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我が願いに踊れ贄共・万能の魔法使い・過去-03

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匿名ユーザー

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 小さな子供が泣いている
 いつまでたっても、泣き止む気配がない

 命が助かったと言うのに、何故、泣き続けるのか
 これだから、人間は理解できない

「……いつまで泣いてんだ、うるせぇぞ」
「うー………うー!」

 ぐずぐずと泣き続ける子供
 頬を濡らし、眼を腫らし
 いつまでも、いつまでも、泣き続ける

「…うー………セシリア、なんて……嫌いだ……っ」
「さっきからそれしか言ってないだろ、お前」

 戻ってきてから、ずっとそうだ
 自分を殺そうとした、あの若き魔女
 それを嫌いだと、言い続け
 しかし

「嫌いなら、嫌い続ければいい。目障りなら殺せばいい。今までお前がそうしてきたようにすればいいだけの事だろ」
「うー、うー………でも、セシリア…姉さん………うー……」

 ……また、これだ
 自分は、この幼すぎる魔法使いの生い立ちや、アモン卿が拾ってくるより前の事など、知らない
 聞いてもいないし、知るつもりもない

 ただ
 あのセシリアと言う若い魔女が、このカラミティ・ルーンと言う幼い魔法使いにとって、特別な存在である事も事実らしい
 だから、完全に嫌いきれない
 口では「嫌いだ」と言いつつも、完全に敵だと認識できないのだ

 ……だから
 あんなにもあっさりと、殺されかけたのだ
 あの馬鹿な魔女、「教会」なんかの流言に踊らされて
 本気で、カラミティを殺そうとしていた

 本気の殺気と遊びの殺気では、本気が勝つに決まっている
 想いによる魔法の力で戦いあうなら、なおさらだ

 今のままでは、また、いつか
 二人が戦いあえば、カラミティは負けるだろう
 今度こそ、殺されるかもしれない

「………ったく」

 あぁ、だから
 元人間だった奴は、面倒くさい

「おら、いつまでも泣くな。うるせぇ」

 ぼす、と乱暴に頭を撫でる
 びくりと、小さく体を跳ねらせて、カラミティがこちらを見上げてきた
 金色の目には涙がたまり、大粒の雫となって零れ続けている
 ……魔法使いや魔女が流す涙は、魔力の塊
 魔女が涙を流せば、魔力を失うと言う話すらあると言うのに……泣いて、何の意味があるのか、さっぱりわからない
 ただの、魔力の無駄遣い、存在を削る自殺行為でしかない

「あのセシリアは、お前の姉なのか?」
「……うー……」

 こくり、と
 カラミティは頷いてきた
 実際に血のつながっている姉なのか、それとも、姉同然な存在だと言う意味なのか…どちらなのかはわからないし、今はどうでもいい

「お前は、姉を嫌いたくないんだな?」
「…うー………セシリア、姉さんを……嫌いになりたくない。父さんも母さんも、もういないから…………セシリア姉さんしか、いないから…嫌だ…」

 ぼろぼろと、再び涙をこぼし始める
 あぁ、面倒臭い

「…なら、「セシリア」を嫌えばいいだろう、「姉さん」ではなく」
「…………?」

 小さく、首を傾げてくる
 疑問が生じた事で、新たな涙が生まれない

「……魔法を教えてやる。簡単な魔法を」

 それは、誤魔化しの魔法
 いや、本当は魔法ですらない、言葉遊び

「お前が嫌いなのは「セシリア」。お前が好きなのは「姉さん」」

 だが
 こいつにとっては、充分に魔法になるだろう
 幼い心を保っているこいつにとっては、充分に効果があるはずだ

「区別しちまえ。「姉さん」を嫌いたくないなら「セシリア」を嫌えばいいんだよ」
「区別?……うー……」
「名前には、意味がある。わかっているだろう?」

 こちらの言葉に、カラミティは頷いてくる
 名前には、意味がある
 魔法を扱う者にとっては、特にそうだ
 カラミティ自身が、カラミティ・ルーンと言う偽りの名前によって真の名前を隠しているように、名前に意味を見出す

