2月14日。
学校町の片隅で、一人の少女が必死に落とした財布を探し回っていた。
「ない・・・ないよー」
時折立ち止まり、周囲を見回す度に癖のない黒髪が揺れ、薄青い瞳からはいまにも涙がこぼれ落ちそうだ。
彼女の名はご存知ノイ・リリス・マリアツェル。勉強をさぼってこっそり家を抜け出し、買い物に出かけて来たはいいが、肝心の財布が見あたらない。
「お家を出るときは、確かにあったのにー!」
肩から斜めがけにしてある、大きなリボンの付いた黒いレッスンバッグをひっくり返してみたが、やはりない物はない。
「どうしよう・・・」
今日中に買わなくちゃいけないものなのに。
勉強をさぼって家を出てきたから、財布がないといっておめおめ帰っても、叱られるのがオチで、追加の小遣いなどとうてい望めやしない。
だいたい、追加の小遣いを申請するにしても、使い道を追及されては困る。
「サプライズなんだから。買うもの言うわけにいかないじゃん!」
この際財布が出てこなくても良い。買い物を出来るだけのお金を拾うとか・・・
「そんなラッキー、あるわけないか・・・あーあ、神さまっていないのかなー」
たとえ神様がいたとしても、ネコババを考えている子どもに金を与えるような真似はしないだろう。
そう。神ならば。
学校町の片隅で、一人の少女が必死に落とした財布を探し回っていた。
「ない・・・ないよー」
時折立ち止まり、周囲を見回す度に癖のない黒髪が揺れ、薄青い瞳からはいまにも涙がこぼれ落ちそうだ。
彼女の名はご存知ノイ・リリス・マリアツェル。勉強をさぼってこっそり家を抜け出し、買い物に出かけて来たはいいが、肝心の財布が見あたらない。
「お家を出るときは、確かにあったのにー!」
肩から斜めがけにしてある、大きなリボンの付いた黒いレッスンバッグをひっくり返してみたが、やはりない物はない。
「どうしよう・・・」
今日中に買わなくちゃいけないものなのに。
勉強をさぼって家を出てきたから、財布がないといっておめおめ帰っても、叱られるのがオチで、追加の小遣いなどとうてい望めやしない。
だいたい、追加の小遣いを申請するにしても、使い道を追及されては困る。
「サプライズなんだから。買うもの言うわけにいかないじゃん!」
この際財布が出てこなくても良い。買い物を出来るだけのお金を拾うとか・・・
「そんなラッキー、あるわけないか・・・あーあ、神さまっていないのかなー」
たとえ神様がいたとしても、ネコババを考えている子どもに金を与えるような真似はしないだろう。
そう。神ならば。
「そこの少女!」
「ふぇ!?あ・・・あたし?」
「幸運をお望みか!」
そこに現れた男は、あまりにも珍奇な出で立ちだった。
棒の付いた箱を肩に担ぎ、この時期、常人ならば凍死しそうな薄い和服に
棒の付いた箱を肩に担ぎ、この時期、常人ならば凍死しそうな薄い和服に
―赤い
―赤いふんどし
そう、彼こそは「飛脚のふんどし」の契約者。
なんかヘン、と思いながらもノイはこっくりと頷く。
なんかヘン、と思いながらもノイはこっくりと頷く。
「ならばっ!某の契約都市伝説にお任せあれ!」
ばばっ、と彼は和服を脱ぎ捨て(うわぁ、寒そう)
「某のふんどしに口づけを!」
「ふ・・・ふぇ!?」
ノイは服を脱ぎ捨てた男の出で立ちに驚き、さらに言われた内容を脳内で反芻して2度びっくり。
ふんどしって・・・ふんどしって・・・お尻じゃん!
無論前の方だってふんどしはついているが、どっちにしろ口づけたいものではない。
これはどうしたらいいのだろう。
この人は「都市伝説」と言った。この人の言うように、これに口づけ・・・すなわちキスすれば、幸運が舞い込んでくる、の、だろう。
(でも・・・こんなのヤダぁー!)
これはどうしたらいいのだろう。
この人は「都市伝説」と言った。この人の言うように、これに口づけ・・・すなわちキスすれば、幸運が舞い込んでくる、の、だろう。
(でも・・・こんなのヤダぁー!)
