「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - とある組織の構成員の憂鬱-21

最終更新:

Bot(ページ名リンク)

- view
だれでも歓迎! 編集
 笛の音色が聞こえてくる
 それは愉快で、楽しげで……しかし、同時に、どこか残酷な音色
 メロディに誘われたように、ぞろぞろ、ぞろぞろ、ぞろぞろぞろ
 子供たちが、集まってきている
 皆、一様に視点が定まっておらず、何かに操られているように
 舞台は、廃墟ビルの屋上
 そこに集められた子供たち
 一人の男が笛を奏でる
 愉快に、楽しげに、ご機嫌に……残酷に
 傍らにいる少女は、何とも複雑そうな表情で、男と子供たちを交互に眺めていて

 …ふらりっ
 子供が一人、立ち上がり
 その屋上から、飛び降りようと…


「…………っ!!」

 これ以上、見ているだけなど…彼には、できそうになかった
 彼は、懐から数個、月光を浴びて輝く石を取り出すと…集められた子供たちに向けて、放り投げた
 男が、その石に気付く
 キラキラ、キラキラ
 放り投げられた、オニキス、水晶、ターコイズ、エトセトラエトセトラ…
 それらは、子供たちの頭上までやってきて

 ぱぁん、とはじけて、キラキラ輝いた
 びくりっ!
 子供たちの体が、跳ね上がる
 一瞬、その瞳に、正気を取り戻したように光が戻り…そして、バタバタと、その場に倒れこんでいく
 キラキラ輝く石のカケラ、子供たちに降り注ぐ
 …まるで、子供たちを、護るように

「…はじめまして。ハーメルンの笛吹きさん」
「……組織か」

 少女を護るように立つ男
 ハーメルンの笛吹き
 彼は、じっと男と少女を見詰める
 さて、どちらが都市伝説本体だ?
 威風堂々とした様子すら感じられる男
 若干、ビクビクしているように見えなくもない少女

 ……何となくだが、少女の方が都市伝説のような気がしてきた
 それは、彼の感のようなものだったのだが

「…何故、こんな事をなさるので?」
「ふん…こんな連中。生きていても、将来、害悪にしかならないだろう?」

 …こんな夜遅くまで、外を出歩いていた子供たち
 不良予備軍、もしくは不良たち
 ……だが、それでも
 彼には、納得は出来ないのだ

「そうとは、言い切れないでしょう…未来ある子供だからこそ。いくらでも、やりなおせます」

 彼が男にぶつけるのは、怒り、というよりは……悲しみ
 彼は、怒りと言う感情がどうにも希薄である
 いや、そもそも、黒服である彼はありとあらゆる感情が希薄なのだが…その中でも、どうにも、怒りと言う感情がなかなか、表に出ない
 それよりは先に、悲しみや、哀れみといった感情の方が強くなる
 それが、彼が人間だった頃の人間性に関係しているのか否か?
 …それは、彼が人間であった頃を知る者にしか、わからない

「組織にも、随分と慈悲深い奴がいたんだな……だが」

 男が、笛を構える
 彼は素早く、銃を抜いた
 …ハーメルンの笛吹きは、笛の音色で子供や小動物を操る
 ならば、笛を破壊してしまえば!

「っ!!」

 攻撃の意思を察したのだろう
 少女が、男と黒服の間に割り込んだ
 離れた光線は、男の笛には当たらず…少女の顔に命中し、っふ、と少女の姿が消える

「く…!?」

 子供の姿をした者を攻撃してしまった
 その事実が、彼の次の行動を鈍らせる
 だが、それが甘いのだ
 消えたはずの少女は、もう一人、男の前に出現し

 …そして、笛の演奏が、始まった

 ちゅうちゅう、ちゅうちゅう、ちゅうちゅうちゅう
 鼠たちが集まってくる
 都会に鼠などいない?
 …否、都会だからこそ、鼠は「い」るのだ
 ギラギラと瞳を輝かせ、鼠たちは、獲物である彼に襲い掛かる
 彼は鼠たちに銃を向けるが…あんな銃だけで、これだけの大量の鼠を同時に防ぐなど、できるものか
 男は、勝利を確信するように、演奏を続ける


 ……ぢゅぅううううううううううううううううう!?


