「ジャンクフードジャンキー」
人通りの少ない道を、一人の女性が歩いていた。彼女はハンバーガー……おそらくテリヤキであろう、を頬張っている。
食べ歩きだ。お世辞にも行儀がいいとは言えないが、器用に欠片のひとつもこぼさず、口元を汚すこともなく食べている。
彼女の名は六手 理亜(むて りあ)。あだ名はロッテリア。が、しかし別に□ッテリア派というわけではない。
マ○ドナルドでも、モス○ーガーでも、とにかくジャンクフードが好物なのだ。
「…………」
黙々とハンバーガーをもぐもぐする理亜。食べ物を口に入れたまま喋らないあたり行儀がいい。
いや、食べ歩きしている時点で行儀も何もあったものじゃないが。
「…………ごちそうさまでした」
どうやら食べ終わったようだ。指に付いた塩気を舐めとる。やはり行儀はよくないのか。
「美味しかった。こんなこと、お母さまにばれたら怒られてしまいますわ。外だからこそできる贅沢ですわネ」
なんと、若干片言だがお嬢様口調である。育ちがいいのだろうか。『お嬢様が庶民的食べ物をとても気に入る』だなんて、それこそ都市伝説だが。
「さて、そろそろ帰り――――」
バーガーの余韻に浸りながら歩く理亜は気づかなかった。気付なかった。そこに仕掛けられたトラップに。―――ピアノ線に。
頑丈なピアノ線が理亜の首元に引っ掛かり。そのまま歩く勢いと理亜自身の体重により―――
ぷつん。
いつの時代も終わりはあっけないもので。残念ながら理亜の人生はここで終わってしまった。
理亜の首が宙を舞ったことを確認し、満足したのか、ピアノ線の犯人――『首なしライダー』は、バイクに跨り、その場を後に
食べ歩きだ。お世辞にも行儀がいいとは言えないが、器用に欠片のひとつもこぼさず、口元を汚すこともなく食べている。
彼女の名は六手 理亜(むて りあ)。あだ名はロッテリア。が、しかし別に□ッテリア派というわけではない。
マ○ドナルドでも、モス○ーガーでも、とにかくジャンクフードが好物なのだ。
「…………」
黙々とハンバーガーをもぐもぐする理亜。食べ物を口に入れたまま喋らないあたり行儀がいい。
いや、食べ歩きしている時点で行儀も何もあったものじゃないが。
「…………ごちそうさまでした」
どうやら食べ終わったようだ。指に付いた塩気を舐めとる。やはり行儀はよくないのか。
「美味しかった。こんなこと、お母さまにばれたら怒られてしまいますわ。外だからこそできる贅沢ですわネ」
なんと、若干片言だがお嬢様口調である。育ちがいいのだろうか。『お嬢様が庶民的食べ物をとても気に入る』だなんて、それこそ都市伝説だが。
「さて、そろそろ帰り――――」
バーガーの余韻に浸りながら歩く理亜は気づかなかった。気付なかった。そこに仕掛けられたトラップに。―――ピアノ線に。
頑丈なピアノ線が理亜の首元に引っ掛かり。そのまま歩く勢いと理亜自身の体重により―――
ぷつん。
いつの時代も終わりはあっけないもので。残念ながら理亜の人生はここで終わってしまった。
理亜の首が宙を舞ったことを確認し、満足したのか、ピアノ線の犯人――『首なしライダー』は、バイクに跨り、その場を後に
しようとしたが、できなかった。なぜなら腕に噛み付かれていたからだ。
誰に?
この場で噛み付くことができる者など一人しかいない。そう、理亜に、である。
いや、そんなはずはない。たしかにこいつの首は飛ばしたはずだ。ピアノ線で、確実に!
焦る気持ちを抑え、自らの腕を確認する『首なしライダー』するとそこには、力いっぱい噛み付く理亜の頭部が存在していた。
否、それでけではない。何か様子がおかしい? と、怪訝に思う間もなく。彼女の頭部が縄のような形に変質した。
縄はどんどん伸びてゆき、地面に落ちたはずの理亜の肉片を回収しつつ。最終的に彼女の身体と繋がり。
その過程で、『首なしライダー』は引きずられ、引き寄せられた。
そして、『首なしライダー』の腕を縛っていた縄のようなものは、理亜の身体に戻ると、何事もなかったかのように、頭部が再構成された。
「マったく、危ないですわネ。『首なしライダー』。全く、ゆっくり家にも帰れませんわ」
表面だけではなく、内部にも問題はないようで。彼女は首が取れた後だというのに、当たり前のように喋ってみせた。
そのことが、『首なしライダー』をますます戦慄させる。
「まぁ、いいでしょう。食後のいい運動になりそうですしネ―――」
いや、いい。こいつが自分に首を切られても無事だったのは確か。ならば、そのカラクリを見極めるまで。
と言わんばかりに、『首なしライダー』は複数のピアノ線を展開する。
ぷつん。
理亜の首が、腕が、腹が、足が。同時に真っ二つに切り裂かれる。
――――いや。よく見るとそうではない。(首がないのに『見る』というのもおかしな話だが)
首元が、腕が、足が、腹部が。自分からばらけている! 『ろくろ首』の拡大解釈か? 『泳ぐ切り身』の曲解か?
