「……っしゃあ、今日もバッチシだぜ!」
鏡の前に立ち、ワックスを用いて前髪を高くし綺麗に整えているのは一人の少年
ボタンを全て開いた学ラン、腰下まで下ろしたダボダボのズボン、そして頭はリーゼント
どう見ても生まれてくる時代を間違えたのであろう彼の名は、妹尾 賢志(セノオ ケンジ)
何処でどうしてこうなったのか分からないが、まだ中学1年生である
ボタンを全て開いた学ラン、腰下まで下ろしたダボダボのズボン、そして頭はリーゼント
どう見ても生まれてくる時代を間違えたのであろう彼の名は、妹尾 賢志(セノオ ケンジ)
何処でどうしてこうなったのか分からないが、まだ中学1年生である
「よぅし、今日もつまんねー授業受けに行ってやるかぁ!」
「ぁぅ……お、お早う……」
「あ、ミイ、起こしちまったか、悪ぃ」
「ぁぅ……お、お早う……」
「あ、ミイ、起こしちまったか、悪ぃ」
『ミイ』と呼ばれたのは、ネコの絵が描かれた可愛らしいパジャマを着たセミショートヘアの少女
賢志の妹、妹尾 魅衣(セノオ ミイ)。小学4年生
2人の両親は幼い頃に原因不明の死を遂げており、今この家には兄妹の2人で暮らしている
意外にも、家事全般をこなしているのは賢志の方だ
賢志の妹、妹尾 魅衣(セノオ ミイ)。小学4年生
2人の両親は幼い頃に原因不明の死を遂げており、今この家には兄妹の2人で暮らしている
意外にも、家事全般をこなしているのは賢志の方だ
「ぅ、ううん、目覚ましで、起きたから…」
「そっか。兄ちゃんはもう学校行くからな
朝飯は作ってあるけど、冷えてたら温めて食えよ。寒いから身体も温めねぇとな
あと、着替えは窓の近くに置いてっからな」
「うん、ぁ、有難う」
「おう! じゃ、行ってきます!」
「ぁ、えっと、おにい―――」
「ん?」
「っぃぅ………あ、っと…いって、らっしゃい」
「あぁ、お前も元気に学校行けよな!」
「そっか。兄ちゃんはもう学校行くからな
朝飯は作ってあるけど、冷えてたら温めて食えよ。寒いから身体も温めねぇとな
あと、着替えは窓の近くに置いてっからな」
「うん、ぁ、有難う」
「おう! じゃ、行ってきます!」
「ぁ、えっと、おにい―――」
「ん?」
「っぃぅ………あ、っと…いって、らっしゃい」
「あぁ、お前も元気に学校行けよな!」
ぽんぽん、と魅衣の頭を撫で、賢志は鞄を肩にかけ、勢い良く外へと飛び出した
家の中には、嵐が過ぎ去ったかのような静寂だけが残る
はふ、と溜息を吐くと、魅衣は寂しげに冷蔵庫を開けて、一番上の段に隠すように置いてあるものを取り出した
可愛いリボンが装飾された、ハート型の包み―――今日が2月14日だと考えれば、中身は容易に推測できる
家の中には、嵐が過ぎ去ったかのような静寂だけが残る
はふ、と溜息を吐くと、魅衣は寂しげに冷蔵庫を開けて、一番上の段に隠すように置いてあるものを取り出した
可愛いリボンが装飾された、ハート型の包み―――今日が2月14日だと考えれば、中身は容易に推測できる
「…渡し損ねちゃった……放課後には、絶対渡さなきゃ………」
また、彼女は大きく溜息を吐く
首から提げられたペンダントの紅い石が、きらりと美しく、妖しく輝いた
首から提げられたペンダントの紅い石が、きらりと美しく、妖しく輝いた
―――――――――――――――――
――――――――――
――――
――
放課後
「っしゃあ今日の授業終わったぁ!! 俺は帰るぞ!!」
鞄を引っ提げ、賢志は勢い良く教室を飛び出そうとした
生徒が掃除の準備に取り掛かっている所だった
