「氷肌玉骨にして熱血の少女」
こんにちは、初めまして…。私は氷山 熔火(ひやま ゆうか)。ようかじゃないですよ。氷麗ちゃんのお友達、です…
自慢ではないですが氷のように透き通った肌をしている、とよく言われます。
火山みたいに煮え滾る熱い血をもっている、と自負しています。そんなどこにでも居ない女子高生、です…。何だろう、この自己紹介
熔火「今日も良い朝日です…。こんな日は早起きしてジョギングに限りますね」
私の毎朝の日課、ジョギング。毎日の運動は健康な身体を作ります
心なしか身体も暖まってきましたよ。ぽかぽかです…。さて、次はあの角を曲がって…
自慢ではないですが氷のように透き通った肌をしている、とよく言われます。
火山みたいに煮え滾る熱い血をもっている、と自負しています。そんなどこにでも居ない女子高生、です…。何だろう、この自己紹介
熔火「今日も良い朝日です…。こんな日は早起きしてジョギングに限りますね」
私の毎朝の日課、ジョギング。毎日の運動は健康な身体を作ります
心なしか身体も暖まってきましたよ。ぽかぽかです…。さて、次はあの角を曲がって…
熔火「…っ!!」
角を曲がった私が見たものは。巨大なハンマーを振るう赤い人(?)と…
その傍らで真っ赤に染まる…血と青痣で赤と青に染まる氷麗ちゃんでした
その傍らで真っ赤に染まる…血と青痣で赤と青に染まる氷麗ちゃんでした
熔火「あ」
その光景を見て、私の心に…怒りに火がつく
熔火「ああああああああああああ!」
私はいつの間にか高く飛び上がって…赤いハンマー使いにとび蹴りをかましていました
『がふっ』
熔火「あなた…てめぇよぉ! 私の氷麗ちゃんに何してんだ…このキチ●イハンマーがぁッ!!」
私は氷麗ちゃんを傷つけたこのゴミクズに馬乗りになり、殴る蹴るを繰り返す…絶対にゆるさねぇ!
熔火「死ね、死ね、死ね、死ね…! 地獄で侘びろ!」
『ぐふっ…がっ…み、ミタ、ナ…』
私は怒りに任せ…熱い気持ちに任せ、ハンマー使いをタコ殴りにする
その光景を見て、私の心に…怒りに火がつく
熔火「ああああああああああああ!」
私はいつの間にか高く飛び上がって…赤いハンマー使いにとび蹴りをかましていました
『がふっ』
熔火「あなた…てめぇよぉ! 私の氷麗ちゃんに何してんだ…このキチ●イハンマーがぁッ!!」
私は氷麗ちゃんを傷つけたこのゴミクズに馬乗りになり、殴る蹴るを繰り返す…絶対にゆるさねぇ!
熔火「死ね、死ね、死ね、死ね…! 地獄で侘びろ!」
『ぐふっ…がっ…み、ミタ、ナ…』
私は怒りに任せ…熱い気持ちに任せ、ハンマー使いをタコ殴りにする
そう、冷静さを失い、激情に任せて…攻撃を続けたんだ
だから私は。「既にこいつがハンマーを持ってねぇ」なんてそんな初歩的なことにも気づかず、気づけず。
故に頭上にハンマーが来ていることも察せずに…
『私をミタやツは…私のように真っ赤に染まれ!』
氷麗「あぶな…っ」
無慈悲に振り下ろされるハンマーを…遠隔操作で私の体を砕かんとするハンマーを、避けることも受け止めることも出来なかった。
だから私は。「既にこいつがハンマーを持ってねぇ」なんてそんな初歩的なことにも気づかず、気づけず。
故に頭上にハンマーが来ていることも察せずに…
『私をミタやツは…私のように真っ赤に染まれ!』
氷麗「あぶな…っ」
無慈悲に振り下ろされるハンマーを…遠隔操作で私の体を砕かんとするハンマーを、避けることも受け止めることも出来なかった。
私の体は。粉々に砕け散った…
ああ、畜生。頭に血が上ってた…この氷山熔火、一生の不覚だ…
ああ、畜生。頭に血が上ってた…この氷山熔火、一生の不覚だ…
目の前の都市伝説、『赤ハンマー』に手痛い、というか体中痛い打撃を受け、
血塗れになって痣だらけになっている私は白雪氷麗。ゲーム研究部の部員で、熔火ちゃんの友達…
紆余曲折あって、この『赤ハンマー』に襲われて、だから私は応戦した。
契約都市伝説『雪女』で応戦したわけだけれど。最初に不意打ちで一発貰ってしまったせいか、苦戦を強いられた
…そして結局、このザマ。惨め。『雪女』の方は雪だから大丈夫だったけれど…私は一歩も動けない
ああ、これはもう、終わったかな…
まぁまぁ楽しい人生だったわ。
血塗れになって痣だらけになっている私は白雪氷麗。ゲーム研究部の部員で、熔火ちゃんの友達…
紆余曲折あって、この『赤ハンマー』に襲われて、だから私は応戦した。
契約都市伝説『雪女』で応戦したわけだけれど。最初に不意打ちで一発貰ってしまったせいか、苦戦を強いられた
…そして結局、このザマ。惨め。『雪女』の方は雪だから大丈夫だったけれど…私は一歩も動けない
ああ、これはもう、終わったかな…
まぁまぁ楽しい人生だったわ。
「ああああああああああああ!」
と、目を閉じかけた私の耳に響く、私の目を覚ます声。熔火ちゃんの声だ
熔火「あなた…てめぇよぉ! 私の氷麗ちゃんに何してんだ…このキチ●イハンマーがぁッ!!」
熔火ちゃんは私に止めを刺さんとする『赤ハンマー』にとび蹴りを当てる
助けに来て、くれたんだ…
熔火「死ね、死ね、死ね、死ね…! 地獄で侘びろ!」
とび蹴りを当てて体制を崩した『赤ハンマー』に馬乗りになりつつ、殴る蹴るを繰り返しながら、罵倒する熔火ちゃん
少し言葉遣いが乱れているけど、私のために…あら?
さっきから『赤ハンマー』と呼んでいるが。
この都市伝説…“ハンマーを持っていない”…? さっきまでは持っていたのに…?
氷麗「……!」
上を見上げると、熔火ちゃんの上には『赤ハンマー』がもっていたハンマーが。
こいつ、ハンマーの遠隔操作もできたの…!?
『私をミタやツは…私のように真っ赤に染まれ!』
氷麗「あぶな…っ」
咄嗟に危険を知らせようと声を上げたときにはもう既に遅く。
鮮血で真っ赤に染まったハンマーは、無慈悲に容赦なく振り下ろされ。
熔火ちゃんの身体は、肉体は。
粉々に
砕 け 散 っ た …
私の、せいで。私がもっと早く、気づいていれば…
と、目を閉じかけた私の耳に響く、私の目を覚ます声。熔火ちゃんの声だ
熔火「あなた…てめぇよぉ! 私の氷麗ちゃんに何してんだ…このキチ●イハンマーがぁッ!!」
熔火ちゃんは私に止めを刺さんとする『赤ハンマー』にとび蹴りを当てる
助けに来て、くれたんだ…
熔火「死ね、死ね、死ね、死ね…! 地獄で侘びろ!」
とび蹴りを当てて体制を崩した『赤ハンマー』に馬乗りになりつつ、殴る蹴るを繰り返しながら、罵倒する熔火ちゃん
少し言葉遣いが乱れているけど、私のために…あら?
さっきから『赤ハンマー』と呼んでいるが。
この都市伝説…“ハンマーを持っていない”…? さっきまでは持っていたのに…?
氷麗「……!」
上を見上げると、熔火ちゃんの上には『赤ハンマー』がもっていたハンマーが。
こいつ、ハンマーの遠隔操作もできたの…!?
『私をミタやツは…私のように真っ赤に染まれ!』
氷麗「あぶな…っ」
咄嗟に危険を知らせようと声を上げたときにはもう既に遅く。
鮮血で真っ赤に染まったハンマーは、無慈悲に容赦なく振り下ろされ。
熔火ちゃんの身体は、肉体は。
粉々に
砕 け 散 っ た …
私の、せいで。私がもっと早く、気づいていれば…
『くひっ…ははははは! わわ、私を見るからこうなるのよ…!
