その姿を見て、男子生徒があからさまに驚いて身を竦ませる

「なんだよ、呼んどいてその態度は」
「いや、ちょっと不意をつかれて……」
「げ」

 何かを誤魔化すように苦笑いをする男子生徒の顔を見て、環に抱えられた少女の首の表情が強張る

「こないだ脅かそうとした人だ……べろべろ舐めてくるおじさん出す人」
「って、お前やっぱりあの時の……というかそれは俺じゃない」
「なんだ、見えてる上に知り合いか。んで何の用? つか誰?」
「隣のクラスの黒楽守(こくら・まもる)。用事は言伝だ。放課後、化学準備室に来いってさ」

 化学準備室と聞いて、環はそこを根城にしている咥え煙草の不良教師の姿を思い浮かべる

「荒神先生だっけ、あのおっかなそうな人」
「見た目で判断するのはどうかと思うけど、その荒神先生。あと後樹先生も居るから。数学の」
「いつも授業中寝てる爆乳の?」
「そう覚えられてるのは正直どうかと思うけど、その後樹先生」

 やや頭を抱え気味に、環の反応に付け足しをする守

「多分、その子絡みだ」
「へ? ていうかマジでこれ見えてるの?」
「これって言うなー」
「見えてるし聞こえてる。つーか一度襲われてる」
「襲ってないよ、脅かしただけだよ」
「された側からすれば似たようなもんだ」
「ちょっと待て、色々と話が見えないんだけど」

 環の言葉を遮るように、休み時間を終えるチャイムが鳴り響く

「じゃあ、伝えたから逃げないでちゃんと来てくれよ。来なかったら怒られるの俺だから」
「ちょ、待てって!? 呼び出される具体的な理由とかそういうのは!?」
「だから、多分その子絡み。というか俺はそっちの世界はよく知らないから、悪い」

 そう言って、さっさと自分の教室へ引き上げてしまう守

「……どうしたもんかな」
「大丈夫だよ、何かあったら守ってあげるから」
「むしろお前に何かありそうな雰囲気だったんだけどな」
「大丈夫だよ、何かあったら守ってもらうから」
「ちょっと待て!?」
「まーなるようになるよー、気楽にいこーよ気楽に」
「……本当に大丈夫か、おい」

―――

 本来はそこにあるはずの化学の授業で使われる備品達は奥へと追いやられており、机を中心にプライベートなスペースが築き上げられていた
 そして、空いたスペースの一部を占める骨格標本と人体模型
 この手の代物は記憶の中では小学校、中学校と理科室に鎮座していたが、授業で使われた記憶は一つも無かったりする

「……来たか」

 窓を開けて煙草を吸っていた化学教師、荒神秀(あらがみ・しゅう)
 生徒の前では流石に吸い続けないのか、まだ随分と長い煙草を灰皿に押し付けて消してしまう

「1-Dの籠守環だな?」
「は、はい」
「んで、そっちのは?」
「えっと……都市伝説、というやつですよね? 本人曰く『生首バスケ』だそうです」
「そうか。契約はしてるのか?」
「え、はい、してます」
「趣味思考に変化があったり、健康面に不調があったりは?」
「二日目なのでまだなんとも……見ての通りなのでちょっと肩が重たいですが」
「都市伝説は調子に乗るとつけあがるからな。教育はしっかりしとけ」

 その秀のその言葉に、部屋に鎮座していた骨格標本と人体模型がぴくりと反応したような気がしたが、環が視線を向けると別段そのような様子は無い

「まあ、そいつの場合はすぐに改善されるかもしれんが」
「へ? それはどういう」

 環が聞き返そうとしたところで、化学準備室の扉の前でどたばたずるずると妙な音がした

「先生、いい加減自分で歩いて下さい」
「眠いー、帰りたいー」

 がらりと扉が開くと、そこに居たのは休み時間に呼び出しを伝えに来た守
 そして、床の上にくてりと寝転がったジャージ姿の爆乳数学教師、後樹撫莉(おくれぎ・なでり)

「先生がやらかした事の後始末なんでしょう? ちゃんとやって下さい」
「うにゅー」

 両手を掴まれずるずると化学準備室に引き摺り込まれてなお、起き上がる様子はこれっぽっちも無い

「ほら先生、日間虫さん出して」
「日間虫さん、おねがーい」

 ふにょりと手を上げる撫莉の背後から、にょろりと現れる入道という表現がぴったりな禿頭の大男
 その姿を見た途端、それまで環の膝の上でまったりしていた少女の首が、跳ね上がりそうな程に身を竦ませる

「どうしたんだ?」
「あれ、ちょっと苦手」
「大丈夫だよー、もう舐めないから」

 日間虫さんと呼ばれた大男『日間虫入道』は、びくびくとしている少女の頭をぽんぽんと撫でる
 その途端、それまでずっと寝起きのような無気力で眠そうな顔をしていた少女に生気が満ちる
 生首の幽霊的存在に生気もへったくれもないのだろうが

