EX 青い血
「青い血」――初っ端からネタバレするとジョーク系怪談である
筋書きが一定していない分、話のバリエーションは豊富で
「青い血」というワードについても冒頭で意味深に言及されるか全く触れられないこともある
「青い血」というワードについても冒頭で意味深に言及されるか全く触れられないこともある
具体的な話の筋としては
お昼には必ずお弁当を食べるようにと、おじいさんがおばあさんに釘を刺される穏当なものから
無人島に漂着して極度の飢えに苛まれるパターン、売店で供される「青い血のジュース」というパターン
さらには教室に広がった青い血を恐る恐る舐めたり、見知らぬ男に無理矢理なにかを飲まされたり、という過激なものまで
要するに枚挙に暇が無い、のだが肝心の締めは全て同じ
最後の「あ~美味ち♥」 → 「あーおいち♥」 → 「青い血♥」なオチがつく
お昼には必ずお弁当を食べるようにと、おじいさんがおばあさんに釘を刺される穏当なものから
無人島に漂着して極度の飢えに苛まれるパターン、売店で供される「青い血のジュース」というパターン
さらには教室に広がった青い血を恐る恐る舐めたり、見知らぬ男に無理矢理なにかを飲まされたり、という過激なものまで
要するに枚挙に暇が無い、のだが肝心の締めは全て同じ
最後の「あ~美味ち♥」 → 「あーおいち♥」 → 「青い血♥」なオチがつく
最初はそれっぽい雰囲気で始めるのがコツだが
どう足掻こうとくだらない結末を迎えるため、ギャグ系怪談としてまとめられている
それどころか都市伝説という括りで紹介されることも無いではない
どう足掻こうとくだらない結末を迎えるため、ギャグ系怪談としてまとめられている
それどころか都市伝説という括りで紹介されることも無いではない
以上が「青い血」の一般的な概要である
さて、都市伝説原理主義者の黒服諸君には残念なお知らせだが
この「青い血」、あろうことか既に都市伝説として実体化してしまっている
この「青い血」、あろうことか既に都市伝説として実体化してしまっている
そればかりか都市伝説管理集団「組織」の備品としてばっちり登録、管理されている
一体どういうことなのか?
それをこれから紹介するとしよう
それをこれから紹介するとしよう
まず「青い血」の外見的特徴から説明する
これは大部分が金で構成された、やや歪な形状の小さな杯である
外形はWDH:30x30x70(mm)の直方体に収まる程度のものだ
外形はWDH:30x30x70(mm)の直方体に収まる程度のものだ
杯の中はおよそ15mlの青い液体によって満たされている
この液体、「組織」の調査では一応「組成が人間の血液に近い」と判明している
この液体、「組織」の調査では一応「組成が人間の血液に近い」と判明している
杯から液体が全て除去されると
「杯の中から青い液体が毎分約5ml出現する」という現象が発生する
そしておおむね3分ほどで杯は再び青い液体によって満たされるのである
「杯の中から青い液体が毎分約5ml出現する」という現象が発生する
そしておおむね3分ほどで杯は再び青い液体によって満たされるのである
「青い血」は現在「組織」穏健派のPナンバーによって厳重に管理されており
取り扱いはたとえ実験目的であってもP-No.上位管理者、俗に言う一桁ナンバー複数名の承認が必要となる
取り扱いはたとえ実験目的であってもP-No.上位管理者、俗に言う一桁ナンバー複数名の承認が必要となる
また、「青い血」を許可なく各種媒体によって記録すること
さらには如何なる理由あれ「青い血」が記録された媒体を「組織」外部へ持ち出すことは厳禁とされ
違反者は厳罰に処される、そんな規定まで付いている
さらには如何なる理由あれ「青い血」が記録された媒体を「組織」外部へ持ち出すことは厳禁とされ
違反者は厳罰に処される、そんな規定まで付いている
加えてこの「青い血」、管理区分は「禁忌指定」に分類されている
大多数の流出性器物が分類される「二種指定」をすっ飛ばして堂々の「禁忌指定」である
この時点でお察しの黒服諸君も多いだろうが、こうした取扱既定には「青い血」の特性が深く関わってくる
大多数の流出性器物が分類される「二種指定」をすっ飛ばして堂々の「禁忌指定」である