さて、少し邪魔がはいっ、入っちゃったけど…』
振り下ろしたハンマーを携え、『赤ハンマー』が私にゆっくりと近づく。
粉々に砕け散った熔火ちゃんの身体を間近で見ていた私は、当然茫然自失になっていたので
そのさまを目を虚ろにして眺めている。
『つつつ次はああ貴方よ…! わた、私みたいに真っ赤に染まりなさいいいい!』
ハンマーが私に振り下ろされる。
当たったら死ぬだろうけど…友達も守れなかった私に生きる価値など既にない。
だから…
『雪壁…』
…? 既に私の頭はハンマーで潰されているはずなのに、私の頭はしっかりと形を保っている。
というか、何時までたってもハンマーが落ちてこない。これはいったい…?
『まったく、氷麗ったら…今の攻撃は避けられたでしょう?』
私の契約都市伝説、『雪女』が雪で壁を作り、ハンマーを受け止めていた
赤槌『くっ…』
雪の壁を砕こうとしている『赤ハンマー』だが、苦戦しているよう…
氷麗「どう…して…?」
私は自分の傷口と血液を凍らせて応急処置しながら、『雪女』に尋ねる。
雪女『どうしてって…決まってるじゃあないですか。都市伝説が契約者を守るのは当たり前ですよ?』
氷麗「違う…」
そうじゃない。そんなことを聞いてるんじゃない。
雪女『え?』
氷麗「私が聞いてるのは、それが出来るのならどうして…熔火ちゃんを助けてくれなかったのか、ってこと…」
雪女『………』
しばらくの沈黙の後、雪女は口を開いた――いや、雪の壁を作ってハンマーを受け止めている雪女は当然向こうを向いているので、
私からは雪女の口元は見えないのだが、声がしたという理由からそう判断しただけなのだが
雪女『…できなかったんですよ。私も、ギリギリまであの赤ハンマーがハンマーを遠隔操作していることに気がつかなかった…気がつけなかったんです。
だから間に合わなかった…。その時は私の体も砕かれていて雪の量が足りなかったから、そこまで届かなかったんです…ごめんなさい』
申し訳なさそうに『雪女』は言う
氷麗「……いえ、貴女のせいじゃない。私が、もっと早く気づいていれば…。
もっと早く察していれば、あの子は攻撃を受けずに済んだ。
熔火ちゃんは、死なずに済んだのに…」
……めったに感情をもらすことがない私の目から、雫が落ちてくる。頬が濡れて、止まらない
雪女『え?』
と、『雪女』は驚いたような声を上げる
雪女『何を言っているんですか? 氷麗。あの子、熔火さんはまだ死んでいませんよ?』
え?
氷麗「……え?」
そんなわけない。そんなはずはない。私の目に焼きついて離れない。だってあの子はハンマーに叩き潰されたんだから
動くことも助けることも出来ず、無残にあっけなく圧死したんだから。
赤ハンマーに真上から叩き潰されて、
氷麗「粉々に、砕け散ったんだから」
………ん?
あれ?『粉々』?
『粉々に砕け散った』…?
待てよ、待てよ…おかしくないかしら?
『ぐちゃぐちゃに潰れた』なら分かる。けど、人間が…脊椎動物が、
氷麗「ハンマーで叩かれて粉々に砕け散るなんて、ありえない…」
そう、私の親友熔火ちゃんは、まるでガラスのように――薄氷のように、割れて砕けてしまったんだ
雪女『…ああ、そろそろ限界です…ね!』
とうとう雪の壁が破壊される。しかしそれを破壊したハンマーの勢いも殺され、つまり仕切りなおしの状態になったわけだ
赤槌『ああ…恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしいッ! 顔から火が出そうだわ…だから叩き潰す!』
と、ハンマーを『赤ハンマー』の顔面に、氷の弾丸が飛んでくる
赤槌『…え?』
「これで冷えました?」
弾丸が飛んできた方向から聴きなれた声がして、そこに見慣れた少女の姿が
…あの位置は、雪女の雪が積もった場所で…そして何より。
さて、少し邪魔がはいっ、入っちゃったけど…』
振り下ろしたハンマーを携え、『赤ハンマー』が私にゆっくりと近づく。
粉々に砕け散った熔火ちゃんの身体を間近で見ていた私は、当然茫然自失になっていたので
そのさまを目を虚ろにして眺めている。
『つつつ次はああ貴方よ…! わた、私みたいに真っ赤に染まりなさいいいい!』
ハンマーが私に振り下ろされる。
当たったら死ぬだろうけど…友達も守れなかった私に生きる価値など既にない。
だから…
『雪壁…』
…? 既に私の頭はハンマーで潰されているはずなのに、私の頭はしっかりと形を保っている。
というか、何時までたってもハンマーが落ちてこない。これはいったい…?
『まったく、氷麗ったら…今の攻撃は避けられたでしょう?』
私の契約都市伝説、『雪女』が雪で壁を作り、ハンマーを受け止めていた
赤槌『くっ…』
雪の壁を砕こうとしている『赤ハンマー』だが、苦戦しているよう…
氷麗「どう…して…?」
私は自分の傷口と血液を凍らせて応急処置しながら、『雪女』に尋ねる。
雪女『どうしてって…決まってるじゃあないですか。都市伝説が契約者を守るのは当たり前ですよ?』
氷麗「違う…」
そうじゃない。そんなことを聞いてるんじゃない。
雪女『え?』
氷麗「私が聞いてるのは、それが出来るのならどうして…熔火ちゃんを助けてくれなかったのか、ってこと…」
雪女『………』
しばらくの沈黙の後、雪女は口を開いた――いや、雪の壁を作ってハンマーを受け止めている雪女は当然向こうを向いているので、
私からは雪女の口元は見えないのだが、声がしたという理由からそう判断しただけなのだが
雪女『…できなかったんですよ。私も、ギリギリまであの赤ハンマーがハンマーを遠隔操作していることに気がつかなかった…気がつけなかったんです。
だから間に合わなかった…。その時は私の体も砕かれていて雪の量が足りなかったから、そこまで届かなかったんです…ごめんなさい』
申し訳なさそうに『雪女』は言う
氷麗「……いえ、貴女のせいじゃない。私が、もっと早く気づいていれば…。
もっと早く察していれば、あの子は攻撃を受けずに済んだ。
熔火ちゃんは、死なずに済んだのに…」
……めったに感情をもらすことがない私の目から、雫が落ちてくる。頬が濡れて、止まらない
雪女『え?』
と、『雪女』は驚いたような声を上げる
雪女『何を言っているんですか? 氷麗。あの子、熔火さんはまだ死んでいませんよ?』
え?
氷麗「……え?」
そんなわけない。そんなはずはない。私の目に焼きついて離れない。だってあの子はハンマーに叩き潰されたんだから
動くことも助けることも出来ず、無残にあっけなく圧死したんだから。
赤ハンマーに真上から叩き潰されて、
氷麗「粉々に、砕け散ったんだから」
………ん?
あれ?『粉々』?
『粉々に砕け散った』…?
待てよ、待てよ…おかしくないかしら?
『ぐちゃぐちゃに潰れた』なら分かる。けど、人間が…脊椎動物が、
氷麗「ハンマーで叩かれて粉々に砕け散るなんて、ありえない…」
そう、私の親友熔火ちゃんは、まるでガラスのように――薄氷のように、割れて砕けてしまったんだ
雪女『…ああ、そろそろ限界です…ね!』
とうとう雪の壁が破壊される。しかしそれを破壊したハンマーの勢いも殺され、つまり仕切りなおしの状態になったわけだ
赤槌『ああ…恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしいッ! 顔から火が出そうだわ…だから叩き潰す!』
と、ハンマーを『赤ハンマー』の顔面に、氷の弾丸が飛んでくる
赤槌『…え?』
「これで冷えました?」
弾丸が飛んできた方向から聴きなれた声がして、そこに見慣れた少女の姿が
…あの位置は、雪女の雪が積もった場所で…そして何より。
熔火ちゃんが、砕かれた場所…
雪煙が晴れ、影の正体が露になる。そう、そこにいたのは、やっぱり…
雪煙が晴れ、影の正体が露になる。そう、そこにいたのは、やっぱり…
熔火「ありがとうございます雪女さん…お陰で、頭が冷えました」
まるで、あの時の破壊が無かったかのように。氷細工のように美しい少女が佇んでいた
赤槌『お前、は…! さっき確実に殺したはず…このハンマーで!
