「ん……と、確かここだっけか?」
満月の夜
時代を間違えた様なリーゼントの現役中学生・妹尾 賢志は、
黄昏 裂邪という少年に都市伝説の扱いの指導を受ける為、北区の山奥へと来ていた
全ては、妹を守る為
今後現れるかも知れない、強大な力と戦う為
時代を間違えた様なリーゼントの現役中学生・妹尾 賢志は、
黄昏 裂邪という少年に都市伝説の扱いの指導を受ける為、北区の山奥へと来ていた
全ては、妹を守る為
今後現れるかも知れない、強大な力と戦う為
「…しっかし薄気味悪ぃなぁ…月の光しか目の頼りがねぇぞ?」
「なーんだビビってるの? 年上の癖に」
「なーんだビビってるの? 年上の癖に」
寧ろ突然人の声がしたことに驚いた賢志は咄嗟に振り向いた
肩までの少し長い髪、自分よりも年下らしい背丈と顔立ち
賢志はその少年に見覚えがあった
裂邪に修行を懇願した際に、彼を“師匠”と呼んでいた少年だ
肩までの少し長い髪、自分よりも年下らしい背丈と顔立ち
賢志はその少年に見覚えがあった
裂邪に修行を懇願した際に、彼を“師匠”と呼んでいた少年だ
「あん時のガキ! テメェも来やがったのか!」
「お前だってまだガキだろ! ちょっと年上なだけで!」
「ガキじゃねぇ!! 俺ぁ妹尾 賢志だ!」
「俺だって水無月 清太って名前があるんだ!」
「お前等……夜中なんだから静かにしようぜ、な?」
「お前だってまだガキだろ! ちょっと年上なだけで!」
「ガキじゃねぇ!! 俺ぁ妹尾 賢志だ!」
「俺だって水無月 清太って名前があるんだ!」
「お前等……夜中なんだから静かにしようぜ、な?」
ようやくの聞き慣れた声
いつからいたのだろう、すぐ傍の木の影に、黒尽くめのその少年は立っていた
彼の右目を覆う長い髪は夜風に揺れ、何時かの戦いで負った大きな傷を晒し、
漂う風格と、混沌とした気配と共に2人に僅かながらにプレッシャーを与えるようだった
いつからいたのだろう、すぐ傍の木の影に、黒尽くめのその少年は立っていた
彼の右目を覆う長い髪は夜風に揺れ、何時かの戦いで負った大きな傷を晒し、
漂う風格と、混沌とした気配と共に2人に僅かながらにプレッシャーを与えるようだった
「せ、先生!? いつの間に!?」
「ハァ…お前は自分の影に同じ事が聞けるか?」
「師匠は「シャドーマン」の契約者。影から影を自由に動けるんだぜ
この世に光がある限り、師匠から逃げられる敵なんていないのさ!」
「ハァ…お前は自分の影に同じ事が聞けるか?」
「師匠は「シャドーマン」の契約者。影から影を自由に動けるんだぜ
この世に光がある限り、師匠から逃げられる敵なんていないのさ!」
清太の自慢げな解説で納得がいった
彼が満月の夜、暗い山奥を修行場所に選んだこと
そしてもう一つ気が付いた
彼が満月の夜、暗い山奥を修行場所に選んだこと
そしてもう一つ気が付いた
「あれ? 先生と初めて戦った時に影なんて……」
「その辺りも含めて、まずは座学から始めようか
何せ、お前は知らない事が多すぎる…シェイド」
「その辺りも含めて、まずは座学から始めようか
何せ、お前は知らない事が多すぎる…シェイド」
ぱちん、と裂邪が指を鳴らすや否や、彼の傍に黒衣の女性が現れた
その女性も、賢志は確かに見覚えがあった
その女性も、賢志は確かに見覚えがあった
「あ、あの時の……」
「以前はこの馬鹿の遊びに付き合わせてしまって申し訳ない
「シャドーマン」のシェイドだ」
「余計なことは言わんでいい」
「以前はこの馬鹿の遊びに付き合わせてしまって申し訳ない
「シャドーマン」のシェイドだ」
「余計なことは言わんでいい」
裂邪が指を鳴らして指示をしながら、ポケットから出したスマートフォンを己のベルトに翳すと、
シェイドと名乗る女性の姿は黒いローブの人影へ、
そしてその姿も黒い流動体へと変わり、空中に文字を書く
その文字は
シェイドと名乗る女性の姿は黒いローブの人影へ、
そしてその姿も黒い流動体へと変わり、空中に文字を書く
その文字は
「都市…伝説……」
「そ。“都市伝説”
俺の「シャドーマン」や「レイヴァテイン」、お前の「賢者の石」、
それにお前が今まで戦ってきた「組織」の黒服達、
さらには有名な「トイレの花子さん」や「口裂け女」……
この世に跋扈する噂や逸話、伝承が具現化したもの…それが“都市伝説”だ」
「…じ、じゃあ、契約ってのは…」
「そもそも都市伝説は、噂が広まる事で人間達の記憶に残る事でその存在が確立される
故に、その噂に忠実に行動する事で、都市伝説達は自分の噂をより広めようとする
例えば…「口裂け女」は自分の素顔を見た者を八つ裂きにして殺す」
「はぁ!? そんなことっ…噂を広めるのは人間なんだろ!?
