勇弥「…なぁ、急に襲ってこねぇよな?」
正義「大丈夫だよ。しばらくは戦えないはず。」
楓「そうは言うが…。」
奈海「わ、私は正義くんを信じるよ。信じる…。」
【タナトス】を倒し、俺達は一旦、友の家で【タナトス】を休ませていた。
不安だったが、少年の性格を考えると、止める事は不可能だった。
不安だったが、少年の性格を考えると、止める事は不可能だった。
勇弥「しかしまぁ、また暴れだしたら、正義と大王さんに任せりゃいいか。」
奈海「それにしても、神様を倒すなんて、私達も強くなったわね。」
正義「それは違うよ。」
楓「どういう事だ?現に倒したじゃないか。」
奈海「それにしても、神様を倒すなんて、私達も強くなったわね。」
正義「それは違うよ。」
楓「どういう事だ?現に倒したじゃないか。」
この様子だと、少年も気付いていたのだろう。むしろ少年こそ、それに気付きやすかったか。
正義「タナトスには何か迷いがあったというか、自分の意志で戦っていないというか…。
そこを突いたから、なんとか勝てたんだよ。」
大王「確かに、途中から心理戦になっていたな。」
正義「もし、本気で戦っていたなら…きっと負けていたと思う。」
コイン「ふえぇ、その迷いってやつに感謝しないとね。」
そこを突いたから、なんとか勝てたんだよ。」
大王「確かに、途中から心理戦になっていたな。」
正義「もし、本気で戦っていたなら…きっと負けていたと思う。」
コイン「ふえぇ、その迷いってやつに感謝しないとね。」
楓「あと、黄昏のあの技にもな。あれが無ければ心星は…。」
奈海「そうだったわね。本当にありがとう、正義くん。」
奈海「そうだったわね。本当にありがとう、正義くん。」
正義「え?何が?」
一瞬、全員固まった。まさか少年が無意識の内にあれを放ったとは思わなかったのだろう。
あれは…少年が少女を助けるために放ったあの技は、確かに俺も使える技だ。
相手の精神に恐怖を見せつけて怖気つかせる、というちょっとしたテクニックだ。
或いは俺でなくとも、誰でもできる技なのだろう。
相手の精神に恐怖を見せつけて怖気つかせる、というちょっとしたテクニックだ。
或いは俺でなくとも、誰でもできる技なのだろう。
だが、この技には重大な欠点がある。
この技は相手の度胸などの要素に依存するため、相手が自分の事を怖くないと思われていると全く効果が無い。
例えば【タナトス】が相手なら、「自分より恐ろしいものは無い」と思っている限り無効だ。
他にも赤子のように無知な人間にも効果が無かったりする。
この技は相手の度胸などの要素に依存するため、相手が自分の事を怖くないと思われていると全く効果が無い。
例えば【タナトス】が相手なら、「自分より恐ろしいものは無い」と思っている限り無効だ。
他にも赤子のように無知な人間にも効果が無かったりする。
…よって、俺はこの技を全く使っていなかった。
無駄な戦いで体力を消耗しないなどの時にはそれなりに使えるが、戦闘に組み込めるほどの技でもないと思っていたからだ。
【タナトス】は違ったが。奴は敵の動きを一瞬止め、すぐに鎌で切り裂くという戦術で戦ってきたのだ。
無駄な戦いで体力を消耗しないなどの時にはそれなりに使えるが、戦闘に組み込めるほどの技でもないと思っていたからだ。
【タナトス】は違ったが。奴は敵の動きを一瞬止め、すぐに鎌で切り裂くという戦術で戦ってきたのだ。
やはり【タナトス】は強かった。
それだけに、この負け方はあっけなかった。
ふとその時、部屋をノックする音が聞こえた。
メイド「おぼっちゃま、お飲み物をお持ちしました。」
大王「まずい、隠れないと…。」
コイン「え…?あ、そうだった。」
勇弥「いや…もう隠れても無駄だと思うぞ。」
大王「まずい、隠れないと…。」
コイン「え…?あ、そうだった。」
勇弥「いや…もう隠れても無駄だと思うぞ。」
とりあえず隠れた後に、友は扉を開けさせた。
メイド「あれ、おぼっちゃま、黒いマントの方と狐耳のカチューシャの子はどちらに?」
勇弥「あ、えっと、トイレに行ったみたいです。」
メイド「そうですか。では。いつもありがとうございます。」
奈海「いえ、こちらこそ。」
正義「ありがとうございます。」
勇弥「あ、えっと、トイレに行ったみたいです。」
メイド「そうですか。では。いつもありがとうございます。」
奈海「いえ、こちらこそ。」
正義「ありがとうございます。」
メイドの女は深く礼をして、この部屋から去った。
勇弥「さて…。」
コイン「わぁい、ジュースだぁ!」
大王「今回は、俺の分は?」
奈海「紅茶みたい。もちろんタナトスの分もあるわね。」
楓「じゃあ私が飲みますね。」
大王「すまない会長。」
コイン「わぁい、ジュースだぁ!」
