「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 赤い幼星-29b

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【がっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ! 愚かよのぅ人間、戦いの最中に他人の命を気にする戦士が何処におる?】
「ケフッ・・・こ、の・・・卑怯、者・・・」
【勝つ為に手段を選ばぬのは当然であろう?
  時に欺き、時に弱者を殲滅す・・・それは貴様ら人間とて同じ事!!】

ニャルラトテップが大地を抉る程に強く地面を蹴ると、
その巨体からは想像もつかないくらい空高くへと跳んで、
徐々に速度を増しながら、ローゼ目掛けて真っ逆さまに落下を始めた
直撃すれば、命の保証はない
何とか逃れようとするローゼだが、血を流し過ぎたのか、手足に力が入らない

(・・・ここまで、なの・・・?)

拳を握りしめ、内心で地面を殴りつける
諦め半分、悔しさ半分に、ただ茫然と、落ちてくる「膨れ女」を睨み続けた








「『ギフト・ヴァイラス』!!」







上空で液体が弾ける音と爆音が混じった音が轟いた
何事かと、目だけを動かしていくと、彼女は己の目を疑った
300kgはあろう巨体が弾道を大きく反れ、近くのビルを破壊しながら落下したのだ
空に見えたのは、翼の生えた巨大な影と、その背に乗る2つの人影

「良かった、間に合ったか!」
「トップの姉貴ぃ!! 死んでないよねぇ!?」

ローゼの後を追ってきた、栄 日天とルート・ライフアイゼンだった
「画竜点睛」によって召喚され、日天とルートをここまで乗せてきた「応龍」は、
巨大な翼を羽ばたかせながらゆっくりと着陸し、
2人が降りた直後に、役目を終えてすぅっと消えていった

「ローゼさん!大丈夫か!?」

ローゼの元に駆け寄り、日天が彼女を仰向けにさせて上半身を持ち上げた
苦悶の表情を浮かべるローゼを見て、ルートが強い口調で言い放つ

「ッだめぇ! 動かしたら傷口が開いちゃう!」
「あっ・・・す、すまん」
「え、あの、えっと、アタシも強く言っちゃって、その・・・あ、待っててトップの姉貴ぃ、今治療するからぁ」

ルートは己の上着の胸ポケットから小瓶を取り出した
中身はどんな傷でも僅かな時間で治癒してしまう万能薬都市伝説「蝦蟇の油」
血の流れ出る脇腹にそれを満遍なく丁寧に塗っていくと、
次第にローゼの表情が柔らかくなっていき、強く瞑っていた目が開かれ、彼女は跳び起きた

「っは・・・あ、貴方達、どうしてここに!?」
「あんたと先遣隊が心配で、ルートと一緒に追って来たんだ・・・まさか、こんな事になってるとは思わなかったが」

ちら、と彼は周囲の亡骸に視線を移した
日天の傍らでは、ルートが口を押さえつつも必死に堪え、
自分が吹き飛ばした敵の着地点――崩れたビルの瓦礫を睨んだ

「あのデブが、こいつらを・・・ぶっ殺してやるんだからぁ!!」
「待って!あれはあまりにも危険すぎますわ! ワタクシを置いて早く逃げて!」
「2人とも何言ってるんだ! ここは一度引き上げるぞ―――」
【ほぅ、不意打ちとは言え我の身体に傷をつけておいて逃げるというのか?】

背筋にぞくりと寒気を感じたかと思えば、瓦礫の山から音を立てて“何か”が現れた
本来なら、「膨れ女」が出てくるであろうその山の中からは、全く別の者が顔を出した
全体の風貌は、全長10m程度の巨大な芋虫
身体は鞭のようにうねる無数の触手で覆われており、
さらに涎を垂らした大きな口が一つだけでなく、二つ、三つ、複数個あった

「・・・っな、何よあれぇ!?」
「馬鹿な・・・新たな都市伝説か!?」
「いいえ、あれはさっきR-No.10が吹き飛ばしたものと同一の存在・・・
  千の顔を持つ邪神、ニャルラトテップ・・・らしいですわ
  これは・・・「嘆き悶える者」、かしら?」
「ッ!? それって、創作上の存在じゃないのか!?」
【がっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!!
  まだ言うか人間、我は下らん造形物とは異なる!!
  誰でもない、我は“我”として存在しているのだ!!】
「さっきも似たような事を仰ってたわね、どういうことですの?」
【何れ分かる事だ・・・尤も、ここで生き残れたらの話だがなぁ!】

