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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

きじまさんの契約者の非日常-01

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「なぁ、金貸してくんねえ?」
 そう言っている目の前のヤンキーに、金を返す気なんてさらさら無い事はわかっていたから、もちろん従う気はなかった。
 とはいえ、彼は喧嘩に弱い。真っ向から殴り合ったら、多分秒殺されるだろう。
「君、僕の存在を認識したね?」
 言うやいなや彼の姿が消え、次の瞬間ヤンキーの背後に現れた。
「なっ!何時の間に」
 ヤンキーが怯んだ隙にダッシュで駆け出す。何度も言うようだが、彼は喧嘩に弱い。背後を取ったからといって下手に反撃に出てはかえってこの状況から逃れるチャンスを失ってしまう。
 彼の名は木島現(きじま うつつ)。
「最近、物騒だよなあ」
 質の悪い人間もそうだが、このところ都市伝説に絡まれる事も増えたような気がする。いつも無事に逃げおおせてはいるが、いつまでも好運も続くわけではないだろう。
「本格的に都市伝説を使った兵器でも研究してみようかなー。それかリフレクターの開発を急がなくちゃ」
 独り言を言っている間にも新たに都市伝説が現れる。
「注射は・・・あれ?」
「さよーならー」
 声を掛けてきた注射男もさっくり無視して背後を取り、そのまま逃げ出す。次の角を曲がればもう自宅兼研究室のマンションだ。

 どしんっ
「!!」
「いっ・・・!」

 角を曲がった途端、何かにぶつかってひっくり返った。倒れた拍子に眼鏡が弾き飛ばされる。
「いたたた」
 幸い大したダメージはなくて、直ぐに体を起こすことが出来たが。
「あれ?眼鏡、眼鏡どこだろ?」
「ここ」
 涼やかな声が響いて、現の見える距離まで眼鏡が差し出される。色白のほっそりした、小さな手だ。
「あ、ありがと・・・あれ!?」
 眼鏡を差し出した相手を確認して、現はびっくりした。
 腰まで届く癖のない黒髪。ぱっちりしたセピア色の瞳と、それを縁取る長い睫毛。見たところ10代半ば。
 ふんわり広がる姫袖の白いブラウスに、前見頃に幾つものリボンが並び、花弁の様に縁取られたスカートの裾から更にアンダースカートが覗いた黒いジャンパースカート。
 左の袖口からちらちら覗く包帯と、右目を隠す包帯が痛々しくも可憐なアクセサリーのよう。
(うわー、ゴスロリだ)
 だが現が驚いたのは彼女の容姿でも服装でもなく。
「・・・や、薮野さん?」

 彼女は現の通う高校に来た転校生、薮野鈴々花(やぶの りりか)。見た目は愛らしく、頭脳明晰でもあるようだが。
「怖いんだよなー、この子」
「聞こえてる」
 笑わない、最低限しか話さない、喋り方が紋切り調。
 愛想がまるっきりない上に、何時も左腕と右目を包帯で隠している彼女はどこか気味悪がられていて、非リア充極まりない高校ライフをマイペースに満喫している・・・ようだ。
「あ、あのところで、薮野さん、そんな格好でどうしたの」
「私服」
「はぁ、私服」
「可笑しい?」
「あぁいっいや!あの、家、近いの?」
 彼女はすっと現の住むマンションを指さし
「ここに住んでる」
 しばしの沈黙が二人を包み。
「ぅええええ!?」
(どうしよう僕!?可愛い転校生と曲がり角でぶつかってしかも住んでるマンションが同じとか何のフラグ!?でもこの子とのフラグってかえって怖い!)
 期待半分、恐怖半分の現の耳に次に届いた声は、涼やかな少女の声ではなかった。
「注射させろおおおおお!!」
 砂煙をけたてる勢いで迫ってくるのは、先程かわした注射男。
「!」
「わ、まだ追ってくる」
 注射男が注射器を構える。中身は毒物。
(三十六計、逃げるに如かず!)
「薮野さんも逃げて!」
 言うが早いか、注射男の背後にぱっと現れ、そのまま逃げようとしたが、つい気になって振り返ってしまった。
 薮野鈴々花は未だ動かない。
「や、薮野さん!」
「注射ああああ!」
「!」

 ぱきんっ

 目の前の光景に、現は目を疑った。
 鈴々花のハイキックが、注射男が振り上げた注射器を蹴り割っていた。
「ふん」
 注射男をどこか小馬鹿にしたように笑い飛ばし、今度は鈴々花がどこからともなく注射器を取り出した。
「同族の面汚し」
 もう一発、注射男の鳩尾にミドルキックを入れ、うずくまった所を首筋に注射する。
 注射男はみるみるその顔が赤く染まり、暫く喉をかきむしると、光となって四散していった。
「薮野さん、強い・・・ていうか・・・同族?」

「へー、それじゃ鈴々花さん、人間と都市伝説のハーフなの」
「両親は都市伝説と人間のハーフ同士。父さんは注射男と人間のハーフで、母さんは『ウェパル』と人間のハーフ」
「へー。興味深いね」
「都市伝説とのハーフだから、少なからぬ疎外されてた。傷の舐めあいから恋愛に発展したって。私には理解できない」
「僕が理解させてあげるよ!」
「A定食が?」
「A定食って。なんでそれ知ってるの」
 数日前、弁当を持ったまま派手にすっ転び、ご飯は死守したもののおかずを頭から被る破目に陥った現についたあだ名が「A定食」
 まあそのうち廃れるだろうとは思っていたが、まさか彼女の耳にまで入っているとは。
「僕はA定食ではありません!木島現という何の変哲もない、たった今貴女に惚れた『きじまさん』の契約者です!という訳で、僕と付き合って下さい!」
「いや」
「じゃあお友達から!」
 食い下がりながらマンションのエントランスに入ろうとすると。
「わっ!」
 鈴々花に気を取られて居たからか、階段で蹴つまづいて派手に転倒してしまう。
「痛った!」
「見せてみて。・・・大したこと無い。捻挫以下。そんなに痛いならひと思いにモルヒネ打つけど」
「いきなしモルヒネはダメやめて!普通の鎮痛剤を!」
 鈴々花の手に注射器が現れ、足首に針が刺さる。
「・・・治った」
「なんなら、患者と主治医ぐらいからなら初めてあげてもいい」
「それって、友達より親密なんじゃない?友達以上恋人未満かー。それもいいねー」
「私専用の検体になってくれるなら。ところでさっき同族の背後を取ったの都市伝説?」
「『きじまさん』の力だよ。『自分の存在を認識した者の背後に現れる』事ができるんだ。『きじまさん』が話を聞いた人の所に現れるようにね」
都市伝説「きじまさん」の力を使い
『自分の存在を認識した者の背後に現れる』
 彼はこれまで、自らの能力でなにを成し遂げるつもりがあるわけでもなかった。これからもない。
「あーあ。僕は平穏が好きなのにな」
 まあ、恋愛も充分非日常だし、まぁ、いっか。
 そんな事を考えながら、ちょうど降りてきたエレベーターに二人で乗り込んだ。
「鈴々花さんち、何号室?」
「1012」
「よろしくお願いします、お隣さん」



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