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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 愛妹みぃ-02

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「ぅおらぁ!!」

高い金属音と鈍い破壊音が混じった音が響き、どさりと男が倒れた
黒いスーツを着た男は頭から血を流し倒れたままぴくりともせず、
ただじわじわと光の粒子に変わっていき、血痕を残して跡形も無く消え去っていった

「っはぁ、はぁっ………くそっ、最近多いな、こいつら……」

からん、と血に塗れた金属バットを足元に落として、少年――妹尾 賢志はゆっくりと深呼吸をした
「賢者の石」の契約者となってから、既に1ヶ月以上が過ぎた
あれから、賢志は幾度となく「賢者の石」を狙う黒いスーツの男達との戦闘に明け暮れていた
今日のみならず、昨日も、一昨日も、その前も―――毎日のように現れる彼等を、ひたすら血に染めていった
彼は快楽殺人鬼ではない
だが、男達の矛先は常に自分のみならず妹の魅衣にも向けられている為に、止むを得ずしている事だ
大切な妹を失わない為に
妹を悲しませない為に

「…魅衣は無事だろうな…………探さねぇと!!」

故に最も心配な瞬間は
彼の傍に妹がいない時である






    †    †    †    †    †    †    †    †





「ほらほらお嬢ちゃん、俺達は何も君を取って食おうとしてる訳じゃないんだよ」
「「賢者の石」の在り処……それさえ吐けば命の保証はしてやろう」
「………ぇぅ………う、ぁ…………」

ぺたんと座りこんで、じりじりと歩み寄る2人の男から逃げるように後ずさる少女――妹尾 魅衣
光線銃を構える髭面の男を、もう一人の若い男が呆れたように宥めた

「おいおい相棒、そんなことしたら言えるもんも言えなくなっちまうだろ?」
「まだ兄の方がいる……こいつが吐かなければ、そちらから聞き出す」
「ムリムリ、そっちは陽動に行った連中にぶっ殺されてるだろうし。この子から聞き出した方が早いって」

若い男は笑みを浮かべながら、魅衣に視線を合わせるようにしゃがみ込む
びくっ、と小さく跳び上がって、彼女は尚も後退りした

「待て待てお嬢ちゃん、「賢者の石」が何処にあるのか、そんだけ教えてくれたら良いからさぁ」
「ぃ……ぃゃ………たすけ、て………」
「…あーあー、これでも言ってくれないのなら、」

男の笑みが邪悪な色に染まる
服の袖や首元から、にゅるりと伸びる触手

「ひっ……!?」
「そろそろ、“別なお口”に訊いてみよっかなー?」
「……悪趣味な奴だ」

ぬっと男の手が伸び、魅衣は身体をめいっぱい縮こまらせる
それでも尚、男の手は少女との距離を詰め、その幼い身体に触れ――――――

「穢れた手で少女に触るな」

何者かが男の手を力強く掴んだ
かと思えば、男の身体は宙を舞い、大きく投げ飛ばされた

「っつぅ!?」
「ッ………何者?」

髭面の男が光線銃で狙いを定める
魅衣を守るようにして立っていたのは、黒いシャツに黒い上着、黒いズボンを着た高校生くらいの少年だった
右目を覆うように長く伸びた髪が風に靡くと、大きな傷跡がついた右目が微かに露わになる
そして首から提げられ胸で揺れる金色の枝のようなペンダントと、
腰に巻かれた金メッキの機械的なバックルが特徴的なベルトが凛然と輝く

「同業者……に近いな」
「…「組織」の穏健派か」
「おいおい兄ちゃんよぉ、その娘は俺達の獲物だぜ? とっとと帰んな」
「帰るのはお前等の方だ。この少女は俺達が管理する。諦めて本部に戻れ」
「何処のNo.か知らんが……断る」

髭面の男が引金を引く
その一瞬前に、少年は己の上着を魅衣の頭に被せた
光線銃の銃口から伸びる光条は、全て少年目掛けて飛んでいく
しかし、

「………なっ!?」

2人の男は自らの目を疑った
少年は光条をひらりと躱し、平然とそこに立っていた

「…遅い」

光はこの世で最も速いもの
それをこの少年は、いとも簡単に避けきってしまった

「馬鹿な、こんな事が……!?」
「いやいや待てよ!? どんなチート使いやがった――――――」
「解放」

少年はスマートフォンを右手に取って、画面をバックルに向けてそれを翳すと、
金色の枝のペンダントが強い光に変わって彼の胸から左手へと移った
光は次第に形と大きさを変え、光を失った時にはもうそこに枝は無く、代わりに黄金の大鎌が煌めいた
その煌めきは瞬時に黄金から深紅へと変わり、
真っ紅な華が咲き誇り、真っ紅な海が広がった

