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死神少女は修行中-08.少年と少女と居候

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「いたっ!」
 小さく悲鳴をあげて、黒髪の少女が転んだ。セーラー襟のワンピースと揃いの白いベレーが転がる。
「「「ババリバリッシュ!!!」」」
 転んだ少女を獲物と見たジャガー人間達が少女に飛びかからんと地を蹴った。

「ばくはつしろー!!!!」

「「「ババリ…!!」」」
 無論爆発はしないものの、一声で聴覚を破壊されたジャガー人間達が平衡感覚を失い
 もんどりうって地面に転がったところを飛縁魔とリジーが手早く掃討する。
 その間にノイが起き上がり、駆け寄った柳と一緒に小さな交差点へ出る。
 見た目には大したダメージはないようだ。
「中学校はこっちでいいんだよね?」
 柳の言葉に極が眉を微妙にひそめ、
「中学校ですか…墓地ではなくて?」 
 確認というよりむしろ控えめな不同意のような言い方が、ムーンストラックと柳には少々引っかかった。
「極。どうした?」
 いささか気遣わしげに表情を覗き込まれて、極の気分は落ち着かず、視線を外してやり過ごす。
「極くん、学校じゃ嫌なの?」
 「そりゃーお年頃の男子ですもんねぇ。クラスメイトに家の人と居るところなんて見られたくもないわね」
 飛縁魔は少々からかう調子だ。
 家の人。
 リジーは別にして、極にとって彼らとの関係は「居候」それで片が付くが、ひとりだけそうではないのがいる。
 柳の言葉を受けたノイが学校がヤなの?トーコーキョヒ?フトウコウ?と
 テレビやら何やらで中途半端に聞きかじったらしい単語を並べて、
 具合が悪いのかと額に手を当てようとした時
「触るな!」
 極の大声と共にノイの手が弾かれ、一同は一瞬唖然として極を見つめた。
「い、イタル…?」
 たいして痛くもなかったものの、驚いて弾かれた手をさすりながらおそるおそる極を見上げるノイ。
「あ…」
 極も自分のしたことに驚いた様子で自分の手と皆の表情に忙しく視線を往復させた、その時。

「「「ババリバリッシュ!!!」」」

 動揺が全員の反応を鈍らせ、気がつけば囲まれていた。
「間に合わない!?」
 飛縁魔の炎とノイの声が発せられるより早く飛びかかってくる。深手は免れない、たとえ死なないにしても。
「イタル様!」
 未だ棒立ちの極をリジーが伏せさせ、隠すように覆い被さった刹那。
 さながら陽の光のような眩しい煌めきと、発砲と言うにはいささか重厚な衝撃音が、彼らを救った。

『……?』
  一同が周囲を見回すと、すぐ近くの民家のベランダに、ひとりの少女と、その後ろには長身の若い男。
 ジャガー人間達は全て光となって四散している。
「はろろーん、なのですよ」
 小さな王冠の乗ったピンク色のツインテールヘアに、裾に天使の絵画をプリントした膝上丈の黒いドレス。
 ごく標準的な日本の風景には限りなくミスマッチな風体にも恥じらうことなく
 悠然と手を振りベランダから飛び降りた。
「幻!」
 駆け寄るノイはごく自然に受け止めているようだが、
 その身形といい、いきなりどこぞのベランダから挨拶かますようなアレな振る舞いといい、
(可愛いけど、頭は少々可哀想なのかも)
 と、柳と飛縁魔以外の全員は少々引いた。
 ちなみに柳が引かないのは、幻と知己を得た際にはっきり
「この子、変な子」
 との感想を抱いたため、今更驚きもしない所為ではある。
 飛縁魔は飛縁魔で、柳から話には聞いていた珍妙な少女の実物に興味津々と言ったところ。
「後ろのおにーさん、あんたの彼氏?」
 幻の後ろのライダースジャケット姿の青年に向かって、飛縁魔の遠慮ない一言。
 ノイも興味があるのか、わくわくした面持ちで幻と青年を見比べている。
「ひどい誤解なのです。ばざいとしゃいよーきんをよーきゅーするですよ」
「それ、俺のセリフ」
「危ないではないか!女性があの様な…だいたいあの家は貴女の家か」
「ツッコミ所はそこなのか」
 少々ズレたムーンストラックのツッコミと、それに更にツッコむリジー。
 幻は涼しげにそれらを聞き流すと、マタタビオフに行くのですよーと学校の方向を指で示した。
 わーいと歓声を上げて駆け出したノイをムーンストラックが慌てて追いかける。
「極くん、いいの?」
 柳が肩にそっと手を置いたが、極の表情は硬いまま。
 その極を気遣うようにリジーが寄り添い、駆けていくセーラー服の後ろ姿を睨みつけていた。

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