まさか、まさか私がしくじったとでも言うのか!? ああ恥ずかしい! 私がハンマーで仕留め損ねるなんて…!』
熔火「いえいえ、確かにしっかり砕かれましたよ、私は…。だけど残念なことに、私は砕かれたくらいじゃ死にません」
熔火ちゃんは赤ハンマーを指差しながら、ポーズを決めて、次の言葉を言い放つ
熔火「恥ずかしさで焼けてしまいそう? だったら安心してください。この私、氷山熔火の熱血で、貴女の頭を冷やして差し上げ…」
氷麗「熔火ちゃん!」
良かった。良かった。良かった…熔火ちゃんが生きてて、良かった……!
私は思わず、熔火ちゃんに抱きついていた
熔火「~///」
……ん? あれ? 熔火ちゃんから湯気が出てる? というか熔火ちゃんがどんどん痩せていってる?
熔火「駄目ッ…です氷麗ちゃん…こ、こんなところで…!」
雪女『……』
氷麗「え? な、何? どうしたの熔火ちゃん!? 大丈夫!?」
熔火ちゃんはなぜか顔を赤くしているし、雪女は冷ややかな目でこちらを睨んでいる。どうしたのかな…
よく分からないけどこのままではまずいと思ったので、熔火ちゃんから身体を離した
すると熔火ちゃんはしばし残念そうな表情をした後、自分の頭に手を当てる。すると熔火ちゃんの顔の赤みが消え、湯気も出なくなった
熔火「氷麗ちゃんにこんなところで抱きつかれるなんて……頭がフットーしちゃったよおっっ…」
氷麗「沸騰しちゃったの!?」
大事件だ。でも一体どうしてそんなことに…
雪女『氷麗、貴女はハーレムラノベの主人公ですか…?』
相変わらずの冷ややかなジト目で、雪女は私に言う
氷麗「え? ハーレムラノベに喩えるなら私はヒロインその3あたりだと思うんだけど」
クーデレポジション的な。自分で言うのもなんだけれど
熔火「こほん。では気を取り直して…。
『赤ハンマー』。私のこの煮え滾るような熱血で、貴女の頭を冷やして差しあげます……!」
どうやら立ち直った様子の熔火ちゃんは、律儀に待っていてくれた『赤ハンマー』に向き直り、ポーズをキメながらそう言った
赤槌『やってみなさい。貴女が私をどうこう出来ると思っているなら、そのふざけた幻想ごと叩いて打破して壊して砕いて、潰してあげる…って何言わせんのよ!』
顔をより一層真っ赤にしながらハンマーを構えつつ熔火ちゃんに飛び掛ってきた。照れるならやらなければいいのに…
熔火「『封氷被鎧(アイスタンク)』」
熔火ちゃんは身体に氷を鎧のように纏い、ハンマーを受け止めてしまう。もしかして、これが熔火ちゃんの契約都市伝説…? 氷を操るタイプの都市伝説は結構あるけど…
赤槌『くっ…硬い! ならば私も…「落槌注意(フリーフォール)」…ってどうしてさっきから私に恥ずかしい台詞ばかり言わせるのよぉ!』
熔火ちゃんの上空にハンマーを転送する『赤ハンマー』。そのハンマーは重力に従い、熔火ちゃんの頭上へ落ちる…咄嗟に避けようとする熔火ちゃんだったが、間に合わず、ハンマーは熔火ちゃんの頭部を砕く…
赤槌『ふんっ。口ほどにも無いわね。私を辱めるからそうなるの…え?』
頭部を砕かれたはずだが、見ると熔火ちゃんの首から上がどんどん凍っていき、頭が完成すると元の熔火ちゃんに戻った
熔火「今のは…痛かったですよ?」
赤槌『っ!! どうして!? 貴女それでも人間なの!?』
熔火「ええ、勿論人間ですよ。それにさっき言ったでしょう? 私は砕かれても死なないって」
何これ、私の応急処置なんか目じゃないくらいの再生能力…「氷で肉体を修復する」それが熔火ちゃんの能力!? それならさっきの雪女の発言にも合点がいく…!
ん? 「氷で肉体を修復する」? それってもしかして…じゃあ熔火ちゃんの契約都市伝説ってまさか…
氷麗「『ハボクック』…?」
私がぼそりと呟くと、『赤ハンマー』は何かに気が付いたように表情を変える
赤槌『「ハボクック」…!? まさか、貴女の契約都市伝説は「氷山空母」!? 計画のみに終わった、氷で出来たイギリスの航空母艦! 氷で出来ているから、「水さえあれば凍らせて損傷を補修できる」というあの…!』
熔火「おや、なかなか鋭いですね二人とも。ええそうですよ。私の契約都市伝説は『氷山空母』。私の身体は氷で出来ています」
雪のような美白と、氷のように透き通った肌を持つガラス細工のように美しい氷肌玉骨の少女、氷山熔火。けれどまさか、本当に肉体が氷で出来ていたなんて…!
熔火「だから私は冷気で空気中の水分を凍らせることが出来ますし…身体が砕かれても凍らせればすぐに元通りです。空中の水分の凍らせ方を工夫すればこんなことも出来るんですよ…?
食らいなさい、氷の巨砲、『銃凍砲(クレバスカノン)』!」
熔火は器用に氷の大砲を作ると、そこから氷の砲弾を飛ばす
赤槌『その程度!』
しかし『赤ハンマー』はそれを難なく打ち落とし、叩き壊す
氷麗「…! 『雪女』、私たちも…!」
雪女『はいはぁーい♪』
氷麗「『寒射寒撃雨霰(サンキューブリーザード)』!」
広範囲にわたって吹雪や霰を発生させ、敵にぶつける技『寒射寒撃雨霰』。本来なら味方も巻き込んでしまう諸刃の剣だけれど、私の読みが正しければ…
熔火「そう、その通り…氷で出来ている私にとって、吹雪は寧ろメディアラハンです!」
ベホマズンではなかった。ケアルガでもなかった。熔火ちゃんはどうやらメガテン派らしい…
…と、いうか。私今までこういうのに名前つけたこと無かったんだけど。これはまさか、熔火ちゃんのペースに乗せられてる…?
幼馴染ながら恐ろしい子…!
赤槌『ぐっ…吹雪で前がよく見えないわ…! だがっ』
『赤ハンマー』のハンマーが長く伸び、先端の鈍器が反対側にも出現する。そして彼女は、それを高速回転させた
赤槌『「回転木槌(ハンマーゴーランド)」! 』
すると扇風機のように――扇風機以上の強風が、暴風が発生し吹雪を吹き飛ばした
吹雪が晴れれば視界も開ける。視界が開けば当然――
赤槌『また私に恥ずかしい台詞をォォオオオオ!!! 死ね! 血に塗れて赤く染まれぇ!!』
高速回転するハンマーを瞬間移動を利用して『射出』する! そのハンマーは真っ直ぐ私の方に――
『くひっひ…そっちの『氷山空母』の契約者には効かないだろうけど、貴女には十分有効でしょう――だから先に片づけてあげるわよぉ!!!』
この速度――しかも遠隔操作が可能……避けるのは不可能ね。雪の壁でガード? いや、この回転では破壊されてしまうでしょうね…
その前に本体を倒す? ……いえ、さすがに間に合わないわ。一体どうしたら――
熔火「これ以上氷麗ちゃんを傷つけさせない……!」
すると私の目の前には熔火ちゃんの背中が。熔火ちゃんが身を挺して守ってくれた……
赤槌『くっひひひひひひひ……!』
『封氷被鎧』を展開し、回転するハンマーを受け止める熔火ちゃんだったが、しかし当の赤ハンマーは「笑っていた」。これは、嫌な予感……
赤槌『ひっ、引っ掛かったわねぇ! 必殺……鬼殺し火炎ハンマー!』
やはり予感は的中した。赤ハンマーの高速回転するハンマーが火を放ったのだ。摩擦によるものか、都市伝説の力かは定かではないけれど――
でも、熔火ちゃんの身体は氷……! 氷タイプに炎技は「こうかばつぐん」……つまり!
