ギザ十と幽霊少女とご先祖様と組織の狗 外伝
息を荒げ足を踏み出す度に体に激痛が走る。
鉛の塊に貫かれ穴の開いた腹の辺りは黒々とした血が今も溢れ出している。
死ぬ、間違いなく自分は死ぬだろう、息も絶え絶え、本当に走れているのか
冷えた心は懸命に前へ前へと足掻き続けて居るが、感覚のない身体が実際に
自分の命令通りに動いてくれているのか判断できない。
ただ右手に確りと握った、小さな掌の感触だけが今の自分の全てなのだろう。
この世に神は居なかった、自分に優しく声をかけて下さった異国の宣教師は
この島国の女子供を奴隷として売り捨てる只の鬼畜の如き豚であった。
私が信じた神は、その実、最愛の妻を犯し最愛の娘を攫う悪魔であった。
それを知ったのはたった半刻ほど前、
同じく信者となりたいと言う友人夫妻を引き合わせようと神父様の元へと向かった先で
我が妻が、異国の男達に貪られる凄惨な光景に鉢合わせてしまった。
絶句する我々の前で、いつも穏やかそうな表情をしていた神父が鬼の形相で
何かを喚き、妻を犯していた一人の男が面倒そうに此方に鉄砲を構えた
それからの記憶は曖昧で、赤く染まる視界の先で
私に気づき悲鳴を上げ暴れる妻を激高した男が、鉄砲の先を向けるのが見えた。
絶叫、傍らで唖然としていた友人が屈強な男に殴りつけられる、
赤黒い液体に浸かる我が妻の代わりに、男達が友人の妻の元へ殺到する。
悲鳴、鉄の匂い、獣の如き咆哮、外道の下卑た笑い声、少女の歌う手鞠唄。
気が付けば、孔の開いた身体を押さえ必死に逃げる自分がいた。
ただ、信じたくない一心でひたすらに、いつの間にか傍にいた、私の妻と同じく被害者
だったのだろう赤い着物を着た女児の手を引き、一心不乱に走り続けた。
鉛の塊に貫かれ穴の開いた腹の辺りは黒々とした血が今も溢れ出している。
死ぬ、間違いなく自分は死ぬだろう、息も絶え絶え、本当に走れているのか
冷えた心は懸命に前へ前へと足掻き続けて居るが、感覚のない身体が実際に
自分の命令通りに動いてくれているのか判断できない。
ただ右手に確りと握った、小さな掌の感触だけが今の自分の全てなのだろう。
この世に神は居なかった、自分に優しく声をかけて下さった異国の宣教師は
この島国の女子供を奴隷として売り捨てる只の鬼畜の如き豚であった。
私が信じた神は、その実、最愛の妻を犯し最愛の娘を攫う悪魔であった。
それを知ったのはたった半刻ほど前、
同じく信者となりたいと言う友人夫妻を引き合わせようと神父様の元へと向かった先で
我が妻が、異国の男達に貪られる凄惨な光景に鉢合わせてしまった。
絶句する我々の前で、いつも穏やかそうな表情をしていた神父が鬼の形相で
何かを喚き、妻を犯していた一人の男が面倒そうに此方に鉄砲を構えた
それからの記憶は曖昧で、赤く染まる視界の先で
私に気づき悲鳴を上げ暴れる妻を激高した男が、鉄砲の先を向けるのが見えた。
絶叫、傍らで唖然としていた友人が屈強な男に殴りつけられる、
赤黒い液体に浸かる我が妻の代わりに、男達が友人の妻の元へ殺到する。
悲鳴、鉄の匂い、獣の如き咆哮、外道の下卑た笑い声、少女の歌う手鞠唄。
気が付けば、孔の開いた身体を押さえ必死に逃げる自分がいた。
ただ、信じたくない一心でひたすらに、いつの間にか傍にいた、私の妻と同じく被害者
だったのだろう赤い着物を着た女児の手を引き、一心不乱に走り続けた。
ごぼり、と嫌な感触と共に喉から黒く泡だった粘着性の液体が漏れ出す。
膝を折り、乾いた地面へと倒れ伏す、みーんみんと頭上から聞こえる蝉の嘲笑が五月蠅い。