『首なしライダー』は思案する。そんな彼を尻目に、
「あらまぁ、セっかちですこと!」
そう言って理亜は自らの腕を飛ばす。飛行できるというわけではないようで、地面を蹴るようにして勢いをつけ、『首なしライダー』に迫る。
近づく腕。その切り口。よく見れば、何かの集合体――――これは、ミミズだ!
ピアノ線を使って腕を更にばらし、攻撃を回避する『首なしライダー』。
「………!」
身体がミミズになるとはな! とでも言いたげに向き直る『首なしライダー』。
「ええ、その通りですわ。この通り、私の肉体はミミズで構成されていますの」
理亜が『首なしライダー』ににじり寄る。ライダーは反撃の機会を窺う。
「『ハンバーガーの肉』。それが私の契約都市伝説の総称ですわ。今回のこれは『ミミズバーガー』と『ハンバーガーの肉には人肉が混じっている』ですわね」
歩きながら、解説を始める理亜。体が少し小さくなったものの、五体満足の状態に戻っている。先ほどの腕を回収したのだろうか。
「都市伝説が契約後に『解釈』によってその能力を変質させることは御存じでシょう?
たとえば『拡大解釈』。3番目のトイレを3回ノックして呼びかけると出てくる『トイレの花子さん』を『契約者の呼びかけでそこに現れる』能力にする、とか。
たとえば『曲解』。人を道に迷わせる『八幡の藪知らず』を『攻撃を道に迷わせ命中させない』能力にしたりとか、そういうのですわ」
黙って(元々喋れないが)話を聞きながら、ピアノ線を用意する『首なしライダー』。どんどん近づいて来い。射程距離に入ったら、すぐに。
「私の場合はそうですわね。連想? は少し違うのかしら。まあともかく、『歪んだ理論、証明』といったところでシょうか。
『ハンバーガーの肉にはミミズが使われている』。『ハンバーガーの肉には人肉が使われている』。『ゆえに、人間の肉はミミズで出来ている』―――とまぁ、こんな具合ですわ」
そろそろだ、そろそろこのピアノ線で―――と思う『首なしライダー』だが、ここでふと、ある疑問が存在しない頭をよぎる。
待て、この女。どうして自分が尋ねたわけでも、ましてや既に勝敗が決しているわけでもないのに、自分の能力を解説し始めたのだ? まさか―――
と、気づいた時にはもう遅く。『首なしライダー』は直立ができなくなっていて、その場に倒れこんだ。
「ああ、そうそう。言い忘れていましたわネ。『ハンバーガーの肉にはネズミの肉が使われている』という説もありまスの。
先ほどあなたに私の腕が切られた時―――ミミズを少々、体内に潜入させていただきましたわ。それをネズミに変え、あなたの体内を貪った―――」
と、ここで理亜は歩くのをやめる。
「―――なんて、もう聞こえていませんわネ、ええ。checkmate、ですわネ」
『首なしライダー』。頭部がないにもかかわらず、正確にバイクを運転する彼らは、視覚や平衡感覚に関しては群を抜いているが、
しかし逆に『触覚』――特に痛覚は鈍感なのだ。でなければ、常に外気にさらされた首の切り口の痛みで、まともに行動することができない。
今回はそのことが仇となった。
「oh,もうこんな時間ですわ。急いで帰りませんと。……近道、してしまいまショウ」
と、理亜は体をミミズに分解し―――猫の姿に再構成し。屋根伝いを身軽に駆けていった。
ハンバーガーの肉には、猫の肉が使われている。いやはや、ジャンクフードの風評は尽きないものだ。
誰に?
この場で噛み付くことができる者など一人しかいない。そう、理亜に、である。
いや、そんなはずはない。たしかにこいつの首は飛ばしたはずだ。ピアノ線で、確実に!