熔火「くっ……氷の私に対しては、炎による攻撃が有効……!」
まるで、あの時の破壊が無かったかのように。氷細工のように美しい少女が佇んでいた
赤槌『お前、は…! さっき確実に殺したはず…このハンマーで!
まさか、まさか私がしくじったとでも言うのか!? ああ恥ずかしい! 私がハンマーで仕留め損ねるなんて…!』
熔火「いえいえ、確かにしっかり砕かれましたよ、私は…。だけど残念なことに、私は砕かれたくらいじゃ死にません」
熔火ちゃんは赤ハンマーを指差しながら、ポーズを決めて、次の言葉を言い放つ
熔火「恥ずかしさで焼けてしまいそう? だったら安心してください。この私、氷山熔火の熱血で、貴女の頭を冷やして差し上げ…」
氷麗「熔火ちゃん!」
良かった。良かった。良かった…熔火ちゃんが生きてて、良かった……!
私は思わず、熔火ちゃんに抱きついていた
熔火「~///」
……ん? あれ? 熔火ちゃんから湯気が出てる? というか熔火ちゃんがどんどん痩せていってる?
熔火「駄目ッ…です氷麗ちゃん…こ、こんなところで…!」
雪女『……』
氷麗「え? な、何? どうしたの熔火ちゃん!? 大丈夫!?」
熔火ちゃんはなぜか顔を赤くしているし、雪女は冷ややかな目でこちらを睨んでいる。どうしたのかな…
よく分からないけどこのままではまずいと思ったので、熔火ちゃんから身体を離した
すると熔火ちゃんはしばし残念そうな表情をした後、自分の頭に手を当てる。すると熔火ちゃんの顔の赤みが消え、湯気も出なくなった
熔火「氷麗ちゃんにこんなところで抱きつかれるなんて……頭がフットーしちゃったよおっっ…」
氷麗「沸騰しちゃったの!?」
大事件だ。でも一体どうしてそんなことに…
雪女『氷麗、貴女はハーレムラノベの主人公ですか…?』
相変わらずの冷ややかなジト目で、雪女は私に言う
氷麗「え? ハーレムラノベに喩えるなら私はヒロインその3あたりだと思うんだけど」
クーデレポジション的な。自分で言うのもなんだけれど
熔火「こほん。では気を取り直して…。
『赤ハンマー』。私のこの煮え滾るような熱血で、貴女の頭を冷やして差しあげます……!」
どうやら立ち直った様子の熔火ちゃんは、律儀に待っていてくれた『赤ハンマー』に向き直り、ポーズをキメながらそう言った
赤槌『やってみなさい。貴女が私をどうこう出来ると思っているなら、そのふざけた幻想ごと叩いて打破して壊して砕いて、潰してあげる…って何言わせんのよ!』
顔をより一層真っ赤にしながらハンマーを構えつつ熔火ちゃんに飛び掛ってきた。照れるならやらなければいいのに…
熔火「『封氷被鎧(アイスタンク)』」
熔火ちゃんは身体に氷を鎧のように纏い、ハンマーを受け止めてしまう。もしかして、これが熔火ちゃんの契約都市伝説…? 氷を操るタイプの都市伝説は結構あるけど…
赤槌『くっ…硬い! ならば私も…「落槌注意(フリーフォール)」…ってどうしてさっきから私に恥ずかしい台詞ばかり言わせるのよぉ!』
熔火ちゃんの上空にハンマーを転送する『赤ハンマー』。そのハンマーは重力に従い、熔火ちゃんの頭上へ落ちる…咄嗟に避けようとする熔火ちゃんだったが、間に合わず、ハンマーは熔火ちゃんの頭部を砕く…
赤槌『ふんっ。口ほどにも無いわね。私を辱めるからそうなるの…え?』
頭部を砕かれたはずだが、見ると熔火ちゃんの首から上がどんどん凍っていき、頭が完成すると元の熔火ちゃんに戻った
熔火「今のは…痛かったですよ?」
赤槌『っ!! どうして!? 貴女それでも人間なの!?』
熔火「ええ、勿論人間ですよ。それにさっき言ったでしょう? 私は砕かれても死なないって」
何これ、私の応急処置なんか目じゃないくらいの再生能力…「氷で肉体を修復する」それが熔火ちゃんの能力!? それならさっきの雪女の発言にも合点がいく…!
ん? 「氷で肉体を修復する」? それってもしかして…じゃあ熔火ちゃんの契約都市伝説ってまさか…
氷麗「『ハボクック』…?」
私がぼそりと呟くと、『赤ハンマー』は何かに気が付いたように表情を変える
赤槌『「ハボクック」…!? まさか、貴女の契約都市伝説は「氷山空母」!? 計画のみに終わった、氷で出来たイギリスの航空母艦! 氷で出来ているから、「水さえあれば凍らせて損傷を補修できる」というあの…!』
熔火「おや、なかなか鋭いですね二人とも。ええそうですよ。私の契約都市伝説は『氷山空母』。私の身体は氷で出来ています」
雪のような美白と、氷のように透き通った肌を持つガラス細工のように美しい氷肌玉骨の少女、氷山熔火。けれどまさか、本当に肉体が氷で出来ていたなんて…!
熔火「だから私は冷気で空気中の水分を凍らせることが出来ますし…身体が砕かれても凍らせればすぐに元通りです。空中の水分の凍らせ方を工夫すればこんなことも出来るんですよ…?
食らいなさい、氷の巨砲、『銃凍砲(クレバスカノン)』!」
熔火は器用に氷の大砲を作ると、そこから氷の砲弾を飛ばす
赤槌『その程度!』
しかし『赤ハンマー』はそれを難なく打ち落とし、叩き壊す
氷麗「…! 『雪女』、私たちも…!」
雪女『はいはぁーい♪』
氷麗「『寒射寒撃雨霰(サンキューブリーザード)』!」
広範囲にわたって吹雪や霰を発生させ、敵にぶつける技『寒射寒撃雨霰』。本来なら味方も巻き込んでしまう諸刃の剣だけれど、私の読みが正しければ…
熔火「そう、その通り…氷で出来ている私にとって、吹雪は寧ろメディアラハンです!」
ベホマズンではなかった。ケアルガでもなかった。熔火ちゃんはどうやらメガテン派らしい…
…と、いうか。私今までこういうのに名前つけたこと無かったんだけど。これはまさか、熔火ちゃんのペースに乗せられてる…?
幼馴染ながら恐ろしい子…!
赤槌『ぐっ…吹雪で前がよく見えないわ…! だがっ』
『赤ハンマー』のハンマーが長く伸び、先端の鈍器が反対側にも出現する。そして彼女は、それを高速回転させた
赤槌『「回転木槌(ハンマーゴーランド)」! 』
すると扇風機のように――扇風機以上の強風が、暴風が発生し吹雪を吹き飛ばした
吹雪が晴れれば視界も開ける。視界が開けば当然――
赤槌『また私に恥ずかしい台詞をォォオオオオ!!! 死ね! 血に塗れて赤く染まれぇ!!』
高速回転するハンマーを瞬間移動を利用して『射出』する! そのハンマーは真っ直ぐ私の方に――
『くひっひ…そっちの『氷山空母』の契約者には効かないだろうけど、貴女には十分有効でしょう――だから先に片づけてあげるわよぉ!!!』
この速度――しかも遠隔操作が可能……避けるのは不可能ね。雪の壁でガード? いや、この回転では破壊されてしまうでしょうね…
その前に本体を倒す? ……いえ、さすがに間に合わないわ。一体どうしたら――
熔火「これ以上氷麗ちゃんを傷つけさせない……!」
すると私の目の前には熔火ちゃんの背中が。熔火ちゃんが身を挺して守ってくれた……
赤槌『くっひひひひひひひ……!』
『封氷被鎧』を展開し、回転するハンマーを受け止める熔火ちゃんだったが、しかし当の赤ハンマーは「笑っていた」。これは、嫌な予感……
赤槌『ひっ、引っ掛かったわねぇ! 必殺……鬼殺し火炎ハンマー!』
やはり予感は的中した。赤ハンマーの高速回転するハンマーが火を放ったのだ。摩擦によるものか、都市伝説の力かは定かではないけれど――
でも、熔火ちゃんの身体は氷……! 氷タイプに炎技は「こうかばつぐん」……つまり!