芋虫状の身体の先端にある口を開き地面を這いずって、ニャルラトテップは3人に襲いかかった
日天とルートはそれぞれ左右に、ローゼは赤い光の翼を生成して真上に回避する

【数が増えた所で、人間如きが我には勝てん!!】

ニャルラトテップは身体を起きあがらせると、身体中の触手を周囲に伸ばした
無数の触手は一斉に、ローゼ達に迫る

「っく、『フォトン・ウェーブ』!」
「画竜点睛!出ろ、「銭塘君」!」
「『カイザーシュニット』!」

ある者は赤い閃光を放ち、触手を蒸発させる
ある者は真っ赤な東洋龍を召喚し、触手を焼き払う
ある者は黒い粘液で刃を作り、触手を切り刻む
それでも、触手の進攻は止まらない

【どうした小娘共ぉ!? 逃げられるものなら逃げてみろぉ!!
  それとも何だ? 仲間を置いて逃げられんとでも言うのか?
  愚か也!! 己の命より大切な物など、この世に存在せん!! そうだろう?】
「ばぁか! じゃあこの広ぉい世界でたった一人になったらどうすんのぉ?
  苦しくても悲しくても辛くても、支えてくれる人なんて居やしない!
  自分の命ばっか大切にしたって幸せな事なんてないじゃんよぉ!!」

触手を細切れにしながら、ルートが怒鳴る
ふん、と鼻で笑ったかと思えば、ニャルラトテップは全ての口から金切り声のような、
甲高く耳障りな、大きな笑い声をあげた

【がっひゃっひゃっひゃっひゃ!! 理解出来ん! 他者との共存など考えたくもない!
  “我”という自我が存在してこそ、初めて世界が存在出来るのだぞ!?
「そんな馬鹿みたいなこと考えてるなら、テメェは永遠にアタシ達には勝てない!」

ルートは跳び上がり、刃を1本から10本へと、一気に数を増やした
猫の爪、いや魔女の爪のようなそれを構え、

「『ドリンゲント・オペラツィオン』!!」

5つのクロスを作るように、刃を振りかぶった
本来なら、そこでぶつ切りになるか、最低でも血飛沫が飛び散る筈だった
しかし、

「っき、消えたぁ!?」

標的は、彼女の目の前から消えていた
体毛が如く生えた触手が蠢き、複数の口が開いていたあの不気味で巨大な怪物が、
一瞬にして消失したという信じがたい出来事に、ルートは一瞬戸惑った
だがそれは、“ルートの視界で消えた”だけに過ぎなかった

「ルートちゃん! 下!!」

ローゼの声に反応し、見下ろした瞬間だった
人間大の大きさの、マントを羽織った何かの姿があった
“人間”と断言できないその由は、マントから覗かせるその身体にあった
配線が剥き出しになり、至る所で計測器が針を行ったり来たりさせている、
ロボットと言って差し支えのない物体
SFチックなこの機械も、「チクタクマン」と呼ばれるクトゥルフ神話におけるニャルラトテップの化身の一つである
ニャルラトテップは、巨大な芋虫から人間大の姿に変身することで、
ルートの視界から宛も消えてしまったかのように見せかけたのだ

「う、嘘!?」
【いやこれが真実だ】

無機質な機械音声が響いた直後、ニャルラトテップは右腕をルートへと向けた
腕には手首から先がなく、ぽっかりと穴が空いている
その穴の奥が、強烈な輝き始めたのを確認すると、彼女は焦り始める
まだ彼女は空中にいるままだ
そして彼女は、ローゼのように、翼を生やして空を飛ぶ事もできなければ、
日天のように、龍などの飛行可能な生物を召喚する事もできない

【死ね小娘! がっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!】
「ルートちゃぁん!!」
「ルートぉ!!!」

