「「「「「トン・・・トン・・・トンカラ、トン・・・」」」」」
日本刀を持ち、包帯を巻き、自転車を駆る
全く共通点が無い所為か、それが余計に不気味に見えてしまう
そんなものが、集団で襲ってきたなら尚更だ
不気味な歌を歌い続け、人々を無理矢理自分達と同じように不気味な姿にし、仲間を増やす
それが彼等―――「トンカラトン」だ
全く共通点が無い所為か、それが余計に不気味に見えてしまう
そんなものが、集団で襲ってきたなら尚更だ
不気味な歌を歌い続け、人々を無理矢理自分達と同じように不気味な姿にし、仲間を増やす
それが彼等―――「トンカラトン」だ
「トンカラトンと言え」
「トンカラトンと言え」
「トンカラトンと言え」
「トンカラトンと言え」
「トンカラトンと言え」
口々に、彼等は命令を下す
従わなければ「トンカラトン」にされてしまう命令
従わなくとも「トンカラトン」にされてしまうかも知れない命令
従わなければ「トンカラトン」にされてしまう命令
従わなくとも「トンカラトン」にされてしまうかも知れない命令
その眼前にいた、黒髪の青年は、
「俺に命令するな」
と吐き捨てた瞬間、その姿を消した―――かのように思われたが
「トンカラトンと言―――――」
集団の先頭にいた「トンカラトン」の頭が、ぼんっ!と鈍い音を立てて爆散した
がしゃん、と自転車の倒れる音が響き、群れの動きが止まる
だがその直後に、1人、また1人と、頭部の無い躯が出来上がってゆく
と、突然群れのド真ん中に何者かが現れた
彼はポケットからストップウォッチを取り出し、刻まれてゆく時を止めると、
がしゃん、と自転車の倒れる音が響き、群れの動きが止まる
だがその直後に、1人、また1人と、頭部の無い躯が出来上がってゆく
と、突然群れのド真ん中に何者かが現れた
彼はポケットからストップウォッチを取り出し、刻まれてゆく時を止めると、
「3.07・・・それがお前らの絶望へのタイムだ」
先程姿を消した筈の青年は、自信有り気に呟き、
刀を振り上げる「トンカラトン」達に再び攻撃を仕掛けた
彼は未央 超(ミオウ コユル)、19歳
「組織」に所属している、「タキオン」の契約者である
体力を消費すればするほど、彼の速さは増していき、最高速度は光の速度である秒速30万kmを超える
その速さから繰り出される拳や蹴りは、いとも簡単に骨肉を粉砕してしまう程の威力を持つ
尤も、そんな速さに人間が耐えられる筈もないので、ほんの一瞬間しか超光速を引き出せないのだが
刀を振り上げる「トンカラトン」達に再び攻撃を仕掛けた
彼は未央 超(ミオウ コユル)、19歳
「組織」に所属している、「タキオン」の契約者である
体力を消費すればするほど、彼の速さは増していき、最高速度は光の速度である秒速30万kmを超える
その速さから繰り出される拳や蹴りは、いとも簡単に骨肉を粉砕してしまう程の威力を持つ
尤も、そんな速さに人間が耐えられる筈もないので、ほんの一瞬間しか超光速を引き出せないのだが
それ故、現在のように集団の敵を相手にするのは、彼には不向きなのだ
今でこそ優勢だが、未だに「トンカラトン」の大群は衰えを見せていない
超は小さく、舌を打った
今でこそ優勢だが、未だに「トンカラトン」の大群は衰えを見せていない
超は小さく、舌を打った
「・・・こちらの増援はまだか・・・?」
誰に言うでもなく不満を零しながら、尚も敵を確実に潰し続けていた
と、次の瞬間だった
どずっ!どずっ!!と頭上から何かが次々と落下し、
真下にいた「トンカラトン」の首を的確に貫いた
穢れ一つ無く透き通った、天然の槍――氷柱だった
と、次の瞬間だった
どずっ!どずっ!!と頭上から何かが次々と落下し、
真下にいた「トンカラトン」の首を的確に貫いた
穢れ一つ無く透き通った、天然の槍――氷柱だった
「やっほー、待たせたねぇ超くん」
戦場に不相応な女性の声に振り向くと、肩まで伸びた黒髪の女性が手を振りながら歩み寄ってきた