熔火「くっ……氷の私に対しては、炎による攻撃が有効……!」
「……とでも、思っていたんですか?」
炎のハンマーを受けて体が溶けているが、余裕そうなセリフを吐く熔火ちゃん。……強がりとかじゃ、ないよね……?
熔火「そんなに熱いのが好きならあげますよ……飛びっきりに熱いやつをね! 『指火山(マグマズルフラッシュ)ッ!』」
熔火ちゃんは指を銃のように構えると、指先から弾丸を飛ばしました。……マグマの。
赤槌『ああああああああああ!!!! 熱い熱い熱い熱いッ!!!
こ、氷使いじゃなかったの!? 多重契約者……しかも高温と低温、真逆の能力だなんて!』
確かにそうだ。氷とマグマ。高温と低温。凍結と燃焼。全くの真逆の能力――これらを同時に扱うのは非常に難易度が高く思える
熔火「まぁ、確かにこの二つの能力――高温と低温同士折り合いをつけるのは苦労しましたけどね」
赤槌『何なんだ、この能力……! 名前からしてマグマ……『ペレ』か?『ヘーパイストス』か? 『ミノア噴火』か?
くっ……! か、顔が焼ける……! 熱い熱い熱いッ!』
顔を押さえながら狼狽える『赤ハンマー』。熔火ちゃんのファインプレーだ
赤槌『い……いや、そうね。どんな都市伝説かなんて重要じゃない……それに、私の顔が焼けるように熱いのなんていつものことじゃないか……
最初から、恥ずかしさで……顔から火が出そうなんだか、ら!』
誰かと会話しているのか、あるいは自分自身に語りかけているのか――どちらにしてもともかく、赤ハンマーは冷静さを取り戻したようだ。
いや、冷静さというのは正確ではないと思う。羞恥心に苛まれているのだし。
まぁ、とにかく調子が戻った赤ハンマーは、やはりハンマーを飛ばしてきた。私に向かって
赤槌『あんたを狙ったところでそこの二重属性女が守ってくるんでしょう。だったら――そっちから壊すまでよ』
……ではなく、そのハンマーは熔火ちゃんに向かって飛んでいた
熔火「無駄ですよ。打撃だろうと斬撃だろうと炎だろうと氷だろうと、私に物理攻撃は通じません!」
『氷山空母』の能力によって、氷の鎧を身にまとい、ハンマーを受け止める熔火ちゃん
赤槌『――かかったわね?』
しかし、その瞬間、赤ハンマーの口角がにやりと上がった
熔火「んぐ……ああああああああああああああああ!!!」
すぐに熔火ちゃんの悲鳴が聞こえる。どういうこと? 熔火ちゃんに鈍器は通じないはずなのに……!
赤槌『ビンゴ。やっぱりね。いくら氷でできていようと所詮人間。電気を流せば痺れるわ。
名付けて「雷神の鉄槌(トールハンマー)」……じゃないわよ私! 何名づけてんのよ! ああ恥ずかしい恥ずかしい! 』
顔を真っ赤にして騒ぐ赤ハンマー。でも、それどころではなく、熔火ちゃんは電撃を浴びている。
確か『氷山空母』は海水を使用することを前提に作られているし、強度の関係上パルプが混じっている。
混じりけのある水は、特に海水は電気をよく通す――つまり電気は効果覿面っ!!
赤槌『さて……厄介な壁役を封じられたし、貴女だけなら余裕よ。傷口は凍らせてある程度処置したみたいだけど、
それでも打撲や骨折まではどうしようもないでしょう……? ただでさえ一度ぼこぼこにした相手、満身創痍とあれば、ねぇ?っと!』
そう言いながらハンマーを飛ばしてくる赤ハンマー。その通りだ。一応動くことはできるとはいえ、この身体では満足に動けない
氷麗「それはどうかしらね……『雪女』!」
雪女『いえす、まむ!』
何故か軍隊みたく返事した雪女は、能力で猛吹雪を生み出す――攻撃力よりも、視界を奪うことに重点をおいた吹雪を。
そして吹雪に紛れてハンマーをかわす。……『雪女』に手伝ってもらって。
赤槌『くっ……またしても! み、見えない……!』
さて、この状況、はっきり言ってどうしようもない。だから一時撤退だ。私達は吹雪に紛れ、その場を離れた。
そして、吹雪が止む。吹雪が止めば、視界も晴れる
赤槌『ん……? あいつらはどこに行った? 逃げたのか……おや』
何かを見つけた様子の赤ハンマー。いや、見つけたのは何かではなく誰か。具体的には熔火ちゃんだった
赤槌『おやおや。随分と薄情なお友達じゃないか。私のハンマーで痺れたこいつを置いていくなんてさぁ。じゃ、止めと行くわよ――』
先ほどの『雷神の鉄槌』を、今度は手に持ったハンマーから直接電撃を流し込んで行う赤ハンマー
赤槌『死になさい!! 感電死させた後で、たっぷり真っ赤に染めてあげ………!?』
「『噴火の魔剣(ヒートソード)』。そんなに真っ赤なのが好きなら、真っ赤な炎で焼いてあげますね?」
しかし、その瞬間、赤ハンマーは背後から燃え盛る剣で刺されていた。貫かれていた。そう、これは勿論――
赤槌『二重属性女……! な、何故……!? 確かにあなたは目の前で倒れて……!』
熔火「ああ、ごめんなさい。それ、偽物なんです」
氷麗「私が氷で作った、ね。私だって多重契約くらいしてるのよ?」
赤槌『多重契約者――貴女もか! いったい何の都市伝説……ぐふっ』
ただでさえ赤い身体を、鮮血と炎で赤く染めながら赤ハンマーは言う。
赤槌『さっきの剣、芯はマグマだった……それに氷で人を作る能力……この都市伝説は
……いや、どうでもいいわね。こうなったら切り札を切らせてもらうわよ――打撃だけどッ!』
血を吐きつつ、恥ずかしいと言いながらハンマーを飛ばしてくる赤ハンマー。一見すると、ただのハンマーだけど……これが切り札?
熔火「氷麗ちゃん、危ない!」
身体がぼろぼろになっている私は、ただのハンマーでも十分に危ない。なので、熔火ちゃんは私をかばった。
かばって、ハンマーを腕に当て、『氷山空母』の力で弾いた。
熔火「ぐはっ……!?」
その瞬間、熔火ちゃんの背中から胸にかけて、焼けたような穴が開いた――そう、丁度そこの赤ハンマーと同じように。
氷麗「……! あ、貴女……! 熔火ちゃんに何をしたの……!?」
赤槌『く、くふ、くっふひひひ……き、決まったみたいねぇ。私の切り札、「偽り写し記す大槌(ヴェルグ・アヴェスター)」ってね……。
私は「赤ハンマー」として当たり前のことをしただけよ……あの女を、私と同じようにした』
氷麗「ま、まさか……!」
赤ハンマーは、出会った相手を『ハンマーで殴り』、『自分と同じように』真っ赤にしてしまう現代妖怪。
まさか、この『ハンマーで殴る』という部分と、『自分と同じようにする』という部分を拡大解釈して……!?
赤槌『その通り……ハンマーを当てた相手に、自分の今のダメージと状態異常を写す。これが私の切り札よ……ぐふっ』
血を吐きながら、不気味に笑いながら、赤ハンマーは言う。
熔火「そんな……さっきから何度も氷で補修してるのに、傷が塞がらない……!」
そういえば、赤ハンマーの方に気を取られて、惨状の方に気が行って、気が付かなかったが、
よく見ると熔火ちゃんの胸部から滴り落ちる血は、何だが煮えたぎっているように見える。
いや、さらによく見るとこれは――マグマ?
