連載 - 我が願いに踊れ贄共・拷問狂と鳥使い-04 - 「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

　雪が降る空を、クラリッサは一人、ぼんやりと見上げていた
　…今日は、シモネッタとは別行動だ
　いつもいつも、シモネッタに頼りっぱなしではいけない

　……できれば、トライレスと、遭遇しないようにしないと
　昨日は、トライレスと遭遇して冷静さを保てず、シモネッタに迷惑をかけてしまった
　シモネッタは友人だ
　あまり、迷惑はかけたくない

「……もっと、冷静に、ならないと」

　自分に言い聞かせるように、呟くクラリッサ
　仇を前にして、あそこまで冷静さを失っていては……返り討ちに合うだけだ
　もっと、慎重に
　もっと、冷静に

　…自分の能力は、決して、攻撃的な能力ではない
　戦闘力が高い訳ではない
　だから、冷静にならなければならない
　慎重に戦わなければならない

　一人で静かに、雪降る中を歩く
　長きに、長きにわたって、先祖代々探し続けた、先祖の仇
　長きにわたる因縁に、自分が決着をつける
　その誓いを新たに、やっと見つけたその仇をどうやって殺すか、考える

　……そうやって
　考え事をしながら歩いていたから、いけなかっただろうか

　どんっ

「きゃ！？」
「！？」

　前方から歩いてきた少女と、ぶつかってしまった
　互いに、しりもちをついてしまう

「いたた…す、すみません！大丈夫ですか………あら？」
「…御免なさい……………？」

　聞き覚えのある声
　互いに、見つめる

　………
　あ

「……昨日の」
「あ…クラリッサ、さん？」

　特徴的な色の髪の少女
　先日、道に迷って困っていた時、少年と一緒に道を教えてくれた少女だ
　なぜか、名前を知られているが……あぁ、そうか、あの二人の前で、シモネッタと一緒に、互いに名前を呼びあったのだった

　その少女がつけているヘアピンに、道を教えてくれた礼にと渡した鳥の羽がつけられている事に気付く

「……その、羽」
「あ……昨日いただいたこの羽、髪飾りとして、使わせていたいただいてます」
「そう……気に入ってくれたなら、良かった」

　あんな物でも、喜んでもらえたならば、良かった
　クラリッサは心から、そう思う

「今日は、おひとりですか？」
「…一人。シモネッタとは別行動……あなたも、今日は一人？」
「はい。お使いの最中なんです」

　クラリッサは知らない事だが、少女は裂邪の母親に頼まれて、お使いに行った帰りだったのだ
　手にしたエコバックには、今日の夕食の材料が入っている

「そう、なら、帰りは急ぐはず。ぶつかってしまって、ごめんなさい」
「いえ、お気になさらず。そう、急ぐわけでもありませんし……………っ」

　途中まで、朗らかに笑って答えてきていた少女
　しかし、急に………さぁ、と、顔を青ざめさせた

「……裂邪……？」
「………？」

　誰かの名前…だと思う、日本人の名前についてはよくわからないが、そう判断した…を口にし、少女はますます、青ざめている
　…まるで
　名前を口にしたその人の危機を、感じ取っているかのように

　そして
　その、裂邪と言う人物が……この少女にとって、とても、とても、大切な存在なのだろうと
　そう、伝わってくる

「…っす、すみません、私、急がないと…」
「……急ぐなら、送る」

　クラリッサの言葉に、え？と少女はクラリッサを見つめて
　次の、瞬間
　背中から、大鷲の翼を生やしたクラリッサの姿に……驚いたような表情を浮かべる

「け、契約者、だったんですか…？」
「……そう、契約者。人外の存在を知っていたのなら、説明を省けて楽……家の方向、教えて。あなたを、そこまで運ぶ」

　す、と
　少女に手を伸ばすクラリッサ
　少女は、一瞬、悩んだようだったが……しかし、裂邪と言う人物の事が、よほど心配なのだろう
　クラリッサの手を取った

　クラリッサも小柄だが、少女の方が、まだ小柄だ
　抱えられない訳ではない

　ばさり、大鷲の翼をはばたかせて
　クラリッサは、少女の両脇の下に腕を通して抱きかかえ、空へと飛びあがった

「…家の方向、は？」
「あ、あっちです」
「了解した………スピードを出す。雪が目に入り込んでくるかもしれない。気を付けて…………！！」

　ばさ！！と
　自分が出せる最高スピードを出して飛ぶクラリッサ
　目立つことはするなと言われているが、困っている人を前にして、何もしないわけにはいかない
　自分ができる事があるならば、力になりたいのだ

(……多分、カイザー司祭なら、説明すれば、わかってくれるはず)

　そう、自分に言い聞かせながら
　クラリッサは少女……ミナワを、家まで送り届けたのだった

to be … ?