大王「今回は、俺の分は?」
奈海「紅茶みたい。もちろんタナトスの分もあるわね。」
楓「じゃあ私が飲みますね。」
大王「すまない会長。」
その様子を見ながら、少年は友へ向けて気まずそうにつぶやく。
正義「…本当に見えてるんだね。」
理由は分からないが、あのメイドの女も都市伝説を認識できるらしい。
楓「やはりあの、『ウエイトレスがメニューを1つ多く持ってくる』タイプの都市伝説じゃないか?」
勇弥「おいおい、あのメイドさん都市伝説なのか?それとも契約者なのか?」
大王「人間というのは、時に【タナトス】以上の脅威になりうるな…。」
奈海「背筋がヒヤっとするレベルの脅威だけどね。」
タナトス「ッ……。」
勇弥「おいおい、あのメイドさん都市伝説なのか?それとも契約者なのか?」
大王「人間というのは、時に【タナトス】以上の脅威になりうるな…。」
奈海「背筋がヒヤっとするレベルの脅威だけどね。」
タナトス「ッ……。」
人間の恐ろしさの片鱗を味わっていると、【タナトス】が意識を取り戻したようだ。
正義「気がついたみたい。」
奈海「ごめん、ちょっとトイレ。」
コイン「あ、私も。」
勇弥「じゃあオレも。」
大王「全員、逃走を図るな。」
楓「黄昏を信じると言ったのはお前達だぞ。」
勇弥「じょ、冗談だよ冗談。」
奈海「少し怖いんだもん、仕方ないじゃない。」
奈海「ごめん、ちょっとトイレ。」
コイン「あ、私も。」
勇弥「じゃあオレも。」
大王「全員、逃走を図るな。」
楓「黄昏を信じると言ったのはお前達だぞ。」
勇弥「じょ、冗談だよ冗談。」
奈海「少し怖いんだもん、仕方ないじゃない。」
【タナトス】が目を開け、体を起こす。まだ傷が癒えていないようだった。
正義「あ、まだ動いちゃだめだよ!」
タナトス「ここは…?」
勇弥「俺の家だ。雷で瀕死になってたから、休ませてやったんだ。」
タナトス「そうか…。」
タナトス「ここは…?」
勇弥「俺の家だ。雷で瀕死になってたから、休ませてやったんだ。」
タナトス「そうか…。」
【タナトス】が目を開け、体を起こす。まだ傷が癒えていないようだった。
タナトス「私は『θεοσ 』なのか…?」
正義「え?」
タナトス「私は神 でありながら、『ο υπερτατοσ θεοσ 』にも、他のゼオスにさえも命を与えられなかった。
そして、私は負けた。もう私にゼオスを、【タナトス】を名乗る資格は無いのか……?」
勇弥「【タナトス】……。」
タナトス「私はただ、【モイラ】様を救いたいと思った。
そのためならどんな労苦も惜しまないと誓った。なのに、何故……?」
正義「え?」
タナトス「私は
そして、私は負けた。もう私にゼオスを、【タナトス】を名乗る資格は無いのか……?」
勇弥「【タナトス】……。」
タナトス「私はただ、【モイラ】様を救いたいと思った。
そのためならどんな労苦も惜しまないと誓った。なのに、何故……?」
ふと、少女が【タナトス】をたしなめるように話しかける。
奈海「まったく、いつまでもママ、ママって。子どもじゃないんだから。
それに、やりたい事ぐらい自分で決めなさいよ。」
それに、やりたい事ぐらい自分で決めなさいよ。」
一瞬、部屋に沈黙が走る。
コイン「『ママ』って……。」
楓「【モイラ】、だろ?運命の神の。」
勇弥「聞こえても『ミラ』だろ。」
奈海「え?……え?」
楓「【モイラ】、だろ?運命の神の。」
勇弥「聞こえても『ミラ』だろ。」
奈海「え?……え?」
奈海が聞き間違いに気づいてあたふたしていると、急に【タナトス】が笑い出した。
タナトス「そういう……事だったのか……。」
正義「タナトス……?」
タナトス「やっと分かったぞ、『ολα (全て)』……!ははははは……。」
正義「タナトス……?」
タナトス「やっと分かったぞ、『
全員は現在の状況を理解できなかった。
その時はまだ知らなかった。
その時はまだ知らなかった。
その笑い声の意味も
その涙の意味も――――――
――――――【タナトス】の体調はすぐに回復した。
長居は無用と判断したのか、【タナトス】はもうここから立ち去ると言った。
もちろん正義達も見送るためについていく事にした。
勇弥「ったく、せめて3日間ぐらいくたばってくれよ。恐ろしい生命力だな。」
楓「できれば、神の住む世界の話も聞きたかったんだが……残念だ。」
奈海「じゃあ、他の神様にもよろしくね。」
楓「できれば、神の住む世界の話も聞きたかったんだが……残念だ。」
奈海「じゃあ、他の神様にもよろしくね。」
自分の置かれている状況に違和感を覚えたらしく、【タナトス】は正義に尋ねる。
タナトス「少年達よ、何故私を恐れない……?私はお前達をコロそうとしたんだぞ……?