一瞬、いや彼女を見た瞬間から、超は嫌そうなオーラを放つ表情を浮かべた
一瞬、いや彼女を見た瞬間から、超は嫌そうなオーラを放つ表情を浮かべた
「よりによってお前か、氷雨・・・」
「何その『今すぐ帰ってくれ』臭の漂う顔に台詞は」
「正直、翔騎とかいう子供の方が良かった」
「君ねぇ、女の子にそういうこというとあれだよ、あれ・・・えっと・・・忘れた、もういいや」
「言え、最後まで」
「何その『今すぐ帰ってくれ』臭の漂う顔に台詞は」
「正直、翔騎とかいう子供の方が良かった」
「君ねぇ、女の子にそういうこというとあれだよ、あれ・・・えっと・・・忘れた、もういいや」
「言え、最後まで」
痴話喧嘩のような会話を暫く続けた後、2人は標的を見据える
「へぇ、結構多いね」
「感心してる暇があるなら戦え」
「超くん今日も怖いよぉ、というわけで」
「感心してる暇があるなら戦え」
「超くん今日も怖いよぉ、というわけで」
す、と手を上げると、冷たい風が吹く
刹那に、上空からさっきと同じく氷柱の雨が降り注ぎ、「トンカラトン」達を串刺しにしていった
柊 氷雨(ヒイラギ ヒサメ)、19歳
超とは幼馴染であると共に同僚でもあり、座右の銘は『ダラケきった正義』
契約都市伝説の「つらら女」は、己の身体を氷柱に変えたり、氷柱を出現させたりすることができる
全体攻撃ができるという点においては幾分か戦力になる能力だ
超もそこは認めているのだが、どうやら性格が苦手らしい
刹那に、上空からさっきと同じく氷柱の雨が降り注ぎ、「トンカラトン」達を串刺しにしていった
柊 氷雨(ヒイラギ ヒサメ)、19歳
超とは幼馴染であると共に同僚でもあり、座右の銘は『ダラケきった正義』
契約都市伝説の「つらら女」は、己の身体を氷柱に変えたり、氷柱を出現させたりすることができる
全体攻撃ができるという点においては幾分か戦力になる能力だ
超もそこは認めているのだが、どうやら性格が苦手らしい
「でもあれだね、包帯してても人の形してると抵抗あるよね」
「我慢しろ、俺だって同じだ」
「へー、超くんもそんなこと思ってるんだ?」
「黙れ」
「やーいやーい、超くんのツンデレー」
「我慢しろ、俺だって同じだ」
「へー、超くんもそんなこと思ってるんだ?」
「黙れ」
「やーいやーい、超くんのツンデレー」
酷く鬱陶しそうにしていた時だった
「――――――――退け、氷雨!!」
「へ?」
「へ?」
間の抜けた声を出しながらも氷雨が咄嗟にその場にしゃがむと、
途轍もない速さで繰り出された超の蹴りが彼女の降りきってない髪を掠めつつ、
その真後ろにいた「トンカラトン」の胴体の半分を抉った
力無く倒れる躯を見て、ふぅ、と溜息を吐いたのはほぼ同時だった
途轍もない速さで繰り出された超の蹴りが彼女の降りきってない髪を掠めつつ、
その真後ろにいた「トンカラトン」の胴体の半分を抉った
力無く倒れる躯を見て、ふぅ、と溜息を吐いたのはほぼ同時だった
「うん、女の子の護衛ごくろーさん」
「緊張感を持って戦場に出て来い・・・それと、近くにいる敵の気配ぐらい感じ取れ」
「いやー感じ取ったとしても肉弾戦はできなくてねぇ」
「緊張感を持って戦場に出て来い・・・それと、近くにいる敵の気配ぐらい感じ取れ」
「いやー感じ取ったとしても肉弾戦はできなくてねぇ」
今度は超だけが、呆れを伴った溜息を漏らす
氷雨が立ち上がるのを横目にやりながら、周囲の状況を確認する
幾らか倒したように思えたが、兵はまだまだ増え続けていた
氷雨が立ち上がるのを横目にやりながら、周囲の状況を確認する
幾らか倒したように思えたが、兵はまだまだ増え続けていた
「厄介だな・・・倒してもキリが無い」
「えー、あたしもう帰りたーい」
「・・・お前、一度聞こうと思っていたが何故「組織」に――――」
「こンの戯けがァ!! なァに弱音を吐いちょるんじゃァ!?」
「えー、あたしもう帰りたーい」
