「組織」本部―――
誰もいない静かなある一室にて、
かたかたと独りキーボードを叩き続けているのは、R-No.1――六条 蓮華だった
誰もいない静かなある一室にて、
かたかたと独りキーボードを叩き続けているのは、R-No.1――六条 蓮華だった
(蓮華>・・・ふぅ、もうこんな時間ですか・・・
R-No.0が例の契約者の気配を感じて出ていってから暫く経ちますが・・・ご無事でしょうか
R-No.0が例の契約者の気配を感じて出ていってから暫く経ちますが・・・ご無事でしょうか
手元に置いていた緑茶を啜りながら、心配そうに呟くと、彼女は再び作業に戻る
と、その時、マナーモードにしていた彼女の携帯電話がぶるぶると振動し始めた
手に取りそれを開いて、相手の名前を確認した
と、その時、マナーモードにしていた彼女の携帯電話がぶるぶると振動し始めた
手に取りそれを開いて、相手の名前を確認した
(蓮華>裂邪、さん?
通話ボタンを押し、受話器を耳に押し当てた
(蓮華>・・・もしもし?
(裂邪>《ゲフッ・・・あ゙ぁ、ごめんね蓮華ちゃん
大至急、ライサちゃんとレクイエムちゃんを東区に呼んでくれると有り難い》
(蓮華>ど、どうかしたんですか!?
(裂邪>《ナユタとの戦闘中・・・ローゼちゃんが、放射線を使った可能性がある・・・ゲホッ
どれくらいかは知らないけど、早めに来た方が良い・・・》
(蓮華>分かりました、すぐに向かわせますので、貴方もそこを動かずにじっとしていて下さい!
(裂邪>《あ、安心、してくれ・・・今、足と腕が、片方、ないから・・・
あと、腹ン中が、黒kオエ゙ッ・・・、黒焦げで上手く動けない》
(蓮華>なっ・・・また無茶ばっかり! 少しは心配する身にもなって下さい!!
(裂邪>《ゲフッ・・・あ゙ぁ、ごめんね蓮華ちゃん
大至急、ライサちゃんとレクイエムちゃんを東区に呼んでくれると有り難い》
(蓮華>ど、どうかしたんですか!?
(裂邪>《ナユタとの戦闘中・・・ローゼちゃんが、放射線を使った可能性がある・・・ゲホッ
どれくらいかは知らないけど、早めに来た方が良い・・・》
(蓮華>分かりました、すぐに向かわせますので、貴方もそこを動かずにじっとしていて下さい!
(裂邪>《あ、安心、してくれ・・・今、足と腕が、片方、ないから・・・
あと、腹ン中が、黒kオエ゙ッ・・・、黒焦げで上手く動けない》
(蓮華>なっ・・・また無茶ばっかり! 少しは心配する身にもなって下さい!!
吠えた後にすぐに通話を切り、パソコンのデスクトップのあるアイコンをダブルクリックする
学校町の地図が現れ、東区のとある地点に赤く反応している部分があるのを確認すると、
素早くデスクの電話をプッシュした
学校町の地図が現れ、東区のとある地点に赤く反応している部分があるのを確認すると、
素早くデスクの電話をプッシュした
(蓮華>R-No.4、救護班と共に今すぐE-27地点に向かって下さい!
放射線を無力化できる契約者とガイガーカウンターを忘れずに!!
放射線を無力化できる契約者とガイガーカウンターを忘れずに!!
受話器を置くと、両手を組んで祈るような姿勢を取る
自分が出来るのはここまで。あとは、祈るしかない・・・
自分が出来るのはここまで。あとは、祈るしかない・・・
(蓮華>それに、しても・・・
ふと、思い出したかのように、顔を上げる蓮華
(蓮華>放射線・・・もしかして、【あれ】がまた・・・?
それは、それ程遠くもない、昔の記憶
忌まわしき事件の記憶だった
忌まわしき事件の記憶だった
‡ ‡ ‡ ‡ ‡ ‡ ‡
これは、数十年も前の出来事
「メン・イン・ブラック」―――「組織」というものが誕生して、ほんの少し経った頃の話
とある荒野の真ん中にある街で起こった事件から、全ては始まる
「メン・イン・ブラック」―――「組織」というものが誕生して、ほんの少し経った頃の話
とある荒野の真ん中にある街で起こった事件から、全ては始まる
からりと空気が乾燥し、草の一本も生えていない荒野
その真ん中には、この光景には不相応な街があった
摩天楼が聳え立ち、工場が幾つも並んでいた
経済が発展している街だが、そこはとても寂れている
人影が一つも見当たらず、人の声はおろか、人以外の生物の気配さえ感じられないのだ
この広い荒野に大きな街を作れたのも不思議だが、住民が1人もいないというのも怪しい
そんな不気味なゴーストシティを囲むように、荒野の上に点々と、白いテントが張られていた
黒いスーツを着た男性や女性が、何かを警戒するように構えている
街中の人間が消失した原因を調査するべく、「組織」が動き出したのである
その内の一つの、テントの中では
その真ん中には、この光景には不相応な街があった
摩天楼が聳え立ち、工場が幾つも並んでいた
経済が発展している街だが、そこはとても寂れている
人影が一つも見当たらず、人の声はおろか、人以外の生物の気配さえ感じられないのだ
この広い荒野に大きな街を作れたのも不思議だが、住民が1人もいないというのも怪しい
そんな不気味なゴーストシティを囲むように、荒野の上に点々と、白いテントが張られていた
黒いスーツを着た男性や女性が、何かを警戒するように構えている
街中の人間が消失した原因を調査するべく、「組織」が動き出したのである
その内の一つの、テントの中では
「R-No.5へ、こちらR-No.1。防衛班の配置はどうですか?」
《配置完了》
「分かりました。指示があるまで待機していて下さい」
《任務了解》
「R-No.2、R-No.9、そちらはどうですか?」
《キャッホー♪ 戦闘班Ⅰ、準備OKってカンジぃ?》
《戦闘班参も準備完了でござる。後は刀を交えるのみにござるな》
「2人とも、敵を見かけたらまずはこちらに連絡して下さいね?