「………は?」

光線銃を構えていた腕はだらんと垂れ下がり、
髭面の首は何か言いたげにぱくぱくと口を動かしながら宙を舞った
先程まで生を持っていたそれは、徐々にその存在を光へと変えていき、儚く消えた

「い、いやいや……テメェ何しやがったぁ!?」
「先に仕掛けたのはそっちだ。忠告を聞かなかったお前達が悪い」
「ふざけんなこの餓鬼が!今すぐに叩き潰してやる!!】

見る見る内に若い男の姿が変化してゆき、
それは10本の触手を持った、巨大な烏賊へと変貌した

「「クラーケン」……さっき見せた触手はそれか」
【へっ、そこのお嬢ちゃんを弄んでやろうと思ってたが、先にテメェを五体バラバラにしてやろうか!?】
「そっくりそのまま返してやろう…『レイヴァテイン・スルトズブレイド』」

少年の左手の大鎌が再び強く輝き始め、形を変える
今度は黄金色に燃え上がる巨大な剣の如きシルエットを描いて

【「レイヴァテイン」?…………ッ!? ま、まさか、最近入った『赤い幼星』の腹心―――――――】
「あの世でさっきの相棒に宜しく言っといてくれ」

少年は有無を言わさず剣を振り下ろした
ばっさりと縦一文字に両断された「クラーケン」は黄金の炎で身を焦がされながら息絶え、
その躯もまた、光の粒子となって泡と消える

「…冥罰執行、完了」

ふぅ、と溜息を吐き、少年がスマートフォンをバックルに翳すと、炎の剣は再び金色の枝のペンダントに戻り彼の胸に提げられる
この時にようやく魅衣が、上着の闇の世界から抜け出す事に成功した

「ぷはぁっ………あ、れ………?」
「悪かったな、少々手荒な真似をしてしまった」

少年は軽く頭を下げると、静かにその場でしゃがんで上着を受け取って羽織り、魅衣に視線を合わせた
風貌、目つき、どれを取っても怪しげな雰囲気の漂うものだったが、
不思議と、彼女は少年に対して敵意を感じなかった

「ぁ………」
「自己紹介が遅れたな、俺は“Rainbow”……コードネームで申し訳ない
 俺も「賢者の石」に用があったんだが、さっきの奴等とは目的のベクトルが違う
 俺達はあくまで所在の確認に来ただけなんだ
 話せないのならそれでも良い。君が話せる範囲内で、俺に教えてはくれないだろうか?
 「賢者の石」が今、どうなっているのかを」

す、と“Rainbow”と名乗る少年は手を伸ばす
魅衣は暫し戸惑ったが、こくりと頷き、その手を受け取ろうとした
その時だった

「魅衣に近付くな!!」

飛んできたのは拳
それも金属独特の光沢を放つ重々しいもの
“Rainbow”はそれを一度は確認したが、敢えて動かずにその拳を受け、ずざざざ、と殴り飛ばされた

「ッ!! お、お兄、ちゃ……」
「テメェもあの黒尽くめの連中の仲間なんだろ!? 俺達の親父とお袋を殺した、悪い奴等の!!」

怒りを剥き出しにした少年――賢志の言葉を聞いた後、“Rainbow”は口から流れた血を拭い、むくりと起き上がった

「………だったら、どうする?」
「ぶっ殺す! 俺が、この手で!!」
「お、お兄ちゃん、違っ、その、人は――――――」
「お前が“悪”だと思ったならそいつは“悪”だ。お前が“正義”だと思ったならそれは正しく“正義”」

砂埃をはたきながら立ち上がり、スマートフォンを手に取る
指で画面に“R”の文字を描くと、画面上に黒、青、白、赤、紫、灰、黄、7つのボタンが浮かび上がる

「他の誰にもそれは否定されないし、否定する事も出来ない
 逆に言えば、それを誰かに証明する事は決して簡単ではない
 皮肉な事に何時の時代も、“正義”や“悪”を証明する術はただ“戦う”のみ」
「は? 何が言いてぇんだ?」