「・・・お前、一度聞こうと思っていたが何故「組織」に――――」
「こンの戯けがァ!! なァに弱音を吐いちょるんじゃァ!?」
突如響いたのは、怒声
口調からは堅物の男性を思い浮かべるだろうが、それは明らかに少女の声だった
と、その時、怒声に続くかのようにして大地が唸る
自転車に跨っている「トンカラトン」達の多くはバランスを保てずにその場で立ち往生してしまったが、それは間違った判断だった
地面が割れ、狭間から血の如く、どっ!!と噴き出す熱い液体
立ち止まった者達はそれに飲まれ、苦しむ間もなく焼け焦げていった
超と氷雨が、怒声のした方向を見ると、
口調からは堅物の男性を思い浮かべるだろうが、それは明らかに少女の声だった
と、その時、怒声に続くかのようにして大地が唸る
自転車に跨っている「トンカラトン」達の多くはバランスを保てずにその場で立ち往生してしまったが、それは間違った判断だった
地面が割れ、狭間から血の如く、どっ!!と噴き出す熱い液体
立ち止まった者達はそれに飲まれ、苦しむ間もなく焼け焦げていった
超と氷雨が、怒声のした方向を見ると、
「ワシ等「組織」が出払ってしもゥたら・・・誰がこの町を守るんじゃァ!!!」
怒りが爆発している様子の、セーラー服を着たツインテールの少女だった
「あ、超くん、お望みの子供の契約者が来たよ」
「あれは苦手だ」
「じゃかァしい!! ふざけちょらンと真面目にやらんかァ!!」
「あれは苦手だ」
「じゃかァしい!! ふざけちょらンと真面目にやらんかァ!!」
どう見ても2人が年上なのだが、何故か少女が上のように思える
この空気に慣れているのか、超は表情一つ変えずに少女に話しかけた
この空気に慣れているのか、超は表情一つ変えずに少女に話しかけた
「・・・火音、お前は担当から何か聞いてないか?「トンカラトン」について」
「そんなことも知らんと出向いたのか、バカタレが・・・「トンカラトン」はそもそも単体で、それが群れを成していく
つまり、どっかに群れの核を成すモンがおる筈じゃァ・・・尤も、」
「そんなことも知らんと出向いたのか、バカタレが・・・「トンカラトン」はそもそも単体で、それが群れを成していく
つまり、どっかに群れの核を成すモンがおる筈じゃァ・・・尤も、」
説明しながら、彼女はゆっくりと膝をあげる
スカートから覗く太腿は絹のようになめらかだった
スカートから覗く太腿は絹のようになめらかだった
「まとめて焦がしてしもゥたら、早ゥに済むけんのォ!!!」
振り上げた足に力を込め、
「『大噴火』ァ!!!!」
アスファルトを破砕するまでに勢い良く突き落とす
めり込んだ足元から罅がどんどん広がっていき、罅の隙間から赤々と滾る溶岩が漏れ出した
溶岩の壁は近辺にいた「トンカラトン」はおろか、超達までも危うく襲いそうになる
めり込んだ足元から罅がどんどん広がっていき、罅の隙間から赤々と滾る溶岩が漏れ出した
溶岩の壁は近辺にいた「トンカラトン」はおろか、超達までも危うく襲いそうになる
「――――っぶねぇ」
「ねーねー火音ちゃん、少しはあたし達のことも気遣ってくれないかな?」
「貴様等がチンタラやっちょるからじゃろゥが・・・死んだら貴様等の自業自得じゃァ」
「ねーねー火音ちゃん、少しはあたし達のことも気遣ってくれないかな?」
「貴様等がチンタラやっちょるからじゃろゥが・・・死んだら貴様等の自業自得じゃァ」
少女らしからぬ暴言を放つ彼女、名は空出 火音(ソラデ カノン)、現役女子中学生
契約都市伝説はアトランティス伝説を生んだとされる「ミノア噴火」
例え街中だったとしても、彼女の意思で噴火を起こすことが可能だ
因みに、足でアスファルトを砕いたのは彼女の素の能力である、悪しからず
契約都市伝説はアトランティス伝説を生んだとされる「ミノア噴火」
例え街中だったとしても、彼女の意思で噴火を起こすことが可能だ