いくら幸運が舞い込んでくると言われても、知らない人のお尻になんかキスしたくない。知り合いでもイヤだけど。
(あ、でも、柳ならイヤじゃないかも)
ノイが考え事に気を取られたその一瞬。
「さあ!」
「いやー!?」
「いやー!?」
口づけを迫った男が尻をノイの眼前に突き出した。ほぼ顔スレスレの位置で、ノイの瞳にはふんどしの赤がはっきりと焼き付く。
困った事にこの猥褻行為スレスレの所行を、男はスケベ心など微塵もなく遂行している。
皆に幸運を分け与える為としての使命感、そして都市伝説としての存在意義に従っているだけなのだ。
困った事にこの猥褻行為スレスレの所行を、男はスケベ心など微塵もなく遂行している。
皆に幸運を分け与える為としての使命感、そして都市伝説としての存在意義に従っているだけなのだ。
「むっ・・・無理ぃー」
尻から顔を遠ざけるべく、ぺたんと尻餅をつくノイの顔になおもふんどしが近づこうとしたその時。
尻から顔を遠ざけるべく、ぺたんと尻餅をつくノイの顔になおもふんどしが近づこうとしたその時。
「このチカン野郎ですよ!」
ごっっ、と鈍い音と低い悲鳴が聞こえて、不意に手首を掴まれて引っ張られた。
「幻!」
ピンクの髪を冬の風になびかせて、振り向いた少女がウィンクする。
そのまま走りに走って、気が付いたら繁華街のコンビニの前に立っていた。
「結局、お財布見つからなかった・・・」
「そんなにしょげるんじゃねーですよ」
何を買いたかったのかと問われたノイの答えは、チョコレート。
「ウィーンだとね、バレンタインって恋人同士の日なの」
でも日本だと、友チョコとか義理チョコとか、お友だちとかお世話になった人にもチョコあげてもいーんでしょ?
「それって、すごーくステキだなあって思ったの」
だからナイショでチョコを買って、みんなにあげたかったのにとノイが俯いた、その時。
「ノイ」
声がした方に振り向くと、そこに立っていたのは。
「イタル!」
極はつかつかとノイに歩み寄る―その手には水色の、ファンシーな柄の折り畳み財布。
「あ!あたしのお財布!」
「公園のベンチにほっぽりだしてあったぞ」
そういえば、公園でジュースを買って飲んだんだった。
「ありがとー、イタル!イタルには、特別おっきいチョコあげるね!」
「全財産730円でか?」
「買えないの?」
「その額じゃ、皆にあげようとしたらチロルチョコがせいぜいなのですよ・・・」
暫くむーと唸ってはいたが
「ま、いいか!大事なのは真心だもんね!」
立ち直りも早かった。
そのまま走りに走って、気が付いたら繁華街のコンビニの前に立っていた。
「結局、お財布見つからなかった・・・」
「そんなにしょげるんじゃねーですよ」
何を買いたかったのかと問われたノイの答えは、チョコレート。
「ウィーンだとね、バレンタインって恋人同士の日なの」
でも日本だと、友チョコとか義理チョコとか、お友だちとかお世話になった人にもチョコあげてもいーんでしょ?
「それって、すごーくステキだなあって思ったの」
だからナイショでチョコを買って、みんなにあげたかったのにとノイが俯いた、その時。
「ノイ」
声がした方に振り向くと、そこに立っていたのは。
「イタル!」
極はつかつかとノイに歩み寄る―その手には水色の、ファンシーな柄の折り畳み財布。
「あ!あたしのお財布!」
「公園のベンチにほっぽりだしてあったぞ」
そういえば、公園でジュースを買って飲んだんだった。
「ありがとー、イタル!イタルには、特別おっきいチョコあげるね!」
「全財産730円でか?」
「買えないの?」
「その額じゃ、皆にあげようとしたらチロルチョコがせいぜいなのですよ・・・」
暫くむーと唸ってはいたが
「ま、いいか!大事なのは真心だもんね!」
立ち直りも早かった。
そうして、極とノイが肩を並べて帰る背に、幻が大音声で声をかける。
「ノイー!ボクも明日、チョコ作ってノイんちに持ってくですよー!」
ノイは振り向いて手を振ると、意気揚々と帰って行った。
途中、スーパーでお徳用のチロルチョコの詰め合わせを買うことも忘れずに。
キスはしなかったけど、あのヘンなふんどしの人は、やっぱり幸運を運んでくれたのかなあと、ちょっぴり感謝しながら。
「ノイー!ボクも明日、チョコ作ってノイんちに持ってくですよー!」
ノイは振り向いて手を振ると、意気揚々と帰って行った。
途中、スーパーでお徳用のチロルチョコの詰め合わせを買うことも忘れずに。
キスはしなかったけど、あのヘンなふんどしの人は、やっぱり幸運を運んでくれたのかなあと、ちょっぴり感謝しながら。
END