勝手な行動をすると始末書書かせますのでその覚悟で」
《かっかっか、心配せずとも大丈夫でござるよ》
《蓮華さんチョー怖いってゆーか、始末書より体罰の方が寧ろ歓迎ってカンj》
《配置完了》
「分かりました。指示があるまで待機していて下さい」
《任務了解》
「R-No.2、R-No.9、そちらはどうですか?」
《キャッホー♪ 戦闘班Ⅰ、準備OKってカンジぃ?》
《戦闘班参も準備完了でござる。後は刀を交えるのみにござるな》
「2人とも、敵を見かけたらまずはこちらに連絡して下さいね?
勝手な行動をすると始末書書かせますのでその覚悟で」
《かっかっか、心配せずとも大丈夫でござるよ》
《蓮華さんチョー怖いってゆーか、始末書より体罰の方が寧ろ歓迎ってカンj》
途中で無線を切り、呆れ気味にふぅ、と溜息をつく少女
短めの緑の髪の彼女は、研究班班長並びにR-No.のトップの右腕、R-No.1――六条 蓮華だ
くるりと回転椅子を回すと、背後にいる人物に現状報告を行なおうとした
短めの緑の髪の彼女は、研究班班長並びにR-No.のトップの右腕、R-No.1――六条 蓮華だ
くるりと回転椅子を回すと、背後にいる人物に現状報告を行なおうとした
「R-No.0、防衛班と戦闘班1並びに戦闘班3の配置が終わりましッ・・・た・・・」
己の目の前の光景に、呆れ果てて言葉が止まってしまった
今、彼女の眼前にはデスクの上に突っ伏して可愛らしい寝息を立てている赤く長い髪の少女がいた
蓮華は種を飲み込むと、腕から蔓を伸ばして、
今、彼女の眼前にはデスクの上に突っ伏して可愛らしい寝息を立てている赤く長い髪の少女がいた
蓮華は種を飲み込むと、腕から蔓を伸ばして、
「起きなさい!」
勢い良く叩きつけた
「ひゃあんっ!?」と情けない声をあげ、彼女は跳び起きた
「ひゃあんっ!?」と情けない声をあげ、彼女は跳び起きた
「れ、れれれ蓮華ちゃん!? その起こし方は少々問題ありだと思いますの!!」
「貴方が任務遂行中に眠ってる方が大いに問題ありです!
そもそも、『R-No.だけで十分だ』と言ったのは貴方じゃないですか!」
「貴方が任務遂行中に眠ってる方が大いに問題ありです!
そもそも、『R-No.だけで十分だ』と言ったのは貴方じゃないですか!」
何を隠そうこの赤髪の少女、
R-No.という一部隊の頂点に立ち、何万人もの黒服達を纏めているリーダー、
その名もR-No.0――ローゼ・ラインハルトなのである
R-No.という一部隊の頂点に立ち、何万人もの黒服達を纏めているリーダー、
その名もR-No.0――ローゼ・ラインハルトなのである
「うっ、そ、その・・・は、初めての大掛かりな任務だったから、緊張してしまいまして・・・」
「だったら大衆の前で大口叩くのは金輪際控えて下さい
それと、緊張して眠るような器用な人間は生まれて初めて見ました」
「そ、それより、進行具合はいかが?」
「・・・ですから、R-No.2、R-No.5、R-No.9の部隊が待機中です」
「あ、あら、そっそうでしたの? ち、因みにR-No.4は・・・」
「かなり前に報告した筈でしたが・・・まさかその時から寝てましたか?
まだ来ていないそうです。このまま命令無視は確定かと」
「そ、そう・・・」
「だったら大衆の前で大口叩くのは金輪際控えて下さい
それと、緊張して眠るような器用な人間は生まれて初めて見ました」
「そ、それより、進行具合はいかが?」
「・・・ですから、R-No.2、R-No.5、R-No.9の部隊が待機中です」
「あ、あら、そっそうでしたの? ち、因みにR-No.4は・・・」
「かなり前に報告した筈でしたが・・・まさかその時から寝てましたか?
まだ来ていないそうです。このまま命令無視は確定かと」
「そ、そう・・・」
何やらそわそわしている様子のローゼに、蓮華はまたも溜息を零した
「・・・しかし、これ程の大部隊が必要になるものとは一体何なんでしょうか?」
ふと思い浮かんだ疑問
発せられたその問いに、ローゼは真剣な表情で答えた
発せられたその問いに、ローゼは真剣な表情で答えた
「分かりませんわ・・・でも、先程から嫌な予感がしてなりませんの」
「嫌な予感、ですか?」
「えぇ・・・それが何なのか調査するのが、ワタクシ達「組織」の務めだというのは分かっているのだけれど・・・
何事もなければ良い、というのが正直な気持ちですわ」
「何事もなかったらこっちは商売あがったりなんだけどねぇ?」
「嫌な予感、ですか?」
「えぇ・・・それが何なのか調査するのが、ワタクシ達「組織」の務めだというのは分かっているのだけれど・・・
何事もなければ良い、というのが正直な気持ちですわ」
「何事もなかったらこっちは商売あがったりなんだけどねぇ?」
別な少女の声、しかも無線ではなく肉声だ
振り向くと、晒し布を巻いて黒い上着を羽織った、灰色の髪の小柄な少女が立っていた
振り向くと、晒し布を巻いて黒い上着を羽織った、灰色の髪の小柄な少女が立っていた
「あらぁ、ルートちゃんじゃありませんの」
「R-No.10、持ち場に戻って下さい」
「えー、良いじゃん堅物の姉貴ぃ、まだ命令出てなんだからぁ♪」
「その呼び方、いい加減やめて頂けないでしょうか?」
「やーだぁ♪ と・こ・ろ・でぇ、何にも起こらなかったら怪我人も出ないでしょぉ?
