あの日は、雨が降っていた
朝から、土砂降りの雨が
朝から、土砂降りの雨が
土砂降りの雨の中、彼女は逃げ切れただろうか
ただ、それだけを、祈る
ただ、それだけを、祈る
Uriel
そっと、牢獄のカギを開ける
中にいるのは、一人の少女
……残るは、彼女だけだ
彼女を逃がせば、全て終わる
中にいるのは、一人の少女
……残るは、彼女だけだ
彼女を逃がせば、全て終わる
「……出なさい。時間です」
「…あら、どこに連れて行かれるのかしら」
「…あら、どこに連れて行かれるのかしら」
困ったように、苦笑する少女
己がどのような目にあうのか
…今まで、ここから連れ出された者が一人も戻ってきていない事から……恐らく、悪い想像しか、できていないはずだ
己がどのような目にあうのか
…今まで、ここから連れ出された者が一人も戻ってきていない事から……恐らく、悪い想像しか、できていないはずだ
それでも、かまわない
普通なら、そう考えるはずだ
彼女は正しい
普通なら、そう考えるはずだ
彼女は正しい
「行くべき場所を、決めるのは君だ」
「…どういう事かしら?」
「…どういう事かしら?」
傷だらけの体
恐らくは、自分が見ていない間に、拷問でも受けたか
……やはり、連中は、暴走を始めている
早く、止めなければ
恐らくは、自分が見ていない間に、拷問でも受けたか
……やはり、連中は、暴走を始めている
早く、止めなければ
「…マントと、フードを。靴も、用意している………さぁ、逃げなさい」
「逃げる…?」
「逃げる…?」
裏口まで少女を連れて行き、用意していた装束を着せる
この天気だ、視界は悪い
これを纏っていけば、何とか逃げ延びれるかもしれない
この天気だ、視界は悪い
これを纏っていけば、何とか逃げ延びれるかもしれない
「…私は、魔女として捕えられたのに。逃がしても良いの?」
「……「教会」の魔女狩りは、間違っている。罪もない人間が、言いがかりで告発され、虐殺される。しかも、その財産は教会が没収…………こんな事を、神がお許しになるはずがない」
「……「教会」の魔女狩りは、間違っている。罪もない人間が、言いがかりで告発され、虐殺される。しかも、その財産は教会が没収…………こんな事を、神がお許しになるはずがない」
少女に、深くフードをかぶせてやる
ほんの少しではあるが食料も持たせ、少女を出口へといざなう
ほんの少しではあるが食料も持たせ、少女を出口へといざなう
「………行きなさい。そして、生きなさい。君は、どうやら私達のように契約者であるようだ……だからこそ、「生きなさい」。君のその力は、誰かを救う為にも使えるはず。どうか………これ以上、魔女狩りの被害者が出ないよう……力ある者達に、逃げるように、隠れるように伝えてほしい。君達のような力ある者が、優先的に狙われるだろうからね」
「…心には止めておくわ」
「…心には止めておくわ」
小さく、苦笑した少女
雨の中、外へと歩きだし…
雨の中、外へと歩きだし…
「おや、どこへ行こうというのです」
向けられた、殺意
とっさに、少女の姿を隠すように、出口に立ちはだかる
とっさに、少女の姿を隠すように、出口に立ちはだかる
…少女が、一瞬、立ち止まったのを気配で感じた
「………走りなさい!立ち止まってはいけない、振り返ってはいけない…………生き延びなさい!」
「………っ!!」
「………っ!!」
少女が、駆けだす
…あの男の視界に、少女を入れさせる訳にはいかない
せめて、その程度の時間稼ぎは、してみせる
…あの男の視界に、少女を入れさせる訳にはいかない
せめて、その程度の時間稼ぎは、してみせる
「何を考えているのです?ネッセルローデ。魔女を逃がすとは……神に背くおつもりですか?」
「…神に背いているのは、お前達だ。ヴィシャス。こんなことは間違っている…!」
