【鴉―KARAS― 第一話「運命の夜」】
千葉県夜刀浦市。
人口は60万人、海に面した土地で名門飯綱大学を抱えるベッドタウン。
特産品は佃煮、ピーナッツ、等々。
白い髪、浅黒い肌、ラフな服装の少女がその街の繁華街を駆ける。
少女を追うのは数名の黒服。
その瞳に意思は感じられず、彼らが十把一絡げの量産品であることをはっきりと示していた。
人口は60万人、海に面した土地で名門飯綱大学を抱えるベッドタウン。
特産品は佃煮、ピーナッツ、等々。
白い髪、浅黒い肌、ラフな服装の少女がその街の繁華街を駆ける。
少女を追うのは数名の黒服。
その瞳に意思は感じられず、彼らが十把一絡げの量産品であることをはっきりと示していた。
「はぁっ、はぁっ……」
狭い路地裏を抜け、少女はなおも走り続ける。
周囲の人間は何故かこの異常事態にったく気づいておらず、少女を助けようなどとはしない。
無表情で彼女を追いかける黒服。
逃げて、逃げて、逃げて、彼女の身体でしか通れない狭い建物の隙間を抜けて別の通りに出る少女。
周囲の人間は何故かこの異常事態にったく気づいておらず、少女を助けようなどとはしない。
無表情で彼女を追いかける黒服。
逃げて、逃げて、逃げて、彼女の身体でしか通れない狭い建物の隙間を抜けて別の通りに出る少女。
しかし
「こちらNo.3452、補足対象を発見しました」
「発見しました」
「発見しました」
「発見しました」
「発見しました」
先回りされていた。
「応援を要請、これより捕獲行動に移ります」
「……ここまで、か。君たちはどこまで愚かなんだい?」
歯をギリギリと食いしばり、黒服達を睨みつける少女。
幾つもの光線銃の銃口が彼女に向けられる。
絶体絶命、その時だった。
幾つもの光線銃の銃口が彼女に向けられる。
絶体絶命、その時だった。
「お前ら何やってんだあああああああああああああああ!」
黒服の一人を殴り倒しながら突如として現れる青年。
片手には出前用の岡持ち、ラーメン屋のお兄さんといった風情である。
殴られた黒服は立ち上がり、まるで何かと連絡をしているかのようにブツブツと喋り始める。
片手には出前用の岡持ち、ラーメン屋のお兄さんといった風情である。
殴られた黒服は立ち上がり、まるで何かと連絡をしているかのようにブツブツと喋り始める。
「こちら捕獲部隊、一般人が乱入してきました」
「任務の障害とみなし……」
「これでもくらえ!」
抵抗も無く蹴り飛ばされ、食べ残しのラーメンをかけられる黒服。
「さっさと逃げるぞ嬢ちゃん!」
「え?え?ちょ、ちょっとまて!巻き込まれるぞ!」
青年は少女の手を引いて走りだす。
ゆっくりと遠ざかる二人の影。
ゆっくりと遠ざかる二人の影。
「任務の障害とみなし、排除をします」
「許可が降りました」
「「「「「発射」」」」」
号令と同時に青年だけを光線銃の光が容赦なく貫いた。
「え?」
信じられない、といったような顔で青年は自らの胸元を見る。
穴が空いていた。
心臓の拍動に合わせるリズムで血が流れていた。
穴が空いていた。
心臓の拍動に合わせるリズムで血が流れていた。
「あーあ……嘘だろ?しかたねえなあ……」
青年は少女の手を離し
「嬢ちゃん、逃げろ」
その場に倒れた。
「障害排除、任務を継続いたします」
「くっ……なんでこんなことに!?
組織は私と話しあう予定が有ると聞いていたぞ!」
組織は私と話しあう予定が有ると聞いていたぞ!」
「その質問には我々下部の黒服ではお応えいたしかねます」
逃げようと振り返った少女。
「応援要請を受理しました」
「受理しました」
「受理しました」
「受理しました」
しかしそこにはまた別の黒服。
少女は足元に転がる青年の死体を見下ろす。
少女は足元に転がる青年の死体を見下ろす。
「貴女には我々と共に来ていただきます」
「同意していただけない場合は強制的に連行させていただきます」
「……すまない、関係ない君を死なせてしまった」
少女は懐から心臓に似た形の肉塊を取り出す。
「―――――そして私はもっと酷い真似をする」
彼女はそれを青年の胸に空いた風穴に差し込んだ。
「許してくれなどとは言わない、でもせめて」
ビクン、と青年の体が大きく震える。
「蘇れ」
何も言わずに青年は起き上がる。
「障害復活、排除を開始します」
「「開始します」」
「「「開始します」」」
「開始します」
「「開始します」」
「―――――――――鴉!」
少女の悲痛な叫びが谺する。
「――――――――――御意」
まるで黒服のように感情を押し殺した青年の声がそれに応える。
続いて黒服たちが光線銃の引き金を引く。
しかし、青年は少女を抱えると空中に飛び上がり光線を回避し、黒服たちの後ろを取るような位置に着地する。
しかし、青年は少女を抱えると空中に飛び上がり光線を回避し、黒服たちの後ろを取るような位置に着地する。
「君はここに」
「……うん」
青年の右手に光が集まり、漆黒の刀とも剣とも判別のつかない刃物――小烏丸――に姿を変える。
青年は左腕を腰に当て、右手の甲を見せるように天へと突き上げる。