それじゃアタシ達救護班の意味ないじゃなぁいのぉ」
「それはそうだけど・・・」
「まぁ、保険みたいな感じってぇのは分かるけどねぇ
どっちにしても死んじゃったら医者でも手は出せないs」
「そういう発言は控えておけ、部下に聞かれでもしたら士気が落ちる」
「――――ッ!!」
「今度はR-No.3ですか・・・」
「R-No.10、持ち場に戻って下さい」
「えー、良いじゃん堅物の姉貴ぃ、まだ命令出てなんだからぁ♪」
「その呼び方、いい加減やめて頂けないでしょうか?」
「やーだぁ♪ と・こ・ろ・でぇ、何にも起こらなかったら怪我人も出ないでしょぉ?
それじゃアタシ達救護班の意味ないじゃなぁいのぉ」
「それはそうだけど・・・」
「まぁ、保険みたいな感じってぇのは分かるけどねぇ
どっちにしても死んじゃったら医者でも手は出せないs」
「そういう発言は控えておけ、部下に聞かれでもしたら士気が落ちる」
「――――ッ!!」
「今度はR-No.3ですか・・・」
話に割って入ったのは、黒髪の少年だった
R-No.上位メンバーの中で唯一の男性、R-No.3こと、栄 日天
R-No.上位メンバーの中で唯一の男性、R-No.3こと、栄 日天
「り、日天さん! そ、その、今のは言葉のアヤで・・・ご、ごめんなさい、もぉ言わないから嫌いにならないでぇ・・・」
「そこまで謝らなくても良いが; 次からは気をつけるんだぞ?」
「は、はぁい・・・♪」
「そこまで謝らなくても良いが; 次からは気をつけるんだぞ?」
「は、はぁい・・・♪」
ぽふっ、と日天に頭を撫でられると、ルートはぽっと頬を赤らめた
蓮華は咳払いをして、日天の目を見て切りだす
蓮華は咳払いをして、日天の目を見て切りだす
「で、ご用件は? 普段任務を真面目にこなしてる貴方が何の理由もなく持ち場を離れるとは思えないのですが」
「あぁ。先遣隊の1人であるオレの部下から連絡が途絶えた
こっちに言伝が無いかと思って来たんだが・・・どうだ?」
「あぁ。先遣隊の1人であるオレの部下から連絡が途絶えた
こっちに言伝が無いかと思って来たんだが・・・どうだ?」
彼の言葉に、周囲が凍りついた
蓮華の様子に日天も答えを解したのか、「そうか」と短く呟いた
その時、無線が外部からの通信を受信した事を告げるアラームがなった
蓮華の様子に日天も答えを解したのか、「そうか」と短く呟いた
その時、無線が外部からの通信を受信した事を告げるアラームがなった
「こちらR-No.1、どうぞ」
《ラピーナだよ!聞いて蓮華さん、あのnって押さないで凛々ちゃん!》
《しゃぁないやろ! 事件やで蓮華はん!ロビィんとこの先遣隊のメンバーの連絡がぷっつんと切れとるんや!》
《そうなのよ蓮華さん! そっちに連絡ないかな!?》
「そちらもですか・・・実はたった今R-No.3からも同じ内容の報告を受けまして」
《日天はんとこもかいな!?》
《やっぱり何かいるんだよー・・・》
「私も今からR-No.1616に連絡を取ってみます
引き続き、指示があるまで待機していて下さい」
《りょぉーかい!》《分かったよー》《はいなー!》
《ラピーナだよ!聞いて蓮華さん、あのnって押さないで凛々ちゃん!》
《しゃぁないやろ! 事件やで蓮華はん!ロビィんとこの先遣隊のメンバーの連絡がぷっつんと切れとるんや!》
《そうなのよ蓮華さん! そっちに連絡ないかな!?》
「そちらもですか・・・実はたった今R-No.3からも同じ内容の報告を受けまして」
《日天はんとこもかいな!?》
《やっぱり何かいるんだよー・・・》
「私も今からR-No.1616に連絡を取ってみます
引き続き、指示があるまで待機していて下さい」
《りょぉーかい!》《分かったよー》《はいなー!》
一度通信を切り、今度は別な回線に繋いだ
彼女の指揮する研究班から先遣隊として送っていた、R-No.1616への回線である
半ば祈るように待つ事暫し、無線機から声が聞こえた
彼女の指揮する研究班から先遣隊として送っていた、R-No.1616への回線である
半ば祈るように待つ事暫し、無線機から声が聞こえた
《はい、R-No.1616です》
「・・・こちらR-No.1、異常はありませんか?」
《今のところはないですね。ガイガーカウンターも反応が無いので、新型の核兵器による事件でもなさそうです》
「了解です。あと、他の先遣隊の皆さんは一緒ですか?」
《いえ、今は別行動中ですが、今合流地点に向かっているところです》
「・・・こちらR-No.1、異常はありませんか?」
《今のところはないですね。ガイガーカウンターも反応が無いので、新型の核兵器による事件でもなさそうです》
「了解です。あと、他の先遣隊の皆さんは一緒ですか?」
《いえ、今は別行動中ですが、今合流地点に向かっているところです》
ほっ、と胸を撫で下ろす一同
しかし油断は禁物だ
蓮華は早々に指示を出した
しかし油断は禁物だ
蓮華は早々に指示を出した
「では合流後、速やかに持ち場に戻って下さい。何が起こるか分かりませんからね」
《了解、通信終りょ―――――――――ッ! お、おい、どうした!?しっかりしろ!!》
《了解、通信終りょ―――――――――ッ! お、おい、どうした!?しっかりしろ!!》
突如無線機から怒号にも似た声が響き、テント内の全員に戦慄が走った
「っど、どうしました!?」
《おい!おい!!・・・き、緊急事態発生! 先遣隊の全員が自分を除いて全滅!