右手に掴んだ藁の如き小さな手はとても冷たく、死に火照る身体にはとても気持ちが良かった。
今から死にゆく私は、これからどうなるのだろう、あの豚の如き下衆どもが囀る神の国とやらに
行くのだろうか、そこで先に逝った妻と私は会えるのだろうか。
娘はどうなるのだろうか、身も知らぬ異国の人間達の奴隷として生きていくのだろうか。
なんと不憫な、愚かな父の所為でその様な生き地獄を味わう事になるとは、もしも叶うならば。
もしも許されるならば、あの偽善者どもを、異国の獣どもを屠る力が欲しい。
そして、もう一度、死ぬ前に、娘に……
「そのねがい、かなえてあげましょう」
幽かに聞こえた少女の声は、薄れゆく意識の中、確かに私の闇に響き渡った。
膝を折り、乾いた地面へと倒れ伏す、みーんみんと頭上から聞こえる蝉の嘲笑が五月蠅い。
右手に掴んだ藁の如き小さな手はとても冷たく、死に火照る身体にはとても気持ちが良かった。
今から死にゆく私は、これからどうなるのだろう、あの豚の如き下衆どもが囀る神の国とやらに
行くのだろうか、そこで先に逝った妻と私は会えるのだろうか。
娘はどうなるのだろうか、身も知らぬ異国の人間達の奴隷として生きていくのだろうか。
なんと不憫な、愚かな父の所為でその様な生き地獄を味わう事になるとは、もしも叶うならば。
もしも許されるならば、あの偽善者どもを、異国の獣どもを屠る力が欲しい。
そして、もう一度、死ぬ前に、娘に……
「そのねがい、かなえてあげましょう」
幽かに聞こえた少女の声は、薄れゆく意識の中、確かに私の闇に響き渡った。
死してなお、怨みを吐き続ける男の怨嗟は凄まじく、人の身より外れたその身にはとても心地よかった。
その所為でしょうか、男の望みを叶えてあげようと思ったのは。
只のおあそび人が一人死ぬのも十人死ぬのも同じだと思います、だったらこの見知らぬ男の願い通り人攫い達を殺すのも構わないはずですよね。
目の前に落ちた骸を起こし、点々と伸びる血痕の路しるべを辿り戻ります。
行く先は、異教徒の潜伏する集落、私の傍らに立つ骸を探しに来たのか途中で数人の人間達が私の前に立ちふさがります。
そんな彼らへ傍らの骸を伸ばして、その首へ巻き付かせ締めました。
ぶちゃりという音と共に骸が一つから二つに増え、残りの人間が悲鳴を上げています。
すこし、うるさいですよ、骸に大きな顎門を開かせて五月蠅い残りを纏めてびちゃりと噛みつぶし租借します。
集落に入ると何も知らずに畑を耕す人達が此方を見て絶句していました、あらおいしそうですね、ぐちゃり。
大きく育った骸の塊に生える首が、集落の全ての門戸へ伸びていきます、こんにちは良いお天気ですね、ぶちゃり。
異教の人々の住む屋敷に入り込むと、異教の仏像の前で祈る信者の人々が居りました、ご熱心ですね、びちゅり。
地下の一室に押し込められていた集団を発見、みんなでおとまりですかたのしそうですね、ごきゅり。
最後に、骸の方と出会った部屋に入り込みます、部屋の隅に転がされた女性の死体を骸はぼこりと飲み込むと、
混乱する可哀相な異国の人たちを、その数十の眼球で睨み付けます。
半裸で子供のように泣き叫ぶ男達を一つずつぶちゅぶちゅと潰していきます。
一つ摘んでは父のため、二つ摘んでは母のため――骸の指が異人さんを一つ潰す度に楽しく唄を歌います。
ふふ、とても気持ちが良いですね、問いかけた最後の一人は十字の首飾りを血が滲むほど握りしめて
糞尿を垂れ流しながら、此方に向かって叫び続けています。
おーのー、おーまいごーおーまいごー、のーのーおーへるぷみー、ですか?