赤槌『へぇ。そこの女、体は氷で出来てるのに血液はマグマなのね……ぐふっ。まるで、火山、だわ……
ねぇ、私も種明かししたんだし――教えてくれてもいいんじゃない? 貴女たちの、二つ目の契約都市伝説……げほっ』
氷麗「『つらら女』。雪女と近縁種、もしくは同一とされる妖怪」
熔火「ごほっ……ちぇ……『チェルフェ』……ですよ。チリの火山に住む、岩と炎で出来た怪物です……ぐふっ」
情報1に対し、2では割に合わない――とも思ったけれど、ここは素直に答えておいた。
別に隠すほどのことでもないし。
しかし、赤ハンマーの傷口が開くのと、悪化するのと比例するように――同調するように、熔火ちゃんの容体も悪化しているようだった。
まぁ、同じ傷なのだから当然か。……しかし、その悪化も『氷山空母』で治せないところを見ると、本家本元の『偽り写し記す万象』より使い勝手がよさそうだ。
赤槌『貴女たちにはこっぴどくやられたけれど――それでも私と同じにできた。
叩き潰して、真っ赤に塗りつぶせた。……だから、今回はこのあたりで満足しておきましょう。
でも、覚えておきなさい――』
血まみれで、息も絶え絶えに、生まれたての――死にかけの小鹿のように、赤ハンマーは捨て台詞を吐いた
赤槌『次は勝つ。完膚なきまでに潰す。叩いて潰して塗りつぶす。真っ赤に深紅に紅蓮に――鉄槌下して塗り上げる。
首を洗って待ってなさい。腕を磨いてまた来るわ』
流血に慣れたのか――あるいは、都市伝説ゆえか。先ほどと打って変わって、途切れることなく言った。
そして、一呼吸おいて、
赤槌『それじゃあ、また会いましょう……って、何格好つけてるのよ、私! 負けたくせに! 最後のも一矢報いただけだし(ハンマーだけど)、
結局2つ目の都市伝説の謎解きは諦めちゃったし――格好つけられる要素がないでしょう!
何を大物ぶってるのよ、恥ずかしい恥ずかしい恥ず…………』
と、ただでさえ赤い顔を一層紅く染めながら、騒いでいた、喚いていた赤ハンマーは突然にも、忽然と姿を消してしまった。
文字通り跡形もない――ほかの誰かに消滅させられた、とは考えにくいだろう。それならばもっと反応していいはずだ。
少なくともただで不意打ちでやられるような都市伝説ではない――そう言い切れる。そのくらいには強かった。
氷麗「空間移動系、かな……」
私の部活仲間であり、同級生であるところの、任天堂寺君――彼の契約都市伝説、『ゲーム脳』を思い出した。
これは敵による攻撃でなく、避難、逃亡であると考える。彼のそれと同じ、もしくは似た、『空間移動系』――あるいは、『異空間生成系』の能力であると推察した。
でも、赤ハンマーにはそんな逸話ないわよね……。もしかして、あの赤ハンマー……
と、思案する私だが、その思考は強制的に中断させられることとなる。
熔火「つ、ら、ら、ちゃーん!!!」
氷麗「ぐえっ」
ぐえっとか言ってしまった。乙女チックの欠片もないし、女子力なんて微塵もなかった。
でも許してほしい。傷だらけの肉体に、自分と同じくらいの身長、体重の女の子が飛びついては、こんな声も出ようというものだ。
え? 何キロか、ですって? 女の子にそういうことを聞くものじゃない――と、取ってつけたような女子力を発揮しておきましょう。
熔火「無事でよかったよー氷麗ちゃん! 心配したんだからね! 痛くなかった?」
痛いのは今だし、無事でよかったも心配したも私の台詞だ。
氷麗「それは私の台詞だよ――本当、死んじゃったかと思ったんだから。
ああ、そういえば――もう大丈夫なの? さっきの傷……」
熔火「ええ。どうやら永続するタイプの呪いじゃないみたいですね。あるいは射程外に出たのかも」
氷麗「へぇ……。それにしても、ハンマーの遠隔操作までならまだしも、発火や発電、伝説を拡大解釈、曲解した呪いに、そして最後の消失マジック。
私にはどうも、あの都市伝説が……『赤ハンマー』が、野生の都市伝説とは思えないのよね」
熔火「確かにそこは私も気になっていました。おそらく契約者持ち――それも、多重契約者だと思いますよ」
炎までならギリギリ曲解と言えなくもなさそうですけれど、発電や消失までとなると、ね……
と、熔火ちゃんは言った。直情的で情熱だが、冷静で思慮深いのが彼女、氷山熔火ちゃんなのだ。
その矛盾した人間性こそが、性格こそが、あのつじつまの合わない二つの都市伝説――低温と高温、『氷山空母』と『チェルフェ』を同時に扱える理由だろうか。
気になったので、私は熔火ちゃんに聞いてみた。
すると、別に隠すほどのことでもなかったらしく、
熔火「そうですね。私が先に契約したのは『氷山空母』の方ですけれど、この二つの都市伝説。
『氷山空母』と『チェルフェ』――氷の体と熔岩の血液。氷を融かすマグマと、マグマを固める氷。
この二つに折り合いをつけるのは、相当苦労しました。
折り合いをつけられたのは、私の性質のこともありそうですけれど――もう一つの、3つ目の契約都市伝説も、理由の一つ、きっかけの一端でしょうね」
一呼吸置き、
熔火「『マクスウェルの悪魔』――熱力学第二法則のエントロピー増大則に逆らう、化学の悪魔。温度差を生む都市伝説。それがあったからこそ、ここまでうまく馴染んだんだと思います」
計画中止に終わった兵器に、火山のUMAに、思考実験――性質どころか種類も違う、3つの都市伝説を同時に操るだなんて。
親友ながら恐ろしい。
氷麗「熔火ちゃんはすごいなぁ……私の契約都市伝説は、みんな似通ったものなのに」
冷気を操る『雪女』、氷を人間に変える『つらら女』。似通ったというか、同じといってもいいくらいだ。
熔火「氷麗ちゃんもすごいですよ。似たような2つの都市伝説から、全く別の能力を解釈するなんて……格好いいですよ」
格好いいと言われるほどのことでもないと思うが、しかし褒められて悪い気はしない。
否定しないのは熔火ちゃんらしいと思ったし、女子に対して格好いいはどうかとも思ったけれど。
氷麗「くすっ……ありがと」
私は小さく微笑んで、素直にお礼を言った。
熔火「つ、氷麗ちゃん……」
熔火ちゃんの頭から湯気が出た。……顔が若干赤い?
扱えてると思ったけれど、扱い切れてないのかしら?
雪女『鈍いですね……心まで氷柱ですか、貴女は』
と、ひどいことを言う『雪女』のことは無視した。私にだって感情くらいある。
名前は氷柱だが、心は雪解け水だ。
熔火「あ……あの……その……」
どうやらもじもじしている様子の熔火ちゃん。花を摘みに行きたいのか――と聞くほど、私はデリカシーに欠けてない。
花も恥じらう乙女なのだ。さりげなく行かせてあげるべきだろう――
熔火「その……今から一緒に、お食事、行きま、せんか……?」
氷麗「そんなにかしこまらなくても、改まらなくても、もちろんOKよ」
友達なんだし、顔を赤らめながら、もじもじしながら言う必要はないと思うのだけれど。
まぁ、改めて誘うのも小恥ずかしいということなのかな?
氷麗「じゃ、行こうか?」
と、私は熔火ちゃんの手を引いた――すると、じゅっという音と共に、熔火ちゃんの頭が消滅した。
というか蒸発した――全然制御できてない。仕方ない子ね……
氷麗「もう……折り合い付けたんじゃなかったの?」
私は氷麗ちゃんの頭に――頭だった位置に手をかざして、冷気を放った。
冷気を操れるのは何も『雪女』だけではないのだ。
熔火「あ……ありがとうございます」
頭部は氷に戻ったが、目はまだとろーんとしている。まぁ、そこは自分でどうにかできるだろう。
瞬きとかすれば。
氷麗「しっかりしてよね……大好きな熔火ちゃんが蒸発しちゃったら、すっごく悲しいんだから」
涙腺も表情筋も固い私も、大声で泣き喚いちゃうわよ。そんな格好悪い真似、させないでよね。そう言った。
熔火「あ、あぅ……」
またもや真っ赤になって湯気を出してる熔火ちゃんだが、流石に高校生にもなってあぅ……はないでしょ。
ライトノベルか。
そういうのが許されるのはフィクションだけだと思うが、まぁ可愛いのでよしとした。
氷麗「それで、どこに行こうか? 満身創痍だけれど、まぁ、傷をいやすためにもデートと洒落込みましょうか」
その後、食事に行くまでに何度も熔火ちゃんの頭部再生に手を焼いた――冷やした。
まったく、本当に……熔火ちゃんは、私がいないと駄目なんだから。
炎のハンマーを受けて体が溶けているが、余裕そうなセリフを吐く熔火ちゃん。……強がりとかじゃ、ないよね……?