至急そちらに戻って再度報こk》
《おい!おい!!・・・き、緊急事態発生! 先遣隊の全員が自分を除いて全滅!
至急そちらに戻って再度報こk》
ばきっ!!という破壊音が聞こえたかと思えば、そこで通信が途絶えた
何が起こったのか分からない
だが、彼は――いや、彼らは何者かに襲われたのだろうということは容易に推測できた
椅子を倒し、勢い良く立ち上がったのは、ローゼだった
何が起こったのか分からない
だが、彼は――いや、彼らは何者かに襲われたのだろうということは容易に推測できた
椅子を倒し、勢い良く立ち上がったのは、ローゼだった
「R-No.1! 後の指揮はお任せ致します!」
「なっ、何処へ行く気ですか!?」
「決まってますわ、あの街にいる“殺人鬼”を、この目で確かめて参ります!」
「そんなことでNo.0が直々に出払っては困ります!ここは冷静に―――――――――」
「なっ、何処へ行く気ですか!?」
「決まってますわ、あの街にいる“殺人鬼”を、この目で確かめて参ります!」
「そんなことでNo.0が直々に出払っては困ります!ここは冷静に―――――――――」
蓮華が言い終える前に、ローゼの姿が消えた
「あ、」と声を出すが時既に遅し、彼女は静かに舌打ちした
「あ、」と声を出すが時既に遅し、彼女は静かに舌打ちした
「ったく、あの人は・・・! 蓮華さん、念の為オレも行くぞ!」
「は!? 待って下さい、貴方がいなくなったら戦闘班2の指揮は誰がやるんですか!?」
「R-No.30に任せてくれ! あいつはオレより軍師に向いているから!」
「待って日天さん!アタシも一緒に連れてってぇ!」
「だから、さっきから何度も言ってますが―――」
「ルート、お前はここにいr」
「嫌! きっと、アタシがさっき余計な事言ったから、こんなことになったんだよぉ・・・
このままここでじっとしてたら、死んだ人達に申し訳が立たないから、お願い!!」
「は!? 待って下さい、貴方がいなくなったら戦闘班2の指揮は誰がやるんですか!?」
「R-No.30に任せてくれ! あいつはオレより軍師に向いているから!」
「待って日天さん!アタシも一緒に連れてってぇ!」
「だから、さっきから何度も言ってますが―――」
「ルート、お前はここにいr」
「嫌! きっと、アタシがさっき余計な事言ったから、こんなことになったんだよぉ・・・
このままここでじっとしてたら、死んだ人達に申し訳が立たないから、お願い!!」
涙を溜め、必死に訴えかけるルート
数秒の間の後に、日天は何も言わず、スケッチブックを開き、
翼を生やした東洋風の龍の絵に、描かれていなかった右目を描き足した
数秒の間の後に、日天は何も言わず、スケッチブックを開き、
翼を生やした東洋風の龍の絵に、描かれていなかった右目を描き足した
「・・・画竜、点睛!」
スケッチブックから暴風が吐き出されると同時に、
描かれていた龍が、這い出るように飛び出し、巨大化した
千年という長い年月を生きることによって翼を手に入れた龍、「応龍」
日天はルートの小さな身体を抱えると、「応龍」の背に跳び乗る
「応龍」は大きく翼を羽ばたかせ、地上に突風を巻き起こしながら、
青空へと飛び立ち、2人を乗せて不気味なオーラを漂わせる摩天楼に向かった
描かれていた龍が、這い出るように飛び出し、巨大化した
千年という長い年月を生きることによって翼を手に入れた龍、「応龍」
日天はルートの小さな身体を抱えると、「応龍」の背に跳び乗る
「応龍」は大きく翼を羽ばたかせ、地上に突風を巻き起こしながら、
青空へと飛び立ち、2人を乗せて不気味なオーラを漂わせる摩天楼に向かった
「あっ、ちょっ・・・っく、これで3人・・・始末書確定ですね」
拳を机に叩き込み、殴るように全ての通信回線を繋ぎ、
待機中の黒服達に怒鳴りながら指示を促した
待機中の黒服達に怒鳴りながら指示を促した
「全員、何が起こってもその場を動かないで下さい!