この時点でお察しの黒服諸君も多いだろうが、こうした取扱既定には「青い血」の特性が深く関わってくる
実は先述した外見的特徴についてだが、通常の方法ではあのように観測はできない
具体的に言うと、一般人を含めた契約者や都市伝説、黒服各位が「青い血」を直接視認した場合
「これまでに飲食してきたなかで最も美味と感じた飲食物」か
「まだ飲食したことは無いが口にすればきっと最高に美味だと感じる飲食物」として認識する
直接視認せずとも「青い血」の数メートル以内に接近した段階で好みの飲食物の香りを感じるようになる
そして、こうした飲食物を何が何でも口にしたいという耐えがたい欲求が生じてしまい
影響を受けた者は手段を選ばずに「青い血」を摂取しようと狂暴化する
具体的に言うと、一般人を含めた契約者や都市伝説、黒服各位が「青い血」を直接視認した場合
「これまでに飲食してきたなかで最も美味と感じた飲食物」か
「まだ飲食したことは無いが口にすればきっと最高に美味だと感じる飲食物」として認識する
直接視認せずとも「青い血」の数メートル以内に接近した段階で好みの飲食物の香りを感じるようになる
そして、こうした飲食物を何が何でも口にしたいという耐えがたい欲求が生じてしまい
影響を受けた者は手段を選ばずに「青い血」を摂取しようと狂暴化する
では鏡映しにしたり、映像や写真等で見たり、などの間接的に観測した場合は問題無いかと言うと
当然そんな筈は無く、ばっちり影響を受けてしまうことが分かっている
要するに、「青い血」は認識汚染を含む強力な精神干渉能力を有しており直接間接を問わず影響を及ぼす物品なのである
当然そんな筈は無く、ばっちり影響を受けてしまうことが分かっている
要するに、「青い血」は認識汚染を含む強力な精神干渉能力を有しており直接間接を問わず影響を及ぼす物品なのである
それなら強化系や防護系などの能力の行使や精神干渉に対する高い抵抗値を持っていれば対抗可能かと言うと
多少は影響を緩和できるという程度で、結局一時しのぎにしかならないということも判明している
多少は影響を緩和できるという程度で、結局一時しのぎにしかならないということも判明している
上述の外見的特徴は、精神干渉に高い抵抗性能を持つ黒服が
特殊な条件付けを受けた上で、脳みそに悪影響を及ぼす薬剤を投与されることで
はじめて「青い血」の影響を回避して観測しえた情報である
一般黒服諸君にはとてもじゃないがオススメできない手法だ
特殊な条件付けを受けた上で、脳みそに悪影響を及ぼす薬剤を投与されることで
はじめて「青い血」の影響を回避して観測しえた情報である
一般黒服諸君にはとてもじゃないがオススメできない手法だ
続いて、この「青い血」を摂取した場合どうなるのかについて説明する
――説明する間でも無さそうだが話のついでだ
――説明する間でも無さそうだが話のついでだ
『これよりPナンバー関係者外秘の歳末器物実験を開始します』
「離せ! 離せ! うわああああああああああああっ!!」
「離せ! 離せ! うわああああああああああああっ!!」
「青い血」を特殊な手法を使用せずに通常視認した場合
視認者が欲する飲食物として認識され、摂取したい強い欲求に駆られる点は先に触れた通りである
視認者が欲する飲食物として認識され、摂取したい強い欲求に駆られる点は先に触れた通りである
『P-No.2020、目の前にある物が何に見えるか答えてください』
「離せ! はな――、あれは……、穏健派の、高級クラブでしか食べれない……、幻の骨付きスペアリブ……!?」
『良いでしょう。研究班、P-No.2020へ「青い血」任意量の投与を許可します』
「了かい、かい口する」
「おい待て! 何する! あ、んごあっ! ああがっ! ああがっ!!」
「離せ! はな――、あれは……、穏健派の、高級クラブでしか食べれない……、幻の骨付きスペアリブ……!?」
『良いでしょう。研究班、P-No.2020へ「青い血」任意量の投与を許可します』
「了かい、かい口する」
「おい待て! 何する! あ、んごあっ! ああがっ! ああがっ!!」
そして「青い血」を摂取すると、途端に抗い難い強烈な多幸感、恍惚、そして性的絶頂を体感するハメになる
「んんあーっ♥ ああーっ♥ あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛っっ♥♥」
「きょうせい開口を解じょする」
「んごあっ♥♥ ごっごほっげほっ!! あっ♥♥ ああーっ♥♥ おいちいっ♥♥♥ ああっ♥♥おいちいいいっっ♥♥♥♥」
「きょうせい開口を解じょする」
「んごあっ♥♥ ごっごほっげほっ!! あっ♥♥ ああーっ♥♥ おいちいっ♥♥♥ ああっ♥♥おいちいいいっっ♥♥♥♥」
症状はおおよそ10分から20分程度で治まるが
ここで注目したいのは「青い血」を摂取すると強力な依存性が形成される点である
ここで注目したいのは「青い血」を摂取すると強力な依存性が形成される点である
「離せぇぇぇぇっっ♥♥ 離せよぉぉぉぉぉっっ♥♥ もっと食わせろぉぉぉぉぉっっ♥♥」
「予ていどおり、P-No.2020をいち時収ようする」
『許可します、退出してください』
「食わせろぉぉぉっっ♥♥ もっとあるんだろぉぉっ♥ スペアリブぅぅぅっっ♥♥ 食わせろよ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛おお゛っっ♥♥」
「予ていどおり、P-No.2020をいち時収ようする」
『許可します、退出してください』
「食わせろぉぉぉっっ♥♥ もっとあるんだろぉぉっ♥ スペアリブぅぅぅっっ♥♥ 食わせろよ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛おお゛っっ♥♥」
一度依存性が形成されると、対象者は狂暴化してあらゆる手段を講じてでも再び「青い血」を摂取しようとするようになる
狂暴化はおおむね24時間前後継続するが、特筆すべきはその間「青い血」以外の精神干渉系能力が全く効かなくなる点だ
継続時間を過ぎると狂暴化自体は鎮静するものの
再度「青い血」を認識した途端に狂暴化して「青い血」を摂取しようと周囲に暴力を振るうようになるのである
ついでに依存性が一度でも形成されてしまうと都市伝説能力や霊薬等で依存性を除去することができなくなる
狂暴化はおおむね24時間前後継続するが、特筆すべきはその間「青い血」以外の精神干渉系能力が全く効かなくなる点だ
継続時間を過ぎると狂暴化自体は鎮静するものの
再度「青い血」を認識した途端に狂暴化して「青い血」を摂取しようと周囲に暴力を振るうようになるのである
ついでに依存性が一度でも形成されてしまうと都市伝説能力や霊薬等で依存性を除去することができなくなる
補足しておくと、先述した外見的特徴の部分で触れたように
「青い血」単純認識による場合でも、「青い血」を摂取しようと狂暴化するが
「青い血」摂取後の狂暴化は、単純認識時の比では無い位に危険度が増す
「青い血」単純認識による場合でも、「青い血」を摂取しようと狂暴化するが
「青い血」摂取後の狂暴化は、単純認識時の比では無い位に危険度が増す
とまあこうした特性の故に「青い血」は「禁忌指定」として厳重に管理されている、というわけである
幸いなことに「青い血」関連の大規模事故はこれまでのところまだ発生していないが
伝染災害を危険視した幹部達によって取扱方針が制定されることになった
幸いなことに「青い血」関連の大規模事故はこれまでのところまだ発生していないが
伝染災害を危険視した幹部達によって取扱方針が制定されることになった
ここまで「青い血」の危険性ばかり説明するような内容になってしまったが、一応この物品にもそれなりの展望がある
「青い血」を特定の薬剤で稀釈し精神干渉系能力の被害者に対して適切に投与することで
依存性や狂暴化を極力抑えたまま、影響を受けた精神干渉を無効化、あるいは大幅に低減できる効用が期待されている
現時点ではまだ実用段階に至っていないが、近い将来にも試験的運用が開始される予定らしい
「青い血」を特定の薬剤で稀釈し精神干渉系能力の被害者に対して適切に投与することで
依存性や狂暴化を極力抑えたまま、影響を受けた精神干渉を無効化、あるいは大幅に低減できる効用が期待されている
現時点ではまだ実用段階に至っていないが、近い将来にも試験的運用が開始される予定らしい
「組織」研究者の今後の活躍を祈ろうではないか
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