殺しちまったら元も子もねぇじゃねぇか!」
「お前!師匠に怒鳴っても仕方ないだろ!」
「え、あ、その…」
「ウヒヒヒヒ、まぁその反応が普通だわな
大抵の都市伝説はそうやって馬鹿正直に噂の内容をこなすのさ
だがそんな都市伝説の中にも賢い奴がいる
たった1人の人間に自分を記憶して貰う事で、自分の存在をより強固に保つ
その代わりに、その人間に自分の力を与える
それが」
「“契約”、か……」
「そ。“都市伝説”
俺の「シャドーマン」や「レイヴァテイン」、お前の「賢者の石」、
それにお前が今まで戦ってきた「組織」の黒服達、
さらには有名な「トイレの花子さん」や「口裂け女」……
この世に跋扈する噂や逸話、伝承が具現化したもの…それが“都市伝説”だ」
「…じ、じゃあ、契約ってのは…」
「そもそも都市伝説は、噂が広まる事で人間達の記憶に残る事でその存在が確立される
故に、その噂に忠実に行動する事で、都市伝説達は自分の噂をより広めようとする
例えば…「口裂け女」は自分の素顔を見た者を八つ裂きにして殺す」
「はぁ!? そんなことっ…噂を広めるのは人間なんだろ!?
殺しちまったら元も子もねぇじゃねぇか!」
「お前!師匠に怒鳴っても仕方ないだろ!」
「え、あ、その…」
「ウヒヒヒヒ、まぁその反応が普通だわな
大抵の都市伝説はそうやって馬鹿正直に噂の内容をこなすのさ
だがそんな都市伝説の中にも賢い奴がいる
たった1人の人間に自分を記憶して貰う事で、自分の存在をより強固に保つ
その代わりに、その人間に自分の力を与える
それが」
「“契約”、か……」
影が、空中に“契約”の2文字を形作る
「「賢者の石」は物品系だから、余程の物でなければ自分の意思で動いたり、話したりはしない
俺はその瞬間を見た訳じゃないが…賢志の呼びかけや願いに応えて、契約を結んだんだろう
そうしてお前は…契約者になった」
「ん? 先生、都市伝説と契約した人間が契約者なんだろ?
さっき「組織」の黒服が都市伝説だって」
「あぁ、その通り。あれは人間じゃない
人間が都市伝説になったんだ」
「なっ…」
「誰もが都市伝説と簡単に契約できる訳じゃない
人間にはそれぞれ“器”…限界があるんだ
人によっては、1つの器に都市伝説が幾つも入る事がある、俺みたいにな
だが人によっては、ただの1つの都市伝説ですら、限界を超える事がある
その器から溢れた奴等の半分は、あの黒服みたいに都市伝説と同化してしまう
人間の姿形のまま、都市伝説になってしまうんだ」
「…もう半分は?」
「消滅。この世から、跡形も無く、な」
俺はその瞬間を見た訳じゃないが…賢志の呼びかけや願いに応えて、契約を結んだんだろう
そうしてお前は…契約者になった」
「ん? 先生、都市伝説と契約した人間が契約者なんだろ?
