「これでいーのー!?」
7月7日夕刻。学校町の一角にある新田家は、いつにも増して騒がしかった。
「願い事というのは、日本語で書かねばならんのか?」
ノイとムーンストラック。七夕初心者の親子は片やわくわくとちいさな笹を握りしめ
もうひとりはテーブルに置かれた短冊を前に首を捻っている。
「ノイちゃん、お願い事何書いたの?」
「飾るまでナイショなのー!」
「ボクは『とりあえず金くれ』と書いたのですよー」
いつの間にやら幻までが短冊を手にノイや柳と談笑している。貴也はその間、台所でリジーと夕飯の支度。
「あの娘は台所に立たんのか?」
「俺が三食用意しないと、今頃あの人飢え死にです」
7月7日夕刻。学校町の一角にある新田家は、いつにも増して騒がしかった。
「願い事というのは、日本語で書かねばならんのか?」
ノイとムーンストラック。七夕初心者の親子は片やわくわくとちいさな笹を握りしめ
もうひとりはテーブルに置かれた短冊を前に首を捻っている。
「ノイちゃん、お願い事何書いたの?」
「飾るまでナイショなのー!」
「ボクは『とりあえず金くれ』と書いたのですよー」
いつの間にやら幻までが短冊を手にノイや柳と談笑している。貴也はその間、台所でリジーと夕飯の支度。
「あの娘は台所に立たんのか?」
「俺が三食用意しないと、今頃あの人飢え死にです」
「でもさー、織姫と彦星って、ケッコンしたのに遊びまくってて引きはなされちゃったんでしょ?」
いかにも疑問、といった表情のノイ。
「しんこんせーかつから夫がにーとなんて、織姫はなんも思わなかったのかなあ」
少女は夢多くあるべき、と考えるロマンチストが聞いたなら
小一時間ほど説教かましたくなるような夢もへったくれもない話題は
生活力において彦星と大差ない柳の溜息とともに井戸端会議的に膨らんでいく。
「織姫も彦星も、結婚してから遊びを覚えて駄目になる典型だったんだねえ」
「やっぱり若いうちからある程度遊んでおかなきゃ駄目なのですよー。遊び大事なのですよ」
「でもさー、織姫と彦星もこんじょーないよね。あたしが柳とケッコンした後、リコンしろって言われたら、そのままカケオチしちゃう!」
過干渉の父親と、生活力のない恋人。
他人事ではないノイだけは鼻息荒く理想論をぶっちゃける。
「二人が引き離された最大の問題は、案外親の過干渉かもね。ところで家事はどう分担してたのかな」
「それはボクも気になるのですよ。織姫は働く主婦なのですから、彦星も風呂掃除とゴミ出しと食事の後かたづけ位はすべきなのですよ」
「その中のどれか一つでも、自分でやってから言ってよね」
冷たいサイダーの載ったトレイを手に貴也が現れると薮蛇を悟った幻はささっと席を立つ。
「新宮さん?」
廊下で出くわした人影を見て、幻はによっと笑いを浮かべた。
いかにも疑問、といった表情のノイ。
「しんこんせーかつから夫がにーとなんて、織姫はなんも思わなかったのかなあ」
少女は夢多くあるべき、と考えるロマンチストが聞いたなら
小一時間ほど説教かましたくなるような夢もへったくれもない話題は
生活力において彦星と大差ない柳の溜息とともに井戸端会議的に膨らんでいく。
「織姫も彦星も、結婚してから遊びを覚えて駄目になる典型だったんだねえ」
「やっぱり若いうちからある程度遊んでおかなきゃ駄目なのですよー。遊び大事なのですよ」
「でもさー、織姫と彦星もこんじょーないよね。あたしが柳とケッコンした後、リコンしろって言われたら、そのままカケオチしちゃう!」
過干渉の父親と、生活力のない恋人。
他人事ではないノイだけは鼻息荒く理想論をぶっちゃける。
「二人が引き離された最大の問題は、案外親の過干渉かもね。ところで家事はどう分担してたのかな」
「それはボクも気になるのですよ。織姫は働く主婦なのですから、彦星も風呂掃除とゴミ出しと食事の後かたづけ位はすべきなのですよ」
「その中のどれか一つでも、自分でやってから言ってよね」
冷たいサイダーの載ったトレイを手に貴也が現れると薮蛇を悟った幻はささっと席を立つ。
「新宮さん?」
廊下で出くわした人影を見て、幻はによっと笑いを浮かべた。
嫌な人物に会った、と極は微妙に眉をしかめた。
彼の手にはやはり短冊があり、出くわしたピンクの髪の少女がその内容を知りたがることは明白だ。
「てめーでも、七夕にお願いなんかするのですねー?」
口元ににやにや笑いを浮かべて、黒い涼しげなシフォンのドレスに併せた
ヴェールを飾る紅い薔薇を揺らせてすすっと歩み寄る幻を、しっしっと追い払おうとする。
「趣味が悪いですよ」
後で笹を飾れば嫌でも見られるというのに、それでは気の済まない幻は、にじりにじりと極に詰め寄っていく。
「止めて下さい」
「てめーはバカですか?」
口元をいっそう吊り上げて幻が取り出したのは、掌サイズのコンパクトミラー。
鏡の都市伝説である幻が、その力を使い、何を見るのか。