生徒が掃除の準備に取り掛かっている所だった
「お、おい妹尾! お前今日掃除当番だろ――――」
「あぁ!? ぁんで俺が自分のでもねぇ部屋の掃除しなきゃなんねぇんだよぉ!!」
「あぁ!? ぁんで俺が自分のでもねぇ部屋の掃除しなきゃなんねぇんだよぉ!!」
怒号
一瞬にして周囲の空気が張り詰める
妹である魅衣には優しく接している彼だが、他人に対してはいつもこの調子だ
両親を失ってからというもの、魅衣が頼れる家族は兄の賢志ただ一人
それを彼も自覚しているし、彼女の為に精一杯の事をしたいと、両親がいなくなった当時からずっと考えていた
故に、今日も早く帰って夕飯の支度や掃除、洗濯を済ませようという魂胆なのだが、
如何せんこの態度、誰も理解してくれる筈も無く
そもそもこうなってしまったのは小学3年生の時であり、
両親がいない事を理由に魅衣が虐められていたのを暴力で解決したのが発端だった
暴力で妹が守れるように、ではなく、暴力を振るわずとも妹を守れるように
そんな切実な彼の思いを知る者は、誰もいない
一瞬にして周囲の空気が張り詰める
妹である魅衣には優しく接している彼だが、他人に対してはいつもこの調子だ
両親を失ってからというもの、魅衣が頼れる家族は兄の賢志ただ一人
それを彼も自覚しているし、彼女の為に精一杯の事をしたいと、両親がいなくなった当時からずっと考えていた
故に、今日も早く帰って夕飯の支度や掃除、洗濯を済ませようという魂胆なのだが、
如何せんこの態度、誰も理解してくれる筈も無く
そもそもこうなってしまったのは小学3年生の時であり、
両親がいない事を理由に魅衣が虐められていたのを暴力で解決したのが発端だった
暴力で妹が守れるように、ではなく、暴力を振るわずとも妹を守れるように
そんな切実な彼の思いを知る者は、誰もいない
「うるさぁい!! さっさと箒持って掃除するー!!」
賢志に勝るとも劣らない怒号が響く
きっ、と賢志の睨む先は、箒を片手に仁王立ちする、ショートヘアの小柄な少女
彼はハァ、と溜息を吐きながら、つかつかと少女に歩み寄る
きっ、と賢志の睨む先は、箒を片手に仁王立ちする、ショートヘアの小柄な少女
彼はハァ、と溜息を吐きながら、つかつかと少女に歩み寄る
「またてめぇか、いつもいつも何なんだ、あぁ!?」
「いつもいつもはそっちでしょ! 今日こそ掃除して帰って貰うからね!」
「余計なお世話だ、このアマぁ!!」
「いつもいつもはそっちでしょ! 今日こそ掃除して帰って貰うからね!」
「余計なお世話だ、このアマぁ!!」
拳を振りかぶってぶつけようとする
しかし少女は箒の柄で見事に防いでみせる
今度は膝蹴り、それも箒で受け止められてしまう
そして彼女の反撃、柄の先端で腹を突かれ、前に屈んだところで胸倉を掴まれた
しかし少女は箒の柄で見事に防いでみせる
今度は膝蹴り、それも箒で受け止められてしまう
そして彼女の反撃、柄の先端で腹を突かれ、前に屈んだところで胸倉を掴まれた
「ぐえっ……き、今日のところは勘弁してやるぜ」
「どっちの台詞よ、負けたのはあんたでしょ、カッコ悪っ!」
「てめぇの強さが異常なんだよ………あ、神崎先輩」
「えっ、やっ、にぃにぃ、これは、違っ、その………」
「じゃあな麻夜! 今度はぜってぇ負けねぇ!!」
「あ、こら賢志ぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
「どっちの台詞よ、負けたのはあんたでしょ、カッコ悪っ!」
「てめぇの強さが異常なんだよ………あ、神崎先輩」
