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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

死神少女は修行中-01.呪われた少女は鳥居を探す

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 学校町のとあるカフェ。授業をサボったらしい少年以外に客はいない。
 彼が冷たいココアと平和な昼下がりを満喫していると
「こんにちはー!」
 子どもの声と共に、シャツを思い切り引っ張られて危うくココアごと後ろにひっくり返りそうになった。
 すんでのところで踏みとどまり、後ろを振り返ると、そこには小柄な少女がひとり。
「えーと、ここに描いてある鳥居を知らないかな?」
 顎のあたりで切り揃えられた黒髪に、薄青色の瞳。
 来日して間もない外人の子どもが観光名所を探している。
 そんなふうに判断した少年が口を開くより先に、一枚の画用紙が眼前に突きつけられた。
 色鉛筆で描かれているどこかの神社らしい小さな鳥居と鎮守の森・・・のようなもの。
 少女曰く、鳥居は「呪いのサイト」と云う都市伝説であり、
 自分はサイトの写真にあるこの鳥居を見つけないと死ぬのだと言う。
「なあチビ、これお前が描いたのか」
「うん。ホントはプリントアウトしたかったけど」
 少年は苦笑いした。
「絵が下手すぎてわかんねえよ」
 その声が届いた瞬間、少女の眉は見る見るうちに吊り上がる。
 顔は目に見えて赤くなり、瞳が水分過多になってゆくのがわかる。
 ヤバい泣きそうと焦った少年が、でもお前日本語は上手だなと、下手なフォローを入れたが
 少女はふくれっ面で店を飛び出していった。
「あちゃー、失言だったな」
 まあ目の前で泣きわめかれるよりいいか。
 そう思い直して、氷の融けかかったココアをストローでかき回した。

「失礼しちゃう!」
 店を出てからも尚、少女の機嫌は傾いたままだったが、何時までもふてくされていられない。
 厳重な外出禁止令をかいくぐって出て来たのだ。
 もたもたしていたら何の成果もあげられないまま連れ戻されてしまう。
 周囲を見回した少女の瞳に映ったのは、ひとりの女の後ろ姿。
 女の人なら良い。大人の女の人ならさっきのあいつみたいに、絵を笑ったりしないで親切にしてくれるかもしれない。
 そう考えた少女は小走りに女に近づいて声を掛ける
 その前に
 女の方が振り向いた。
「私・・・キレイ?」

 その女は大きなマスクで顔の半分ほども覆っている。
 言うまでもなく「口裂け女」であり、
 ここが学校町でなくてもまともに答えを返す人間などいないだろう。
 知らないのか鈍いのか、少女は至って愛想よく返す。
「うん、キレイだよ!」
 にっと笑った口裂け女の手が少女の襟首に伸び、そのまま締め上げた。
「な!やだっ」
 振りほどこうと暴れる少女を地面に引き倒し鎌を振り上げたその瞬間

「エターナルフォースブリザードぉぉ!!」

 叫び声と、口裂け女が両耳を押さえて吹っ飛んだのはほぼ同時だった。
 もちろん“エターナルフォースブリザード”が実際に発動した訳ではない。
 都市伝説『厨二病』と契約でもしていれば話は別だが。

 この少女、ノイ・リリス・マリアツェルの契約している都市伝説は『地獄の声』
 とある島にあるという「悪魔の山」
 近づくと狂い死にするというその地に響く“悪魔の声”によって、アメリカの調査員二人が廃人同様となり・・・
 彼らは生涯回復することはなかったという。
 ノイの能力はその『地獄の声』を自らの声に乗せ、相手の聴覚を直接攻撃する力。
 声が出る限り使えて、聴覚のある相手ならば人間、都市伝説を問わず効力がある。威力も自在とあって
「命のやりとりまではしたくはないが自分の身は自分で守りたい」
 というノイにはうってつけの都市伝説だった。

