賑やかな気配とともに、「夢の国」が旅立っていく
その様子を、黒服は静かに見送っていた
その様子を、黒服は静かに見送っていた
かつて、救えなかった少女
一度は狂気に操られてしまった少女
……しかし、もう大丈夫だ
彼女にはあんなにも、支えてくれている存在がいるのだから
一度は狂気に操られてしまった少女
……しかし、もう大丈夫だ
彼女にはあんなにも、支えてくれている存在がいるのだから
あの時救えていれば、と後悔した
黒服となり、人間であった頃の記憶を失ってもなお、その後悔だけが残り続けていた
黒服となり、人間であった頃の記憶を失ってもなお、その後悔だけが残り続けていた
…その感情に
ようやく、一区切りがついたような
……そんな気がした
ようやく、一区切りがついたような
……そんな気がした
「行ったのか?」
「…はい」
「…はい」
「夢の国の黒服」としての能力が混じっている自分だから、その姿を見る事ができたのだろう
既に人避けの結界を発動している彼女の姿は、他の者たちには見えなくなっているはず
青年に声をかけられ、黒服は振り返る
既に人避けの結界を発動している彼女の姿は、他の者たちには見えなくなっているはず
青年に声をかけられ、黒服は振り返る
「それでは、帰りましょうか。送りますよ」
「えぇ…」
「えぇ…」
「いっそ、こっちの寝床に泊まっていきゃいいのに」
「いえ、ご迷惑をかける訳にはいきませんから」
「別に迷惑じゃないぞ。なぁ?」
「え?……そうね。迷惑なんかじゃないわ」
「いえ、ご迷惑をかける訳にはいきませんから」
「別に迷惑じゃないぞ。なぁ?」
「え?……そうね。迷惑なんかじゃないわ」
青年と少女の好意は嬉しいが…
本当に、いいのだろうか?
そもそも、今、2人が寝床として使っているあの部屋は、寝台が一つしかなかったような
青年の方はソファーで寝ているようだし、寝床が足りないのでは…
本当に、いいのだろうか?
そもそも、今、2人が寝床として使っているあの部屋は、寝台が一つしかなかったような
青年の方はソファーで寝ているようだし、寝床が足りないのでは…
「お前は細いし、こいつはちっこいし。そんな広くないベッドだけど、二人で寝れるだろ?」
「!!??」
「!!??」
っば!!と
青年の言葉に、少女が驚いた様に顔をあげた
黒服は、小さく首をかしげる
青年の言葉に、少女が驚いた様に顔をあげた
黒服は、小さく首をかしげる
「そこまで、なさらなくとも……あなたも、寝る時に狭い思いはしたくないでしょう?」
「え、あ、その」
「え、あ、その」
……?
何やら少女が慌てているようだが、どうしたのだろうか?
理由が思い当たらず、黒服は首をかしげるばかりだ
何やら少女が慌てているようだが、どうしたのだろうか?
理由が思い当たらず、黒服は首をかしげるばかりだ
…この黒服、色恋沙汰にはある種天才的と言っていいほど、鈍い
よって、少女からむけられている好意にも、気づいてはいないのだ
よって、少女からむけられている好意にも、気づいてはいないのだ
「…べ、べつに、いい、わよ?それくらい?」
「そうですか?ですが…」
「いいって言うから、いいのよ」
「そうですか?ですが…」
「いいって言うから、いいのよ」
きゅう、と
少女が、黒服の手を掴む
その小さな手を、黒服は優しく握り返した
少女が、黒服の手を掴む
その小さな手を、黒服は優しく握り返した
「ほら、行きましょう」
歩き出す少女に手を引かれ、黒服は引っ張られるように歩き出した
青年も、慌ててその後を追う
青年も、慌ててその後を追う
都市伝説と、それと契約した人間2人
三人が並んで歩く様子は…どこか、家族のようにすら見えたのだった
三人が並んで歩く様子は…どこか、家族のようにすら見えたのだった
fin