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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - マッドガッサーと愉快な仲間たち・似非関西弁女-06

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マッドガッサーと愉快な仲間たち・似非関西弁女編 06


 暑い夏がそろそろ過ぎて欲しい、残暑が厳しい季節の事
 学校町にある教会の一室にて、淫靡で背徳的な内容の絵がみっちりと描き込まれた原稿用紙が敷き詰められた机の前で、染桐葵はやや虚ろな目でそれらをチェックしている

「ひのふのみの……ん、ページ数も合っとる、今月の原稿完成やー」
「んぃ~……お疲れー」

 緻密に書き込まれた原稿用紙を数え、はふうと大きく息を吐く
 エロ漫画家としてそれなりに名が売れている彼女は、月刊誌三冊に連載を持っていた
 その向かいで猫のような声を上げて伸びをしているのは、都市伝説グループとしての仲間でもあり、漫画描き仲間でもある桜門留美

「しっかし……アシも無しによくまあ月産100ページ近く描くわね」
「留美が手伝ってくれてるやん」
「マリが抱いててあげるとあの子も大人しいからね。それでもおむつやらおっぱいやらで忙しいから、簡単な事しか手伝えてないじゃない」
「恵はーん、『スーパーハカー』にこれのスキャンとデータ送信頼んどいてやー。赤城新社はんなー」

 ぱたぱたと駆け寄ってきて、原稿を受け取る空条恵
 それを見送ってから、机の上に置かれた栄養ドリンクの余りをずずっと啜る

「まークロコダイルマガジンはんとこは単行本分溜まったから一休みでもええんやけどな。単行本やると、修正やら書き下ろしやらカバーイラストやら入るしなー」
「ていうか、葵のレベルだったら同人の方が稼げると思うんだけどなぁ。部数はける事考えたら、ページ単価は桁変わるわよ? 自分のペースで休み取れるし」
「同人もええねんけどなぁ、なんやかんやで面倒見てくれた編集はん達は無碍にもできひんし」

 瓶を置いて椅子から立ち上がった葵
 ふと、その視界がぐるりと一回転した

「危なっ!?」

 とっさに飛び出そうとした留美だが、机一つ挟んで向こう側では間に合うはずもない
 そのまま床に衝突するかと思われた葵だったが、いつの間にか部屋に入ってきていたマッドガッサーにより優しく抱き留められていた

「あ、マッドはーん」
「マッドはーん、じゃないだろ。あんまり根詰めるなっていつも言ってるだろうに」

 その身体を抱いたまま、ぺちりと頭を叩いてくる

「恵が原稿持って出てきたから、終わったんだなと様子見に来たらこれだ」
「んー、徹夜とかはせぇへんようにしとるんやけどなー」
「それにしちゃ顔色悪くないか?」
「ん、そう? ずっと顔付き合わせてたからよくわかんないけど」

 訝しげに眉根を寄せるマッドガッサーと、首を傾げる留美

「大丈夫やってー、もーマッドはんったら心配性やな」

 マッドガッサーの背中に手を回し、きゅうと抱き付く葵
 だが

「うぷ」

 目に見えて顔色が変わった葵は、マッドガッサーから身体を離し口元を押さえて部屋から駆け出していく

「お、おい!?」

 慌てて後を追うマッドガッサーだが、葵はそのままトイレに駆け込んで鍵を掛けてしまう

「どうした、大丈夫か!?」

 トイレの前でドアを叩きながら怒鳴るマッドガッサー
 ドアの向こうから聞こえるのは、苦しそうな呻き声と嘔吐の音
 もう扉ぐらい壊してしまおうかとすら考えたマッドガッサーだが、その考えを察知していたかのようにすぐに水を流してトイレから出てくる葵

「はー、お昼全部出てもた……」
「おいおい……本当に大丈夫か? 身体壊してないだろうな」
「んもー、ちょっと吐いたぐらいで大袈裟やて。まだ暑い日続いとるし、栄養ドリンクで胃が荒れる事ぐらいたまにあるもんやし」
「そうは言うがなぁ」
「それよか、洗面台行かして。口すすがないともう一発貰いそうやわ」