腕で隠れていない顔からチラリと覗く右目が凍てつくほどに冷たかった。
青年は左腕を腰に当て、右手の甲を見せるように天へと突き上げる。
腕で隠れていない顔からチラリと覗く右目が凍てつくほどに冷たかった。
「小鴉丸、限定解除」
少女の声と共にいつの間にか青年の腰についていた鞘が分解、変形、合体を繰り返して青年の身体を纏う鎧となる。
顔まで覆う鴉を模したその甲冑の、目に当たる部分が紅く光ると同時に、青年と黒服は動き出した。
顔まで覆う鴉を模したその甲冑の、目に当たる部分が紅く光ると同時に、青年と黒服は動き出した。
「目標が死体を用いて抵抗を開始、射殺します」
光線が少女に向けて飛ぶ。
しかし青年は瞬時に少女の目の前に現れると飛んできた光線を鎬で反射し刃で切り裂き受け流していく。
一瞬、黒服たちの攻撃が止む。
それと同時に青年は剣を高く投げ上げ、陸上選手のようなクラウチングスタートの構えに入る。
投げられた剣は高速で回転し、黒服たちの群れの中に飛び込んでいく。
瞬く間に積み上げられていく死体、否、肉塊。
一人の黒服が仲間を犠牲にしながら何とかそれを受け止める。
しかし、その瞬間黒服の顔面を青年の足が踏みつける。
青年は小烏丸を奪い返すとその黒服の頭を踏みつぶしながら跳躍。
この時点で数名の黒服が逃走を開始する。
しかし青年は瞬時に少女の目の前に現れると飛んできた光線を鎬で反射し刃で切り裂き受け流していく。
一瞬、黒服たちの攻撃が止む。
それと同時に青年は剣を高く投げ上げ、陸上選手のようなクラウチングスタートの構えに入る。
投げられた剣は高速で回転し、黒服たちの群れの中に飛び込んでいく。
瞬く間に積み上げられていく死体、否、肉塊。
一人の黒服が仲間を犠牲にしながら何とかそれを受け止める。
しかし、その瞬間黒服の顔面を青年の足が踏みつける。
青年は小烏丸を奪い返すとその黒服の頭を踏みつぶしながら跳躍。
この時点で数名の黒服が逃走を開始する。
「小烏丸、変形」
少女がそう呟くと中に入っている筈の人体の構造など無視して漆黒の鎧が変形を始める。
まずは背中から翼のようなパーツが生え、それがゆっくりと降りてきて腕と一体化。
次に足だった場所は外れて翼の真ん中に装着される。
頭の部分の鴉を模した兜は九十度方向を転換して完全に鳥の頭の形となった。
漆黒の戦闘機、SR-71“ブラックバード”
それを小さくした機械に青年は変貌していた。
まずは背中から翼のようなパーツが生え、それがゆっくりと降りてきて腕と一体化。
次に足だった場所は外れて翼の真ん中に装着される。
頭の部分の鴉を模した兜は九十度方向を転換して完全に鳥の頭の形となった。
漆黒の戦闘機、SR-71“ブラックバード”
それを小さくした機械に青年は変貌していた。
「行け、小烏丸。一人も生かして帰すな」
「御意」
少女の声に反応して戦闘機と化した青年は真夜中の空を飛ぶ。
人ごみをかき分けて走る黒服。
逃げる、逃げる、逃げる。
人ごみを抜けて左右を見回し、後方を確認した黒服が前を振り返ると……居た。
眼の前に、戦闘機の姿をした青年が、ハチドリのように空中で静止していた。
悲鳴をあげる暇さえなく、黒服たちは蜂の巣にされた。
蜂の巣にされた黒服は、周囲の人々に気づかれることもなく光の粒として消滅したのである。
人ごみをかき分けて走る黒服。
逃げる、逃げる、逃げる。
人ごみを抜けて左右を見回し、後方を確認した黒服が前を振り返ると……居た。
眼の前に、戦闘機の姿をした青年が、ハチドリのように空中で静止していた。
悲鳴をあげる暇さえなく、黒服たちは蜂の巣にされた。
蜂の巣にされた黒服は、周囲の人々に気づかれることもなく光の粒として消滅したのである。
「小烏丸、停止」
命令と同時に戦闘機から人の形に戻り、鎧が鞘に変形し、最後には光の粒になって青年の身体の中に入っていく。
そこで青年は我に返り、辺りを見回す。
そこで青年は我に返り、辺りを見回す。
「あれ?さっきのやつらは?逃げきったのか……
無事だったみたいでなにより」
無事だったみたいでなにより」
良かった、と本当に嬉しそうな顔で青年は微笑む。
「ありがとう」
少女は小さな声で青年にお礼を言った。
「礼には及ばないさ」
「本当に……ごめんなさい」
少女は深く頭を下げた。
何のことだか分からない青年はあわてて少女に頭をあげるように言う。
何のことだか分からない青年はあわてて少女に頭をあげるように言う。
「でも、その……」
その時、少女のお腹が大きな音で鳴る。
「あれ?お腹へってるの?」
「え、あ、これは……!」
「じゃあ家に来なよ!俺の家、ラーメン屋やってるんだ!」
「でも……」
「良いから良いから!ほらこっちだ!」
「あの、名前は?」
「俺は鷲山九郎、君は?」
「私は……トト」
「ふーん、やっぱ外国の人か。なんか色々あったみたいだけどまあ……」
とりあえず食べてからってことで、そう言って青年は笑った。
とりあえず食べてから、彼女もまずは彼についていくことを決めたのだった。
とりあえず食べてから、彼女もまずは彼についていくことを決めたのだった。
【鴉―KARAS― 第一話「運命の夜」 続】