 鼠たちの悲鳴が、メロディに混じり不協和音となる
 じゅううううううううううううううううううう
 鼠たちが、焦げていく
 灰色の毛並みを焦がし、一匹、二匹、三匹と
 次々と、床に倒れ付していく
 一斉に、同時に、と言う訳ではない
 しかし、鼠たちの体は、一匹一匹順番に、次々と焼かれていく

 それでも、鼠たちは減らず、彼に襲い掛かり

「駄目だよ、そんなんじゃあ」

 楽しげな声
 茶色の液体がどこからか飛んできて、鼠たちを包み込んだ

 ごぽごぽごぽごぽ
 どろ、ぐちゃり
 茶色の液体は、鼠ごと床を溶かして、穴を空けていく

「…やりすぎですよ」
「御免ね。久しぶりだから、加減が効かなくって」

 彼の、背後に
 青年が二人、現れた
 一人は、ニコニコ微笑み、コーラのペットボトルを手にしていて
 もう一人は、金髪にチャラチャラとした格好で、随分と不機嫌そうな表情で、男を睨みつけていた

「だから言ったろ。容赦なくさっさと片付けた方がいい、って!」
「…せめて、ある程度は説得したかったのですが」

 ざ、と
 二人は、彼の前に立つ
 容赦などするつもりはない
 そんな様子で、男に対峙する

「っち。一人じゃなかったのか」
「流石に、そこまで無謀ではありませんよ」

 …できれば、この二人の力は借りたくなかった
 彼は、そう考える
 自分の力不足を、嫌でも痛感してしまうのだ

「マ、マスター!」
「問題ない」

 男は、笛を手に演奏を続ける
 ちゅうちゅう、ちゅうちゅう、ちゅうちゅうちゅう
 どれだけ、潜んでいたと言うのか
 再び現れる、鼠の群れ
 じろり、金髪の青年が鼠たちを睨みつけると…ぢゅぅうううう!?と、一匹ずつ焼け死んでいく
 小さな鼠の体、焼けるのは、人間相手と比べればずっと早い
 鼠だけでは、埒があかない、そう考えのだろうか
 少女も、数人に増えてこちらに迫ってくる

「う……!?」

 向かってくる少女の姿に、金髪の青年はたじろぐ
 …子供相手出は攻撃しにくいのだろう、金髪の青年の性格から考えて
 しかし

 くすくすくす、コーラのペットボトルを持った青年は笑う
 ごぽり、ペットボトルから溢れ出すコーラは、向かってくる少女たちを容赦なく攻撃した
 じゅうううううううう
 少女たちの体が溶け、消えていく

「…っ子供たちを巻き込んではいけませんよ」
「は~い、わかってるよ」

 にっこり微笑み、容赦なし

 どうやら、近頃沈みがちだった精神状態は戻ったようである
 …思えば、沈みがちだった頃の方が、まだ可愛げがあったかもしれない
 少女相手に容赦する気など0のペットボトルの青年を、金髪の青年は、やや嫌悪を含んだ眼差しで見つめていた

「…なぁ。毎度思うけど、こんな鬼畜どS、さっさと見捨てね?」
「そう言う訳には行きませんよ。彼は、一応は私の担当なのですから」

 金髪の青年の言葉に、小さく苦笑する
 鼠を、少女を、撃退していく
 …しかし、このままでは膠着するだけだ
 彼は、銃を構えた
 男に狙いを定めるが…しかし、少女は男を庇うことを優先しているのか
 なかなか、狙いを定めさせてはくれない
 ここは、屋上だ
 互いに隠れる場所などないから、狙いさえ定める事ができれば…

「----っ!?」

 がしり
 腕を、少女に捕まれた
 き!と少女はこちらを睨んでくる

「…マスターを、攻撃なんてさせない!」

 はっきりとした、意思
 子供たちを操る男を見ている間は、何とも複雑そうな表情だったが
 しかし、契約者を護る、と言う意思は、確かに本物だ
 どちらも、本物の彼女の意思

「………」

 ふと、彼は考える
 こちらの腕を捕まえてくる少女は、微かに震えているようにも見えた
 こちらの懐に、飛び込んだのだ
 攻撃される確率とて、高い
 その恐怖を振り払い、勇気を振り絞って、こちらに飛び込んできた
 …男に、何か言いたげで、でも、言えずにいたあの時よりも、勇気を振り絞り

 ……もし
 あの、何か言いたげな時、これほどまでに勇気を振り絞れていたら
 もしくは、これ以上の勇気を振り絞れていたら?