さっき「組織」の黒服が都市伝説だって」
「あぁ、その通り。あれは人間じゃない
人間が都市伝説になったんだ」
「なっ…」
「誰もが都市伝説と簡単に契約できる訳じゃない
人間にはそれぞれ“器”…限界があるんだ
人によっては、1つの器に都市伝説が幾つも入る事がある、俺みたいにな
だが人によっては、ただの1つの都市伝説ですら、限界を超える事がある
その器から溢れた奴等の半分は、あの黒服みたいに都市伝説と同化してしまう
人間の姿形のまま、都市伝説になってしまうんだ」
「…もう半分は?」
「消滅。この世から、跡形も無く、な」
ハッとしたような顔をして、賢志は黙ってしまった
言い換えれば、彼はもしかしたら消えていたのかも知れなかった
そうなったら妹の魅衣がひとりぼっちに―――いや、それどころかあの状況では殺されていたかも知れなかった
様々な“If”が、賢志を震え上がらせた
言い換えれば、彼はもしかしたら消えていたのかも知れなかった
そうなったら妹の魅衣がひとりぼっちに―――いや、それどころかあの状況では殺されていたかも知れなかった
様々な“If”が、賢志を震え上がらせた
「ま、それを乗り越えてお前は晴れて契約者になったんだ
「賢者の石」の力も手に入れた……代償として、お前は“日常”を失った」
「……どういうことだ?」
「都市伝説、及びその契約者は互いに引き付け合う性質があってな
お前もそうだったろ? 契約者の日常は、今まで過ごしてきたような生温かいものじゃない
常に死と隣合わせだ…己と、身の回りの人間の」
「っ!? そんなの絶対に―――」
「させねぇよ。その為に俺に弟子入りしたんだろ?」
「ふぁ~あ……やっと俺の出番っすか?」
「もうちょっと待て」
「賢者の石」の力も手に入れた……代償として、お前は“日常”を失った」
「……どういうことだ?」
「都市伝説、及びその契約者は互いに引き付け合う性質があってな
お前もそうだったろ? 契約者の日常は、今まで過ごしてきたような生温かいものじゃない
常に死と隣合わせだ…己と、身の回りの人間の」
「っ!? そんなの絶対に―――」
「させねぇよ。その為に俺に弟子入りしたんだろ?」
「ふぁ~あ……やっと俺の出番っすか?」
「もうちょっと待て」
裂邪は影を細長い棒状にすると、その先端を賢志に向けた
顔面すれすれに向かって来た為に、賢志は思わずぎょっとする
顔面すれすれに向かって来た為に、賢志は思わずぎょっとする
「賢志、お前は自分の都市伝説について…「賢者の石」について説明できるか?」
「え? えっと……き、金属が作れて、それで、えっと……」
「ウヒヒ、やっぱあんまし分かってないみたいだな」
「す、すんません…」
「いいよ、偶に都市伝説自身が契約直後に教えてくれたりするらしいんだが、そうじゃなかったみたいだな
最初は必死になって適当にやったら能力が使えたってことも間々ある」
「え? えっと……き、金属が作れて、それで、えっと……」
「ウヒヒ、やっぱあんまし分かってないみたいだな」
「す、すんません…」
「いいよ、偶に都市伝説自身が契約直後に教えてくれたりするらしいんだが、そうじゃなかったみたいだな
最初は必死になって適当にやったら能力が使えたってことも間々ある」
また、影は形を崩して文字を作る
“賢者の石”、“錬金術”、“エリクサー”、“パラケルスス”
“賢者の石”、“錬金術”、“エリクサー”、“パラケルスス”
「「賢者の石」ってのはその昔、現代科学の基礎となった錬金術において、
如何なる卑金属をも貴金属に…すなわち鉄などの安い金属を金みたいな高価なものに変える為のアイテムだと言われている
“石”とついてはいるが、実際に石なのかどうかも分からん、粉末だったかも知れないが、
パラケルススが製造に成功した、所持していたと言われ、
「エリクサー」と関連付けて不老不死の薬だの、どんな病気も直す万能薬だのとも言われている」
「…あ」
如何なる卑金属をも貴金属に…すなわち鉄などの安い金属を金みたいな高価なものに変える為のアイテムだと言われている
“石”とついてはいるが、実際に石なのかどうかも分からん、粉末だったかも知れないが、
パラケルススが製造に成功した、所持していたと言われ、
「エリクサー」と関連付けて不老不死の薬だの、どんな病気も直す万能薬だのとも言われている」
「…あ」
賢志は思い出した
「賢者の石」と契約した日、「ジーナ・フォイロ」の所為で疲弊していた魅衣が、
抱き上げただけですぐに体調が戻った事を
初めて裂邪と会い、戦った日、自分の怪我を右手で触れて治していた事を
「賢者の石」と契約した日、「ジーナ・フォイロ」の所為で疲弊していた魅衣が、
抱き上げただけですぐに体調が戻った事を
初めて裂邪と会い、戦った日、自分の怪我を右手で触れて治していた事を
「そ。お前もよく使ってた能力だな
あと契約で金属以外の物質も金属に変化できるようになってるようだな
いや、寧ろ“創造”か?