熔火「そんなに熱いのが好きならあげますよ……飛びっきりに熱いやつをね! 『指火山(マグマズルフラッシュ)ッ!』」
熔火ちゃんは指を銃のように構えると、指先から弾丸を飛ばしました。……マグマの。
赤槌『ああああああああああ!!!! 熱い熱い熱い熱いッ!!!
こ、氷使いじゃなかったの!? 多重契約者……しかも高温と低温、真逆の能力だなんて!』
確かにそうだ。氷とマグマ。高温と低温。凍結と燃焼。全くの真逆の能力――これらを同時に扱うのは非常に難易度が高く思える
熔火「まぁ、確かにこの二つの能力――高温と低温同士折り合いをつけるのは苦労しましたけどね」
赤槌『何なんだ、この能力……! 名前からしてマグマ……『ペレ』か?『ヘーパイストス』か? 『ミノア噴火』か?
くっ……! か、顔が焼ける……! 熱い熱い熱いッ!』
顔を押さえながら狼狽える『赤ハンマー』。熔火ちゃんのファインプレーだ
赤槌『い……いや、そうね。どんな都市伝説かなんて重要じゃない……それに、私の顔が焼けるように熱いのなんていつものことじゃないか……
最初から、恥ずかしさで……顔から火が出そうなんだか、ら!』
誰かと会話しているのか、あるいは自分自身に語りかけているのか――どちらにしてもともかく、赤ハンマーは冷静さを取り戻したようだ。
いや、冷静さというのは正確ではないと思う。羞恥心に苛まれているのだし。
まぁ、とにかく調子が戻った赤ハンマーは、やはりハンマーを飛ばしてきた。私に向かって
赤槌『あんたを狙ったところでそこの二重属性女が守ってくるんでしょう。だったら――そっちから壊すまでよ』
……ではなく、そのハンマーは熔火ちゃんに向かって飛んでいた
熔火「無駄ですよ。打撃だろうと斬撃だろうと炎だろうと氷だろうと、私に物理攻撃は通じません!」
『氷山空母』の能力によって、氷の鎧を身にまとい、ハンマーを受け止める熔火ちゃん
赤槌『――かかったわね?』
しかし、その瞬間、赤ハンマーの口角がにやりと上がった
熔火「んぐ……ああああああああああああああああ!!!」
すぐに熔火ちゃんの悲鳴が聞こえる。どういうこと? 熔火ちゃんに鈍器は通じないはずなのに……!
赤槌『ビンゴ。やっぱりね。いくら氷でできていようと所詮人間。電気を流せば痺れるわ。
名付けて「雷神の鉄槌(トールハンマー)」……じゃないわよ私! 何名づけてんのよ! ああ恥ずかしい恥ずかしい! 』
顔を真っ赤にして騒ぐ赤ハンマー。でも、それどころではなく、熔火ちゃんは電撃を浴びている。
確か『氷山空母』は海水を使用することを前提に作られているし、強度の関係上パルプが混じっている。
混じりけのある水は、特に海水は電気をよく通す――つまり電気は効果覿面っ!!
赤槌『さて……厄介な壁役を封じられたし、貴女だけなら余裕よ。傷口は凍らせてある程度処置したみたいだけど、
それでも打撲や骨折まではどうしようもないでしょう……? ただでさえ一度ぼこぼこにした相手、満身創痍とあれば、ねぇ?っと!』
そう言いながらハンマーを飛ばしてくる赤ハンマー。その通りだ。一応動くことはできるとはいえ、この身体では満足に動けない
氷麗「それはどうかしらね……『雪女』!」
雪女『いえす、まむ!』
何故か軍隊みたく返事した雪女は、能力で猛吹雪を生み出す――攻撃力よりも、視界を奪うことに重点をおいた吹雪を。
そして吹雪に紛れてハンマーをかわす。……『雪女』に手伝ってもらって。
赤槌『くっ……またしても! み、見えない……!』
さて、この状況、はっきり言ってどうしようもない。だから一時撤退だ。私達は吹雪に紛れ、その場を離れた。
そして、吹雪が止む。吹雪が止めば、視界も晴れる
赤槌『ん……? あいつらはどこに行った? 逃げたのか……おや』
何かを見つけた様子の赤ハンマー。いや、見つけたのは何かではなく誰か。具体的には熔火ちゃんだった
赤槌『おやおや。随分と薄情なお友達じゃないか。私のハンマーで痺れたこいつを置いていくなんてさぁ。じゃ、止めと行くわよ――』
先ほどの『雷神の鉄槌』を、今度は手に持ったハンマーから直接電撃を流し込んで行う赤ハンマー
赤槌『死になさい!! 感電死させた後で、たっぷり真っ赤に染めてあげ………!?』
「『噴火の魔剣(ヒートソード)』。そんなに真っ赤なのが好きなら、真っ赤な炎で焼いてあげますね?」
しかし、その瞬間、赤ハンマーは背後から燃え盛る剣で刺されていた。貫かれていた。そう、これは勿論――
赤槌『二重属性女……! な、何故……!? 確かにあなたは目の前で倒れて……!』
熔火「ああ、ごめんなさい。それ、偽物なんです」
氷麗「私が氷で作った、ね。私だって多重契約くらいしてるのよ?」
赤槌『多重契約者――貴女もか! いったい何の都市伝説……ぐふっ』
ただでさえ赤い身体を、鮮血と炎で赤く染めながら赤ハンマーは言う。
赤槌『さっきの剣、芯はマグマだった……それに氷で人を作る能力……この都市伝説は
……いや、どうでもいいわね。こうなったら切り札を切らせてもらうわよ――打撃だけどッ!』
血を吐きつつ、恥ずかしいと言いながらハンマーを飛ばしてくる赤ハンマー。一見すると、ただのハンマーだけど……これが切り札?
熔火「氷麗ちゃん、危ない!」
身体がぼろぼろになっている私は、ただのハンマーでも十分に危ない。なので、熔火ちゃんは私をかばった。
かばって、ハンマーを腕に当て、『氷山空母』の力で弾いた。
熔火「ぐはっ……!?」
その瞬間、熔火ちゃんの背中から胸にかけて、焼けたような穴が開いた――そう、丁度そこの赤ハンマーと同じように。
氷麗「……! あ、貴女……! 熔火ちゃんに何をしたの……!?」
赤槌『く、くふ、くっふひひひ……き、決まったみたいねぇ。私の切り札、「偽り写し記す大槌(ヴェルグ・アヴェスター)」ってね……。
私は「赤ハンマー」として当たり前のことをしただけよ……あの女を、私と同じようにした』
氷麗「ま、まさか……!」
赤ハンマーは、出会った相手を『ハンマーで殴り』、『自分と同じように』真っ赤にしてしまう現代妖怪。
まさか、この『ハンマーで殴る』という部分と、『自分と同じようにする』という部分を拡大解釈して……!?
赤槌『その通り……ハンマーを当てた相手に、自分の今のダメージと状態異常を写す。これが私の切り札よ……ぐふっ』
血を吐きながら、不気味に笑いながら、赤ハンマーは言う。
熔火「そんな……さっきから何度も氷で補修してるのに、傷が塞がらない……!」
そういえば、赤ハンマーの方に気を取られて、惨状の方に気が行って、気が付かなかったが、
よく見ると熔火ちゃんの胸部から滴り落ちる血は、何だが煮えたぎっているように見える。
いや、さらによく見るとこれは――マグマ?