先に動いたのは日天だった
「銭塘君」を駆り、空中で身動きの取れないルートの元へ寄り、腕を伸ばした
その刹那、ニャルラトテップの腕から光が吐き出される

「っ!? 日天さん!!」

ぶらん、とルートは日天の手を取ってぶら下がっていた
間一髪で救出されたようだ

「・・・あ、ありがとぉ、日天さ――――――――ッ!?」

突如として空と地面が逆さまになり、視界がぐちゃぐちゃになる
あとには、彼女の目の前が闇に包まれる
混乱している間に、強い衝撃が身体中に走った

「っつつ・・・何があったってのよッ・・・日天、さん?」

起き上がり、その光景に息が詰まった
先程自分を助けてくれた少年は今、自分の下敷きになって力無く倒れている
左肩に風穴を空けて
スーツを赤黒く染めて

「り、日天さん? 日天さん!?」
「カハッ・・・ルー、ト・・・無事なの、か?」
「アタシは平気だよ、それより日天さんが―――」
「そう、か・・・良かっ・・・た・・・」

言い残し、日天の消えかけた蝋燭のような目は、ゆっくりと閉じられた
暫しの沈黙、そして彼女は大きく首を横に振った

「日天さん! 起きてよ日天さん!! 死んじゃいやぁ!!」

ローゼが同じく傷を負っていた時は、例え想いを寄せている相手であろうと構わず怒鳴ったルートだったが、
それでも、彼女は日天の身体を激しく揺すり、目に涙を溜めて必死に呼びかけた
この時だけは、血に塗れていようが問題ではなかった
ただ、日天が生きていれば、それで良かった

【がっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!! あぁ、今日は愉快な事だらけだ!!
  見たか小娘? あの小僧、撃たれても尚灰色の小娘を護ろうとしておったぞ!
  こんなにも愚かしく可笑しいことがあるか!?
  全く、人間とは何十年何百年と見ていても飽きぬ生き物だなぁ!! がっひゃっひゃっひゃっひゃ!!】

正しく壊れた機械の如き笑いをあげ、ニャルラトテップは再び砲口を向ける
標的は無論、撃たれた少年と泣き叫ぶ少女
ルートは向こう側を向いていた為と心理的環境の為に、それに気付けなかった

【後で赤い小娘も送ってやる、先に仲良く奈落で待っておれ―――――――】

ざんっ!!
ビーム砲となっている右腕がばっさりと斬り落とされ、切れた配線が火花を散らした
腕を斬ったのは、ローゼである

【っ・・・ちっ、邪魔しおtt】
「お黙りなさい!!」

怒りの篭った拳を、機械の顔面に叩きつける
よろめくニャルラトテップの腹部に、今度は絶え間ない蹴りを入れ、
またも力強く、上から振りかぶって拳をぶつけた
殴り飛ばされたニャルラトテップはアスファルトと擦れて火花を飛び散らせて滑っていき、
摩擦熱によって左腕と左脚を失いつつ、やがて止まった

【・・・貴様ぁ、我を誰だと思っている!? 「這い寄る混沌」、邪神ニャルラトテップなるぞ!!】
「何が邪神よ! 何が混沌よ!!
  他人を貶して、騙して、滅茶苦茶にしてるだけじゃありませんの!!
  貴方のように命を冒涜するような者が神と呼べたとしても、少なくともこの世界には必要ありませんわ!!」

歩み寄りながら言葉を放つ毎に、彼女の身体から赤い放電が起こり、バチバチと音を響かせる
両腕と片脚を失いもがくニャルラトテップに近づくと、彼女はその頭部を鷲掴みにした
腕を伝って、機械の身体に多量の電気が流れ込む

【お゙あ゙っ!? こっ、小娘、何を―――】
「もう二度と、もう誰にも・・・ワタクシの家族を殺させはしない!!!」

赤い電気を帯びた機械達磨を、彼女はオーバースローの様式でビルに投げ飛ばした
怒りに続いて憎しみさえも込められた一投は、摩天楼を次々と突き破り、瓦礫の山脈を作り出した
あまりの轟音に、ルートも振り向かざるを得なかった

「・・・トップの・・・姉貴・・・?」

髪が振り乱れ、赤々と発光するローゼの姿を見て、彼女は何を思ったのだろうか

【小娘がぁ!!! 神を冒涜するとは何たる愚の極み!!!】

ローゼから遥か離れた瓦礫から、新たな影が飛び出した
蝙蝠、いや悪魔とも言うべき邪悪な黒い翼を広げ、
身体は黒い煙のような不定形なものであり、
その中心には燃え上がった巨大な眼球が、裂け目によって3つに分かれて存在していた
ニャルラトテップの化身の中でも最高の力を誇るその姿、名は「闇を彷徨う者」