「えっ、やっ、にぃにぃ、これは、違っ、その………」
「じゃあな麻夜! 今度はぜってぇ負けねぇ!!」
「あ、こら賢志ぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
麻夜と呼ばれた少女の叫びを背に、
賢志は廊下に集められたゴミを散らしてしまう程に猛ダッシュで駆け抜けた
賢志は廊下に集められたゴミを散らしてしまう程に猛ダッシュで駆け抜けた
「やべぇ、無駄な時間使っちまった、晩飯間に合うかな…!?」
「あ、妹尾君、これ受け取って―――――――」
「悪ぃ!また今度!」
「あ、妹尾君、これ受け取って―――――――」
「悪ぃ!また今度!」
女子生徒の声にも耳を貸さず、とにかく彼は走り抜ける
靴を履いて下駄箱を飛び出し、校門もくぐらず塀をよじ登って近道する
あれほどぶかぶかのズボンを穿いていてよく転倒しないものである
靴を履いて下駄箱を飛び出し、校門もくぐらず塀をよじ登って近道する
あれほどぶかぶかのズボンを穿いていてよく転倒しないものである
「待ってろ魅衣! 今兄ちゃんが美味い飯作ってやるからな――――」
「きゃあああああああああああああああ!!!」
「きゃあああああああああああああああ!!!」
女の子の叫ぶ声
その声色に聞き覚えのあった賢志は、大急ぎで声のした方へ向かった
辿り着いた先で見た光景は、尻餅をついて後退りする少女と、それに歩み寄るサングラスをかけた黒スーツの男
その声色に聞き覚えのあった賢志は、大急ぎで声のした方へ向かった
辿り着いた先で見た光景は、尻餅をついて後退りする少女と、それに歩み寄るサングラスをかけた黒スーツの男
「魅衣!!」
賢志は少女――魅衣の下に駆け寄り、男の前に立ち塞がった
「お、お兄ちゃん……!」
「おいてめぇ! 俺の妹に何してやがった!?」
「……おや、お兄様でしたか。いやこれは失敬
そちらのお嬢様がこちらの言う通りにして下さらないのでね」
「言う通りだぁ?」
「……「賢者の石」を…渡せ、って……」
「おいてめぇ! 俺の妹に何してやがった!?」
「……おや、お兄様でしたか。いやこれは失敬
そちらのお嬢様がこちらの言う通りにして下さらないのでね」
「言う通りだぁ?」
「……「賢者の石」を…渡せ、って……」
か細い声で魅衣は胸のペンダントを握りしめながら言う
聞き取れはしたが、何の事か分からないのだろう、賢志は首をかしげた
それを見て苦笑しながら、黒服の男が語り始めた
聞き取れはしたが、何の事か分からないのだろう、賢志は首をかしげた
それを見て苦笑しながら、黒服の男が語り始めた
「そのお嬢様が首に提げている紅い石のことですよ
それには卑金属を貴金属に変えたり、人間を不老不死にさせたりなど、まさに夢のような力が秘められているのです
我々「組織」にはそれが必要なのですが、何度言っても聞いて下さらなくてね…」
「ったりめーだ! んな訳分かんねぇ事喋る素性の分からねぇような野郎に、親父とお袋の形見が渡せるか!!」
それには卑金属を貴金属に変えたり、人間を不老不死にさせたりなど、まさに夢のような力が秘められているのです
我々「組織」にはそれが必要なのですが、何度言っても聞いて下さらなくてね…」
「ったりめーだ! んな訳分かんねぇ事喋る素性の分からねぇような野郎に、親父とお袋の形見が渡せるか!!」
拳を握りしめて怒鳴る賢志
その彼の態度に臆する事無く、それどころか、ふふっ、と男は笑った
その彼の態度に臆する事無く、それどころか、ふふっ、と男は笑った
「…何がおかしいんだ?」