なるほど、にっこり笑顔を向けると、彼も少し引きつった笑顔を此方に向けてくれます。
なにを言っているのかさっぱり意味が分かりませんでしたあーめん、ぐちゃりぶちゃりと骸ですり下ろしながら
ふと我に返ります、そう言えば、骸の願いは何でしたっけ……たしか、娘にもう一度?
辺りを見回すと、いつの間にか誰もいません、この集落に居た人間は全て目の前の骸の塊となってしまいました。
骸の塊を見上げ少し考えて、大きく頷きます、これはこれで彼の願いは叶ったんじゃないでしょうか、
そうにちがいありません、たぶん、きっと。
今頃、親子共々、極楽浄土へ逝き幸せに暮らす事でしょう、そういうことにしておきます。
こうして、私は誰もいなくなった集落に骸を放置して、自分のお墓へと帰ることにしました。
たまに旅行も良い物でした、とてもとても楽しい旅でした。
そうそう今からならお盆には帰れるはず、きっと可愛いひ孫達が美味しいお饅頭をお供えしてくれている事でしょう、
いまからとっても楽しみです。
その所為でしょうか、男の望みを叶えてあげようと思ったのは。
只のおあそび人が一人死ぬのも十人死ぬのも同じだと思います、だったらこの見知らぬ男の願い通り人攫い達を殺すのも構わないはずですよね。
目の前に落ちた骸を起こし、点々と伸びる血痕の路しるべを辿り戻ります。
行く先は、異教徒の潜伏する集落、私の傍らに立つ骸を探しに来たのか途中で数人の人間達が私の前に立ちふさがります。
そんな彼らへ傍らの骸を伸ばして、その首へ巻き付かせ締めました。
ぶちゃりという音と共に骸が一つから二つに増え、残りの人間が悲鳴を上げています。
すこし、うるさいですよ、骸に大きな顎門を開かせて五月蠅い残りを纏めてびちゃりと噛みつぶし租借します。
集落に入ると何も知らずに畑を耕す人達が此方を見て絶句していました、あらおいしそうですね、ぐちゃり。
大きく育った骸の塊に生える首が、集落の全ての門戸へ伸びていきます、こんにちは良いお天気ですね、ぶちゃり。
異教の人々の住む屋敷に入り込むと、異教の仏像の前で祈る信者の人々が居りました、ご熱心ですね、びちゅり。
地下の一室に押し込められていた集団を発見、みんなでおとまりですかたのしそうですね、ごきゅり。
最後に、骸の方と出会った部屋に入り込みます、部屋の隅に転がされた女性の死体を骸はぼこりと飲み込むと、
混乱する可哀相な異国の人たちを、その数十の眼球で睨み付けます。
半裸で子供のように泣き叫ぶ男達を一つずつぶちゅぶちゅと潰していきます。
一つ摘んでは父のため、二つ摘んでは母のため――骸の指が異人さんを一つ潰す度に楽しく唄を歌います。
ふふ、とても気持ちが良いですね、問いかけた最後の一人は十字の首飾りを血が滲むほど握りしめて
糞尿を垂れ流しながら、此方に向かって叫び続けています。
おーのー、おーまいごーおーまいごー、のーのーおーへるぷみー、ですか?
なるほど、にっこり笑顔を向けると、彼も少し引きつった笑顔を此方に向けてくれます。
なにを言っているのかさっぱり意味が分かりませんでしたあーめん、ぐちゃりぶちゃりと骸ですり下ろしながら
ふと我に返ります、そう言えば、骸の願いは何でしたっけ……たしか、娘にもう一度?
辺りを見回すと、いつの間にか誰もいません、この集落に居た人間は全て目の前の骸の塊となってしまいました。
骸の塊を見上げ少し考えて、大きく頷きます、これはこれで彼の願いは叶ったんじゃないでしょうか、
そうにちがいありません、たぶん、きっと。
今頃、親子共々、極楽浄土へ逝き幸せに暮らす事でしょう、そういうことにしておきます。
こうして、私は誰もいなくなった集落に骸を放置して、自分のお墓へと帰ることにしました。
たまに旅行も良い物でした、とてもとても楽しい旅でした。
そうそう今からならお盆には帰れるはず、きっと可愛いひ孫達が美味しいお饅頭をお供えしてくれている事でしょう、
いまからとっても楽しみです。