「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

死神少女は修行中-番外.ファーストキスは都市伝説の味

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2012年5月23日の中央高校。
 体育館の裏では男子生徒が女子生徒を手紙で呼びだすという、有り体な告白の風景が繰り広げられていた。
「・・・好きな人がいるんです。ごめんなさい」
 少女の言葉に男子はがっくりとうなだれかけたが、振られたとはいえ好きな女子の前でみっともない所は見せたくない。
「そっか・・・残念だよ」
 誰が好きなの?と彼はなるべく嫉妬を見せないように聞き出す。
「隣のクラスの新田君」
「・・・・・・」


 新田だとおぉぉぉ!!
 中学の頃から、俺はアイツが嫌いだった。ああ嫌いだったさ!
 確かにアイツは勉強もスポーツも出来るし顔もいいよ。言っとくけど別に嫉妬じゃねえぞ。リア充度は断然俺のが上なんだからな。
 ただ俺がせっかくみんなと、もちろん女子も交えて遊びに行こうぜと言っても
「別にいいです」
 とまあ、お高く止まりやがってそれがムカつくんだよ。試験前にノート貸してくれって言っても冷てー返事しか返ってこねーし。
 中学じゃ、男子どころか女子も寄りつかねーで、イケメンの無駄遣いもいいとこだったヤローだぜ?今だって愛想ねーのは変わってねーし。
「よぉし・・・」
 この時、俺は決意した。
 今こそ俺の都市伝説の能力を解放する時だとな・・・
「はーっはっはっは!!」
「あ、あの・・・」
 気づけば、告白の途中だった愛しの彼女はドン引きしていた。・・・泣かねぇよ

 放課後を待ってアイツの教室へ行く。あ、居やがった。
「お。なー新田!」
「・・・何ですか」
 ノートなら貸しませんよとにべもなく言われ、心の中の殺意メーターがちっとばかり上がる。
「そんなケチくせーこと頼まねーよ」
「手短に済ませて下さい」
 くくうぅ・・・相も変わらず可愛げのねえヤツだよこいつは!まあコイツが愛想良くても、俺は可愛いとは思わねーけどな!

「ちょっと俺とキスしてくんねー?」

 あ、待て待て、誤解すんじゃねーぞ!?
 俺の契約都市伝説は「キスすると顔が似てくる」
 元は「テレゴニー」とかいうらしくて、他にも色々使い道があるらしいが、よくわからなかったので、至ってシンプルに使っている。
 ただし「キスすると顔が似てくる」という使い方に特化しているので、キスするだけで相手そっくりの顔に変化することが出来るのだ!
 すげーだろ!俺を誉めろ讃えろひざまづけ!
 幸い身長や体格は俺と新田はそう変わらない。制服だから顔さえ変われば見分けはつかなくなる。
 新田そっくりに化けて彼女を改めてデートに誘ってもいいし、思いっきし冷たくしてヤツの株を下げてから改めて俺がアプローチしてもいい。俺って頭いーな、おい!
「・・・僕もそういった相手は、選びたいのですが」
 気がつくと、新田のヤローはじりじりと後ずさりしている。あれ、なんかコイツ顔が赤い。

 ・・・・・・あああああ!!なんか俺ものすごい誤解されてる!?