悟った極は顔色を変えて幻から鏡を取り上げにかかるものの・・・
「乙女に気安くさわんじゃねーですよ!」
とても乙女とは呼びがたい蹴りに胸元を捉えられ、あらぬ方向に極がひっくり返る音が廊下に響いた。
「・・・げほっ、げほ」
「何?今の音」
「イタル様!何事ですか!?」
大音響に引き寄せられて廊下に集まった一同が見たものは、鏡を取り合い極と幻が取っ組み合う姿だった。
「柳さん!嶋さん!お願いですから彼女から鏡を取り上げてくださ・・・」
みなまで極が言う前に、今度は顎に幻の蹴りが入る。
「新宮さん!何してるの!?」
「極くんも、ちょっと落ち着いて!?」
「この小娘!イタル様に何をする!!」
貴也とリジーが幻を、柳が極をそれぞれ引き剥がした。
「あれれ?」
ふたりから少し離れたところに、薄い青色の紙が落ちているのを見つけたのはノイ。
「短冊じゃん」
ぺらっと紙をひっくり返すと
「あ・・・!!」
ノイの表情がいっぱいの笑顔に変わる。
彼の手にはやはり短冊があり、出くわしたピンクの髪の少女がその内容を知りたがることは明白だ。
「てめーでも、七夕にお願いなんかするのですねー?」
口元ににやにや笑いを浮かべて、黒い涼しげなシフォンのドレスに併せた
ヴェールを飾る紅い薔薇を揺らせてすすっと歩み寄る幻を、しっしっと追い払おうとする。
「趣味が悪いですよ」
後で笹を飾れば嫌でも見られるというのに、それでは気の済まない幻は、にじりにじりと極に詰め寄っていく。
「止めて下さい」
「てめーはバカですか?」
口元をいっそう吊り上げて幻が取り出したのは、掌サイズのコンパクトミラー。
鏡の都市伝説である幻が、その力を使い、何を見るのか。
悟った極は顔色を変えて幻から鏡を取り上げにかかるものの・・・
「乙女に気安くさわんじゃねーですよ!」
とても乙女とは呼びがたい蹴りに胸元を捉えられ、あらぬ方向に極がひっくり返る音が廊下に響いた。
「・・・げほっ、げほ」
「何?今の音」
「イタル様!何事ですか!?」
大音響に引き寄せられて廊下に集まった一同が見たものは、鏡を取り合い極と幻が取っ組み合う姿だった。
「柳さん!嶋さん!お願いですから彼女から鏡を取り上げてくださ・・・」
みなまで極が言う前に、今度は顎に幻の蹴りが入る。
「新宮さん!何してるの!?」
「極くんも、ちょっと落ち着いて!?」
「この小娘!イタル様に何をする!!」
貴也とリジーが幻を、柳が極をそれぞれ引き剥がした。
「あれれ?」
ふたりから少し離れたところに、薄い青色の紙が落ちているのを見つけたのはノイ。
「短冊じゃん」
ぺらっと紙をひっくり返すと
「あ・・・!!」
ノイの表情がいっぱいの笑顔に変わる。
『“家族達”ともっと親しくなれますように』
「家族たちって、あたしたちの事、だよね!」
「極くん・・・」
柳がふふっと笑い、ムーンストラックが極の肩にぽんと手を置いた。
「・・・そのような事、わざわざ短冊に書かなくとも、言ってくれれば良いのだ」
「・・・はい」
わーいと歓声を上げたノイが極に思いっきり抱きつく。
「・・・・・・」
極はそっぽを向いたものの、振り払おうという気までは、何故か起きなかった。
「極くん・・・」
柳がふふっと笑い、ムーンストラックが極の肩にぽんと手を置いた。
「・・・そのような事、わざわざ短冊に書かなくとも、言ってくれれば良いのだ」
「・・・はい」
わーいと歓声を上げたノイが極に思いっきり抱きつく。
「・・・・・・」
極はそっぽを向いたものの、振り払おうという気までは、何故か起きなかった。
夜になってから、極のもう一枚の短冊『神崎さんとデート出来ますように』がノイに見つかり、
またしても極が一同の好奇心の犠牲になったことは、おまけ程度に。
またしても極が一同の好奇心の犠牲になったことは、おまけ程度に。
「嶋くん、てめーの『捜し物が見つかりますように』って何なのですか?」
「・・・別に」
「・・・別に」
その同時刻、学校町内ο(オウ)No.本拠地では―
「いい天気だねー。星が見えるよー」
「ひ、緋色ちゃん、いいのかな・・・今日の天気予報、雨だよ・・・」
「いーんじゃないの?一年に一度のことだもん」
「ほら緋色、きりきり雲を追っ払いなさい、折角の七夕なんだから快晴にするのよ?」
「はいはーい」
「皆さん、五色そうめん上がりましたよ。こういうのはみんな僕に押しつけるんですから」
至って平和な七夕の夜が更けつつあった。
「いい天気だねー。星が見えるよー」
「ひ、緋色ちゃん、いいのかな・・・今日の天気予報、雨だよ・・・」
「いーんじゃないの?一年に一度のことだもん」
「ほら緋色、きりきり雲を追っ払いなさい、折角の七夕なんだから快晴にするのよ?」
「はいはーい」
「皆さん、五色そうめん上がりましたよ。こういうのはみんな僕に押しつけるんですから」
至って平和な七夕の夜が更けつつあった。
END