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連載 - 悪意が嘲う・悪意が消えたその後に・純白の騎士-06

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だれでも歓迎! 編集
「ほら、ユニコーン。食事、持ってきたぞ」

 ひひん
 ヘンリーが干し草を持ってくると、ユニコーンが小さく嘶いた
 やや不満げな色が混じっているその声に、ヘンリーは小さく苦笑して

「ほら、人参とキャベツもあるから」

 ……ひん
 今度は、満足げな声
 全く、現金なものだ

 食事を始めたユニコーンを、ヘンリーは静かに見守る
 「教会」敷地内の、あまり人のこない場所
 ユニコーンは乙女以外を嫌う為、ゆっくり食事をとるとなると、こういう場所になる事が多い

 …ヘンリーはヘンリーで、こうして自分とユニコーンだけになる時間を望んでいる
 「教会」の子飼いでしかない自分にとって、「教会」内の空気は肌に合わない
 酷く、息苦しい

(…カインやロリスと一緒の時は、そうでもないんだがな…)

 とは言え、カインは今、イギリスの僻地の教会を任せられているし
 ロリスはロリスで、任務で忙しく、ヨーロッパ中を飛び回っている状態だ
 そうそう、共に行動できる訳でもない

 暗い考えを振り払い、傍に在った木にもたれかかり、腰を下ろした
 もう、自分は子供ではないのだ
 いつまでも、友人達に頼りっぱなしという訳にもいくまい
 とにかく、ユニコーンの食事が終わるまで、少し、ここでのんびりさせていてもらおう
 そう考え、ヘンリーは静かに目を閉じようとして…


 ……かさ、と


 小さく聞こえてきたその足音に、即座に目を開く
 警戒し、飛び跳ねるように立ち上がる

「っきゃ……!?」
「あ……シスター・チェリー」

 …その人物を確認して、ヘンリーは警戒を解いた
 自分より数歳年上の、その女性
 チェリー・ハーヴィー
 ヘンリーの数少ない友人の一人と、親しい間柄にある女性だ
 彼女はヘンリーとユニコーンの姿を見つめ、小さく苦笑する

「すみません……邪魔をしてしまいましたか?」
「いや、大丈夫。こちらこそ、驚かせて済まない」

 膝枕を頼みたい欲求を押さえつけつつ、小さく頭を下げた
 ユニコーンが、チェリーに膝枕を要求する視線を向けているのは、ひとまず無視
 確かに、自分も乙女の膝枕は好きだ
 だが、彼女は……

「どうして、こんな場所に?」
「あ、あの………その、待ち合わせ、で」

 答え、やや頬を赤らめて俯くチェリー
 ……あぁ、そういう事か
 と、なると、邪魔になるのは、こちらの方だ

「なら、俺達が移動するよ……行こう、ユニコーン」
「あ、あの、まだ、待ち合わせの時間までは、早いですし…」
「あいつなら、多分、きっちり待ち合わせ時間の10分前には来るだろうから」

 あいつはそういう男であると、ヘンリーは理解している
 任務でも、プライベートでも、それは変わらない

 ユニコーンの食事の入った箱を抱え、ヘンリーはユニコーンと一緒に移動することにした

「ロリスと、ごゆっくり」
「あ……は、はい」

 ますます赤くなりながら、ほほ笑んだチェリー
 静かに空を見上げ、待ち人を思い始める

 ひひん、とやや不機嫌になったユニコーン
 それをなだめながら、ヘンリーは小さく苦笑する

(……ロリスが、代々「教会」に仕える一族じゃなければ、あそこまでこそこそと会う必要もないだろうに)

 …相手に、裏の者ではあるとはいえ、そこそこの地位があるというのも大変なものだ

 ……
 ……あれ

(…あれ、そう言えば……ロリスは、今、任務でアメリカに行ってたような…?)

 ここは、バチカンだ
 いくら何でも、距離が遠すぎる……

 …………

(……あぁ)

 いや

(あいつに、「距離」なんて関係ないか)

 そっと、振り返る
 ……一瞬の、閃光
 それと共に、黒い装束を身にまとったロリスが、チェリーの前に姿を現していた
 手には、赤い、一輪の薔薇
 日ごろ、感情が薄く、あまり表情の変わらないあの男が
 チェリーと言う恋人の前では、穏やかに笑っていて

「……幸せにな」

 どうか
 二人の関係が末永く、幸せに続きますように

 友の幸せを、ヘンリーは静かに祈るのだった









fin






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