「…神に背いているのは、お前達だ。ヴィシャス。こんなことは間違っている…!」
エイブラハム・ヴィシャス
今回の魔女狩りの指導者が、そこにいた
今回の魔女狩りの指導者が、そこにいた
奇跡を起こしたという男
救世主候補の一人
……だが
この男は、救世主などでは、ない
今、エイブラハムが浮かべているその邪悪な表情から、それを確信する
救世主候補の一人
……だが
この男は、救世主などでは、ない
今、エイブラハムが浮かべているその邪悪な表情から、それを確信する
「お前の魔眼は、私には効かない。いくら使っても無駄だ」
「……やれやれ。あなたはウリエルの契約者でしたね。本当、厄介だ」
「……やれやれ。あなたはウリエルの契約者でしたね。本当、厄介だ」
手の内に、炎を生み出す
それは剣の形となって、その手に納まった
それは剣の形となって、その手に納まった
ウリエルの名が示すのは「神の火」「神は我が光」
己が司るは、神の炎
邪悪なるものを燃やす、神なる力
己が司るは、神の炎
邪悪なるものを燃やす、神なる力
「…正体を現すがいい、「Anti - Christ」!!」
「っちぃ!?」
「っちぃ!?」
炎をまとった剣で、切りかかる
ざくり、エイブラハムの肩が大きく裂けた
ざくり、エイブラハムの肩が大きく裂けた
サリエルとイロウル……そして、救世主の生まれ変わりであるはずのエイブラハム
邪悪なる者だけを切り裂く剣で傷つくはずが、ない
…やはり、こいつは……救世主ではなく、アンチ・クライストと多重契約を行ったのか
邪悪なる者だけを切り裂く剣で傷つくはずが、ない
…やはり、こいつは……救世主ではなく、アンチ・クライストと多重契約を行ったのか
「…ヴィシャス!貴様、神の使徒でありながら………っ恥を知れ!」
「恥?……私は、神そのもの。私の意思こそが、神なのですよ?」
「恥?……私は、神そのもの。私の意思こそが、神なのですよ?」
切り裂かれた肩が、治癒されていく
アンチ・クライストの、神の奇跡を模倣する力
信者達を騙す為の力が、目の前で披露される
アンチ・クライストの、神の奇跡を模倣する力
信者達を騙す為の力が、目の前で披露される
「さようなら、ネッセルローデ。あなたはもう、用済みだ」
エイブラハムの手に、漆黒の大鎌が姿を現す
死を司る天使 サリエルの能力によるものだろう
振り下ろされる鎌を、剣で受け止めようとして
死を司る天使 サリエルの能力によるものだろう
振り下ろされる鎌を、剣で受け止めようとして
「----っ、な」
その、鎌は
受け止められることなく………己の体を、切断してきた
ぼとり、剣を持っていた腕を、切り落とされる
受け止められることなく………己の体を、切断してきた
ぼとり、剣を持っていた腕を、切り落とされる
「何、を……」
まるで
「剣で鎌を受け止める」と言う結果を、ちぐはぐにされたような
そんな、感覚
「剣で鎌を受け止める」と言う結果を、ちぐはぐにされたような
そんな、感覚
「地獄に落ちなさい。神である私に逆らったあなたの魂は、天国になど導かれない」
邪悪な、エイブラハムの見下した笑顔を、最後に
………私の意識は、途絶えた
………私の意識は、途絶えた
彼女は
あの少女は、逃げ延びる事ができただろうか
あの少女は、逃げ延びる事ができただろうか
どうか、どうか、生き延びていてほしい
彼は、あの少女に希望を託したのだから
彼は、あの少女に希望を託したのだから
彼が、殺されてしまった、今
彼の死の間際契約を解除され、死にぞこなってしまった、私は
彼の死の間際契約を解除され、死にぞこなってしまった、私は
ただ、それだけを祈り、願い
誰にも気づかれぬまま、ただ、世界を彷徨い続ける
誰にも気づかれぬまま、ただ、世界を彷徨い続ける
Uriel
to be … ?