何にせよ、その能力はかなり強力だな。「賢者の石」の要と言って良い」
「…それでも、あんたには敵わなかった
もっと、強くなれる筈なんだ…いや、強くなんないと、魅衣を守れねぇ…!!」
「魅衣…?」
「ん、ここまでで第一章終わりだな
続いて第二章と行きますか」
あと契約で金属以外の物質も金属に変化できるようになってるようだな
いや、寧ろ“創造”か?
何にせよ、その能力はかなり強力だな。「賢者の石」の要と言って良い」
「…それでも、あんたには敵わなかった
もっと、強くなれる筈なんだ…いや、強くなんないと、魅衣を守れねぇ…!!」
「魅衣…?」
「ん、ここまでで第一章終わりだな
続いて第二章と行きますか」
ぱちん!と再び指を鳴らすと、影は裂邪の背後に玉座を作り出す
彼はそれに座りこむと、怪しく笑いながら頬杖をついて座った
彼はそれに座りこむと、怪しく笑いながら頬杖をついて座った
「都市伝説に関する大体の知識は叩きこんだ…ここからは実戦編だ
だがお前は「賢者の石」について知らない事がまだ多い、それは俺も同じだ
そこで、」
だがお前は「賢者の石」について知らない事がまだ多い、それは俺も同じだ
そこで、」
裂邪は目を見開き、真っ直ぐに賢志の目を見た
その突き刺さるような眼差しは、賢志の心を引き込んだ
風の音、虫の声、月の光、全てが何も感じない程に
その突き刺さるような眼差しは、賢志の心を引き込んだ
風の音、虫の声、月の光、全てが何も感じない程に
「賢志。少しの間、お前は自分の身体をコントロールできなくなる
しかし安心してくれ。それはお前の手の内を知りたいが為だ
お前の身体を悪用したりはしない…信じてくれるな?」
「え…あ、あぁ」
「よし、契約成立だ」
しかし安心してくれ。それはお前の手の内を知りたいが為だ
お前の身体を悪用したりはしない…信じてくれるな?」
「え…あ、あぁ」
「よし、契約成立だ」
その瞬間
裂邪の身体から七色の怪しげな靄が溢れ出し、賢志の身体に入り込んだ
ぎょっとする清太を尻目に、裂邪は眠り、賢志は茫然と立ち尽くす
裂邪の身体から七色の怪しげな靄が溢れ出し、賢志の身体に入り込んだ
ぎょっとする清太を尻目に、裂邪は眠り、賢志は茫然と立ち尽くす
(な、何が起こって―――――――なっ!?)
「あービックリした? まぁ無理も無いか」
「あービックリした? まぁ無理も無いか」
賢志は早くも異変に気付いた
自分の意思で話すことが出来ない上に、自分ではない“何か”が代わりに口を開く
そして、自分の中に二人いるらしい気配
自分の意思で話すことが出来ない上に、自分ではない“何か”が代わりに口を開く
そして、自分の中に二人いるらしい気配
(まさか……先生!?)
「ウヒヒヒヒヒ、言ったろ? 今のお前は自分の身体を自分の意思で動かせない
主導権は俺が握っている」
「っちょ、嘘だろ、そんなこともできんのか師匠!?」
「さあーて清太、待たせたな! こっからお前の修行だ!
お前の相手は手の内がさっぱり分からないこの俺、妹尾賢志!」
(いや賢志は俺だぞ!?)
「人間の最も恐れるもの、それは“知らないこと”と“分からないこと”!
もっと強くなりたければ、自ら恐怖を打ち砕け!!」
「ウヒヒヒヒヒ、言ったろ? 今のお前は自分の身体を自分の意思で動かせない
主導権は俺が握っている」
「っちょ、嘘だろ、そんなこともできんのか師匠!?」
「さあーて清太、待たせたな! こっからお前の修行だ!
お前の相手は手の内がさっぱり分からないこの俺、妹尾賢志!」
(いや賢志は俺だぞ!?)