「いや違うんだよ、待ってくれよ、話聞いてくれ」
「知りませんでしたよ・・・てっきり女性が好きなのだと」
 言いながら、ふいっと顔をそらしやがった。
「いやいやちげーって!ちょっと頼まれて欲しいだけなんだって!」
 俺だって好きでヤローとキスする訳じゃねーよ!俺が欲しいのはてめーの唇じゃなくて、そのいけすかねー顔なんだよ!
「普通『ほんのちょっと頼まれるだけ』でそんな事言いませんよ!」
 ヤバい俺完全にホモだと思われてる。
 釈明したくても俺のナイスアイデアが今こいつにバレたら水の泡になるに決まってる。
 とりあえず俺は新田と距離を詰めるべく、歩み寄ろうとした。
「いちいち顔赤らめてんじゃねーよ!まぎらわしーだろ!」
なんとか誤解を解きつつコイツとキスする方法はねーもんか。
 新田は日頃の澄ました顔はどこへやら、がたがたとやかましく机やら椅子を押しのけて逃げ出した。
「待てってばおい!てめーにそんな感情持ってねえから安心しろよっ」
「なおの事願い下げですね!」
 あーもう何で俺ら狭い教室の中で机や椅子蹴倒して追っかけっこなんかしてんだ馬鹿らしいっ。
 そのうち廊下から女子達の声が聞こえてくる。
 この声は・・・確か。
「ごめんね、待ってて貰って」
「う・・・ううん、ぼ・・・私も今日は裂兄ぃと別に帰るし」
「仲良いもんねー、別に帰るの珍しくない?」
 神崎漢と、愛しのあの子!ヤバい!早く新田に化けてあの子を捕まえないと帰っちまう。
「か、神崎さん」
 一瞬だけ、新田の逃げるスピードが緩む。
「新田、スキありぃっ!!」
 俺は机に飛び乗ると、更にそこからジャンプして新田に空中から跳びかかるっ!!
「うわっ!」
「新田、覚悟おおお!!!」

 がたたーんという派手な音とともに床にひっくり返った新田を押さえつけて素早く唇を重ねる。
 ・・・これがあの子ならいーけど、新田のヤローじゃふにふにして気持ち悪いとしか言いようがないぜ正直・・・
「やだっ、今の何の音?」
 声とともにがらりと開いた扉の方を振り返ると・・・
「にっ・・・新田・・・さん」
「いやああー!!」
 硬直した神崎と・・・あの子。
「にっ・・・新田さんが・・・男子と」
 そこで俺は、今自分がキスの効果で新田の顔であること、さらに床に仰向けにひっくりかえったホンモノの新田の上にのし掛かるという
 ひじょーにいかがわしい体勢であることに思い至った。
 廊下からひっくり返っているホンモノ新田の顔が見えているかはよくわからん。
「いや待ってこれ誤解!誤解!」
「新田さんが、男性が好きな人だったなんて・・・」
 それだけ言い残して、俺のあの子はあっという間にきびすを返して去っていった。
 ぼーぜんと立ち尽くしていた神崎もやがて我に返ったようで
「あの・・・お邪魔してす・・・済みません」
 それだけ言うと、扉を静かに閉めた。ぱたぱたと足音が去ってゆく中で新田が
「か、神崎さん・・・」
と、ぼーぜんと呟くのが聞こえた。

「どっ・・・どうしてくれるんですかっ!!」
 今まで見たことない新田、本日2回目。血相変えて俺の胸倉を揺さぶってる。
 俺の顔が新田であることなんか、既にどーでもよくなっているらしい。
「誤解された・・・」
 今すぐ釈明しに行けとは詰め寄られたが、俺にとってはあの子に誤解された方がより重大だ。
 俺自身は振られ、切り札の新田はホモ扱い。
 ・・・待てよ。
 新田がホモなら、あの子も俺になびいてくれるかも!!
 そうと決まれば早速アタックだ!
「俺ちょっとヤボ用!お前神崎の誤解は自力で解けよ!じゃーな!」
 無責任だとわめく新田の声を背後に、俺はウキウキと教室を飛び出し・・・
 うっかり能力を解くのを忘れて新田の顔のまま彼女をデートに誘ってひっぱたかれた。
 畜生!次回こそ!


「・・・てことがあってね、裂兄ぃ」
「なんだよ、あいつも済ました顔してやることやってんじゃねーか。でもあいつ、そーゆー趣味があったのか」
「じゃ、にぃにぃが男の娘だってバレたら、かえってキケンなのね!大丈夫!にぃにぃは私が守るから!」
 という会話が、黄昏家で交わされたとか。



END

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