「お? あれ? おー?」

 環の背中からひょいと離れると、ぴょんぴょんと元気に跳ね回る

「なんかやる気が戻ってきた! 気力充実!」
「前に守くんを驚かせた時に、大人しくさせたままだったからねー。契約者ができたなら、戻しておかないと」
「うん、これで自分の首も自分で持ち歩けるよ」

 それまで環の膝の上に置きっぱなしだった自分の首をひょいと抱え上げ、そのまま空いた膝の上にすとんと座る

「ちょっと待て、何故そこに座る」
「ほかに椅子とか無いんだもん」
「やる気が出たなら話が終わるまで立ってなさい。先生だって床で寝てるだろ」
「いや待て。これを手本にするんじゃない」
「んもー守くん、これって何よー。突っ立ってるなら膝枕ぐらいしてくれてもいいのにー」
「やかましい。俺の部屋で騒ぐな」

 ややカオスになりかけた化学準備室の空気を、秀が一言で吹き飛ばす

「この学校には契約者の生徒や教師がそれなりに居る。いざこざが起こらんようそれなりに挨拶とかしておくように」
「普通に連れて歩いてると、憑かれてるのと勘違いされる事もあるからねー」
「出会い頭だと、驚いて攻撃する可能性もあるからな。その子や、こいつらみたいに見た目のインパクトがあると」

 秀の言葉に反応して、やれやれといった調子で力を抜く人影二つ

「殺生やがなー、一分以上黙っとったら死んでまうわー」
「きちんと挨拶もしないで立ってるの、居心地悪かったです」
「一分以上経ってるから安心して死ね。あと前置き無しに挨拶したら逃げられるか攻撃されるだろうが」

 突然動き出し、さらには喋り出した骨格標本と人体模型

「俺が契約している『動く骨格標本』と『踊る人体模型』だ。ウザいがそれ以上でも以下でもないので気にするな」
「ウザいとか、そないな言い方せぇへんでも!? 折角学校の怪談仲間が増えたんやから仲良くせぇへんと。ちゅーことで親愛のダンスと必殺技の披露のどっちから」
「黙れ」
「熱っ!? あっつっ! 煙草吸ぅてないから安心しとったらぁっ!?」

 じゅ、と音を立てて人体模型の鼻先が焦げ、悶絶して転げ回り棚に激突して内臓を巻き散らかす
 いつもなら火のついた煙草を押し付けていたのだが、既に煙草を消していた今日はライターでの直接着火である

「ともあれ、今日はこんなところだ。近日中に学校内の契約者名簿でも渡すから目を通しておけ」
「近日中? 作ってあるんじゃないんだー」
「作ってこいって資料渡したよな、確か?」
「……そだっけ?」
「昨日、先生の部屋片付けてた時にそれっぽい資料はありました。俺が作っときましょうか?」
「わー、守くん頼れるぅー」
「甘やかすな。そのうち教師の仕事までやらされるぞ、お前」

 床に転がったままの撫莉を、じろりと睨み付ける秀

「とまあ、そういう事だ。また何かあったら呼び出すから、その時はさっさと来るように」
「学校にいる契約者でどっか集まったりとか、そういうのはしないんですか?」
「他所の組織に所属してる奴も居るからな。それに、この部屋が溜まり場になっても困る」

 そう言って秀は立ち上がり、ポケットを探り煙草を取り出した

「さて、今日は解散だ。生徒は散れ、煙草が吸えん」

 フリーダムかつマイウェイな先生もいたもんだ、とそんな感想を抱きつつ

「それじゃ、俺はこれで帰ります。色々ありがとうございました」
「骨のお姉ちゃん、モツのお兄ちゃん、まったねー」

 骨格標本と人体模型に見送られ、見違えるように元気になった『生首バスケ』の少女と共に化学準備室を後にする

「なんか凄い世界に踏み込んじゃった気がするなぁ……」
「難しく考えない方がいいよ。ちょっと世界が広がっただけなんだから」

 自分の頭を軽快に床に弾ませながら、少女は守の周りをくるくるを回る

「気楽に考えるには、もうちょっと時間が掛かりそうだよ」
「慣れるのはゆっくりでいいよ? とりあえず」

 ひょいと放り投げられた少女の首
 流石に一日べったり過ごせば、その存在にも慣れてはくるもので
 落とさないように受け止めたその両手の上で、にっこりと笑顔を浮かべる

「これからもよろしくね?」
「前向きに善処する」
「やる気ないなぁ」
「昨日の今日で、急過ぎて正直色々とついていけてない」

 二人並んで歩く放課後の廊下
 つい昨日はただ恐ろしかっただけの黄昏時

 今日はほんの少しだけ、気楽に歩けていた


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