「人間の最も恐れるもの、それは“知らないこと”と“分からないこと”!
もっと強くなりたければ、自ら恐怖を打ち砕け!!」
混乱する清太に対して尚も怪しい笑みを浮かべる賢志―――もとい裂邪は、
その場にしゃがみ込んで地面に右手を触れた
その場にしゃがみ込んで地面に右手を触れた
「まずは…『No.26 フェルム』!」
地面に弧を描くように手を動かすと、紅い光が走り、土が鉄で出来た鎌に変化した
それを手にとり、彼は清太に向けてその鋭い切っ先を振りかぶった
それを手にとり、彼は清太に向けてその鋭い切っ先を振りかぶった
「うわっ!? 『イーヴィル・ブレイカー』!!」
咄嗟に、右手を水晶化させて鎌を止める
鎌は跡形もなく消え去り、清太は後ろに飛び退いた
鎌は跡形もなく消え去り、清太は後ろに飛び退いた
(き、消えた!?)
「流石に防ぐか…ならこれはどうだ! 『No.80 ヒュドラルギュルム』!」
「流石に防ぐか…ならこれはどうだ! 『No.80 ヒュドラルギュルム』!」
裂邪の右腕が、銀色の光沢を放つ水に変化する
銀の水は拳を形作り、清太へと向かう
銀の水は拳を形作り、清太へと向かう
「無駄だぜ師匠! 師匠が敵意を向けてる限り、俺に攻撃は通じない!」
再び水晶の掌を向ける清太
しかし、その寸前で拳は分裂し、三つに分かれて掌を避けた
驚く清太、笑う裂邪
寸でのところで、氷の壁を作り出し、清太は攻撃を逃れた
ぼろぼろと、氷が崩れ落ちる
しかし、その寸前で拳は分裂し、三つに分かれて掌を避けた
驚く清太、笑う裂邪
寸でのところで、氷の壁を作り出し、清太は攻撃を逃れた
ぼろぼろと、氷が崩れ落ちる
(今度は…氷?)
「そういや、海水浴の時も使ってたな、その能力……「水晶は永久に溶けない氷」か?」
「くっそ……水晶と同じ硬さの氷なのに簡単に砕かれた…!」
「そりゃそうだ、水銀は常温では液体だが、質量は鉄以上…防御して正解だったな
それにしても面白い能力だな、これも行けるか? 『No.37 ルビディウム』!」
「そういや、海水浴の時も使ってたな、その能力……「水晶は永久に溶けない氷」か?」
「くっそ……水晶と同じ硬さの氷なのに簡単に砕かれた…!」
「そりゃそうだ、水銀は常温では液体だが、質量は鉄以上…防御して正解だったな
それにしても面白い能力だな、これも行けるか? 『No.37 ルビディウム』!」
またも裂邪の右腕が変化する
今度は銀色をした金属のようだが、直後に暗い赤色をした炎に包まれた
今度は銀色をした金属のようだが、直後に暗い赤色をした炎に包まれた
「ッ!?」
(ぎゃああああああ俺の腕が!?)
「ルビジウムは空気中で激しく酸化し自然発火する!
お前が氷なら、俺は炎で勝負だ!」
(ぎゃああああああ俺の腕が!?)
「ルビジウムは空気中で激しく酸化し自然発火する!
お前が氷なら、俺は炎で勝負だ!」
炎の拳を振り上げ、裂邪は清太に襲い掛かる
「そんな炎、邪気と一緒に跡形もなくぶち殺してやる!
『アヴァランチ・ブレイカー』!!」
『アヴァランチ・ブレイカー』!!」
清太は両掌を裂邪に向け、冷気の塊を裂邪の拳にぶつけて相殺を図った
ところが炎は掻き消えるどころか爆発的に勢いを増し、思わず水晶の手で掴みとった
ところが炎は掻き消えるどころか爆発的に勢いを増し、思わず水晶の手で掴みとった
「あっつ!?」
「冷気で火を消す算段だったか? 残念だったな
空気中で冷えた水蒸気が水へと変わりルビジウムに反応して水素を生み出し、
水素は炎と激しく反応して爆発を繰り返す……この炎は水では消せん!!」
(と、ところで……)
「ん? どうした賢志?」
(さっきから二人が叫んでるのって何すか?)
「何言ってんだ、必殺技に決まってんだろ!」
(えっと、大事なものなんすか?)
