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単発 - 収納青年

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 彼岸に見た夢、綺麗なキセキを描いて飛んでいく鳥たち。
 彼岸に見た夢、かなわぬ願いに囚われ血の涙を流す惑乱の死霊。
 彼岸に見た夢、白んでいく宇宙の色によく似た恋の欠片。
 数多の夢を見ていた。
 現実を忘れるほどに。
 忘れたかったのだ。
 僕は人を殺してしまった。
 切欠は些細な口喧嘩――少なくとも僕にとっては――で、僕の言葉がどうにも彼女から冷静さを奪ったようなのだ。
 僕は滔々と事実を並べ立ててみただけのつもりで何か間違ったつもりはないのに。
 時として事実は悪口雑言よりも人の心を抉ってしまうらしい。
 殺人事態は正当防衛の結果だと言わせてもらおうか。

救急車かな」

 口に出して言ってみる。
 駄目だ、何かが違う。

「いや、ケーサツだね」

 ノンノン。
 そうじゃあないんだよ。

「僕はもっとやるべきことがある」

 さて、なんだ?
 僕が求めていることとは……そうだ、まず逮捕されないこと。
 正当防衛なんて言っても信じてもらえるとは限らない。
 その上それが認められるとも限らない。
 この死体を処理しなくてはいけない。

「どうやって処理すれば良いんだろう?」

 幸いここは家の中、死体を処理する方法にはことかかない。
 分解してすこしずつ下水道に流そうか。
 その間は冷蔵庫にでも入れれば良いだろう。
 ああ、駄目だ。彼女が居なくなればきっと怪しまれてしまう。
 チマチマ時間をかけている間に……警察に踏み込まれたら終わりだ。
 様々な方法が浮かんでは消える。
 アレも駄目、コレも駄目、1つずつ羅列していく中に最良の方法は見当たらない。
 いやだ、捕まりたくない、犯罪者なんて嫌だ。なんでこんな女みたいなゴミの為に、そもそもこいつは邪魔だったんだ。
 邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔、居なくて良いのに、無くなってしまえばよかったのに。
 つまらない女の為に人生を棒になんてふりたくないしいやだもうほんとうになんでこんなことにこんなことになるんだったらこうなったらもう……

「ああ、そうだ」

 僕はタンスと壁の隙間に彼女を押し込んだ。
 何度押しても入らない。
 台所から牛刀を持ってきて、風呂場で彼女をバラバラにして、血を抜いてから同じ場所に押しこむ。
 綺麗にお片づけできた。
 これだけ丁寧に収納していればいいや、そうだ、ソレでいいんだ。
 指が少しはみ出て邪魔だから……

「へぇ」

「だ、だれだ!?」

「御続けなさい、それが貴方の業なのでしょう」

 尼姿の女性がいつの間にか僕の後ろに立っていた。

「しまい続けなさい、貴方の人間の本質はしまうということなのでしょう?
 ならばそれに従うだけです、貴方はアタリマエのことをしていてそれを責めて良い人間はどこにもいません
 収納をその本質とする貴方が邪魔なモノをしまって何が悪いのですか?」

「え、あ……」

 言うとおりに指を折り曲げてタンスの奥の角にひっかけて収納を終える。

「よく出来ましたね、よろしければ……もっとしまってみる気はありませんか?」

「しまう?」

「この世には汚いものが多すぎる、貴方はそれを疎ましく思っているのでしょう?
 それにもう、自らの本質に気づいた貴方は“収納”をやめられない」

 この女は何を言っているのだ。
 嫣然と微笑んで彼女は僕に一枚の紙切れを差し出す。
 隙間女と書かれたそれを目の前に僕はゴクリと唾を飲みこんで……しっかりと頷いた。
 言われたとおりにそれに名前を書く、次の瞬間、一分の隙もなくタンスと壁の間に収納されていた筈の邪魔なモノは消えてなくなってしまった。
 生まれて初めて、心から爽やかな気持ちになれた。

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