「いや、ね? 貴方がたのご両親も強情な方でして……流石は親子、と言ったところでしょうか」
「………………ぇ?」
「いや、ね? 貴方がたのご両親も強情な方でして……流石は親子、と言ったところでしょうか」
「………………ぇ?」
小さな、小さな驚きの声が、はっきりと聞こえた
「聞こえませんでしたか? 貴方がたのご両親はですね」
「やめろ」
「とても強情な方々でして、我々が忠告しても「賢者の石」を差し出しませんでした。そこで」
「やめろ」
「ずたずたに引き裂いて差し上げましたよ。私の、この手でね」
「やめろっつってんだろぉ!!」
「やめろ」
「とても強情な方々でして、我々が忠告しても「賢者の石」を差し出しませんでした。そこで」
「やめろ」
「ずたずたに引き裂いて差し上げましたよ。私の、この手でね」
「やめろっつってんだろぉ!!」
握りしめた拳が、男の顔目掛けて飛んでゆく
だがその拳は盛大に空振った
だがその拳は盛大に空振った
「っ消えた……!?」
「ここですよ、ここ」
「――――――――――――ッ!?」
「ここですよ、ここ」
「――――――――――――ッ!?」
直後、彼は己の目を疑った
さっきまで自分の眼前に立っていた男が、今は頭上、つまり空にいる
それも、両手を蝙蝠のような翼に変え、大きく羽ばたかせていたのだ
さっきまで自分の眼前に立っていた男が、今は頭上、つまり空にいる
それも、両手を蝙蝠のような翼に変え、大きく羽ばたかせていたのだ
「……は?」
「ふふっふふっふふ……「ジーナ・フォイロ」という都市伝説を御存知でしょうか?
かつて私はあれと契約していましてね……云わば『蝙蝠男』といったところですね」
「……都市伝説?契約?」
「ふふっふふっふふ……「ジーナ・フォイロ」という都市伝説を御存知でしょうか?
かつて私はあれと契約していましてね……云わば『蝙蝠男』といったところですね」
「……都市伝説?契約?」
聞いた事もないワードを反芻しながらも、
彼の脳は警鐘を、心臓の鼓動として鳴らし続けている
彼の脳は警鐘を、心臓の鼓動として鳴らし続けている
「くそっ……逃げろ、魅衣!」
「で、でも、お兄ちゃ」
「良いから早く!!」
「っ………ぅん」
「で、でも、お兄ちゃ」
「良いから早く!!」
「っ………ぅん」
彼だって分かっている
この状況で、たった一人の肉親を置いて逃げる事など、出来る訳が無い
彼自身、魅衣を一人にさせることは自分が死ぬよりも辛い事だと思っていた
でも今は、妹に何とかして生き残って欲しいと願った
自分も必ず生きて帰ると誓った
魅衣は立ち上がり、涙を拭って兄を背にゆっくりと走り出した
この状況で、たった一人の肉親を置いて逃げる事など、出来る訳が無い
彼自身、魅衣を一人にさせることは自分が死ぬよりも辛い事だと思っていた
でも今は、妹に何とかして生き残って欲しいと願った
自分も必ず生きて帰ると誓った
魅衣は立ち上がり、涙を拭って兄を背にゆっくりと走り出した
「おやおや、逃がしはしませんよ?」
サングラスの奥が一瞬不気味に光ったかと思えば、
この場から離れようとしていた魅衣が突然、苦しみ始めた
この場から離れようとしていた魅衣が突然、苦しみ始めた
「ッ!? ど、どうした魅衣!?」
「っぁ………く……苦し………」
「「ジーナ・フォイロ」の能力です……本当はもっと便利な能力があるらしいのですが、私とは合わなかったようで
では、そろそろ頂くとしましょうか」
「っぁ………く……苦し………」
