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連載 - 悪意が嘲う・悪意が消えたその後に・純白の騎士-05f

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
「繰ちゃん、大丈夫?……痛いところとかつらいところ、ない?」
「だ、大丈夫」

 心配そうにディランに見詰められ、繰は頬を赤くしながら答える
 特に体に異変もないし、どこも怪我していない
 菊花が何やらもじもじしているように見えるが、その理由は後で確認するとしよう

 ……今は
 自分、よりも

「…心配してくれるのは、うれしい、けど………あいつ、大丈夫なの?」

 そう言って、ちらり、と繰が視線を向けた先
 そこでは、ユニコーンから降りたヘンリーが…座り込み、うなだれていた
 繰の位置から、その表情は、見えない
 ただ………少なくとも、笑顔ではないだろう
 そう、断言できた



 ……真っ青になっている
 元々、白い肌をしているヘンリー
 それが、さらに青白くなっている

「……おい」
「……………ぶ」

 声をかければ
 ただ、返ってくるのは、同じ答え

「大丈夫……大丈夫、だ」
「……」

 嘘をつけ
 青白い顔、震え続けている体
 …どこが、大丈夫なのだ

 女性(乙女)の前だからなのか、それとも、元々、自分の弱い部分を他人に見せるのが苦手なだけか
 強がりを続けているヘンリー

 にゃあにゃあと、ダミアも心配そうに見上げているし、ユニコーンも、先ほどから、じっとヘンリーを見つめ続けている
 それでも……必死に、ヘンリーは強がり続ける
 むしろ、そうしなければ、精神が持たないのかもしれない

 自らの、実の母と姉を殺した、と
 ヘンリーは、そう言っていた
 その理由が何なのかは、どんな状況だったのか、語ってはいなかったが
 …あのリリスの言葉で、だいたい想像はつく

 リリスによって、操られていた母を
 そうとは知らずに、ヘンリーはユニコーンに殺させてしまったのだろう
 救う手段があるとは知らずに、ただ、恐怖から逃れようと
 自らも、己の思うがままに動かぬ体に、己の意思とは反する言葉しか発せぬ状況に恐怖していたであろう、母を
 自らの命令で、殺してしまった

 ただでさえ、ヘンリーは肉親殺しに強い罪悪感を感じ、抱え続けているようだった
 …そこに
 さらに最悪の形で投下された、真実

 真実を告げた相手は、その、罪を背負わせた元凶とも呼べる、それは…もういない
 ユニコーンの角に貫かれて、跡形もなく消滅してしまった
 ユニコーンのあの行動が、ヘンリーの無意識下での命令によるものか、それとも、ユニコーンの独断による行動だったのか…パスカルには、わからない

 ただ
 ヘンリーは、復讐相手とも呼べる存在を失った
 己の人生を歪める原因となった、復讐相手と呼べる存在は、もう、いない

 ………ならば
 ヘンリーは、どうすればいいのか
 己が運命を闇へと突き落とした相手が生き延びているならば、それへの復讐心を軸に立ち上がる事もできるだろう
 復讐心だろうが何だろうが、生きる目的となるならばそれでいい
 だが、ヘンリーはそれを失ったのだ

 復讐せずに生きられるほど、強い訳ではない
 他に、何か強い支えがあればいいのだが…
 あるのか、ないのか
 もし、あったのだとしても…今のヘンリーは、それに気付けていないのだろう

 強がりで
 周囲に心配させないために、余計な気遣いをさせまいとするように、弱みを握られまいとするように
 必死に、気丈な仮面をかぶろうとして、かぶりきれていない

 ……自分は
 この男に、なんと声をかけてやればいい?
 どうしてやればいい?

 何もしなくとも良いのかもしれない
 何もしなくとも、なんだかんだで周囲に恵まれているこいつは、立ち直れるかもしれない


 しかし
 今にも崩れそうな心を、必死に抱えて、崩れないように保とうとしている、この男を見て
 一応は、友人と名乗った自分は
 果たして、何もしなくとも良いのか


 手を差し伸べたとして、自分は何と言ってやればいいのか
 わからずに、ただ、座り込むヘンリーを見下ろす事しか、パスカルにはできず

 振り続ける雪
 体に積もる雪を払うことすらせずに

 ただただ、ヘンリーは子供のように縮こまり、震え続けていた










to be … ?








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