もし一歩でも動こうものなら・・・死体すら残らないと思いなさい!!」
もし一歩でも動こうものなら・・・死体すら残らないと思いなさい!!」
† † † † † † †
話の舞台は件の街の中へと移り変わる
最近建てられたのか、窓ガラスが透明で美しい摩天楼、
今さっきまで人がいたように錯覚させる、街灯やネオン、路上に放置された沢山の自動車
無論人の声など聞こえず、ただ、すすり泣く様な風の音だけがビル群に反響していた
閑散とした街の交差点の真ん中に、赤い光がぽぅ、と輝いた
それはオーロラのようなカーテン状になり、波打ちながら環状に拡がって、
フェードアウトすると同時に赤髪の少女――ローゼ・ラインハルトが立っていた
きょろ、きょろりと辺りを見回すと、僅かに眉を顰めた
最近建てられたのか、窓ガラスが透明で美しい摩天楼、
今さっきまで人がいたように錯覚させる、街灯やネオン、路上に放置された沢山の自動車
無論人の声など聞こえず、ただ、すすり泣く様な風の音だけがビル群に反響していた
閑散とした街の交差点の真ん中に、赤い光がぽぅ、と輝いた
それはオーロラのようなカーテン状になり、波打ちながら環状に拡がって、
フェードアウトすると同時に赤髪の少女――ローゼ・ラインハルトが立っていた
きょろ、きょろりと辺りを見回すと、僅かに眉を顰めた
「・・・気味の悪い所ですわ・・・っと、先遣隊の皆様を探しませんと!」
広い街の中を、彼女は走り始めた
だが、ものの数分、いや数十秒駆けた辺りで、彼女の顔が青ざめた
だが、ものの数分、いや数十秒駆けた辺りで、彼女の顔が青ざめた
「――――――――――――――こっ、これは!?」
彼女の探していたものは見つかった―――全員、変わり果てた姿で
一人は左肩から右脇腹にかけて、頭と右腕が無く、ばっくりと抉られていた
一人は重い物に潰されたのだろうか、下半身が獣の礫死体のようにぺしゃんこになっていた
一人は蜂の巣に、一人は黒焦げに、一人は皮を剥がれて血達磨に
唯一人の形を取っていた者も、腹部が何かに貫かれ、大きな穴が空いていた
血に塗れ死臭が漂う凄惨な光景に、ローゼは思わず口を押さえながら、
せり上がる酸いものを胃の中へと押し返した
一人は左肩から右脇腹にかけて、頭と右腕が無く、ばっくりと抉られていた
一人は重い物に潰されたのだろうか、下半身が獣の礫死体のようにぺしゃんこになっていた
一人は蜂の巣に、一人は黒焦げに、一人は皮を剥がれて血達磨に
唯一人の形を取っていた者も、腹部が何かに貫かれ、大きな穴が空いていた
血に塗れ死臭が漂う凄惨な光景に、ローゼは思わず口を押さえながら、
せり上がる酸いものを胃の中へと押し返した
「っはぁ、はぁ・・・い、一体、誰がこんなことを・・・」
「面白かろう? 先刻まで生を宿しておった者達が、今やこうして息絶えておるのだ」
「面白かろう? 先刻まで生を宿しておった者達が、今やこうして息絶えておるのだ」
突然の声に、ローゼは身構えて声のする方向を睨んだ
声の主は、ぼろぼろの黒い外套に身を包んだ長身の男だった
“男”とは言ったが、顔はよく見えなかったので、声色からの推測だ
声の主は、ぼろぼろの黒い外套に身を包んだ長身の男だった
“男”とは言ったが、顔はよく見えなかったので、声色からの推測だ
「がっひゃっひゃっひゃっひゃ・・・そう睨むな「組織」の小娘よ、我は貴様を殺すつもりなどないぞ?」
「嘘仰い、この方達を手にかけたのは貴方ではありませんこと?」
「・・・ほぅ、何処にそんな根拠があるか問おう」
「貴方、“人間じゃありません”わね?」
「嘘仰い、この方達を手にかけたのは貴方ではありませんこと?」
「・・・ほぅ、何処にそんな根拠があるか問おう」
「貴方、“人間じゃありません”わね?」
尚も睨み続け、ローゼははっきりとそう告げた
男は小さく感嘆の声をあげると同時に、短く笑い声をあげ、
男は小さく感嘆の声をあげると同時に、短く笑い声をあげ、
「貴様も“人間ではなかろう”に・・・人ならざる者が皆殺意を持っているというのならば、貴様はどうなのだ?
・・・がっひゃっひゃ、良いぞ、混沌としてきた、互いに矛盾しあうからこそ混沌だ」
・・・がっひゃっひゃ、良いぞ、混沌としてきた、互いに矛盾しあうからこそ混沌だ」
不気味、邪悪、恐怖
様々なマイナスイメージを集合させても足りない程のオーラを放つその男に一瞬尻込みしたが、
首を大きく振って深呼吸し、ローゼは男に再び尋ねる
様々なマイナスイメージを集合させても足りない程のオーラを放つその男に一瞬尻込みしたが、
首を大きく振って深呼吸し、ローゼは男に再び尋ねる
「貴方は、一体何者ですの!?」
「むぅ? 我か・・・我が名は、ニャルラトテップ也」
(・・・ニャルラトテップ・・・R-No.5の「ショゴス」と同じクトゥルフ神話の?
ということは、他の都市伝説の副産物だとでも言うのかしら・・・)
「むぅ? 我か・・・我が名は、ニャルラトテップ也」
(・・・ニャルラトテップ・・・R-No.5の「ショゴス」と同じクトゥルフ神話の?
ということは、他の都市伝説の副産物だとでも言うのかしら・・・)
暫しの思案を終え、強気な姿勢を取り続ける
「人間の創作神話のキャラクターが、ここへ何しにいらしたの?」
「随分と言いおるな。元はと言えば都市伝説など、皆人間の創り出した物であろう?」
「小説と都市伝説は勝手が違いますわ」
「がっひゃっひゃっひゃ・・・強かよのぅ小娘、気に入った。一つ面白い話をしてやろう
ムー、アトランティス、レムリア・・・この世にはかつて幾つかの超文明が存在した
彼らのみが持っていた科学力、技術力により、急速に成長、発展していった
だが、どの文明も僅かな間に滅んでいる
自らの持った能力を過信し、新たな境地へと踏み入ろうとした結果だ
分かるか? 高度な技術は使い方を誤れば己の身を、いやそれ以外をも巻き込み滅ぼす
かつてこの街にいた人間共のように、な」
「・・・何を、仰りたいの?」
「随分と言いおるな。元はと言えば都市伝説など、皆人間の創り出した物であろう?」
「小説と都市伝説は勝手が違いますわ」
「がっひゃっひゃっひゃ・・・強かよのぅ小娘、気に入った。一つ面白い話をしてやろう
ムー、アトランティス、レムリア・・・この世にはかつて幾つかの超文明が存在した
彼らのみが持っていた科学力、技術力により、急速に成長、発展していった
だが、どの文明も僅かな間に滅んでいる
自らの持った能力を過信し、新たな境地へと踏み入ろうとした結果だ
分かるか? 高度な技術は使い方を誤れば己の身を、いやそれ以外をも巻き込み滅ぼす
かつてこの街にいた人間共のように、な」
「・・・何を、仰りたいの?」
震える声で、ゆっくりと言葉を吐きだす
バチッ!という破裂音が鳴り、ローゼの右腕に赤い火花が散る
バチッ!という破裂音が鳴り、ローゼの右腕に赤い火花が散る
「我は人間共が自滅する様を見るのが好きでなぁ?
