「なー、桜ー、桜ー」
「何かな・・・響」
人としての記憶を失った桜は、兄である響の事を教えられるや
「お兄ちゃん」
と呼ぶべきと考えたが、元々双子であったこともあり、互いに名前を呼び捨てにしていたかつての慣習に従う事にした。
「俺もそのスーツ、作ってもらっていーか?」
タイトスカートの多い女性黒服としては異色な、たっぷりした円形に広がる黒いスカートと、襟元を飾るジャボと呼ばれる、響いわく
「ゴシックに詳しくない奴曰く、中世風のヒラヒラのネクタイ」
という少し時代がかったスタイルは、桜だけでなく響も気に入っていた。
「俺もそれ欲しいー。次の任務はそれでホントの双子スタイルしよーぜー!」
クッションを抱えて足をばたばたさせる、自分と体格の変わらない小柄な響は
桜には兄と言うより、ボーイッシュな姉のようで、苦笑いをしながらもついつい頷いてしまった。
「うん。じゃあ次の任務の時までには作ってもらうよ」
「やったー!・・・そうだ、今日の夕飯、ナスの生姜焼き作ったぜ!」
「作ったのはオレだろう!お前はナスと手を切っただけだ」
とは、「小さいおっさん」
「うるせぇよ!」
「あはは、おっさんはなんでも出来るんだねー。じゃあたし、ご飯の前に着替えてくるね」
「何かな・・・響」
人としての記憶を失った桜は、兄である響の事を教えられるや
「お兄ちゃん」
と呼ぶべきと考えたが、元々双子であったこともあり、互いに名前を呼び捨てにしていたかつての慣習に従う事にした。
「俺もそのスーツ、作ってもらっていーか?」
タイトスカートの多い女性黒服としては異色な、たっぷりした円形に広がる黒いスカートと、襟元を飾るジャボと呼ばれる、響いわく
「ゴシックに詳しくない奴曰く、中世風のヒラヒラのネクタイ」
という少し時代がかったスタイルは、桜だけでなく響も気に入っていた。
「俺もそれ欲しいー。次の任務はそれでホントの双子スタイルしよーぜー!」
クッションを抱えて足をばたばたさせる、自分と体格の変わらない小柄な響は
桜には兄と言うより、ボーイッシュな姉のようで、苦笑いをしながらもついつい頷いてしまった。
「うん。じゃあ次の任務の時までには作ってもらうよ」
「やったー!・・・そうだ、今日の夕飯、ナスの生姜焼き作ったぜ!」
「作ったのはオレだろう!お前はナスと手を切っただけだ」
とは、「小さいおっさん」
「うるせぇよ!」
「あはは、おっさんはなんでも出来るんだねー。じゃあたし、ご飯の前に着替えてくるね」
「そーいや、次の任務って何」
「うん、なんかね・・・車がらみの野良都市伝説退治なんだって」
桜が首を傾げると栗色のおかっぱ頭がさらりと揺れ、
呑気そうにナスをぱくついていた響の瞳に、にわかに剣呑な光が宿った。
「白いソアラ」という自動車の都市伝説を両親の仇として追っている彼らの事情を汲み、
「組織」ο(オウ)-Noの長である桐生院蘇芳は、可能な限り「関連性が高いと思われる」都市伝説がらみの事件の際には彼等に任務を振り向けてくれた。
「えっと・・・対象都市伝説は、恐らく『車の時速1228kmが現在最速らしい。時速1600kmを超える車を製作中とのこと。ドライバーはなぜか空軍のパイロットらしい』だって」
「・・・わかった。今日は早く寝とこうぜ。おっさんもな」
「オレもか!?」
「たりめーだ!その為にてめーと契約してんだろ!」
やり取りだけ聞けば単なる男同士の会話なのだが響の姿はと言えば、
生成色の地にピンクの水玉模様、裾にはトリコロールのリボンがプリントされたサマードレスというなかなか可愛らしい服装で、
同じデザインで黒一色に白いフリルがあしらわれたワンピースをを着た桜と、さながら雰囲気だけが違う一対の人形のように似通っていた。
「・・・そういえばさ、響は男の子なのに、なんでいつも女の子の服・・・あたしと同じの着たがるの?」
「カワイイのが好きだからだ!男がスカート穿いて、ヘアメイクして、どうですかー!」
「さ、サイコーでーす!」
答えたのは桜で、小さいおっさんはやや引き気味に姉妹に見える兄妹を見守っていた。
「うん、なんかね・・・車がらみの野良都市伝説退治なんだって」
桜が首を傾げると栗色のおかっぱ頭がさらりと揺れ、
呑気そうにナスをぱくついていた響の瞳に、にわかに剣呑な光が宿った。
「白いソアラ」という自動車の都市伝説を両親の仇として追っている彼らの事情を汲み、
「組織」ο(オウ)-Noの長である桐生院蘇芳は、可能な限り「関連性が高いと思われる」都市伝説がらみの事件の際には彼等に任務を振り向けてくれた。
「えっと・・・対象都市伝説は、恐らく『車の時速1228kmが現在最速らしい。時速1600kmを超える車を製作中とのこと。ドライバーはなぜか空軍のパイロットらしい』だって」
「・・・わかった。今日は早く寝とこうぜ。おっさんもな」
「オレもか!?」
「たりめーだ!その為にてめーと契約してんだろ!」
やり取りだけ聞けば単なる男同士の会話なのだが響の姿はと言えば、
生成色の地にピンクの水玉模様、裾にはトリコロールのリボンがプリントされたサマードレスというなかなか可愛らしい服装で、
同じデザインで黒一色に白いフリルがあしらわれたワンピースをを着た桜と、さながら雰囲気だけが違う一対の人形のように似通っていた。
「・・・そういえばさ、響は男の子なのに、なんでいつも女の子の服・・・あたしと同じの着たがるの?」
「カワイイのが好きだからだ!男がスカート穿いて、ヘアメイクして、どうですかー!」
「さ、サイコーでーす!」
答えたのは桜で、小さいおっさんはやや引き気味に姉妹に見える兄妹を見守っていた。
(・・・お前は覚えてねーけどよ、幼稚園に入るとき、お前『ひびきちゃんとおなじじゃなきゃやだー!』って泣いたんだぜ)
桜が泣くから、同じにするために桜の洗い替えだった幼稚園のブラウスとスカートを着て鏡の前に立った。
スカートを摘まんでにっこりすると、余所のどんな子よりも自分と桜が可愛かった。
それが響の、今のカワイイ物好きの原点であるとは、原因を作った本人は記憶を失う前は遂に気づかず、今も知る由もない。
スカートを摘まんでにっこりすると、余所のどんな子よりも自分と桜が可愛かった。
それが響の、今のカワイイ物好きの原点であるとは、原因を作った本人は記憶を失う前は遂に気づかず、今も知る由もない。
(桜は可愛い。俺もカワイイ。二人で可愛くすれば、この世に敵なんざない!)