 吐いたばかりでにおいを気にしてるのか、口元を押さえてそっぽを向きながらマッドガッサーを押し退ける葵

「口すすいだら、ロレーナに診てもらえ。その後で念の為に診療所も行くぞ」
「ちょ、ちょっと、マッドはん大袈裟やて」
「いつもと調子が違うんだ、心配に決まってるだろ。第一、この町で何が大袈裟かもあったもんか」

 確かに学校町では、突然都市伝説や契約者が行動を起こし、病や毒を撒き散らすような事も時折起こりえる

「まー原稿は一段落しとるし、別にええけど」
「状況次第じゃ休載だけどな。作者急病につきってやつだ」

―――

 ロレーナの診断では、結局のところ毒や呪いの類の影響は全く無かったという

「そうだね、診療所に行っておいで。あっちの方が色々必要な事がまとめて済ませられるさ」

 そう言ってマッドガッサーと葵を送り出したロレーナに、契約者の清川誠が訝しげなし線を向けている

「随分と遠回しだな」
「近代医学の方がはっきり判るしねぇ。それにあの娘は、医者にすっぱり言われないと仕事を止めたりできないだろうさ」

―――

 診察室から出てきた葵の様子は、どこかぼんやりとしていた

「お、おい、随分待たされたがどうだったんだ?」
「あ、うん。ここ数ヶ月の原稿作業の様子聞かれて、めっさ怒られた」
「いやまあ普通怒るだろ」
「健康な時ならともかく、この時期はあかんって」
「……どういう意味だ?」
「んでな、これもろた」

 差し出されたのは、一枚の紙切れ
 手続き書類らしいそれは

「役所行ってこなあかんって」

 その書類は、妊娠届出書
 そして役所で受け取るのは、母子健康手帳

「二ヶ月半ぐらいやて」

 未だ実感が無いのか、淡々と語る葵
 衝撃の事実に、ただ固まるマッドガッサー

「あんだけやっとって全然やったから、できんもんかと思っとったけど……なんとかなるもんやなぁ」

 まだそれらしい兆候の無いお腹を撫でながら、ようやく照れくさそうに笑みを浮かべる葵
 その顔を見て、マッドガッサーは思い切り葵を抱き締めた

「ちょ、マッドはん、外やて! 人目あるて!」
「そうですよー、それに他にやる事色々ありますからね、お父さん?」
「うお!? は、放せ! もうちょっとこう、噛み締めたいものがあるんだ!?」
「それはそうですけど、医療機関として手続きも色々ありますし。後々の事もあるんで色々確認事項ありますからねー」

 診療所の看護婦二人、メアリーとミツキに無理矢理引き剥がされ、診察室へ引き摺られていくマッドガッサー

「確認事項って何なん?」
「まあ一番重要なのは戸籍ですかね。マッドガッサーさん、戸籍の偽造なり偽装なりしてないなら、早いうちにやっておかないと面倒ですし。お子さんが学校に通う頃になってから忘れてたじゃ困りますからね」
「あとは、なんだかんだで人間と都市伝説でありますから。色々健康面以外にも調べなきゃいけない事は多いでありますよ」

 待合室に居たエニグマ姉妹が、看護婦達の後を引き継いで説明する

「色々調べられるのは気が進まないかもしれませんが、ドクターは母子の為に一生懸命やるだけですから。できたら信用してあげて下さい」
「女性にとって悪い事をするなんて在り得ないので、その点は安心でありますよ」
「ん、そっか。まあウチらが騒動起こした時も、色々心配しとってくれたって辰也はんにも聞いたしなぁ」

 そう言って葵は、待合室のソファにぽすりと腰を下ろし
 照れくさそうに
 嬉しそうに
 微笑みながらお腹に手を当てていたのだった

―――


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