直接手を下すのも良いのだが、それではすぐに終わってしまってつまらん
ある人間に技術、科学、魔術を与え、
その者がそれを利用して新たな集落、街、国、文化、文明を創造する
やがて富と名声を手に入れ驕り高ぶった人間は、破滅の道を突き進む!
核兵器、ダイナマイト、フロンガス! 何かを創造することは、何かを破壊することに繋がる!
どうだ混沌としているだろう? 素晴らしいだろう!?
その様子を傍観するのが堪らなく楽しいのだよ!!」
「お黙りなさい!!」
直接手を下すのも良いのだが、それではすぐに終わってしまってつまらん
ある人間に技術、科学、魔術を与え、
その者がそれを利用して新たな集落、街、国、文化、文明を創造する
やがて富と名声を手に入れ驕り高ぶった人間は、破滅の道を突き進む!
核兵器、ダイナマイト、フロンガス! 何かを創造することは、何かを破壊することに繋がる!
どうだ混沌としているだろう? 素晴らしいだろう!?
その様子を傍観するのが堪らなく楽しいのだよ!!」
「お黙りなさい!!」
ローゼが右手突き出し人差し指をピンと伸ばすと、
指先から赤い光の線が放たれ、真っ直ぐに男の方へ伸びてゆく
しかし男は見切っていたかのように、真上へ高くジャンプした
そのまま、男は――ニャルラトテップはふわふわと浮遊していた
指先から赤い光の線が放たれ、真っ直ぐに男の方へ伸びてゆく
しかし男は見切っていたかのように、真上へ高くジャンプした
そのまま、男は――ニャルラトテップはふわふわと浮遊していた
「さっきから聞いていれば・・・ならどうしてこの方達を殺したというの!?」
「あぁ、その者共は我に武器を向けたのでな、正当防衛だ」
「・・・R-No.1616は武器を携行しておりませんでしたわ・・・
やっぱり矛盾してばかりじゃありませんの!!」
「がっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!!
互いに矛盾し合うからこそ・・・混沌だろうがぁ!!!」
「あぁ、その者共は我に武器を向けたのでな、正当防衛だ」
「・・・R-No.1616は武器を携行しておりませんでしたわ・・・
やっぱり矛盾してばかりじゃありませんの!!」
「がっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!!
互いに矛盾し合うからこそ・・・混沌だろうがぁ!!!」
叫ぶと同時に、ニャルラトテップの身体が大きくうねり始めた
途端に、外套が破け四方八方に散り、中から巨大な物体が出現した
腕と、鉤爪と、巨大な口の付いた触手の集合体
顔と呼べるものが存在せず、代わりにその肉塊の頂点に位置する場所に円錐状の頭部らしきものがあった
口が大きく開き、ローゼの元に齧り付こうとしたが、彼女は咄嗟に左に跳んで回避した
路面を穿ち、ばりばりとアスファルトを食らう大口
途端に、外套が破け四方八方に散り、中から巨大な物体が出現した
腕と、鉤爪と、巨大な口の付いた触手の集合体
顔と呼べるものが存在せず、代わりにその肉塊の頂点に位置する場所に円錐状の頭部らしきものがあった
口が大きく開き、ローゼの元に齧り付こうとしたが、彼女は咄嗟に左に跳んで回避した
路面を穿ち、ばりばりとアスファルトを食らう大口
「っく・・・それが貴方の真の姿かしら?」
【“真の”だと? 我は千なる姿を持つ無貌の神なるぞ】
「あらそうなの、教えて下さってどうも
けれど、詳しい事は後で本部に帰って聞かせて頂きますわ!」
【“真の”だと? 我は千なる姿を持つ無貌の神なるぞ】
「あらそうなの、教えて下さってどうも
けれど、詳しい事は後で本部に帰って聞かせて頂きますわ!」
ローゼの足が赤く光ったかと思えば、
彼女は目にも止まらぬ速さでニャルラトテップの懐に移動し、右手に出現させた赤い光刃を突き立てる
彼女は目にも止まらぬ速さでニャルラトテップの懐に移動し、右手に出現させた赤い光刃を突き立てる
【やれるものならやってみよ、人間風情がぁ!!】
ニャルラトテップの無数なる鉤爪が、ローゼ目掛けて襲いかかった
「そんなもの、当たらなければどうという事はありませんわ!」
フォトンの刃で鉤爪を斬り落とし、軽やかに回避しながら、
今度こそニャルラトテップの身体を斬り裂かんとする
が、眼前の肉塊から腕が生え、拳を作ってローゼを殴り飛ばそうとした
彼女は、とん、と拳を踏み台にして跳び、一度ニャルラトテップから距離を置いた
今度こそニャルラトテップの身体を斬り裂かんとする
が、眼前の肉塊から腕が生え、拳を作ってローゼを殴り飛ばそうとした
彼女は、とん、と拳を踏み台にして跳び、一度ニャルラトテップから距離を置いた
【がっひゃっひゃっひゃ、小娘だと聊か油断しておったわ、流石は「組織」だな】
(あの腕をどうにかしないと、攻撃が通りませんわね・・・)
(あの腕をどうにかしないと、攻撃が通りませんわね・・・)
幾多の思考を重ねながら、飛んでくる鉤爪を横へ、後ろへ回避し続ける
しかし攻撃は無数に来る為に、着地しては避け、着地しては避け、
触手を蹴って跳び上がり、大きく距離を取るか逆に距離を詰めるかの繰り返しだった
しかし攻撃は無数に来る為に、着地しては避け、着地しては避け、