赤槌『へぇ。そこの女、体は氷で出来てるのに血液はマグマなのね……ぐふっ。まるで、火山、だわ……
ねぇ、私も種明かししたんだし――教えてくれてもいいんじゃない? 貴女たちの、二つ目の契約都市伝説……げほっ』
氷麗「『つらら女』。雪女と近縁種、もしくは同一とされる妖怪」
熔火「ごほっ……ちぇ……『チェルフェ』……ですよ。チリの火山に住む、岩と炎で出来た怪物です……ぐふっ」
情報1に対し、2では割に合わない――とも思ったけれど、ここは素直に答えておいた。
別に隠すほどのことでもないし。
しかし、赤ハンマーの傷口が開くのと、悪化するのと比例するように――同調するように、熔火ちゃんの容体も悪化しているようだった。
まぁ、同じ傷なのだから当然か。……しかし、その悪化も『氷山空母』で治せないところを見ると、本家本元の『偽り写し記す万象』より使い勝手がよさそうだ。
赤槌『貴女たちにはこっぴどくやられたけれど――それでも私と同じにできた。
叩き潰して、真っ赤に塗りつぶせた。……だから、今回はこのあたりで満足しておきましょう。
でも、覚えておきなさい――』
血まみれで、息も絶え絶えに、生まれたての――死にかけの小鹿のように、赤ハンマーは捨て台詞を吐いた
赤槌『次は勝つ。完膚なきまでに潰す。叩いて潰して塗りつぶす。真っ赤に深紅に紅蓮に――鉄槌下して塗り上げる。
首を洗って待ってなさい。腕を磨いてまた来るわ』
流血に慣れたのか――あるいは、都市伝説ゆえか。先ほどと打って変わって、途切れることなく言った。
そして、一呼吸おいて、
赤槌『それじゃあ、また会いましょう……って、何格好つけてるのよ、私! 負けたくせに! 最後のも一矢報いただけだし(ハンマーだけど)、
結局2つ目の都市伝説の謎解きは諦めちゃったし――格好つけられる要素がないでしょう!
何を大物ぶってるのよ、恥ずかしい恥ずかしい恥ず…………』
と、ただでさえ赤い顔を一層紅く染めながら、騒いでいた、喚いていた赤ハンマーは突然にも、忽然と姿を消してしまった。
文字通り跡形もない――ほかの誰かに消滅させられた、とは考えにくいだろう。それならばもっと反応していいはずだ。
少なくともただで不意打ちでやられるような都市伝説ではない――そう言い切れる。そのくらいには強かった。
氷麗「空間移動系、かな……」
私の部活仲間であり、同級生であるところの、任天堂寺君――彼の契約都市伝説、『ゲーム脳』を思い出した。
これは敵による攻撃でなく、避難、逃亡であると考える。彼のそれと同じ、もしくは似た、『空間移動系』――あるいは、『異空間生成系』の能力であると推察した。
でも、赤ハンマーにはそんな逸話ないわよね……。もしかして、あの赤ハンマー……
と、思案する私だが、その思考は強制的に中断させられることとなる。
熔火「つ、ら、ら、ちゃーん!!!」
氷麗「ぐえっ」
ぐえっとか言ってしまった。乙女チックの欠片もないし、女子力なんて微塵もなかった。
でも許してほしい。傷だらけの肉体に、自分と同じくらいの身長、体重の女の子が飛びついては、こんな声も出ようというものだ。
え? 何キロか、ですって? 女の子にそういうことを聞くものじゃない――と、取ってつけたような女子力を発揮しておきましょう。
熔火「無事でよかったよー氷麗ちゃん! 心配したんだからね! 痛くなかった?」
痛いのは今だし、無事でよかったも心配したも私の台詞だ。
氷麗「それは私の台詞だよ――本当、死んじゃったかと思ったんだから。
ああ、そういえば――もう大丈夫なの? さっきの傷……」
熔火「ええ。どうやら永続するタイプの呪いじゃないみたいですね。あるいは射程外に出たのかも」
氷麗「へぇ……。それにしても、ハンマーの遠隔操作までならまだしも、発火や発電、伝説を拡大解釈、曲解した呪いに、そして最後の消失マジック。
私にはどうも、あの都市伝説が……『赤ハンマー』が、野生の都市伝説とは思えないのよね」
熔火「確かにそこは私も気になっていました。おそらく契約者持ち――それも、多重契約者だと思いますよ」
炎までならギリギリ曲解と言えなくもなさそうですけれど、発電や消失までとなると、ね……
と、熔火ちゃんは言った。直情的で情熱だが、冷静で思慮深いのが彼女、氷山熔火ちゃんなのだ。
その矛盾した人間性こそが、性格こそが、あのつじつまの合わない二つの都市伝説――低温と高温、『氷山空母』と『チェルフェ』を同時に扱える理由だろうか。
気になったので、私は熔火ちゃんに聞いてみた。
すると、別に隠すほどのことでもなかったらしく、
熔火「そうですね。私が先に契約したのは『氷山空母』の方ですけれど、この二つの都市伝説。
『氷山空母』と『チェルフェ』――氷の体と熔岩の血液。氷を融かすマグマと、マグマを固める氷。
この二つに折り合いをつけるのは、相当苦労しました。
折り合いをつけられたのは、私の性質のこともありそうですけれど――もう一つの、3つ目の契約都市伝説も、理由の一つ、きっかけの一端でしょうね」
一呼吸置き、
熔火「『マクスウェルの悪魔』――熱力学第二法則のエントロピー増大則に逆らう、化学の悪魔。温度差を生む都市伝説。それがあったからこそ、ここまでうまく馴染んだんだと思います」
計画中止に終わった兵器に、火山のUMAに、思考実験――性質どころか種類も違う、3つの都市伝説を同時に操るだなんて。
親友ながら恐ろしい。
氷麗「熔火ちゃんはすごいなぁ……私の契約都市伝説は、みんな似通ったものなのに」
冷気を操る『雪女』、氷を人間に変える『つらら女』。似通ったというか、同じといってもいいくらいだ。
熔火「氷麗ちゃんもすごいですよ。似たような2つの都市伝説から、全く別の能力を解釈するなんて……格好いいですよ」
格好いいと言われるほどのことでもないと思うが、しかし褒められて悪い気はしない。
否定しないのは熔火ちゃんらしいと思ったし、女子に対して格好いいはどうかとも思ったけれど。
氷麗「くすっ……ありがと」
私は小さく微笑んで、素直にお礼を言った。
熔火「つ、氷麗ちゃん……」
熔火ちゃんの頭から湯気が出た。……顔が若干赤い?
扱えてると思ったけれど、扱い切れてないのかしら?
雪女『鈍いですね……心まで氷柱ですか、貴女は』
と、ひどいことを言う『雪女』のことは無視した。私にだって感情くらいある。
名前は氷柱だが、心は雪解け水だ。
熔火「あ……あの……その……」
どうやらもじもじしている様子の熔火ちゃん。花を摘みに行きたいのか――と聞くほど、私はデリカシーに欠けてない。
花も恥じらう乙女なのだ。さりげなく行かせてあげるべきだろう――
熔火「その……今から一緒に、お食事、行きま、せんか……?」
氷麗「そんなにかしこまらなくても、改まらなくても、もちろんOKよ」
友達なんだし、顔を赤らめながら、もじもじしながら言う必要はないと思うのだけれど。
まぁ、改めて誘うのも小恥ずかしいということなのかな?
氷麗「じゃ、行こうか?」
と、私は熔火ちゃんの手を引いた――すると、じゅっという音と共に、熔火ちゃんの頭が消滅した。
というか蒸発した――全然制御できてない。仕方ない子ね……
氷麗「もう……折り合い付けたんじゃなかったの?」
私は氷麗ちゃんの頭に――頭だった位置に手をかざして、冷気を放った。
冷気を操れるのは何も『雪女』だけではないのだ。
熔火「あ……ありがとうございます」
頭部は氷に戻ったが、目はまだとろーんとしている。まぁ、そこは自分でどうにかできるだろう。
瞬きとかすれば。
氷麗「しっかりしてよね……大好きな熔火ちゃんが蒸発しちゃったら、すっごく悲しいんだから」
涙腺も表情筋も固い私も、大声で泣き喚いちゃうわよ。そんな格好悪い真似、させないでよね。そう言った。
熔火「あ、あぅ……」
またもや真っ赤になって湯気を出してる熔火ちゃんだが、流石に高校生にもなってあぅ……はないでしょ。
ライトノベルか。
そういうのが許されるのはフィクションだけだと思うが、まぁ可愛いのでよしとした。
氷麗「それで、どこに行こうか? 満身創痍だけれど、まぁ、傷をいやすためにもデートと洒落込みましょうか」
その後、食事に行くまでに何度も熔火ちゃんの頭部再生に手を焼いた――冷やした。
まったく、本当に……熔火ちゃんは、私がいないと駄目なんだから。
続く