 彼は、スーツの内側から、ある石を取り出そうとする
 しかし、少女はそれを許さない
 振り払おうとしたが、少女姿が相手、無意識に手加減してしまっているのか、それとも、彼が少女一人振り払えぬほど、非力なのか
 少女は、彼から離れない
 動きの鈍る彼に、鼠が迫り…

「このっ!」
「きゃっ!?」

 ばんっ!と
 少女を彼から引き剥がしたのは、金髪の青年だった
 ぺしゃり、尻餅をついた少女

 ぢゅうっ!?と鼠も、他の鼠と同じように、焼け焦げる
 金髪の青年は、ぎ!と少女を睨みつけ…こう、怒鳴った

「俺の大事な奴に、何をしやがる!!」


 この、瞬間
 確かに、この場の空気が凍りつき
 きっかり、30秒程の静寂が訪れた

 少女は、ぱちくりと、彼と金髪の青年を見つめてきて
 男の笛の演奏も、一瞬、止まっていた


 ほんの30秒
 しかし、それで充分だ
 彼は、懐からその石を取り出して、少女に投げつけた

 投げつけられた琥珀
 ぱんっ!!と少女に触れてはじける

「く……戻れ、メル!」
「は、はいっ!?」

 どんな攻撃を受けたのか、判断つきかねたのか
 男が、少女を引き戻す
 笛のメロディが、また変わる
 今度は、鼠ではなくて
 子供を、操るメロディに変わる
 --子供たちを、盾にするつもりか

 どうか効いてくれ、と彼は思う
 彼が投げたパワーストーンは、操られていた子供たちを解放した
 …しかし、あの瞬間だけだ
 再びメロディで操られれば、それを解放するには、同じように石を投げつけないと
 しかし、相手はそれを許してくれるか?

 むくり、むくり
 起き上がった子供たち
 ゆらり、こちらに向かってきて…


「マ、マスター!やっぱり、子供を盾にするなんて、外道なような…っ」
「何を言う。社会のゴミだ。問題ない」
「………!」

 …き!と
 少女が、男を睨みつけた様子を
 彼は、確かに見た

「ッ駄目です!やっぱり、駄目です!」
「な……っ」

 はし!と
 男の腕にしがみ付いた少女
 男の演奏を妨害する

 ぱたり、ぱたり
 演奏が途切れた事で…子供たちは、再び意識を失い、倒れる

「っの!」
「きゃんっ!?」

 っが!!と
 男は、容赦なく少女を殴り倒した
 きゅう、と少女は目を回して気絶する

「ってめ!そいつはお前が契約した都市伝説なんだろ!?」
「逆らったから、愛の鞭を加えたまでだ」

 金髪の青年の怒号に、男はきっぱりと答えた
 ひょい、と少女を持ち上げている
 …逃げるつもりか

「逃がさないよ?」

 ごぽごぽごぽごぽ
 コーラのペットボトルを持った青年は、微笑みながら男を見つめる
 コーラはごぽり、溢れ続け
 じわじわと、男に近づいていっている

 …笛が、鳴り響く
 小動物を操るメロディ
 恐らく、このビルに残っていた、最後の鼠たちだろう
 それが、群れとなって…一斉に襲い掛かってくる!

「面倒だなぁ」

 ごぽりっ
 彼ら三人の周囲を、コーラが覆う
 攻撃、ではない
 防御行動である
 ドーム状のコーラに、次々と突進してくる鼠たち
 ぢゅぅううううううう
 次から次へと、溶けていく

 …鼠たちの悲鳴が、途絶えた時
 男と少女の姿は、そこにはなかった
 後には、気絶した子供たちだけが残される

「…ッ畜生!」
「逃げられちゃったね」

 心の底から悔しそうな金髪の青年と、対して悔しそうでもない、ペットボトルを持った青年
 …とまれ、彼はほっと、息を吐いた

「…とりあえず、子供たちは無事なのです。それで、良かったとしましょう」

 子供たちに犠牲が出なかった
 …まずは、それでいい

 不服そうな金髪の青年と、まだ何か手伝わされるの?と面倒臭そうな表情を浮かべるペットボトルを持った青年を前に
 彼は、操られていた子供たちを一人一人家まで返す方法を、考えはじめるのだった







タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
記事メニュー
ウィキ募集バナー