焦る気持ちを抑え、自らの腕を確認する『首なしライダー』するとそこには、力いっぱい噛み付く理亜の頭部が存在していた。
否、それでけではない。何か様子がおかしい? と、怪訝に思う間もなく。彼女の頭部が縄のような形に変質した。
縄はどんどん伸びてゆき、地面に落ちたはずの理亜の肉片を回収しつつ。最終的に彼女の身体と繋がり。
その過程で、『首なしライダー』は引きずられ、引き寄せられた。
そして、『首なしライダー』の腕を縛っていた縄のようなものは、理亜の身体に戻ると、何事もなかったかのように、頭部が再構成された。
「マったく、危ないですわネ。『首なしライダー』。全く、ゆっくり家にも帰れませんわ」
表面だけではなく、内部にも問題はないようで。彼女は首が取れた後だというのに、当たり前のように喋ってみせた。
そのことが、『首なしライダー』をますます戦慄させる。
「まぁ、いいでしょう。食後のいい運動になりそうですしネ―――」
いや、いい。こいつが自分に首を切られても無事だったのは確か。ならば、そのカラクリを見極めるまで。
と言わんばかりに、『首なしライダー』は複数のピアノ線を展開する。
ぷつん。
理亜の首が、腕が、腹が、足が。同時に真っ二つに切り裂かれる。
――――いや。よく見るとそうではない。(首がないのに『見る』というのもおかしな話だが)
首元が、腕が、足が、腹部が。自分からばらけている! 『ろくろ首』の拡大解釈か? 『泳ぐ切り身』の曲解か?
『首なしライダー』は思案する。そんな彼を尻目に、
「あらまぁ、セっかちですこと!」
そう言って理亜は自らの腕を飛ばす。飛行できるというわけではないようで、地面を蹴るようにして勢いをつけ、『首なしライダー』に迫る。
近づく腕。その切り口。よく見れば、何かの集合体――――これは、ミミズだ!
ピアノ線を使って腕を更にばらし、攻撃を回避する『首なしライダー』。
「………!」
身体がミミズになるとはな! とでも言いたげに向き直る『首なしライダー』。
「ええ、その通りですわ。この通り、私の肉体はミミズで構成されていますの」
理亜が『首なしライダー』ににじり寄る。ライダーは反撃の機会を窺う。
「『ハンバーガーの肉』。それが私の契約都市伝説の総称ですわ。今回のこれは『ミミズバーガー』と『ハンバーガーの肉には人肉が混じっている』ですわね」
歩きながら、解説を始める理亜。体が少し小さくなったものの、五体満足の状態に戻っている。先ほどの腕を回収したのだろうか。
「都市伝説が契約後に『解釈』によってその能力を変質させることは御存じでシょう?
たとえば『拡大解釈』。3番目のトイレを3回ノックして呼びかけると出てくる『トイレの花子さん』を『契約者の呼びかけでそこに現れる』能力にする、とか。
たとえば『曲解』。人を道に迷わせる『八幡の藪知らず』を『攻撃を道に迷わせ命中させない』能力にしたりとか、そういうのですわ」
黙って(元々喋れないが)話を聞きながら、ピアノ線を用意する『首なしライダー』。どんどん近づいて来い。射程距離に入ったら、すぐに。
「私の場合はそうですわね。連想? は少し違うのかしら。まあともかく、『歪んだ理論、証明』といったところでシょうか。
『ハンバーガーの肉にはミミズが使われている』。『ハンバーガーの肉には人肉が使われている』。『ゆえに、人間の肉はミミズで出来ている』―――とまぁ、こんな具合ですわ」
そろそろだ、そろそろこのピアノ線で―――と思う『首なしライダー』だが、ここでふと、ある疑問が存在しない頭をよぎる。
待て、この女。どうして自分が尋ねたわけでも、ましてや既に勝敗が決しているわけでもないのに、自分の能力を解説し始めたのだ? まさか―――
と、気づいた時にはもう遅く。『首なしライダー』は直立ができなくなっていて、その場に倒れこんだ。
「ああ、そうそう。言い忘れていましたわネ。『ハンバーガーの肉にはネズミの肉が使われている』という説もありまスの。
先ほどあなたに私の腕が切られた時―――ミミズを少々、体内に潜入させていただきましたわ。それをネズミに変え、あなたの体内を貪った―――」
と、ここで理亜は歩くのをやめる。
「―――なんて、もう聞こえていませんわネ、ええ。checkmate、ですわネ」
『首なしライダー』。頭部がないにもかかわらず、正確にバイクを運転する彼らは、視覚や平衡感覚に関しては群を抜いているが、
しかし逆に『触覚』――特に痛覚は鈍感なのだ。でなければ、常に外気にさらされた首の切り口の痛みで、まともに行動することができない。
今回はそのことが仇となった。
「oh,もうこんな時間ですわ。急いで帰りませんと。……近道、してしまいまショウ」
と、理亜は体をミミズに分解し―――猫の姿に再構成し。屋根伝いを身軽に駆けていった。
ハンバーガーの肉には、猫の肉が使われている。いやはや、ジャンクフードの風評は尽きないものだ。
続く