彼の辞書に「引き算の美学」という単語は、おそらくこの世の終わりまで、ない。
翌朝。学校町某所。
「ねみぃ・・・」
「響、しっかりして」
比較的広い車道の脇に座り込んで「それ」が現れるのを待つ。「組織」が封鎖したのか、一般人の自動車が現れる様子はない。
響が欲しがっていた「桜の黒服と同じ衣装」は当然ながら一晩では間に合わず、
響は先日修羅場を共にした、さらりとした生地の白地に廃墟の教会がぐるりとプリントされたワンピース。
桜は全く同じデザインで、黒地に青い柄のワンピースと文字通りの双子併せだった。
「まだ来ねぇの?」
「情報だと、この時間なんだけど・・・」
手元の端末を繰った桜が通りの先を見渡す。人間だった頃に病んでいた心臓も、既に人ではない彼女には過去の事となっていた。
「ねみぃ・・・」
「響、しっかりして」
比較的広い車道の脇に座り込んで「それ」が現れるのを待つ。「組織」が封鎖したのか、一般人の自動車が現れる様子はない。
響が欲しがっていた「桜の黒服と同じ衣装」は当然ながら一晩では間に合わず、
響は先日修羅場を共にした、さらりとした生地の白地に廃墟の教会がぐるりとプリントされたワンピース。
桜は全く同じデザインで、黒地に青い柄のワンピースと文字通りの双子併せだった。
「まだ来ねぇの?」
「情報だと、この時間なんだけど・・・」
手元の端末を繰った桜が通りの先を見渡す。人間だった頃に病んでいた心臓も、既に人ではない彼女には過去の事となっていた。
ぎゃりっ、という音を聞いたような気がする。
「何だ?今の音」
おっさんが響の肩の上で跳ねながら一生懸命遠くを見ようとした。
「まるで、車が急にターンするような・・・」
次の瞬間。
「響!」
桜に手を引っ張られてその場から飛び退いた、その位置を。
「きゃ!」
「だぁっ!!」
「うひぃっ!!!」
まず衝撃波が駆け抜け、3人がものの見事に吹っ飛ばされた、次の瞬間。
周囲の家屋のガラスが割れる音がかき消されるほどのどおぉぉぉん、という騒音が轟いた。
―物体が超音速で移動するとき、その周囲には衝撃波が発生し、それは急速に減衰した音波―ソニックブームとなる。
間違いなく、今何か、途轍もない速度で通り過ぎたモノがあったのだ。
「いたた・・・」
「桜!大丈夫かっ」
「オレのコトも心配せんかい!」
3人がようやく身を起こした時には、当然ながら何も見えず―
「間違いない、『車の時速1228kmが現在最速らしい。時速1600kmを(以下略)』明日こそ、リベンジねっ!」
「明日もかよ!」
「とーぜん!響は?」
「やるに決まってんだろ!?」
「何だ?今の音」
おっさんが響の肩の上で跳ねながら一生懸命遠くを見ようとした。
「まるで、車が急にターンするような・・・」
次の瞬間。
「響!」
桜に手を引っ張られてその場から飛び退いた、その位置を。
「きゃ!」
「だぁっ!!」
「うひぃっ!!!」
まず衝撃波が駆け抜け、3人がものの見事に吹っ飛ばされた、次の瞬間。
周囲の家屋のガラスが割れる音がかき消されるほどのどおぉぉぉん、という騒音が轟いた。
―物体が超音速で移動するとき、その周囲には衝撃波が発生し、それは急速に減衰した音波―ソニックブームとなる。
間違いなく、今何か、途轍もない速度で通り過ぎたモノがあったのだ。
「いたた・・・」
「桜!大丈夫かっ」
「オレのコトも心配せんかい!」
3人がようやく身を起こした時には、当然ながら何も見えず―
「間違いない、『車の時速1228kmが現在最速らしい。時速1600kmを(以下略)』明日こそ、リベンジねっ!」
「明日もかよ!」
「とーぜん!響は?」
「やるに決まってんだろ!?」