「うー、とんだ災難」
 呟きながら身を起こしたノイの視界に入ったのは、無断外出した彼女を連れ戻しに来た大人たち。
「ノイちゃん!」
「ノイ・リリス!このバカ者!」
 こうなってみればありがたさ半分、煩わしさ半分といったところだ。
 ノイはとりあえず笑顔でピースサインを示して見せた。
 外出禁止なんてバカバカしい、あたしだってやれば出来る、と。
 黒髪の青年、浅倉柳が駆け寄って抱え込むように抱きしめる。
「ノイちゃん、ケガはない?」
 頷くノイのワンピースの埃を払ってやり、ずり落ちたベレーを直してやる。
 強かったね、格好良かったよと頭を撫でてもらってご満悦のノイにもう一人歩み寄った人影があった。
 それは柳より幾分か年長に見える赤毛の男で、柳に手を伸ばし、首根っこを掴むや否や投げ飛ばした。
「痛っ!」
「いかがわしい真似をするんじゃない!」
「いやまだちょっとハグしただけ・・・」
「柳!大丈夫?」
 赤毛の男の手を振りきってノイが柳に駆け寄り、引っ張り起こした。
 彼は背中から着地した痛みに呻きつつも笑って起きあがる。
「大丈夫だよ、ありがとう。ノイちゃんは優しいね」
「うん。だって柳が大好きだもん!」
「こっちに来てくれた日も言ったけど、一人で外に出ちゃダメだよ。
ここは都市伝説がとても多いけど、その分都市伝説と、人や契約者との揉め事が多いんだ」
 みんな心配してたんだよ、ムーンストラックと飛縁魔にも後でちゃんと謝ること。
 そう柳はノイを諭し、ノイは黒髪を揺らして頷いた。
「あとで・・・ふたりにも謝る。柳、ごめんなさい」
 未だ手を繋いだままの二人を引きはがそうと再び柳に手を伸ばした男を、ロングヘアの女が制した。

 ロングヘアの女は「飛縁魔」
 柳と契約している都市伝説で、「得意技は色仕掛け、趣味は何でも燃やす事」と公言してはばからない。
 赤毛の男は「ムーンストラック」四歳で両親を失ったノイと契約し、それ以来彼女の親代わりをつとめている。
 どちらも永く生きてきた都市伝説ではあるが、両者の価値観には大きな隔たりがある事を互いに認めている。―特に彼らの契約者たちの関係については。
「いーじゃないの。将来を誓った男女の仲睦まじい光景。美しいと思わない?」
「オレは認めた覚えはない!」
 常識的に考えて、八歳の少女が一回りも年上の男を連れて来て
「あたしこの人とけっこんする」
 と言い出したところで、はいそうですかと本気で言える保護者がいたら、その方がどうかしている。
 子どもによくある憧れのようなもので、どうせすぐに飽きると高をくくっていたが
 それから四年が過ぎても彼の幼い契約者は「婚約」を取り消す様子はない。
 ・・・率直に言えば、柳は気に入らない。
 日本人にありがちな控えめな性分、と言えば聞こえはいいが、優柔不断としか思えない。
 おまけに、厳格な彼から見ればとにかくノイに甘い。
 育ての親である自分の教育方針も差し置いて何でも聞いてやってしまう。頼りないこと夥しいではないか!
 お前を疎んじている、とはっきり態度に出しても、奴は困ったような様子で苦笑いを浮かべるのみで何を考えているのか一向に知れたものではない…

どおぉぉぉぉん

 派手な雷鳴と、きゃあという歓声に現実に意識が戻る。
 いつの間にか水滴たちが落ちてきて、髪や服を湿らせつつあった。
「雨か・・・」
「ひどくなりそうねぇ。お嬢ちゃんも捕獲した事だし、早く帰りましょ」
「その前にコンビニで傘を買っていかない?」
 ノイちゃんが濡れちゃうと柳がハンカチを取り出してノイの頭に被せる。
 帽子を被ってるでしょーが、という飛縁魔のツッコミは華麗にスルーした。
 帽子の上からハンカチを被せられた当人はと言えば、郷里のウィーンではほとんど見られない夕立が物珍しく、シャワーみたいときゃあきゃあ歓声をあげている。
 ほんの僅かの間に雨は激しくなり、全員があっと言う間に濡れ鼠になってしまった。

「ここまで濡れたら、もう手遅れな気もするけど」
 飛縁魔が肩をすくめた。白いシャツは既に水分を一杯に含んで素肌が透け、大いに目のやり場に困る…
 否、大抵の男なら見たくて仕方ない姿をさらしている。
 ともかく今からでも、傘とタオルでもあれば今よりマシにはなるだろう。
 そう結論を出した一同は少し先に見えていたコンビニに向かって一斉に駆け出した。

「・・・・・・」
 雨の中、彼らの後ろ姿を眺める金髪の女。
 背が高く、その容貌は美女と称して差し支えないのに、醸し出す雰囲気はどこか陰惨で。
 その手には血塗れの斧が握られ、視線は冷たくノイの背中を見据えていた。








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