ヘンペルの言葉を、イクトミは静かに聞いていた
そして
そして
「…暦を殺せ、ねぇ?」
小さく、笑う
「嫌だね」
あっさりとした返答
いつものヘラヘラとした笑いをうかべながら、イクトミはヘンペルに「否」を突きつけた
いつものヘラヘラとした笑いをうかべながら、イクトミはヘンペルに「否」を突きつけた
「だぁれが、お前のいう事なんざ聞いてやるかよ。俺ぁお前の事が嫌いなんだ」
『個ノ好キ嫌イデ判断スベキ問題デハナイ事ハ、オ前モワカッテイルダロウ?』
「嫌なもんは嫌だ。かわいい女の子殺すなんざ俺にゃできねぇし、第一、俺ぁトリックスターだぜ?殺すなんてできる訳ないだろ?」
『個ノ好キ嫌イデ判断スベキ問題デハナイ事ハ、オ前モワカッテイルダロウ?』
「嫌なもんは嫌だ。かわいい女の子殺すなんざ俺にゃできねぇし、第一、俺ぁトリックスターだぜ?殺すなんてできる訳ないだろ?」
へらへらと、どこまで軽く返すイクトミ
本気か、嘘か、冗談か、どこまでが真意であるかを悟らせないかのように
本気か、嘘か、冗談か、どこまでが真意であるかを悟らせないかのように
「見逃してくれるの?」
「エーちゃん相手に話し相手になってくれたことある恩もあるしな」
「エーちゃん相手に話し相手になってくれたことある恩もあるしな」
暦の言葉に、にんまり笑うイクトミ
…イクトミの返答に、衛悟と咎利が少し、ほっとしたようにも見えた
…イクトミの返答に、衛悟と咎利が少し、ほっとしたようにも見えた
『愚カナ……神トシテ、ソンナ考エ方デイイノカ、オ前ハ』
「俺ぁ好きで神やってる訳じゃねぇ、それに……守るべきものを護れなかったものが、いつまでも神を名乗ってる方がおかしいんだよ」
「俺ぁ好きで神やってる訳じゃねぇ、それに……守るべきものを護れなかったものが、いつまでも神を名乗ってる方がおかしいんだよ」
それに、と
イクトミは、暦に視線を向けた
イクトミは、暦に視線を向けた
「大丈夫だって、暦なら、何とかできるさ。俺はこいつらならどうにかできるって、そっちに賭けるぜ」
『……「奇跡」ニ縋ルトデモ言ウノカ。今度コソハ大丈夫、キットウマクイク…一番良イ方向ヘト進ムト言ウ、奇跡ニ』
「駄目か?」
『……「奇跡」ニ縋ルトデモ言ウノカ。今度コソハ大丈夫、キットウマクイク…一番良イ方向ヘト進ムト言ウ、奇跡ニ』
「駄目か?」
ヘンペルの苦言にも、イクトミは肩をすくめるだけだ
それは、「暦ならうまくやってくれるだろう」と言う信頼と、「暦ならうまくやってくれるはずだ」と言うそんな希望と、二つが入り混じっているようにも感じる
それは、「暦ならうまくやってくれるだろう」と言う信頼と、「暦ならうまくやってくれるはずだ」と言うそんな希望と、二つが入り混じっているようにも感じる
「…なぁ、暦」
向けられる視線
それは、「トリックスター」の視線か
それとも、「神」の視線か
それは、「トリックスター」の視線か
それとも、「神」の視線か
「人の子よ」
その、声が
透明な声へと変わる
トリックスターの声から、神の声へ
透明な声へと変わる
トリックスターの声から、神の声へ
「お前は、一つの世界を捨て、また別の世界を選んだ。今後、たとえ、どんな運命がお前を待ち構えていようとも、それを後悔しない覚悟はあるか?」
そして、と
透明な声が続く
透明な声が続く
「…悲劇と惨劇が、その先に用意されているとして。それらを、たとえどんな手段を使おうとも…再び、一つの世界を捨て、新たな世界へと渡ってでも、それに抗うと言う覚悟はあるか?」
それは
たとえ、再び失敗しても、また時間を巻き戻してやり直す覚悟があるか
そして、その巻き戻しによって、ヘンペルが言ったように生まれるはずだった命を消し去り、死すべき定めの者を呼び戻すと言う、その業を背負う覚悟があるのか、と
それを、問いかけている
たとえ、再び失敗しても、また時間を巻き戻してやり直す覚悟があるか
そして、その巻き戻しによって、ヘンペルが言ったように生まれるはずだった命を消し去り、死すべき定めの者を呼び戻すと言う、その業を背負う覚悟があるのか、と
それを、問いかけている
「………私は」
それに、暦が答えようとした時
再び、周囲があの暗闇の世界へと変貌した
今度は、イクミはいない
ただ、ハッピー・ジャックの姿だけが、見えた
再び、周囲があの暗闇の世界へと変貌した
今度は、イクミはいない
ただ、ハッピー・ジャックの姿だけが、見えた
「…君には、さ。やり直す力がある。いいじゃない。別に、気に食わないなら、やり直しても。その程度で「冒涜者」だなんて呼ばれたって、気にする必要ないよ………それよりも、勝手に僕達を生み出して、その先に悲劇と惨劇を用意して弄ぶ連中の方が、ずぅっとずぅっと冒涜者だと思わない?」
きひひっ、とハッピージャックが笑う
青年の姿で、しかし、どこか少年のような笑い
青年の姿で、しかし、どこか少年のような笑い
「僕達には、無数の未来と言う名前のカケラが用意されている。だから、僕らはそれの中で、好きなのを選んだっていいじゃない。君も、そうすればいいんだよ」
「…それで、誰かの命を踏みにじる事に、なっても?」
「その覚悟があるから、君は一度、巻き戻したんだろ?」
「…それで、誰かの命を踏みにじる事に、なっても?」
「その覚悟があるから、君は一度、巻き戻したんだろ?」
だから、と
ハッピー・ジャックは続ける
暦の背中を、後押しするように
ハッピー・ジャックは続ける
暦の背中を、後押しするように
「他の連中が君の考えを否定しても、僕はそれを肯定するよ………頑張ってね。僕は見てることしかできないけど……まぁ、その気になればちょっとくらいの幸運をプレゼントするくらいは、できるから」
きひひひっ、と、彼はまた、笑って
……そして
その笑みは、直後、どこかほの暗い物へと、変わって
……そして
その笑みは、直後、どこかほの暗い物へと、変わって
「……あんな連中の悪魔の脚本に、どうか、負けないで」
そう、ハッピー・ジャックが告げた直後…視界が、元に戻る
イクトミが、暦の答えを待っている
イクトミが、暦の答えを待っている
「…私は」
そして
彼女は、答えを口にする
彼女は、答えを口にする
to be … ?