「「ジーナ・フォイロ」の能力です……本当はもっと便利な能力があるらしいのですが、私とは合わなかったようで
では、そろそろ頂くとしましょうか」
男の足が、蝙蝠のそれに変化し、左右それぞれ3本の鋭い爪が伸びる
爪は少女に狙いを定め、素早く襲いかかった
鮮血が、ばっと派手に咲き乱れる
爪は少女に狙いを定め、素早く襲いかかった
鮮血が、ばっと派手に咲き乱れる
「………む?」
「い、痛つつ……」
「い、痛つつ……」
男の爪が捕らえたのは、賢志の右腕だった
さらに賢志は残った左手で蝙蝠の脚をがっちりと掴んだ
さらに賢志は残った左手で蝙蝠の脚をがっちりと掴んだ
「へ、へへ……つ、捕まえたぜ………!」
「…馬鹿なお方だ」
「…馬鹿なお方だ」
ぐしゃ、とそれは簡単に握り潰され、ぼとぼと、びちゃびちゃ、と音を立てて落ちてゆく
声にならない声が、住宅街に響いた
声にならない声が、住宅街に響いた
「――――――――――――――――!!!」
「右腕一つ捨ててまで、それを渡さないつもりですか?」
「お……兄……ちゃ…………」
「右腕一つ捨ててまで、それを渡さないつもりですか?」
「お……兄……ちゃ…………」
苦しさに耐えきれず、魅衣の身体は前のめりに崩れ落ちた
倒れた衝撃で、ペンダントから紅い石が外れ、ころころと転がってゆく
倒れた衝撃で、ペンダントから紅い石が外れ、ころころと転がってゆく
「ふぅ、やっと任務達成ですか……手古摺らせてくれましたね
後でじっくりと料理して差し上げますから楽しみにしていて下さい」
後でじっくりと料理して差し上げますから楽しみにしていて下さい」
にやりと笑みを浮かべ、男は爪を揃えて小さな石を掴み取ろうとした――――が、
その寸前に、石は賢志の手で拾われ、男の下から離れてゆく
右肩から血を噴き出し、意識も朦朧とする中、彼は石を持って尚も立っていた
その寸前に、石は賢志の手で拾われ、男の下から離れてゆく
右肩から血を噴き出し、意識も朦朧とする中、彼は石を持って尚も立っていた
「…何処まで邪魔をする気ですか? そんな身体になって、私に勝とうとでもいうのですか?」
「てめぇにこの石はやらねぇ。魅衣も殺させねぇ……俺も死なねぇ!!」
「はぁ、血が足りなくなって頭がどうにかなったようですね…可哀想に
大人しくしていればすぐに楽にしてあげますよ―――」
「おい、てめぇさっき都市伝説がどうこうっつってたよな? 契約とか、能力とか
てめぇが欲しがってるこの賢者の何とかってのも都市伝説なんだろ?」
「てめぇにこの石はやらねぇ。魅衣も殺させねぇ……俺も死なねぇ!!」
「はぁ、血が足りなくなって頭がどうにかなったようですね…可哀想に
大人しくしていればすぐに楽にしてあげますよ―――」
「おい、てめぇさっき都市伝説がどうこうっつってたよな? 契約とか、能力とか
てめぇが欲しがってるこの賢者の何とかってのも都市伝説なんだろ?」
賢志が石をちらつかせる
妖しく輝くその石を見て、男の顔が一気に青ざめた
妖しく輝くその石を見て、男の顔が一気に青ざめた
「っ待て! そんなことをすれば貴方も消えてなくなるかも知れないのですよ!?」
「うるせぇ!俺に命令すんな!!
おい、賢者の何とか! 俺と契約しろ! 親父とお袋の仇取って、魅衣を守りてぇんだ!
たった一瞬でも良い、頼む! 俺に、力を貸してくれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「うるせぇ!俺に命令すんな!!
おい、賢者の何とか! 俺と契約しろ! 親父とお袋の仇取って、魅衣を守りてぇんだ!
