「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 次世代ーズ-20

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20 配意




 遠倉千十はその日、早目に移動教室へ来ていた
 昼休みを挟んで午後の授業なので教室にはまだ人が疎らだ

 普段は友達と一緒にお昼を過ごすのだが
 その日は約束があり、人目も少ない移動教室で待っていたのだ


「ごめん、千十。待った?」


 待ち人が来た
 遠倉はううんと首を振って応える
 お弁当を持って教室に入って来たのは彼女のクラスメイトだ

 肩ほどまでの髪を揺らして眼鏡を掛けたその少女は
 遠倉の隣に着席すると、済まなさそうに笑った





「じゃあ、もう長らく連絡が無いんだ」
「うん。最後にメールがあったのが梅雨の前だから、三ヶ月くらいかな」


 二人はそれぞれ弁当を広げて会話している
 窓の外は生憎の雨だ
 予報では昼前に晴れるという話だったが
 雲行きを見るに、まだまだ当分振りそうな感じだった


「千十も気を付けなさいよ
 最近の学校町は変なの増えてるから」

「大丈夫。最近はちゃんと大通りから帰るようにしてるし」

「バイトは遅くまでなんでしょう?」

「でも大丈夫だよ。大通りで見掛けたことってあんまり無いから」

「あんまり、ってことは。やっぱり大通りでも見るわけ?」

「あっ、違うの。ただ、大通りから奥の方の道を見るとたまに見掛けたりするだけで」


 遠倉は手にしたサンドイッチから隣の少女に顔を向ける
 少女はミートボールを口に放り込んで咀嚼していた


「んむ。危ないときは電話してよ?」

「ありがとう。ありすちゃんも無理しちゃ駄目だよ」

「分かってるわよ。前みたいに無茶はしないし」


 一息吐きながら少女は遠倉の方を向いた
 ありす、とは眼鏡少女の名前である


「にしても、最近は本当に物騒よ
 先週なんか『偽警官』が私の所にやって来てさ」

「大丈夫だったの……!?」

「大丈夫よ。あ、でも、言動が変質者のそれだったから大丈夫じゃないわね」

「変質者って……」


 不安そうな顔をしている遠倉に
 巻き卵を頬張りながら眼鏡少女はひらひらと手を振る


「大丈夫。やっつけて適当に放置しといたから」


 大方、「組織」か「首塚」の人が拘束してくれたでしょ
 それだけ言って彼女は大して気にした素振りを見せない

 遠倉は不安げな表情のまま
 教室内に居る他の人の耳に聞こえぬよう声を潜めた


「『赤マント』に、『モスマン』に、それから……」

「『狐』ね」

「ありすちゃん、絶対に無理しちゃ駄目だよ?
 『狐』のことは、あの人達、教えてくれなかったけど
 すごく危ないんでしょう? 仲間も多いみたいだから」

「安心して千十、『狐』はヤバいんだから私もまず逃げるわ」


 ありすの返事に遠倉はこくこくと何度も頷く
 噛んだプチトマトを飲み込みながらありすは嘆息する


「しっかし、本当に何なのかしらね
 『狐』が野放しだなんて、ちゃんと仕事して欲しいんだけど」

「うん、どうなんだろうね」


 ありすの言葉に遠倉は力なく返事をする


「被害、出ないでほしいな」

「本当それよね。事件が起こってからじゃ遅いんだし」

「……ありすちゃんは、怖くない?」

「うん? 『狐』のこと?」

「ううん、都市伝説と、“戦う”こと」

「ああ、うん」


 遠倉千十はありすの横顔をじっと見詰める
 彼女は何処か遠くを見ていた


「まあ。怖いかな。ちょっとは」


 しかし、遠倉は知っている
 彼女、日向ありすはそう言いながらも
 矢張り都市伝説相手に戦えるのだということを



 ありすちゃんは凄いな



 遠倉はそれを言葉に出せず、視線を落とした





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