正義「そんなの簡単だよ。」
コイン「だって私たち、あなたの事を理解できたから。」
正義「そんなの簡単だよ。」
コイン「だって私たち、あなたの事を理解できたから。」
【タナトス】は改めて勇弥達の方を向く。
奈海「あなた、思ったより優しかったのね。」
勇弥「お前にも、人間みたいなところがあったんだな。」
楓「お互いに分かり合えば、怖いものなんて何もない。」
勇弥「お前にも、人間みたいなところがあったんだな。」
楓「お互いに分かり合えば、怖いものなんて何もない。」
大王「そういう事だ、【タナトス】。もう誰もお前を怖がらないだろう。」
タナトス「……それはそれで悲しいものだな。」
タナトス「……それはそれで悲しいものだな。」
【タナトス】は漆黒の翼を広げる。
正義「タナトス!これからどうするの?」
タナトス「……安心しろ。無闇な行動はもうやめる。」
タナトス「……安心しろ。無闇な行動はもうやめる。」
タナトス「これからは、人を往くべきところへ導く神になる。
それが今まで私がしてきたことへの償いになるかは分からない。
それでも私はやる。【モイラ】様や、他の神達と共に。」
それが今まで私がしてきたことへの償いになるかは分からない。
それでも私はやる。【モイラ】様や、他の神達と共に。」
勇弥「へっ。」
楓「それがいい。」
楓「それがいい。」
タナトス「それは【タナトス】らしくない事だと思うが……」
正義「ううん!そんな事無いよ。」
正義「ううん!そんな事無いよ。」
【タナトス】の言葉を不意に正義が遮った。
正義「ボクは、とっても[タナトス]らしいと思う!」
奈海「私も!」
コイン「じゃ、じゃあ私も!」
コイン「じゃ、じゃあ私も!」
タナトス「……では行こう、『μελλον (未来)』へ。」
タナトス「σασ ευχαριστω 。」
タナトスは漆黒の翼を羽ばたかせて、空の彼方へと飛んで行った。
あっという間に、その姿は見えなくなった。
あっという間に、その姿は見えなくなった。
奈海「行っちゃったね。」
コイン「また来るんじゃない?困った時にでも。」
楓「その時こそ、他の神様の話を聞き出したいな。」
コイン「また来るんじゃない?困った時にでも。」
楓「その時こそ、他の神様の話を聞き出したいな。」
ふと、勇弥が少し心配そうに呟く。
勇弥「しかし、【タナトス】は上手くやっていけるのか?
他の神ともケンカしていたみたいだが……。」
他の神ともケンカしていたみたいだが……。」
正義「できるよ。タナトスなら、きっと。」
正義は、地面に落ちていた羽根を拾う。
正義「未来は誰かから貰うものじゃない。皆が一生懸命探して、見つけるもの。
だから、皆が平等に未来を掴む権利を持っているんだ。」
大王「……。」
正義「今のタナトスなら、もう『未来』に屈する事もないよ。
彼だって知ったんだもん。『人の命』を。」
だから、皆が平等に未来を掴む権利を持っているんだ。」
大王「……。」
正義「今のタナトスなら、もう『未来』に屈する事もないよ。
彼だって知ったんだもん。『人の命』を。」
全員が空を見上げる。
―――ねぇ、タナトスは最後になんて言ったの?―――
今日の空は夕焼けで綺麗な赤に染まっていた。
―――『ありがとう』、だって―――
その空に向かって、正義は……。
手に持っていた羽根を、力いっぱい投げつけた。
白い羽根は、夕日に溶けて、消えていった―――
―――これは、1つの物語の終章であり―――
―――これから始まる、未来の物語の序章でもある―――
Σχεδιο編第7話「気付いた日」
舞い降りた大王・Σχεδιο編 ―終―