触手を蹴って跳び上がり、大きく距離を取るか逆に距離を詰めるかの繰り返しだった
「あぁん、少しは大人しくなさって!」
【逃げ回ってばかりだと、我を捕らえるどころか、殺すことすらできぬぞ?】
「逃げてるんじゃありませんの! 反撃の機会を伺ってるだけです、わ!!」
【逃げ回ってばかりだと、我を捕らえるどころか、殺すことすらできぬぞ?】
「逃げてるんじゃありませんの! 反撃の機会を伺ってるだけです、わ!!」
ローゼの指先から赤い光線が放たれる
それは真っ直ぐに、ニャルラトテップの円錐状の頭部に向かっていった
バチッ!!という衝撃音が響き、巨体がぐらりと揺らいだ
それは真っ直ぐに、ニャルラトテップの円錐状の頭部に向かっていった
バチッ!!という衝撃音が響き、巨体がぐらりと揺らいだ
【っぬぅ!?】
「・・・あら、弱点を2つも見つけましたわ」
「・・・あら、弱点を2つも見つけましたわ」
にこっ、と微笑み、彼女は一気に詰め寄って刃を振るった
迫りくる幾つもの触手を斬り落とし、目の前に聳える巨体に横一文字の傷を入れた
微かに呻き声をあげ、ニャルラトテップは食腕を伸ばす
それを踏み台にしながら斬り刻み、空中でくるりと身体を捻って、
両手の5本の指先から放たれた赤い光の筋が、巨体の至る所で火花を散らした
迫りくる幾つもの触手を斬り落とし、目の前に聳える巨体に横一文字の傷を入れた
微かに呻き声をあげ、ニャルラトテップは食腕を伸ばす
それを踏み台にしながら斬り刻み、空中でくるりと身体を捻って、
両手の5本の指先から放たれた赤い光の筋が、巨体の至る所で火花を散らした
【ぐふっ・・・貴、様ぁ・・・】
「1つ、貴方は身体が大きい所為で動きが遅いですわ
その沢山の腕での防御は厄介だけれど、咄嗟の攻撃に対する反応が鈍いこともあって、
先を読んでの防御しかやってらっしゃらないようですわね
そして2つ、自信過剰すぎますわ
こちらの攻撃が通らないというだけで、強気になってはなりませんの」
「1つ、貴方は身体が大きい所為で動きが遅いですわ
その沢山の腕での防御は厄介だけれど、咄嗟の攻撃に対する反応が鈍いこともあって、
先を読んでの防御しかやってらっしゃらないようですわね
そして2つ、自信過剰すぎますわ
こちらの攻撃が通らないというだけで、強気になってはなりませんの」
わざわざ人差し指、中指の順に指を立て、自分の発言の解説をするローゼ
身体の至る所から煙と体液を吐き出しながら、
崩れかけた巨体を起こし、ローゼを見据え――顔を構成するものが無いので定かではないが――、口を開いた
身体の至る所から煙と体液を吐き出しながら、
崩れかけた巨体を起こし、ローゼを見据え――顔を構成するものが無いので定かではないが――、口を開いた
【・・・がっひゃっひゃ、そうか、今度は貴様が勝った気でいるというのか
どうやら、さっき我が言った事を忘れているようだな】
どうやら、さっき我が言った事を忘れているようだな】
言葉が切れる
と同時に、そのグロテスクな巨体に変化が起こった
食腕、鉤爪、円錐状の頭部、全てを肉塊の中に収めたかと思えば、
身体が不定形な液体のようなフォルムに変化した
と同時に、そのグロテスクな巨体に変化が起こった
食腕、鉤爪、円錐状の頭部、全てを肉塊の中に収めたかと思えば、
身体が不定形な液体のようなフォルムに変化した
「なっ・・・何を!?」
【貴様、先刻は我を“創作上の産物”と罵ってくれたな?
この我を・・・人間如きが創り上げた物と一緒にするな!!】
【貴様、先刻は我を“創作上の産物”と罵ってくれたな?
この我を・・・人間如きが創り上げた物と一緒にするな!!】
形無き物体はいよいよ形を表す
先程とは違い、手足はそれぞれ一対ずつの人型
やはり顔は無く、その肉体は重さ300kg、高さ2mはあろう、正に巨漢と呼ぶに相応しい姿だった
いや、“巨漢”というよりは、何処となく女性のような雰囲気を漂わせている
腰には何本もの小さな鎌をぶら下げており、右手には扇子を構えてひらひらさせていた
先程とは違い、手足はそれぞれ一対ずつの人型
やはり顔は無く、その肉体は重さ300kg、高さ2mはあろう、正に巨漢と呼ぶに相応しい姿だった
いや、“巨漢”というよりは、何処となく女性のような雰囲気を漂わせている
腰には何本もの小さな鎌をぶら下げており、右手には扇子を構えてひらひらさせていた
「・・・なるほど、今までのは確か「夜に吼える者」でしたわね
そちらは「膨れ女」・・・だったかしら?」
【如何にも。これで幾分は早く動けるぞ?】
「そうかしら? なら、お手並み拝見ですわ!」
そちらは「膨れ女」・・・だったかしら?」
【如何にも。これで幾分は早く動けるぞ?】
「そうかしら? なら、お手並み拝見ですわ!」
赤い刃を作り、「膨れ女」の姿を取ったニャルラトテップに斬りかかった
きぃん!!と甲高い金属音が鳴り響き、火花を散らす
ローゼの刃を、ニャルラトテップの扇子が押さえていた
きぃん!!と甲高い金属音が鳴り響き、火花を散らす
ローゼの刃を、ニャルラトテップの扇子が押さえていた
「ッ! 鉄扇!?」
【がっひゃっひゃ、隙有りだ!!】
【がっひゃっひゃ、隙有りだ!!】
空いた手で鎌を持ち、今度はローゼに刃が向けられる