「当たり前だ! 都市伝説の力は契約者の“心”に直結する!
方法、効能、威力、契約者が想像すれば都市伝説はそれに応えてくれる!
都市伝説の戦いに必要なのは腕力や脚力じゃない! 想像力だ!!」
(想、像力……)
「師匠! 傍から見たらデカい独り言みたいで不気味だよ!!」
「冷気で火を消す算段だったか? 残念だったな
空気中で冷えた水蒸気が水へと変わりルビジウムに反応して水素を生み出し、
水素は炎と激しく反応して爆発を繰り返す……この炎は水では消せん!!」
(と、ところで……)
「ん? どうした賢志?」
(さっきから二人が叫んでるのって何すか?)
「何言ってんだ、必殺技に決まってんだろ!」
(えっと、大事なものなんすか?)
「当たり前だ! 都市伝説の力は契約者の“心”に直結する!
方法、効能、威力、契約者が想像すれば都市伝説はそれに応えてくれる!
都市伝説の戦いに必要なのは腕力や脚力じゃない! 想像力だ!!」
(想、像力……)
「師匠! 傍から見たらデカい独り言みたいで不気味だよ!!」
賢志は思い返す
金属バットや剣を作り出し、一方的に殴るだけ
それが自分の戦い方だった
裂邪はどうだ
「賢者の石」の、そして生み出したあらゆる金属の性質を理解し、
それを応用して様々な攻撃を繰り出している
裂邪だけではない
その相手の清太も、自分の能力で攻撃だけでなく、防御も行なっている
一方的に相手を殴るだけの賢志とは、圧倒的に差があった
金属バットや剣を作り出し、一方的に殴るだけ
それが自分の戦い方だった
裂邪はどうだ
「賢者の石」の、そして生み出したあらゆる金属の性質を理解し、
それを応用して様々な攻撃を繰り出している
裂邪だけではない
その相手の清太も、自分の能力で攻撃だけでなく、防御も行なっている
一方的に相手を殴るだけの賢志とは、圧倒的に差があった
(これが……都市伝説の戦い方……)
賢志はその時、何を感じただろう
少なくともこの戦闘で、彼は大きく成長したに違いない
少なくともこの戦闘で、彼は大きく成長したに違いない
† † † † † † †
「ただいま、っと………流石に寝てるかな」
深夜
裂邪による世にも奇妙な修行を終え、賢志は静かに帰宅した
妹――魅衣を起こさないよう、静かに
裂邪による世にも奇妙な修行を終え、賢志は静かに帰宅した
妹――魅衣を起こさないよう、静かに
「……じゃ、修行第三章、だな」
今日、彼が学んだこと
それは多くを知り、溜めこんだ知識を爆発させること
裂邪が言っていた2つの“恐怖”――“分からない事”と“知らない事”―――は、
己の知識が豊富である程、どんな状況にも対応しやすくなる
そして、知識は発展させれば力に―――“想像力”に繋げられる
即ち攻撃と防御、両面をカバーできるということだ
それは多くを知り、溜めこんだ知識を爆発させること
裂邪が言っていた2つの“恐怖”――“分からない事”と“知らない事”―――は、
己の知識が豊富である程、どんな状況にも対応しやすくなる
そして、知識は発展させれば力に―――“想像力”に繋げられる
即ち攻撃と防御、両面をカバーできるということだ
「…ごめんな、親父…ちょっと荒らすぜ」
賢志が入ったのは、生前に父が使っていた書斎
入室したのは今回が初めてだったが、室内は綺麗に整っていた
本棚には、彼の予想していた通りの題名がずらりと並んでいる
『錬金術の歴史』『パラケルススとは』『元素周期表と化学元素』『化学反応を学ぶ』『賢者の石について』
入室したのは今回が初めてだったが、室内は綺麗に整っていた
本棚には、彼の予想していた通りの題名がずらりと並んでいる
『錬金術の歴史』『パラケルススとは』『元素周期表と化学元素』『化学反応を学ぶ』『賢者の石について』
―――今後の宿題。様々なことを学べ。本、ネット、学校の先生、色んなものから関係ない事まで、全部だ
「やってやるぜ……魅衣を守る為なら、何だって……!!」
書物を取り、賢志の第三の修行が始まった
この修行は彼が睡魔に負けるまで続いたのだった
この修行は彼が睡魔に負けるまで続いたのだった
...了