【それ程までに死を望むのならば、我が究極の闇の力を持って無惨にして凄惨なる死を与えよう!!】

突風を巻き起こし、途轍もない速さでローゼに迫るニャルラトテップ
形の無い胴体の下部を鋭い爪に変えて、彼女を地面ごと穿たんとする
しかし寸前で翼を生やして飛翔する事によって容易く回避された
今度はローゼの番だ
赤く放電する右手を握りしめて拳を作り、大きく後ろへ引く

【がっひゃっひゃ!! 無駄だ小娘、我への一切の物理攻撃は無に等しい!!】
「そう、“物理”でしたら、ね!!!」

拳は眼球のド真ん中を射止め、見事なアッパーを決め込んだ
力強く叩き込まれた攻撃によって、ニャルラトテップは勢い良く、自分の意志とは無関係に上空に飛び上がった

【おぐぅっ!? あがっ・・・な、何故だ? 何故拳が・・・ハッ!?】

何かに気付いた瞬間に、ローゼの矢の如き蹴りが突き刺さり、もっと上へと飛んでいった
というより、ニャルラトテップはこの攻撃のお陰で気づいたのだ
ローゼが己に蹴りを入れる時、赤い光を脚に纏っていた事を

【・・・“光”!?】

千もの化身の中で強力な姿である「闇を彷徨う者」
だが強大な力を有するそれには、決定的な弱点があった
それこそが、“光”
本来はこの姿を取る際、夜空の星の光でさえニャルラトテップを苦しめる武器となりえたのだ
彼はこの弱点を永きに渡り徐々に克服してきたが、それでも“強い光”には耐えられなかった

「えぇ、貴方の苦手な“光”ですわ! もうお分かりですわよね?
  「フォトンベルト」と契約して光子を操れるワタクシと相見えた事が、そもそも貴方のミスでしたのよ!!」

両手を横に広げ、掌に赤い光を集めると、両手首を身体の正面で接して花弁の形を作る
ローゼの身体に帯びたスパークが掌に集中し、光の弾を形成していった

【・・・そうか、そうか・・・がっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!!
  がぁっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!】

ニャルラトテップは、何度目かの笑い声をあげた
それは、これまでの愉しげで見下したような笑いではなく、
狂ったような、しかし何かを悟ったような笑いだった

【良かろう! 今回は我の敗北を認めてやろう!
  だが忘れるな! 我は千の貌を持つと同時に、千の分身を持っている!
  次に我以外の我と出会えば、貴様等に勝機は無い!!
  二度と再び千なる異形の我と出会わぬ事をこの宇宙に祈るが良い!!
  我こそは「這い寄る混沌」、ニャルラトホテップなればぁ!!!】
「例え出会ったとしても、絶対に勝ってみせますわ!
  それが、ワタクシ達「組織」の役目だから!
  そして、沢山の命を、“家族”を護る為だから!!」

赤い光が、両掌に一気に集約され、

「『フォトン・エクストリーム』!!!!」

ローゼの掛け声と共に、一気に解放された
街一つを包み込む程の巨大な赤い光条は、黒い翼を飲み込んで、
空に一筋の赤い線を描きながら、混沌の化身を消滅させた



    †    †    †    †    †    †    †



街の外に設置された「組織」のテント
外からも見て取れる街の状況の変化の所為で、とても慌ただしくなっていた

「あぁ、もう、まだR-No.0と交信できないのですか!?」
「も、申し訳御座いません! 何故か混線しているようで・・・」
「っく・・・恐らく彼女のフォトンの影響・・・
  先程のビルの倒壊といい、一体何が起こっているというのですか・・・!!」
《蓮華はん! 蓮華はん!!》

忙しなく無線の向こうから関西弁で呼び掛けるのは凛々だった

「何ですか、こんな時に」

受話器を手に取り、冷たくあしらうように言い放つ蓮華
ところが、凛々の報告は意外なものだった

《空見てみぃ空! えらい事になってんで!》
「・・・空、ですか?」
「R-No.1さん! 本当に大変な事になってます!」

下位ナンバーの黒服にも促され、無線の受話器を持ったままテントの外に出た

「・・・ッ!!」

美しくも、恐ろしげな光景だった
包囲している街の上空に、強い光を放つ赤い球体があったのだ
それは星のように見えたが、そこから伸びた赤い光の線が尾を引いているように見え、
まるで彗星か何かのようにも見えた