“Rainbow”が黄色いボタンをタッチすると、《ZODIAC》という音声が流れ、
その後、彼はスマートフォンを頭上高くへひょい、と投げた

「武器を構えろ小僧。お前の“正義”……俺が見定めてやる」

くるくると回りながら、スマートフォンはバックルの前を通過する
その瞬間、バックル中央の水晶体が黄金色の光を放ち、
胸の金色の枝もまた強く輝いて、液状となり彼の身体を包み込んだ
黄金の液体は、爪や翼、鋭利な装飾が施された彼の鎧となって、神々しく煌めく

「…Reign Over」
「ふえっ!?」
「す、姿が変わった!?」
「そこのお嬢ちゃんを避難させておけ、怪我をさせると大変だ
 俺も傷つけたくはないし、お前も守りながらの戦いでは本気を出せんだろ?」
「ッ………魅衣、歩けるか?」
「え、で、でも……」
「大丈夫だ、兄ちゃんは負けねぇから」

まだ、何か言いたげだったが、魅衣は黙って頷き、速やかにその場を離れて物陰に隠れた
賢志は右手でコンクリートを撫でると、赤い雷光が走り、撫でた部分が金属バットに変化し、彼はそれを構えた

「ほう……なるほど、その右腕が「賢者の石」か」
「あぁ、俺はその賢者の何とかって奴と、契約だかってのを交わした!
 残念だけど、テメェ等が欲しがってるもんは俺の身体ン中だ!!」

先に動いたのは賢志だった
駆け出して一気に距離を詰め、金属バットを勢い良く振り下ろした
だが、それは黄金の爪によって止められた

「はっ!?」
「活きが良いだけでは勝てんぞ」

ぐにゃりといとも容易く金属バットを捻じ曲げ、“Rainbow”は拳を構えた
金色の雷光が、バチバチと激しい音を響かせる

「『真・黄昏地獄拳』」
「――――――――――ちぃっ!!」

賢志は右手を突き出して応戦するが、拳に弾かれてそのまま殴り飛ばされた
同時に、彼の周りに鉄の破片のようなものがぱらぱらと飛散する

「あの一瞬で空気中の物質を鉄塊に変換し、ダメージを軽減したか…面白い
 もっと見せてみろ。「賢者の石」の……いや、お前の力を」
「言われなくても……見せてやらぁ!!!」

再び武器を生成する賢志
今度はバットではなく、両刃の剣

「剣なら勝てるというのか? 幼い発想だな」
「うるせえ!」

かぁん!!と甲高い金属音が響く
一度、二度、何度も何度も、剣と爪がぶつかり合った

「くっ、くそっ!」
「ふむ……何人もの黒服を返り討ちにしていると聞いていたが……まぐれが続いただけか」
「な、何だとぉ!?」

剣を横薙ぎに振るう
しかしその一閃は、彼がふわりと“飛んだ”事によって躱された

「飛んだ!?」
「この程度で驚くようじゃまだまだだ」

がちゃん、がちゃん、と音が鳴り、鎧の背にあった4枚の翼が外れて浮遊する
彼の周囲に侍るようにして浮かぶそれは、切っ先を賢志に向けた

「『フィクス・カエレスティス』」

切っ先に光が灯り、光条となって打ち出される
ある程度の事象を予測して飛び退いたが、光を避けきれる訳も無く、賢志の右足に光が掠めた

「っつぅ…!?」

すぐに右手で傷口に触れると、次第に血が止まり傷が閉じて、
何事もなかったかのように元通りになった

「「賢者の石」の治療能力か、なら次は一瞬で楽にしてやろう……『ギャラクシア』」

4枚の翼が連なり1本の剣のようになり、
“Rainbow”は降下しながら、剣を大きく振るった
またも響く金属音
火花を散らしながら、賢志は得物によってそれを抑えていた

「ぐ、ぐぐ………!」
「まだ抗う元気があったか。その点は褒めてやろう」
「余計な…お世話だ!!」

刃を滑らせて前転し、懐に潜り込んだところで剣を突き立てる
それも、連なった翼を地面に突き立てて棒跳びの要領で飛び上がったことで避けられた
決定打が当たらない
賢志の心に焦りが生まれる