たった一瞬でも良い、頼む! 俺に、力を貸してくれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
賢志の声が、紅い石―――「賢者の石」に反応し、眩く輝き始めた
思わず目を瞑りそうになる賢志だったが、その奇跡とも言える光景をしかと見届けた
「賢者の石」は独りでに浮遊すると、紅い光で賢志の失われた右腕の形を作り出したかと思えば、
紅いスパークが走ると共に、彼の腕が復元された
傷一つない、まっさらな状態で
思わず目を瞑りそうになる賢志だったが、その奇跡とも言える光景をしかと見届けた
「賢者の石」は独りでに浮遊すると、紅い光で賢志の失われた右腕の形を作り出したかと思えば、
紅いスパークが走ると共に、彼の腕が復元された
傷一つない、まっさらな状態で
「うおっ……な、治った!?」
「な……き…貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「な……き…貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
逆上した男は、全身を完全な巨大蝙蝠――「ジーナ・フォイロ」へと変え、
鋭い爪を立てて賢志を穿たんとして迫る
鋭い爪を立てて賢志を穿たんとして迫る
【殺してやるっ……貴様の父親のようになぁ!!】
「……ふざけんなぁ!!!」
「……ふざけんなぁ!!!」
それに対して、賢志は治ったばかりの右腕で拳を作り、大きく振り被った
爪と拳が、大きな音を立ててぶつかり合う
ぱきん、と蝙蝠の爪が物の見事に折れていた
爪と拳が、大きな音を立ててぶつかり合う
ぱきん、と蝙蝠の爪が物の見事に折れていた
【ッ!? そ……その腕は……!?】
「どうやら…これがてめぇの言ってた“能力”っつぅもんらしいな」
「どうやら…これがてめぇの言ってた“能力”っつぅもんらしいな」
ぽん、と賢志は左手で右腕を叩いた
その右腕は黄金色に輝いていた―――否、それどころではない
完全に、『金』で出来ていた
卑金属を貴金属に変える事の出来る「賢者の石」
その力が底上げされ、“非金属”さえも“金属”に変えられるようになったのだ
その右腕は黄金色に輝いていた―――否、それどころではない
完全に、『金』で出来ていた
卑金属を貴金属に変える事の出来る「賢者の石」
その力が底上げされ、“非金属”さえも“金属”に変えられるようになったのだ
「これで五分と五分だろ……っしゃあ、タイマン張らせて貰うぜ!!」
右腕を元に戻すと、今度は右手で直線を描くように、さっと空間を撫でる
すると撫でたその場から紅いスパークが走り、何もない場所から見る見る内に金属バットが現れた
いや、無から有を生成できる筈が無い
空気中に存在する塵などの非金属を、金属に変えて形にしたのだ
金属バットを構え、向かい来る蝙蝠を捉えて一気に振った
すると撫でたその場から紅いスパークが走り、何もない場所から見る見る内に金属バットが現れた
いや、無から有を生成できる筈が無い
空気中に存在する塵などの非金属を、金属に変えて形にしたのだ
金属バットを構え、向かい来る蝙蝠を捉えて一気に振った
「うおりゃああああああああああああああああああああ!!」
【そんなものでこの私が――――――】
【そんなものでこの私が――――――】
ごぉんっ!!!
金属の鈍い音と、細かい骨が折れた音が響く
バランスを崩し墜落したところに、金属バットで追い打ちが来る
金属の鈍い音と、細かい骨が折れた音が響く
バランスを崩し墜落したところに、金属バットで追い打ちが来る
【ひっ…………!!】
「消えて、なくなれぇ!!!」
「消えて、なくなれぇ!!!」
がぁんっ!!!
がぁんっ!!
がっ!!
がっ!!
ぐちゃっ!
ぐちゃっ!
べちゃっ!
殴る度、音が変わってゆく
気がつけば蝙蝠はその頭の原型を留めておらず、既に事切れていた
がぁんっ!!
がっ!!
がっ!!
ぐちゃっ!
ぐちゃっ!
べちゃっ!