「あ・・・」

日食や月食のような天文現象は、古来より凶事の前兆とされてきた
特に、流星や彗星は、星の中でも異質なものであったが故に異なる名前で呼ばれる事もあった
蓮華は、暫く黙った後に、呟いた

「・・・紅い・・・妖星・・・?」



    †    †    †    †    †    †    †



それから数分後―――

「ん・・・ここは?」
「日天さぁん!!」
「ガハッ、っちょ、ルート苦し」
「良かったぁ・・・生ぎででよがっだぁ・・・ひっぐ・・・」
「・・・ごめんな、心配かけて」

泣きじゃくるルートの頭を、日天がそっと撫でる
コホン、という蓮華の咳払いが聞こえたのはデジャヴュだろうか

「R-No.3は目覚めましたが・・・こちらは、まだのようですね」

彼女は日天とは別のベッドに目を向ける
そこには、ローゼがすやすやと寝息を立てて眠っていた

「仕方ないよ堅物の姉貴・・・トップの姉貴が一番頑張ったんだしぃ・・・」
「・・・まぁ、万全でない状態で起きて貰っても困りますからね」
「ローゼさん・・・大丈夫なのか?」
「うん、外傷は殆どなかったよぉ。あとはホントに体力の回復を待つだけぇ」
「彼女が起きるまで、我々はここで待機ですね
  最悪の場合、野宿になるかも知れません・・・」

言いながら、蓮華は傍の無線機に手を伸ばした

「R-No.40、こちらR-No.1。街の状況はどうですか?」
《はいなのれす! 瓦礫だらけで滅茶苦茶なのれすよー!》
「それは街の外からでも分かります・・・もっと別の発見はないのですか?」
《あう、えっと・・・あぁ、あるのれす!
  ガイガーカウンターがこれでもか!っていうくらいにすっごい数値を示してるのれすよ!》
「・・・え?」

蓮華は耳を疑うと同時に、事件前の先遣隊の言葉を思い出した
あの時、彼は『ガイガーカウンターに反応は無い』と言っていたのだ
その事実と、この報告、そしてルートが教えてくれたローゼと敵の戦闘の様子から分かる原因は

《・・・R-No.1さん?》
「ぇ、あ、すみません。なるべく早く、しかし丁寧に放射線の除去に当たって下さい」
《了解なのれす! 任せるのれすよ!》

通信を切る
ハァ、と溜息を吐き、彼女は再びローゼを見た

「むにゃ・・・ごめんなひゃい蓮華ひゃぁん・・・」
「どんな夢見てるんだ、この人は;」
「ヒャハ♪ 正夢になったりしてぇ」
(「フォトンベルト」・・・とんでもない爆弾を抱えてますね、この人は・・・)









「ねぇねぇ凛々ちゃん」
「何やラピーナ?」

街の周囲に人払いの結界を張る為の準備をしている最中、
ラピーナが疑問の色を浮かべて凛々に話しかけた

「さっき蓮華さんとの通信で聞こえた言葉あったよね?」
「あー、『アカいヨウセイ』だっけ?」

横からロベルタが参加する
「そうそう」とラピーナがそれに答えると、凛々に向き直して続ける

「それでね、『ヨウセイ』ってどういう意味なのー?って思ったんだよー」
「うんうん、それアタシも気になった! 凛々ちゃん日本人だから分かるよね?」
「へ?」

額から汗をたらりたらりと滝のように流し始める凛々
彼女は確かに日本人だが、全ての日本語を知っている訳ではない
蟀谷を掻き、目線を時々空に送り、彼女は必死になって考えた

「あー、うー、そのやなぁ・・・あ、せや、あれや!」
「「なになに?」」
「ほら、あの星みたいなんってローゼはんやった訳やろ? 蓮華はんは既にそれに気づいたぁたんや」
「うんうん」
「ローゼはんってまだ子供やん? 幼いやん? そんで、赤い星で・・・」
「あ、なるほど! それで『赤い幼星』かぁ!」
「さすが凛々ちゃん! お陰でもやもやが晴れたんだよー!」
「なっはっはっはっは、ウチのことは物知り凛々ちゃん、略してモノシ凛々ちゃんと呼びなはれ♪」
「「寒ーい」」
「やかましいっ!?」








戦場となった街の上空に突如現れた赤い星―――『赤い幼星』
それは、“家族”を想う幼い心が創り出した、滅びの前兆だったのかも知れない

   ...To be Continued

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