 そんな、カラミティだからこそ
 名前で、呼び方によって、同一の相手であっても区別する
 それは、充分に可能だ

「お前が嫌いなのは、お前の話を聞かずに、お前の主張を信じずに、一方的に嫌って殺そうとしてくる「セシリア」」
「……うー」
「お前が好きなのは、お前を話を聞いてくれて、お前の主張を信じてくれる、お前を好いて護ってくれる「姉さん」」
「うー……「セシリア」は、俺の事が嫌い、俺も、嫌い……「姉さん」は、違う。「姉さん」は俺の味方……」

 言葉を、一つ一つ、かみしめるように
 ゆっくりと、カラミティは呟いていく

 所詮、誤魔化し
 呼び方で区別しようとも、それが同一の存在である事に変わりはない
 あの若い魔女は、本気でカラミティを殺そうと、消そうとしていた
 だから、カラミティの言う優しい「姉さん」は、もう存在しないと言ってもいいだろう

 それでも

「……うー!「セシリア」は、嫌い。俺の敵。「姉さん」は、好き。俺の味方!」
「あぁ、そうだ。今日、お前を殺そうとしてきたのは「セシリア」、「姉さん」ではない。だから、お前は「セシリア」だけを嫌えばいい。「姉さん」を嫌う必要はない」
「「セシリア」は嫌い。「セシリア」を嫌えばいい。「姉さん」は嫌いじゃない、嫌わなくて、いい」

 そうだ、と
 同意してやるとカラミティの表情が、明るくなってくる
 ……単純で扱いやすい

「これが、呼び方の魔法。呼び方で区別する魔法、簡単だろう?」
「うー、簡単。すぐ、覚えられるし、使える」
「…そうだ。その魔法を、ずっと使っておけ。そうすれば、お前は「姉さん」を嫌わずにすむからな」

 ……そうすれば
 こいつは、あまり泣かずにすむだろう
 完全に泣かなくなる訳ではないだろう
 こいつとて、根っこでは、「セシリア」と「姉さん」は同一人物だと理解しているのだから

 それでも
 表面上だけでも、区別してしまえば
 あの女の本気の殺気に、こいつは対抗できるようにもなる
 むざむざと殺されやしない

 もし
 こいつが「セシリア」を殺してしまったら
 ……その時は、その時だ

「おら、もう泣くなよ。うざい」
「うー、泣かない。「姉さん」に嫌われた訳じゃないなら、泣く必要、ない」

 嬉しそうに、笑う
 心の底からほっとしたような笑顔

 ………だから、人間は単純だ
 こんな簡単な誤魔化しでも、どうとでもなるのだから

「泣き止んだなら、とっととアモン卿やデモゴルゴーンの婆のところにでも行ってこい。お前の事うざい程心配してたぞ。こっちに被害飛んでくる前に何とかしてこい」
「うー、わかった………クロ兄は、一緒に来ないのか」
「あいつらと顔合わせても面倒くせぇだけだ。誰が行くか」

 こちらの言葉に、しばし、カラミティはぐずってみせたが
 やがて、思い直したように、歩き出す

「それじゃあ、クロ兄、また後で」
「……うぜぇ。二度と来るな」

 さっさと行け、と
 追い出そうとすると
 カラミティは、嬉しそうに、笑って

「……それと。俺を悪い魔女の「セシリア」から助けてくれて、ありがとう」

 と
 馬鹿のような感謝の言葉を、述べてきて

「いつか、今度は。俺が、クロ兄を助けるからな。カラミティ・ルーンの名にかけて」

 と、そう告げて
 ようやく、部屋を出た
 …やっと、部屋に静寂が戻る

「…馬鹿か。好きで助けた訳でもねぇのに、わざわざ感謝する必要なんざあるか…………うざってぇ」

 自分の呟きは、暗闇に吸い込まれ
 誰にも届かず、自信の心にすら届かずに、虚無へと消えた





to be … ?










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