殴る度、音が変わってゆく
気がつけば蝙蝠はその頭の原型を留めておらず、既に事切れていた
「っはぁ、はぁ、はぁ……」
肩で息をし始め、からん、とバットが手から滑り落ちる
転がるバットが動きを止めると、それは巨大蝙蝠の躯と共に、光となって虚空に消えた
賢志はそれを、空しそうに見つめていた
転がるバットが動きを止めると、それは巨大蝙蝠の躯と共に、光となって虚空に消えた
賢志はそれを、空しそうに見つめていた
「………あ、魅衣!!」
背後で倒れる魅衣の傍に寄り抱き上げ、何度か彼女の身体を揺する
すると、呼吸が絶え絶えになっていた彼女はすぐに体調が回復し、驚いたように起き上がった
すると、呼吸が絶え絶えになっていた彼女はすぐに体調が回復し、驚いたように起き上がった
「……ぁ、あれ……?」
「良かった、大丈夫みてぇだな」
「ぇ、あ、あの、お兄ちゃ……」
「魅衣、ここは学校とも家とも反対方向だろ。何で真っ直ぐ家に帰らずにこんなところにいたんだ?
危ない所だったじゃねぇか。理由があるなら、兄ちゃんに教えてくれ」
「ぅ………」
「良かった、大丈夫みてぇだな」
「ぇ、あ、あの、お兄ちゃ……」
「魅衣、ここは学校とも家とも反対方向だろ。何で真っ直ぐ家に帰らずにこんなところにいたんだ?
危ない所だったじゃねぇか。理由があるなら、兄ちゃんに教えてくれ」
「ぅ………」
暫し口を噤んだ魅衣だったが、すぐに持っていた手提げ鞄の中から何かを取り出した
形が崩れてしまっていたが、どうやらハート型らしかった
形が崩れてしまっていたが、どうやらハート型らしかった
「ぁ…! く、崩れて…」
「ん?何だそりゃ」
「っ、だめっ」
「ん?何だそりゃ」
「っ、だめっ」
魅衣の止める声も聞かず、賢志は包みを開封する
中身はチョコレートだった
やはり崩れてしまっていたが、大きく『お兄ちゃんへ いつもありがとう』とメッセージが書かれていた
中身はチョコレートだった
やはり崩れてしまっていたが、大きく『お兄ちゃんへ いつもありがとう』とメッセージが書かれていた
「っ!……こ、これって」
「き、今日、バレンタインデーだったから……朝、渡しそびれちゃって……
で、でも、崩れちゃったから、また作り直して」
「き、今日、バレンタインデーだったから……朝、渡しそびれちゃって……
で、でも、崩れちゃったから、また作り直して」
言い終わる前に、賢志はチョコレートを掴んで口一杯に頬張った
ごくん、と喉を鳴らすと、涙を溢れさせて魅衣を強く抱きしめた
ごくん、と喉を鳴らすと、涙を溢れさせて魅衣を強く抱きしめた
「っふあ、お、お兄……」
「…ありがとう……ありがとう、魅衣………すっげぇ、嬉しいよ………」
「…ありがとう……ありがとう、魅衣………すっげぇ、嬉しいよ………」
背中越しに、彼が泣いているのが伝わって
魅衣もそれにつられてしまった
魅衣もそれにつられてしまった
「……お礼、言いたいのっ……私の方、なのに…………いつもありがとう、お兄ちゃん………」
「魅衣……俺、絶対お前の事守るから。どんな化物がやってきても、皆俺がぶっ倒してやるから」
「うん…………うん…………」
「魅衣……俺、絶対お前の事守るから。どんな化物がやってきても、皆俺がぶっ倒してやるから」
「うん…………うん…………」
少年は誓う
大切な人を守り抜く事を
少年は願う
大切な人が、いつも笑顔でいられる事を
大切な人を守り抜く事を
少年は願う
大切な人が、いつも笑顔でいられる事を
少年は歩く
大切な人と共に、この歪なる町―――学校町を
大切な人と共に、この歪なる町―――学校町を
...了