EX 一方その頃
九月
まだ夏の気配を色濃く残しつつも、秋の朱空へと染まりゆく頃
日没の迫る学校町の通学路で、それは起きた
日没の迫る学校町の通学路で、それは起きた
「見せちゃうぞ……、見せちゃうぞ見せちゃうぞンばアアぁぁああーーッッ!!」
「いやあああああああっホントに出たぁぁぁぁアアアアアっっ!!??」
「ああーーっっ!! 変態っっ!! 露出魔だああぁぁぁぁーーっっ!!」
「キャアあああああああああっっ!! もっくんのより小さくて薄汚いよォォおおーーっっ!!」
「ああーーっっ!! 変態っっ!! 露出魔だああぁぁぁぁーーっっ!!」
「キャアあああああああああっっ!! もっくんのより小さくて薄汚いよォォおおーーっっ!!」
この町の南区にある商業高校のJKギャルたちが
突如現れた露出狂のおじさんを前に、三者三様の絶叫を上げ、脱兎の如く逃げ出した
突如現れた露出狂のおじさんを前に、三者三様の絶叫を上げ、脱兎の如く逃げ出した
「――っふ、ふヒッ! ふ、ふひひ、ふヒンッ!! ふ、うっふふふふ、ふヒッヒ、ヒヒヒッ!!」
その男はティアドロップ型のサングラスと大きなマスクで顔面を隠し
九月だというのにトレンチコートを着込んでいる
そして当然、コートの下は全裸であった
これ以上の説明は不要であろう
九月だというのにトレンチコートを着込んでいる
そして当然、コートの下は全裸であった
これ以上の説明は不要であろう
「ふヒヒッ!! た、短小って……小汚いって……ッッ♥ アハッ♥ アハハハッ♥♥ ヒンッ♥♥ たまらんっ♥♥」
おじさんはJKの悲鳴の一部に甚く反応しているようで
実際のところ彼は軽く達していた
実際のところ彼は軽く達していた
警察が直ちに介入すべき事案であるが
幸か不幸か、周辺に巡回中の巡査は見当たらないようである
更に付け加えると先程の悲鳴はかなりの音量で響いた筈だが未だ人の気配は無い
幸か不幸か、周辺に巡回中の巡査は見当たらないようである
更に付け加えると先程の悲鳴はかなりの音量で響いた筈だが未だ人の気配は無い
「ふふ、ウッフフ、……はあ、最高だった ――さて」
おじさんは全開にしたコートを羽織り直してボタンを留める
そして後方へと振り返った
そして後方へと振り返った
其処に蠢くは無数の人影だ
何時の頃からか此処、学校町の黄昏時に出現するようになった魔性
何時の頃からか此処、学校町の黄昏時に出現するようになった魔性
それは「逢魔時の影」と呼ばれていた
「ここから先は通行料を頂くが、――よろしいかな」
場に居た「逢魔時の影」は全滅した
おじさんは溜息を吐いた
先程まで「影」であった残りカスが風に乗って消滅する
手刀を引き戻すと、周辺の大気に微かな黒色の稲妻が奔った
先程まで「影」であった残りカスが風に乗って消滅する
手刀を引き戻すと、周辺の大気に微かな黒色の稲妻が奔った
そろそろ純情JKの通報を受けたお巡りがやって来る頃合いだろう
彼は高く跳躍
最も近場に位置する鉄塔の頂点へと降り立ち、其処に佇んだ
最も近場に位置する鉄塔の頂点へと降り立ち、其処に佇んだ
陽は既に暮れている
夕闇はじきに光無き夜を誘う
夕闇はじきに光無き夜を誘う
薄明の世界に包まれた学校町を見下ろすおじさんは
やがて目を細め、遠景の一点を注視した
やがて目を細め、遠景の一点を注視した
「さてさて」
夕陽が死に、大地を夜の帳が抱き始める時分
おじさんの眼は“彼”を捉えていた
おじさんの眼は“彼”を捉えていた
「繰り返す飛び降り」と化した少女、東一葉と共に直前まで談笑していたようだが
“彼”――早渡脩寿もまた、この露出狂の男を眼差していた
“彼”――早渡脩寿もまた、この露出狂の男を眼差していた
“彼”はこちらに気付いている
おじさんの双眸は、獲物を見定めたかの如く、さらに細められた
「『七尾』の残党め、この町で一体何を企んでいる」
□□■