因みに、足でアスファルトを砕いたのは彼女の素の能力である、悪しからず
「いやー相変わらず能力も性格も物騒だね」
「・・・・・・ん?」
「・・・・・・ん?」
不意に声が出てしまう程のものを、超は目撃した
燃え盛る溶岩の中、1人だけ、周りと違う動きをしている者がいた
燃え盛る溶岩の中、1人だけ、周りと違う動きをしている者がいた
「あれか・・・氷雨、援護頼む」
「ん、分かったー」
「ん、分かったー」
氷雨が手を上げると、その個体に向かって氷柱が幾本も落下してゆく
その「トンカラトン」は自転車を駆使し、日本刀を上手く使って避けていくが、一つだけ気づけなかった
己の元に、光と等しいスピードで迫る敵の気配に
その「トンカラトン」は自転車を駆使し、日本刀を上手く使って避けていくが、一つだけ気づけなかった
己の元に、光と等しいスピードで迫る敵の気配に
「絶望がお前のゴールだ・・・!」
光速からの蹴りを、「トンカラトン」の胸部に命中させる
ずざざざざざざ・・・と自転車が持ち主を乗せながら火花を散らして地面を滑り、
その持ち主は胸の中央に風穴を空け、溶岩の中で光となって消えた
消えた個体を追うようにして、他の「トンカラトン」達も輝く粒子となって虚空に飲まれてゆく
どうやら、超の推理は当たっていたようだ
ずざざざざざざ・・・と自転車が持ち主を乗せながら火花を散らして地面を滑り、
その持ち主は胸の中央に風穴を空け、溶岩の中で光となって消えた
消えた個体を追うようにして、他の「トンカラトン」達も輝く粒子となって虚空に飲まれてゆく
どうやら、超の推理は当たっていたようだ
「・・・ッハァ、ハァ・・・やっ、とか・・・」
安心した所為か、どっ、と疲れが現れてしまった超
「タキオン」は疲れれば疲れる程その真価を発揮するが、人体にとっては疲れはただの疲れなのだ
「タキオン」は疲れれば疲れる程その真価を発揮するが、人体にとっては疲れはただの疲れなのだ
「ひゃほーい、お疲れお疲れー」
「フン、こんな連中に梃子摺りおって・・・腕を上げんか、バカ共がァ!!」
「フン、こんな連中に梃子摺りおって・・・腕を上げんか、バカ共がァ!!」
戦いの途中と全く変わらぬ脱力感溢れる氷雨とは逆に、戦いが終わっても火山が噴火している火音
まだ何か言いたげな表情をしているが、くるりと2人に背を向けると、
まだ何か言いたげな表情をしているが、くるりと2人に背を向けると、
「・・・まァいい、ワシはもう帰る・・・妹が待っちょるけんのォ」
言い残すと足早に歩き出し、未だに炎が残っている戦場を後にした
「あ、あたしも弟と約束があったんだ。じゃ、またね超くーん」
今度は氷雨がそう言い、欠伸をしながらその場を離れていった
1人残された超は、辺りを見渡して、
1人残された超は、辺りを見渡して、
「・・・これは、事後処理班が可哀想だな」
苦笑して、呟いた
その直後
その直後
♪何もかも振ーり切ーって 未来へ進ーmピッ
「どうした姉貴?」
《遅いぞバカ弟。何処で道草食っている?》
「・・・「組織」の任務だとメールで伝えた筈だが」
《終了予定時刻が明記されてなかったからな。ということはすぐに帰ってくる筈、だろう?》
「そう判断するのは姉貴だけだろ」
《姉に口答えをする・・・マイナス20点だな》
「っ・・・この後、「組織」への報告もしなければならないのだが」
《今すぐ帰らなければマイナス70点だ》
「勘弁してくれ・・・」
《遅いぞバカ弟。何処で道草食っている?》
「・・・「組織」の任務だとメールで伝えた筈だが」
《終了予定時刻が明記されてなかったからな。ということはすぐに帰ってくる筈、だろう?》
「そう判断するのは姉貴だけだろ」
《姉に口答えをする・・・マイナス20点だな》
「っ・・・この後、「組織」への報告もしなければならないのだが」
《今すぐ帰らなければマイナス70点だ》
「勘弁してくれ・・・」
様々な疲れの入り混じった溜息が吐き出された
...fin