「くそっ、くそっ………今度こそ一発……!!」
「隙だらけだ」

はっとして顔を上げた賢志が見たものは、
咲いた花のようにくるくると回る4枚の翼

「光に飲まれろ、『ウィア・ラクテア』」

花が蕾になると、筒状を形成している翼の中から光条が発せられる
咄嗟にコンクリートに右手で触れ、巨大な壁を作り出したが、
長くは持たず、木っ端微塵に粉砕されてしまった

「ぐあぁっ!?」

爆風が巻き起こり、賢志の身体を吹き飛ばしてアスファルトに叩きつける
それでも何とか起き上がって、剣を構えて攻撃に移ろうとしたが

「『エクリプシス』」

突如、周囲に金色の雷光が瞬き、思わず目を覆った
目を開けると、自分の周りの足場にぽっかりと、大きな穴が開いていた
もう一度、“Rainbow”に目を向ける
沈みゆく黄昏時の太陽の如き鎧に身を包んだそれは、神か悪魔か、今の賢志には何と取れたのだろうか
ただ、はっきりと分かったのは、

「どうした? もう終わりだとは言わないだろうな?」

――――レベルが違い過ぎる
初めて、賢志の心に敗北の念が生まれた
だが彼は敗走する訳には行かないのだ
何故なら彼の後ろには、守るべき大切な人がいるのだから

「……うおおおおおおおおおおおおおおお!!」

無謀だというのは分かっている
たとえそうだとしても、彼は少しの可能性に賭けたかった
“勝てる”可能性に

「ウヒヒヒヒ…そうこなくては面白みが無いというもの!」

“Rainbow”の両掌に金色の光が灯り、
今向かってくる賢志の剣に立ち向かわんと、2つの拳を構えた―――――

「いい加減にしろ、この馬鹿者!!」

がんっ!!という打撃音と共に、倒れ伏したのは黄金の鎧だった
突然の出来事に、慌ててブレーキをかける賢志
“Rainbow”を背後から殴ったらしい人物は、黒いローブを身に纏った、
浅黒い肌に黒い長髪、そして赤い瞳が特徴的な妙齢の女性だった
頭の中がごちゃごちゃになってきた末に、ようやく賢志の口から零れた言葉は、

「……何処から出て来やがったんだ……?」

むくり、“Rainbow”が身を起こすと、スマートフォンを手に取ってバックルを翳す
鎧はドロドロに融け始め、元の金の枝のペンダントに戻った
はぁ、と本日二度目の溜息を吐いて、

「……何しに来た」
「もう任務は終わっているだろうが! 早く報告に戻れ!」
「良いじゃないか、こっちはロクな契約者と出くわさないから遊びたいんだよ」
「保護対象を貴様の遊びに利用するな!」
「あぁ、分かった、分かったよ……ちっ、人間になってから余計に口煩くなってねぇか?」

ぶつぶつと文句を言った後、ちら、と彼は賢志の方を見た
何時の間にやら物陰で隠れていた魅衣が駆け寄っていて、兄に何かを教えているようだった

「大丈夫か?と言っても、やったのは俺なんだがな
 紛らわしい真似をして済まなかった、俺は別にお前の妹を攫いに来たつもりはないし、「賢者の石」を奪いに来た訳でも無い
 もっと言えば、お前達の両親を殺した連中とも無関係だ」
「……そうらしいな……俺も悪かった。魅衣を、妹を助けてくれて…ありがとな」
「こちらとしては、「賢者の石」を悪用されなければ良いと考えていたが…お前が契約者なら大丈夫だろうな」

くるりと背を向けると、少年は女性を侍らせて歩き出した

「あの黒服達は今後もお前達を狙ってくるだろう
 原因は分からんが、こちらでも調査を行う手筈になっている
 極力、お前達をサポートして貰えるよう、上に頼んでおくよ」
「上、って……あんた、一体何者なんだ?」
「「組織」R-No.所属契約者集団『Rangers』の一人、“Rainbow”…………黄昏 裂邪だ」
「格好つけてないでさっさと来い」

裂邪と名乗った少年は女性に強引に腕を引かれ、
“影”の中へと沈むように姿を消した

「……黄昏、裂邪………か……」
「お兄、ちゃん?」
「ん……いや、何でもない。帰ろうか」

ぽふ、と魅衣の頭を撫で、手を繋いで帰路を辿る
この日賢志が学んだのは、「組織」というものの存在と、己の力の未熟さだった



   ...了

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