ローゼも、空いている腕にもう1本の刃を作り出してその斬撃を抑えた
この時、彼女の身体は宙に浮いている状態であった為、足が自由であった
扇子と鎌を弾いて、ローゼはニャルラトテップの膨らんだ胴体を蹴りあげる
鈍い打撃音と共に一瞬よろめいたが、すぐに態勢を立て直し、鎌を振り上げた
ローゼも、空いている腕にもう1本の刃を作り出してその斬撃を抑えた
この時、彼女の身体は宙に浮いている状態であった為、足が自由であった
扇子と鎌を弾いて、ローゼはニャルラトテップの膨らんだ胴体を蹴りあげる
鈍い打撃音と共に一瞬よろめいたが、すぐに態勢を立て直し、鎌を振り上げた
「し、しまっ――――――」
空中で不自由なローゼに、容赦なく振り下ろされる小鎌
寸前で赤光の刃によって防いだが、攻撃の反動でその小さな身体は強く地面に叩きつけられた
小さく呻くも、すぐに両手で地面を押し返し跳んでニャルラトテップからの距離を取り、
着地と同時に指先から赤い光線を2、3度発射する
が、その攻撃は扇子でひらり、ひらりと舞を踊るように弾かれ、光の弾丸は明後日の方向へ飛んでいった
汗を流し、息を荒げ始めるローゼ
それとは対照的に、あれだけ攻撃を受けていたニャルラトテップには疲労は見えなかった
寸前で赤光の刃によって防いだが、攻撃の反動でその小さな身体は強く地面に叩きつけられた
小さく呻くも、すぐに両手で地面を押し返し跳んでニャルラトテップからの距離を取り、
着地と同時に指先から赤い光線を2、3度発射する
が、その攻撃は扇子でひらり、ひらりと舞を踊るように弾かれ、光の弾丸は明後日の方向へ飛んでいった
汗を流し、息を荒げ始めるローゼ
それとは対照的に、あれだけ攻撃を受けていたニャルラトテップには疲労は見えなかった
「っ・・・くぅ、まだ平然としていられるの・・・?」
【人ならざる者とて、所詮は元人間か・・・つまらん、もっと我を楽しませてくれ】
【人ならざる者とて、所詮は元人間か・・・つまらん、もっと我を楽しませてくれ】
扇子を広げて自らを煽ぎ、ニャルラトテップは彼女を見下し愉しむようにくつくつと笑う
ローゼは、ぎり、と歯を鳴らし、両腕に刃を備えたまま、「膨れ女」に攻撃を仕掛ける
ローゼは、ぎり、と歯を鳴らし、両腕に刃を備えたまま、「膨れ女」に攻撃を仕掛ける
「人間を馬鹿にするのもいい加減になさい!」
怒りを込め、ローゼの2つの刃が迫る中で、
ふと、ニャルラトテップは見当違いの方向へ目を遣り、驚いたように呟いた
ふと、ニャルラトテップは見当違いの方向へ目を遣り、驚いたように呟いた
【何だ、まだ生き残りがいたのか。仕留めておかねば】
ローゼはしっかりと、その言葉を聞いた
“生き残り”
先遣隊は、全滅していなかった
喜び、そして守り抜かなければならない使命感が彼女を支配し、
ニャルラトテップの方ではなく、ローゼは“生き残り”がいる方へと爪先を向けた
“生き残り”
先遣隊は、全滅していなかった
喜び、そして守り抜かなければならない使命感が彼女を支配し、
ニャルラトテップの方ではなく、ローゼは“生き残り”がいる方へと爪先を向けた
「―――――――え?」
己のミスに気がついた時には、既に遅かった
【かかりおったな馬鹿がぁ!!】
投げられた小鎌は、ブーメランのようにくるくると回りながら、
少女の脇腹を貫通し、黒いスーツを赤黒く染める
少女の脇腹を貫通し、黒いスーツを赤黒く染める
「っかは・・・!?」
激痛が走り、彼女はその場で倒れ伏した
だがそれは単に痛みの所為ではなく、
“生き残り”など何処にもいなかった絶望と、敵の策にまんまとかかった自分の情けなさを感じた所為でもあった
だがそれは単に痛みの所為ではなく、
“生き残り”など何処にもいなかった絶望と、敵の策にまんまとかかった自分の情けなさを感じた所為でもあった
【がっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ! 愚かよのぅ人間、戦いの最中に他人の命を気にする戦士が何処におる?】
「ケフッ・・・こ、の・・・卑怯、者・・・」
【勝つ為に手段を選ばぬのは当然であろう?
時に欺き、時に弱者を殲滅す・・・それは貴様ら人間とて同じ事!!】
「ケフッ・・・こ、の・・・卑怯、者・・・」
【勝つ為に手段を選ばぬのは当然であろう?
時に欺き、時に弱者を殲滅す・・・それは貴様ら人間とて同じ事!!】
ニャルラトテップが大地を抉る程に強く地面を蹴ると、
その巨体からは想像もつかないくらい空高くへと跳んで、
徐々に速度を増しながら、ローゼ目掛けて真っ逆さまに落下を始めた
直撃すれば、命の保証はない
何とか逃れようとするローゼだが、血を流し過ぎたのか、手足に力が入らない
その巨体からは想像もつかないくらい空高くへと跳んで、
徐々に速度を増しながら、ローゼ目掛けて真っ逆さまに落下を始めた
直撃すれば、命の保証はない
何とか逃れようとするローゼだが、血を流し過ぎたのか、手足に力が入らない
(・・・ここまで、なの・・・?)
拳を握りしめ、内心で地面を殴りつける
諦め半分、悔しさ半分に、ただ茫然と、落ちてくる「膨れ女」を睨み続けた
諦め半分、悔しさ半分に、ただ茫然と、落ちてくる「膨れ女」を睨み続けた
...To be Continued